「どう、して………ぐすっ、私……えぐ、涙、を………っ」
「………っ」
真っ新な布地を思わせる無垢な美顔が、今はぐしゃぐしゃになっている。
彼女の両目からは少なくない量の涙が絶えず零れており、未だ止まる気配を感じさせない。両手ともでその涙が拭われているほど。
「や、やっぱり痛かったか?!」
初めて見る、彼女の感情をむき出しにした号泣を前にして私はどうすればいいか分からず、まごついてしまっていた。
今まで彼女が涙を流すときは何時も静かに流していたものだから。
「………違うのです、ずるっ、痛みは、ぐす、ありません………っ」
仰向けのまま顔や手やシーツにまで涙が零れ、鼻すらすすってしまっているリズは、それでも私の言葉はしっかりと否定した。
それじゃあ、何故。
「……どうして、涙が……」
その原因が全く想像が付かない。付かないから、彼女の口からどのような言葉が出てくるのかが少し怖い。
背筋に僅かに悪寒が走り抜ける。先ほどとは違う意味を擁して手先が震える。
そんな私の様子には気が付いていないのか、リズは私を見ながら今尚ぐずぐずに顔を歪ませていた。
けれど、その時ふと彼女の方から手を伸ばされて、それが私の両手首に着地した。どうしても力なく握られているのにはっきりと意志が感じ取れる。
「……私にも、分からないのです………先ほどから……胸のあたりが苦しくて、息が詰まりそうで…………それなのに……貴方に触れたい、貴方の側にもっといたい……そう言った、紛れもない
そう必死に言葉を紡ぐ彼女は、本当に苦しそうな表情を浮かべていた。
しかし其処には、本当の意味での苦痛や苦悶は滲んでいなくて。
苦しそうなのに、それでも喜色さえ含まれているような声音で。
「リ、ズ………」
だから、私はその矛盾をはらんだ状況に戸惑いを隠せていなくて。
そんな様子でも、彼女は眉をひそめた上目遣いで言葉を続けて。
「……クラヴィス、さん……言いたいです、言わせて、っ……ください……」
「好き……好きです、クラヴィスさん………貴方のことが、好きです………私たちに何もなくても、心から愛しています………っ」
「_______」
そして、そこから放たれた愛の告白に、心の奥底まで惚けてしまった。
「……ああ……ああ……私も好きだ、リズ……君を誰よりも大切に想い、愛しているとも」
自然と口をついて出た言葉。なのに、口の中がカラカラに乾ききって顔の熱がこれまでで一番高まっている。
自分の性器を見られるよりも遥かに、気持ちを伝えることの方が緊張していた。
「リズ、リズ、リズ……!私の秘書で、片割れ……君がいない生活なんて考えられない………もっと君のことを感じて、愛したい………!」
手首に感じていた小さな彼女の掌をするりと握り返し、沸き上がるままに全霊で感情をぶつける。
茹で上がった脳がその機能を十全に発揮しないまま、なりふり構わずに想いを吐き出す。
一ミリたりとも彼女の目から視線を外すことなく喉を絞りながら叫ぶ。
「リズ、リズ………!」
「………クラヴィスさん……クラヴィスさん……私は、ずっと貴方の隣に………んちゅぅぅ……っ」
どちらからともなく、勢いで口づけをした。
全身が彼女を求めんと熱で満たされる中、その熱を口内に集約して唾液として彼女に流し込む。口いっぱいに分泌されたものを余すことなく注いだためか、いつもならこく、こくと控えめであるはずの嚥下の音がごきゅ、ごくと本気のものに聞こえる。
「んじゅ、リズ、すまん、腰、動いてしまう、れろぉ……」
「ん、ふぅぅ、くちゅ、じゅる、んはぁっ、あ゛ぅっ、や、くら……!」
ついさっきまで残っていた理性はとうの昔に蒸発していた。
股間で感じる天国のような生暖かさと極上の刺激と快楽に、勝手に体が先へ先へと求めてしまう。
何も考えられない。不安も、恐怖も、焦燥も_______何も。
愛おしくて仕方がない存在と、二人だけの世界へ埋没していく。
