※この作品はR-18です。

鳥籠と博士は無知である   作:織部よよ

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10日投稿だと思った?早く書き進めた過ぎて(向こうのアイマスの方を1話前後半分割投稿にしてまで)6日投稿にしちゃったぜ!でも次第に8日投稿になるやもです。


小ネタ

クラヴィス(ドクター)は執務室ではマスクを外して素顔で仕事をしている。執務室外に出るときは気分でマスクを付けたり外したり。








無知無欲②

 

 

 

 

 

 

 

「____キス、とは何でしょう?」

 

普段の落ち着いた表情のまま、きょとんと首をかしげるリズ。クラヴィスが見れば、数秒のうちに彼女の頭は不健康な手で撫でられていたことだろう。一方で、アンブリエルを除く3名(特に現場を目の当たりにしていたプラチナとアズリウス)は鳥籠の無知さにただひたすら衝撃を受けていた。

 

「いやいや、リズさんもしたじゃん。退院日に、ドクターにさ」

 

「キス、とは……相手の唇と自分のそれを重ね合わせる一種の愛情表現ですわ………まあ、リズさんの行ったものは、また一段階上のものですが」

 

「……唇を、重ねる……」

 

両名の説明を受け、今度こそ思い出すように黙り込むリズ。ほんの3、4日前の出来事だから思い出すのは容易だろう。

容易だからこそ、次の反応は見ていた者に「これまでのリズとは違う」ということを再確認させるようなものだった。

 

 

「………っ」

 

 

無表情に近い顔に、一瞬で頬に赤みが差したのである。さながら白紙に赤インクを垂らしたように…………この場合は実際に白紙(リズ)にインク(感情)が染みこんでいるわけだが。

 

「あらあら、随分と初々しい反応ですわね、リズさん」

 

「本当に分かってなかったんだね……」

 

「……あの、あれは、その……思わず、衝動的にしてしまっただけです……」

 

その慌てっぷりようは、例えばリズに最も複雑な感情を抱いているアーミヤが見れば衝撃的過ぎて失神していただろう。

そっと顔を伏せ、視線が明後日の方向に向いている今の彼女の姿は、どう考えても普通の女性の反応のそれであった。

 

「……そもそもさ、感染者と非感染者が粘膜接触なんて大丈夫なわけ?」

 

しかしここで見事に雰囲気をぶち壊す、猜疑心と羞恥心に塗れた顔のグレースロート。彼女はロドスで様々な人と関わり合い、感染者への抵抗や偏見こそ薄くなったものの根底ではまだまだ差別意識が残っている若いオペレーターだった。そもそも14歳の彼女の前で生々しい話をする他のオペレーターも悪いが。

 

「……少し前にケルシー先生にお聞きましたが、現段階で鉱石病のヒトからヒトへの二次感染はないそうです。当然、体表に分布している鉱石に触るのはあまり宜しくはありませんが……私は、口内には鉱石は分布していませんので」

 

「……そう。私には愛とかよくわかんないから、何も言わないけど」

 

昔の彼女であれば露骨に嫌な顔を浮かべただろうが、グレースロートは自分の与り知らぬものには口を挟まないという波風を立てない接し方でなんとか場の空気を悪くせずに済んだ。これも成長というものだろう。

 

「でも実際、キスはともかくセックスってどうなんだろうね。キスよりももっと………その、粘膜接触が激しくなるわけだしさ」

 

「……私には、知り得ません。ケルシー先生に聞いてみるしかないと思われます………それで、アズさん」

 

「何ですの?」

 

「生殖行為以外の目的で行う性行為とは、どのようなものなのですか?見識がないばかりに、想像が付かなくて……」

 

「……」

 

秘技・素朴な疑問。

リズの純粋な精神性故の、確定クリティカル攻撃。

これにはさしものアズリウスとは言え、ノータイムで返答することは出来なかった。しかし間を空けずに口を開く。

 

