8章、案の定ずっと感情に確定ダメージされっぱなしですね……いやもうほんとアリーナさんの一枚絵が神がかり的なまでに美しくて泣き崩れる
奴の呪いさえなければ……まじ許すまじ。
「そういえば、リズはどうしている?もう解散したか?」
意外と人の少ない大廊下を、アンブリエルとウタゲに連れられててこてこと歩き急ぐ。一体どのような要件かは全く想像が付かないが、1つだけ気になることがあった。そう、リズのことである。
彼女はアンブリエルと昼食を食べに行ったらしいが、私が食堂に着いた時には既に姿を消し、誰もいなかったのだ。流石にもうリズも自分の部屋か執務室に戻ってはいると思うが……スペアの鍵だって渡しているし。
「……それは、着いてからのお楽しみってことで……」
「……お楽しみ、ってことは……いるということで宜しいか?」
というか、ほぼ確実に居るときの受け答えにしか聞こえない。一体何が待ち受けているというのか……私には分からなかった。予想が付かないというのもそうだし、何よりリズがいるということを意識しただけで頭に熱が回って正常な判断がしにくくなってしまうから……。
「……まあ、それも含めて楽しみにしてて」
「分かった………はぁ、ふぅ……」
「……話はナイチンゲールさんから聞いたけど、本当に大変そうだねぇ」
いつものくたびれたような声、それでも心配を滲ませてウタゲが労わってくれる。まったく、本当にいつ戻せるか分からな………ん??
「____……リズから聞いたのか?!」
「え、うん。大丈夫、口外はしてないよ」
……良かった。って、別にロドスの中で広まるのは別に構わないが……これから更に外に行きづらくなるだろうなあ。恥ずかしさで穴に入りたい。
逆に、今までよくあんなにベタベタ出来ていたものだ。私たちに一番足りなかったのは経験でも知識でもなく、羞恥心だったのかもしれない。
「……ちなみに、リズは何て言っていた?」
「ドクターと概ね一緒だと思うよ。何とかして元の距離感に戻したいって」
「……そうか。良かった、嫌がられているわけではないのだな」
曲がりなりにも彼女とは長い付き合いなので、あまり感情表現が過激でない彼女の様子もなんとなくは分かる。しかしそれでも他人の心を正確に推し量り理解することは出来ない。改めて第三者からの客観的なものが聞けて良かった。
「ほんとびっくりしたよー。リズさんめっちゃ可愛いんだもん」
「当たり前だ。あれほど迄に可愛らしい人を私は見たことがない。様々に心をくすぐられるものはあれど、私個人の感情に由来する「ベストかわいいポイント」を挙げるとするならば、やはり感情が発露した時だろうか。元々彼女が持っている美しさとあどけなさが共存した絶妙なバランスの美顔だけでも見惚れてしまうが、例えば照れた時のように僅かな動作で視線を逸らしたり手を掴んだり顔を薄く紅潮させたりすると私はそれはもう_____」
「あー……はいはい、それはまた後日聞くからねー………にしても、ドクターがこんなに饒舌なのは初めて見た……やっぱり隙がないほどに相思相愛じゃん」
……やってしまった。
普段はあんまり喋らないが、例えば今みたいにリズの魅力を喋ろうものならするすると口から様々な感情が出て行ってしまうのである。さながら落差の大きい滝から勢いよく水が流れ落ちていくように。
「すまない、二人とも」
「ん、だいじょーぶ。それよりもうすぐ着くからね」
「きっとびっくりすると思うよ~?」
そう言われると不安しかないが。もしかしたらドッキリとかそういう類のサプライズが待っているのではないかと身構えてしまう。
いや、この際なんでもいい____リズと突然出くわしたりするのは、今はちょっと心が持たないのでやめてほしいが。
そうして彼女らに連れられてやって来たのはB4のとある宿舎だった。
「………」
何故だろう、そこはかとなく嫌な予感がする。
それを感じ取った私の脚が途端に引き返そうとするも、なんとか抑えつけて彼女らが扉を開けるのを待つ。少し膝が笑っている気がするが気のせいだ。
「そいじゃ、お披露目だー」
「心の準備はちゃーんと済ませておいてねドクター」
「………ああ」
宿舎の扉は赤外線を感知して自動で開くタイプなので、意を決して一歩前へと踏み出す。すると扉上部のランプが緑を灯し、冷たい正中線からウィーンと鉄の板が無情にも開かれた。
「………ぁ、っ……」
「………っ」
互いに息を呑む音がはっきりと耳に届いた。