挿し込んだ剛直を、彼女の体の内側を削るようにひたすら子宮口へ打ち据えていく。
パン、パンと下腹部と臀部がぶつかり合う肉音。亀頭が彼女の最奥である子宮口をノックする感触が、何よりも彼女との交わりを意識させてくれる。
そうして、一番敏感な部位同士で感じる暴力的な快楽だけがはっきりと全身を駆け巡る。
「うぐぅ、これ、まずい、中でこすれ合って、ペニス、持ってかれる……っ!」
「はあぁぁっ、や、だめ、です、あたま、はじけてっ!」
「ぐぅ、リ、リズ、気持ちいいかっ!」
「んひ、はいっ、いたみは、んぁっ、なくて、う゛ぅ、いれられるたび、まっしろに、なってぇっ!」
両手は繋ぎ合ったまま離しはしない。
私の送る断続的な快楽に、度に上体も下半身も跳ねさせるリズは、本当に体中を快感で支配されているように見える。
そんな彼女に上からガバリと覆いかぶさって、彼女が熱と羞恥で赤に染まった顔をしっかりと視線で射抜く。すると彼女は見られたくないのかすぐに横にそっぽ向かれてしまった。
「っく、リズは、可愛いなっ、本当に、可愛い、綺麗だっ、ぅぐぁっ!」
「や、あ゛ぁ、だめ、でしゅ、っふぅぅ、おことば、みみから、きもちよくて!」
「尖った耳も、ふわふわした髪も、濡れた瞳もっ、全部、全部が愛おしい!」
「あ、くら、はぅ、むねが、しめつけられてっ、これが、“
「_____~~~~~~っ!」
彼女の口から“幸福”という言葉が出たことに、得も言われぬ感情がこみ上げて言葉にならない叫びが発せられる。それが形となって、いつの間にか私の目からも涙が流れていた。
もっと、もっと欲しい。
彼女が、自身の感情を幸と形容することが。
「っ、そうだ、それが、幸福だ!君の体を満たすのは、紛れもない、“幸せ”という感情なんだ!」
「うぅ、うぅぅぅぅ、やら、わたし、しあわせすぎて、うぅ、どうにか、はっ、あ、なりそう、ですぅぅ!」
「抑えずに、もっと、感情を、出してくれっ!私は、それが、ほしい……っ!」
涙で水分過多になった喘ぎの中に唸りを聞き取る。それはまるで彼女が溢れ出る幸福感を抑え込んでいるように聞こえてしまうため、それを解放させるように促す。
指を挿入したときに感じた膣内の異生物さは、自身のペニスに一層予測不可能なうねりを与え続けている。愛液がドロドロと煮詰まった中に挿し込んでいるために、その中にあるありとあらゆるもの………数えきれないほどの細かな襞や亀頭にぶつかっている子宮口、茎の部分にひっかかる膣口が、全てペニスに対して射精を乞うように絡み、吸い付いてくるのだ。
局部から全身に流れ込んでくる脳を蕩かすような気持ちよさに、ただ二人とも夢中になってしまっている。
「っう、ぐす、リズ、リズぅ、はーっ、あ、ぐぁ!」
「ひぐぅ、く、らう゛ぃ、は、あぁぅ、んひぃ、ぅぅぅ!」
結果、互いにもう、思考能力が名前しか呼べないほどまでに快楽で溶かされていた。
ぐちゅぐちゅと互いの体液が乱れる音と、荒く繰り返される激しい呼吸音しか他に響かないほどに。
「あ、らめ、また、きてしまいますっ、い、や、いっ、くぅぅぅ……!」
「んぐぅぅ、まず、ぎちぎちに、締まっているっ!」
「あぁ、あああぁぁ、あ、あぅ、あー、ぅぅぅ…………!」
奥へのピストンを全力で打ち続けている中で、彼女が何度目かの絶頂を迎えた。途端に締め付けてくる膣内に抗うように下半身に力を入れて、それでも私の腰は止まることなく更に彼女の脳天まで貫くようにペニスを出し入れしていた。
仰向けでただ快感に打ち震えている彼女の体は絶頂に伴ってビクンと大きく痙攣した。
いつの間にか曲げられていた両の脚先まで痙攣が伝わっており、骨盤の浮き出た腰が跳ねてそこだけが情けなく上に突き出されている。
思わず繋いでいた手を解き、そのまま形の見えている骨盤の辺りをがっしりと両脇から掴む。
そして、思いっきり腰を引いた。
「すまん……リズ。もっと激しく、行くぞっ!」