「そうですわね……大方は先ほどアンブリエルさんが仰ったように、性的快楽を求めるだけのものや愛する人とするスキンシップとしてのものもありますわ。ですがこれは、ドクターに伺ってみてはどうでしょう?」

 

逃げの一手を取った。

とは言えそれだけではなく、アズリウスは「相手(ドクター)との十分な相互理解も大事だろう」という判断の下で答えもしたので、アンブリエルよかはマシである。

 

「……ドクターと、ですか?」

 

「ええ。ちょうどこの後お会いするのでしょう?丁度いいですわ」

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

ドクター……クラヴィスさんとキスをしたあの日のことは、数日経った今でも私の記憶容量を大きく占めています。

あの時。何も意図はなく、ただあふれ出した感情のままに……私の唇を、クラヴィスさんのものへと接触させたのです。

 

 

____瞬間、あの方と同化しそうな感覚と、膝から崩れ落ちそうなほどの何(・)か(・)を覚えました。

 

決して今まで触れることのなかった部位、クラヴィスさんの唇。触れている間、自分のものではない熱い吐息が絶えず私に送り込まれていました。

双方の唾液が交わり、私の感じたことのない未知の感触で口内が満たされ……気が付けば、自然とあの方の舌をも絡めてしまいたいと。

 

………あの時のことを思い出すだけで、顔が熱くなり、クラヴィスさんの方を正常に見やることさえ出来なくなっていしまいます。

 

 

これは、“羞恥”という感情なのでしょうか。

 

思えば、今までにも何度か同様の経験をしています……シエスタでクラヴィスさんに“綺麗”だと言われたこと、少し前に私の体が小児のそれになり、その状態であの方に頭を愛撫されたことなど……。

その一つ一つの記憶を呼び起こすたびに、私の顔が熱を帯びるのです。

 

 

______ですが。

 

それを差し押さえて、もう一度し(・)た(・)い(・)、と。

 

 

私の中の無垢な感情が、しきりに私へと訴えかけていました。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「……と、いうことがあったのですが……」

 

「……ふむ、生殖目的以外のセックスか」

 

 

その日の晩。リズは執務室にて、クラヴィスに今日の出来事を話していた。

 

クラヴィス。

ロドスのオペレーターにとっての“ドクター”という立場にある人物。

かつてはチェルノボーグで意識が覚醒してからずっと仕事に追われており、オペレーターには当たり障りのないように明るい雰囲気を作って接し、執務室では死んだような目で仕事をしていた。

 

しかし、そんな彼も今やすっかり変わった。我武者羅に業務をこなしては定期的に倒れるなんてこともなく、リズの(存在レベルでの)助力もあり無理をすることなく日々精力的に仕事に取り組んでいる。その様変わりのビフォーアフターを見たCEOは己のドクターへの期待の過剰さに気づき自分へ猛省ソウルブーストしたとかしてないとか。

 

「確かに、一説にはそう言ったことも俗世の間では行われていると聞く。しかし、すまない。私も一般的な知識はあるが具体的にどういったものなのかは知らないんだ」

 

「……そうですか」

 

目覚めてからすぐに戦闘指揮や業務に従事せざるを得なかったため、クラヴィスの方にもまともな性知識など備わっているわけがなかった。

 

 

「とは言え………実のところ、今の話を聞いて少し気になっているところはある」

 

「セックスが……ですか?」

 

「ああ。いや、性行為に限った話ではないのだが」

 

首肯の意を見せたクラヴィスは、ちょうど手持ちの仕事が終わった段階だった。自身の机の前に立っているリズの手を引いて、2人して執務室に置かれているソファへと向かう。

 

「ついひと月ほど前……私が生死の淵から帰ってきた日に言ったろう、『私たちはまだ生まれたての赤子だから様々なことをこれからも学んで経験しよう』と。いいタイミングじゃないか?」

 

「……私も、そうだと思います。ですが……殊性行為に関しては、私のこの壊れた体では意味を為しえないのでは……?」

 

 