何処かの誰かさん家の客間を再現し、金髪のクランタ×3が入るのに抵抗を覚えるであろう品格のある調度品が揃った宿舎の部屋。
その中央には、今一番会いたくないけど会いたい人がおずおずと立ち尽くしていた。しかし、その雰囲気は何時もとまるで異なるもの。
それらを認識する前に、顔に熱が集まるのをはっきりと知覚した。
「………リ、ズ……」
「……え、と……あの、そ、の………」
「……ふーっ……とりあえず、座ろうか」
するとどうだろうか。普段ならそのまま互いに目も合わせられなくて惨事が起こっていたのに、今回は深呼吸をして、しっかり彼女の顔を見て言葉を発することが出来た。
それと同時に慣れない木のような匂いが先ほどから漂っているのを感じる。妙に心が落ち着く匂いだ。
なんてことを考えつつ、部屋の中央にあった乳白色のソファにリズと対面で腰を降ろす。
「……ええと。その服、似合っているよ。非常に可愛い」
そう、彼女の雰囲気が違っていたのには大きな理由があった。
深いワインレッドの色をした、ワンピースのようにも見えるニット生地の服。下は厚手の黒ストッキングをはいていて、膝下くらいまであるこげ茶色のブーツと相まって非常に彼女のスレンダーさが活かされたような服装をしていたのだ。
今までの彼女の私服は、どちらかと言えば清楚さや上品さを重視されていたために、こうして纏う雰囲気の違うものを着られると心臓が否応なしに跳ねる。何を着ても似合うのは、流石リズと言ったところか。
しかし、当然振る舞いは何時もと変わらないのだから、私の言葉を受けて目に見えるほどに照れている。可愛い。
けれども、しかしけれども私の身体の血流は荒れ狂うことはなかった。
「……ありがとう、ございます」
彼女もまた、特段焦ったり動揺したりしている様子は見られない。そのおかげですっと彼女の眼を見ることが出来ていた。
久しぶりに見たリズの双眸。吸い込まれそうな青色の眼。いつも通り、しかし以前よりも遥かに感情に富んだ
「……リズ、久しぶり」
「……お久しぶりです、クラヴィスさん」
そうして交わされたのは、短くない期間が空いてしまってからの再会を喜ぶ言葉だった。
『……なんか、美しいね……』
『もしかしてこれが噂の
『ドクターとナイチンゲールさん、すごい………』
『ふふ、ドクターくんもナイチンゲールさんも仲が良さそうで何よりね』
そんな声が部屋の隅から聞こえるが、何を言っているのかはあまり分からない。それほどまでにリズと久しぶりに対面できたことに喜びの感情を抱いている。
「……クラヴィスさん」
「……何だい」
「……そちらに行っても構いませんか?」
「……いいよ。おいで」
そう答えると、彼女はふわっ、と柔らかい微笑を浮かべた。本当に嬉しそうな笑み。見ているこっちまで暖かくなるような、嬉しくなるようなものだ。
何をするのかは決まっている。言わなくても分かる。
彼女がこちらへゆるりと移動してくる。ソファから腰を上げずにそれを待ち、やがてふわりとよく知っている香りが漂ってきた。ここ数日は感じただけであの日のことを思い出してしまっていたが、今は何故か前のように安心感を齎してくれている。
距離が近づく。
温もりが寄り添ってくる。
視界の金色の面積が増す。
「……リズ」
「……クラヴィスさん……」
_____私たちは、長い間別れていた双子のようにきつく抱きしめ合った。
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うわ、うわ、うわ。
すごい。何が凄いのか分からないけれど……とにかくすごい。
「………うわぁ……凄い、抱き合ってるだけなのに……なんだか、ドラマみたい……」
「……ドクターは、人前では手を繋ぐくらいだけど……こうして見ると、あたしらが思うよりもずっと二人は……深い仲なのかもしれないねぇ……」
「……えっ…なことも、もしかして「やっと」だったりして」
「良いことよ。私にしてみれば、ドクターくんが幸せそうにしているのが一番だもの」
「……もしかしてパフューマーさん、ドクターのこと……」
「ふふっ……それはどうかしらね?」
「……とりあえず、あたしにも縁が回ってきそうだしお参りしとこ……」
「……お参りって何?」
「お参りっていうのは神社っていうところ……神様のいるところに赴いてお願いする_____」
相対するのはダメなくせに他人に対しては小一時間リズについて語れてしまう厄介オタクと化したドクター
お察しの通り全部私個人の感想です