「はぇ…………んあああああっ?!」
意識さえ朦朧としていそうなリズを、彼女が決して逃げられない体勢のまま勢いよく挿入した。
ドチュッと突き当りと深々刺さる感触と共に、絶頂の余韻が抜けきっていない膣内に四方八方からうねりを伴って撫でられ、包まれ、締め付けられる。
「あ、あぅ、や、たっした、ばかりで、そんな、あぁっ、いれられる、の、らめれすっ!」
「ぐ、はぁっ、何が、駄目なんだっ!こんなに、気持ちいいのに!」
「おぼれて、ふぐぅ、しまいそう、なんれす、、このままれは、こればっかり、に、くひぃん!」
ひと際高く鳴いたリズ。どうしたものかと思えば、亀頭がどこかざらついた部分を擦っているのを感じた。
ここが彼女の感じるポイントか。少しだけ腰の向きを変えて、そこを重点的に突くように前後に動かしていく。
「ここ、だろう、ここが、いいんだろ!」
「あ、あ、あ、や、らめ、すぐ、きちゃいます、や、い、くぅぅぅぅ……!」
またしても絶頂を迎えた彼女の膣口……すなわち結合部からは、プシュプシュと無色透明の尿のような液体が噴水よろしく噴き上がっている。それが思いの外高く噴き上がり、上から覆いかぶさっている私の腹部にパシャパシャぶち当たっていた。
「っ!リズ、私も、もうすぐ達しそうだっ!」
睾丸から熱がせり上がるのを捉えた。もう発射までは秒読みで、自然とピストン運動も速度が増していく。
全身の神経を撫でられたようなむき出しの快楽に脳を焼かれながら、ラストスパートと言わんばかりに彼女の唇までも犯しにかかった。
「んむぅ、んじゅ、ちゅるぅ、ふぁぅ、や、
「リズ、ちゅる、このまま、君の中に、出すぞっ!」
「あ、あぅ、はい、あなたの、せいえき、ほしいれす、ぅぅぅ、ひぐぅ!」
私の射精欲をきっちりと煽ってくる彼女の言葉にペニスに更なる血流が送られて、一回り膨張が大きくなる。
ぐつぐつ煮え滾った体液が加速度的に尿道を通ってくるのを感知した。もう止められない。
「リズ、ぅっ、全部、君の奥に、出るうぅっ______」
「わらひも、れちゃいます、あ、あ、やら、あ、いぃっ______」
「______ぐあああああああああっ!」
「______あああああああぁぁぁぁっ!!」
ビュルビュルと鈴口からあふれ出る粘液を、彼女の子宮口にあてがいながら直接注ぎ込んだ。
つい先ほど感じた体中を抉られるような激しい喪失感を再度感じ、それによってまた射精したのだという実感が湧いてくる。
「うぐぅぅ、はーっ……まだ、出る………はーっ……!」
「ああああっ、ぅあ、はーっ、あう、あー……はぇ……んひぃぃ……っ」
全身を彼女の上から押しつける。膨大な快楽を彼女の中だけに留めさせ、頭部からつま先まで快楽で染め上げるように。
身体の前面で感じる彼女の柔らかな肢体は、風呂上がりのように熱い。今になってそれが嬉しくなる。
「はーっ……はあぁぁ…………ぅおっ?!」
もういれる力もなくなって彼女に覆いかぶさったままだらりとしていると、不意に右耳が変なものに撫でられる感覚がした。熱く、それでいてべとべとしていて、動きに予想が付かなくて。
「ちゅる、ちゅぴ、ふぁ、あぅ、んふぅぅ……」
「なぁっ………リズ、っくぅ?!」
「んんんぅ………ちゅぱっ……!」
リズに耳を舐められていた。
しばらくしてそれを止めた彼女は、すりすりと私の頬に自身のそれをこすりつけてくる。
「はあぅ……クラヴィス、さん…………私の、中……まだ、むずむずしていて……おかしくなりそうです………もっと、たくさん……貴方のペニスで、突いて……っ!」
「____君は、本当に………!」
その言葉を耳元で囁かれて、一度射精したはずの私のペニスは一瞬にして硬度を取り戻していた。
恐らく、リズは今まで「安らぐ」「落ち着く」「大切」という言葉は口にしていますが、「幸せ」という単語だけは一度も言ったことがありません。
もう後ちょっとだけ続く。