そう。

リズの中に生殖目的以外のセックスという概念がない、もう1つの理由。

 

それは間違いなく、「鉱石病やその他の病魔が巣食っている体では長くは持たないだろうから」という、誇張なしに解消不能なものだった。

 

 

「………ああ、確かにその通りだ」

 

そしてそれは、クラヴィスも十全に理解している。彼は、誰よりもリズの身を思っては涙を流しているのだから。

けれど同じくらいリズを愛し、この先を信じているのもまた彼。

 

「だが、それでも。君に様々なことを知ってほしい。例え本当に長くなくとも、君と同じ体験を共有したいんだ………それに、リズがセックス出来るかどうかはケルシーに聞かないと正確には分からないだろう?万に一つ、もしかすればあり得るかもしれない」

 

「………クラヴィス、さん」

 

「正直な話、私にも生殖以外の性行為なんて……いや、それどころか通常の性行為すらイメージが全く沸かない。私たちに何をもたらすのか、どう影響するのか……その足掛かりとして、実際に行うとは言わずともいろいろと調べてみるのも悪くないんじゃないか?他にもいろいろ知っていこう、先駆けはなんだっていいんだ。だって_____」

 

_____私たちにとっては、全てが真新しいものだから。

 

 

そう溢すクラヴィスの眼は、一縷の希望すら微塵も疑わないような“ひどく”純然たるものだった。

先の可能性を信じている善(・)い(・)目(・)のはずなのに、何かから逃げるようなう(・)す(・)ら(・)寒(・)い(・)目(・)。

この時点で、リズは彼の眼の奥の真意が分かっていた。

 

 

「………そうですね。一緒に、知っていきましょう」

 

 

だから、彼女もそ(・)れ(・)を承知の上で頷くのであった。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「………クラヴィスさん」

 

あの後、話を固めたクラヴィスとリズはひとまず浴場に行こうという運びになった。当然、別々に入るわけだが。

そうして2人で座っていたソファから立ち上がろうとしたとき、不意にリズが名前を呼んだのだ。

 

「?どうかしたか、リズ」

 

話がまとまったとばかり思っていたクラヴィスは、何を話されるのか分からないと言った表情で答える。そんな彼の様子に、リズは顔を朱に染めながらあることを切り出した。

 

「私と……キスを、していだたきたいのです」

 

「んぐっ」

 

むせそうになった。

 

「なっ、い、いきなり何を……」

 

「……私が退院した日を、貴方も覚えているでしょう。あの時にしたキスの感覚を、もう一度体験したいのです」

 

「……私個人としては別に構わないのだが、その……」

 

「……何か、問題が発生しますか?」

 

「あ、いや……まあ、そうだな。1つだけ、“夢中になってしまったらどうしよう”という懸念がある。あれは抗いがたい気持ちよさを感じてしまっていたから」

 

とここまで会話を交わしたとき、リズがそっとクラヴィスの手に自分のそれを重ねる。既に彼の体温が平時よりも高くなっていることを手の甲越しに伝えられたリズは______

 

 

「……私は、貴方と腰を下ろした状態で、改めてキスをしたいのです……夢中になってしまっても、構いません。私は……あの感覚が、忘れられないのです」

 

 

______ゆっくりと、懇願するような表情を浮かべた。

 

 

 

「………っ」

 

 

夜も更け、誰もいない部屋に2人きり。その状態でそのような扇情的とも取れる顔を見せられたクラヴィスは。

 

 

 

 

 

「………っ、リズ……」

 

「ぁ……クラヴィス、さん……」

 

いつの間にか……重ねられた右手を自身の左手で掴み返し、右手をリズのむき出しの肩にあてがって、熱に浮かされたように彼女の顔を凝視していた。

 

 

 

 

 

 

 




次回接吻回。さあ刮目せよ。





あれ、おかしいな。セックスが普通の単語に見えてくる……。

えっちシーンはもうちっと待ってほしいのじゃ。※を付ける予定です。

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