それ故、彼らは熱く交わり合うのだ。
「……そう言えば、なんでラナがここにいるんだ?一見あまりアンブリエルらとは関わりがなさそうだが」
この部屋に入ってからずっと気になっていたことを切り出す。
今この空間にいるのは私とリズ、それからアンブリエル・ウタゲ・アンジェリーナのトリオ、そして庭園の管理人をしているパフューマーことラナの6人。リズとアンブリエルは友好的な関係を築いているし、その繋がりでウタゲらと関わるのも分かる。しかしラナだけはどうにもあまり積極的に関わった記憶がなく、心当たりがないのだ。
「あら、それはね。頼まれたのよ」
「頼まれた?」
私たち以外の4人は部屋の隅で遠巻きに見ていた。ラナがカップを持ち上げ一口何かを飲む。
「気持ちを落ち着ける香りを焚いてほしい、って。あんまりにも真剣な雰囲気だったから、事情を聞いて私の手伝うことにしたの。此処にいるのは、貴方たちの様子が気になっただけよ」
「……ああ、だからリズと対面しても取り乱すことがなかったのか…………ありがとう、ラナ」
「大した事ではないわ。ドクターくんとナイチンゲールさんのためだもの」
……私、彼女に何か大恩を与えるようなことしただろうか。
そう思うもいまいち心当たりがない。彼女は一応私の指揮下にはいるが、その実、実際に彼女を戦闘指揮した回数というのはあまり多くないからだ。彼女自身があまり得意ではないとも聞いていたこともあり、基本的には庭園で本分をこなしてもらっている。
「貴方が思うよりもずっと、私たちは貴方に感謝しているのよ」
「……私は、君に特別何かをしてやれた覚えはないんだが」
「ふふ、それは秘密」
悪戯っぽく微笑むラナに、私はただ困惑している。ちなみにリズも何が何だかよく分かっていないようで、きょとんと不思議そうに首を傾げていた。
「まあいいわ。それより、今日はもう二人は帰っていいんじゃないかしら?
「っ?!」
何だかさっきからあからさまにラナがこちらを慮る(或いはからかう)ような発言をして来ているのだが!
流石に遠回しとは言え恥ずかしいぞ……しかし、まあ。
「……ラナ。余計なお世話だと言いたいところだけど……リズ、どうする?」
ちらりとリズの顔を見やる。ここ最近でよく行うようになったアイコンタクト。
彼女は私の視線を受け、考え込むような素振りを見せた後、僅かに首肯の意を見せた。
やはり私たちは思考も似ているらしい。
「分かった。じゃあ、お言葉に甘えて……私たちはもう行くことにするよ。ありがとう、皆」
「……本当に、ありがとうございます。アンブリエルさん、ウタゲさん、アンジェリーナさん、パフューマーさん…………あっ」
「……?どうしたの、リズさん」
「あの……この服、お返しします。私のものではないので………」
「ああ、それなら大丈夫だよ。元からリズさんにあげようと思って用意してたから」
本当か。
この私服はリズに本当によく似合っている。彼女のすらっとした脚が黒ストッキングできゅっと纏まっていて非常になまめかしい。線の細さが引き立つような衣服だ。好きである(理性枯渇)。
この服そ……ゲフンゲフン。それは後でのお楽しみかね。
「……ありがとう、ございます……この服は、とても可愛らしいと思います」
「良いってこと。それじゃあ……後は、ゆっくり?しっぽり?やって来ちゃっていーよ」
「……その言い方は何だかアレだが、まあそれだけじゃないからな。それじゃあ改めて、本当にありがとう。この礼は後日させてもらうよ」
一人一人の顔を見回してから一礼して、リズと手を繋いだまま執務室へ戻っていった。
*************
私が先導し、執務室へと入る。こうして彼女と共に此処に戻るのは久しぶりで、それだけで心が躍っているのが分かった。
そのまま私も彼女も仕事に___は、取りかからず、ごく自然な流れでソファに隣同士で座り込む。
「……リズ。その………この数日、どうだったか?」
そしてすぐに話題を切り出した。苦し紛れの。
本当は今すぐにでもこの胸の中に惹き寄せてしまいたいが、まずはこの数日で空いてしまった彼女との時間を取り戻したい。リズと時間を共有し、記憶を共にしたいのだから。
「え、と………私は、貴方を見るたびにあの日のことを思い出してしまって、正常に会話を交わすことが出来ませんでした……それからプラチナさんやアズさんなどにも相談したのですが、あまり芳しい解決策は上がりませんでした…………」
そうしてぽつぽつと語り始めるリズ。ニアールや他の人に様子を勘付かれたり逃げるようにアンブリエルなどの食事に誘われていたところ、ある日____つまり今日、偶然通りかかったウタゲとアンジェリーナに助力を仰ぎ、そして白羽の矢が立ったラナに精神安定の香りを譲ってもらったのだと。
「……そうだったのか……結果的とは言え、こうしてまたリズとまともに会話を交わせて良かったよ、本当に」
「………はい」
「……リズ」
「……クラヴィス、さん………はむ、ちゅっ」
「……ちゅっ」
自然と惹き寄せられ合う二つの唇。
つい先ほどもそうだったが、この場所は二人きりだということもありよりリズの存在を間近で、そして密接に感じられている。
「……んじゅ、ちゅる、リズ、ああ、んぐ……」
「ふあっ、んちゅぅ、はぶ、んふーっ………」
交わり合ってから数秒で、既に口内がどろどろの唾液で満たされていく。お互いの物が混じり合い、攪拌され、一瞬で満たされ、口端からあふれ出て汚していく。
私もリズも、何も考えずにただ柔らかく蠢く舌を捕まえたり口内を舐め回したりするような____懐かしい興奮、感覚。
「……ん、ぷはぁっ……はぁっ……ああ、リズ、好きだ………自然と口をついて出てしまう……」
「……私も、です……好き………本当に、お久しぶりです……っ」
「……リズ……もっと、君に触りたい……其処、行こうか」
そう言って指を差したのは、ワークスペースの隣にある扉。仮眠室___つまりそういうことである。
それに対するリズの答えは、一秒後に感じた手の握られる感触が何よりの意思表示だった。
一瞬だけ視線を交錯させる。彼女の瞳はかつて見たような色をとっくに宿している。呼吸も荒く、触れ合うことで感じる熱も高い。
どちらからともなく立ち上がり、お互いに手を握ったまま、更なる密室へふらふらと移動した。
執務室の扉には、「取り込み中」のプレートを既に掛けてある。
「……この服、体のラインが出ていて良いな。これからも偶に着てくれ」
「ふ、ぅん……ふふっ、少しくすぐったいです……」
ゆったりと細い腰に手を這わせる。ボディラインが割とはっきり分かるようなデザイン故に、直接肌の上から撫でさすっているように錯覚して興奮している。
「ん……っ」
「あ、っ……」
「ひゃぅ………!」
少しくびれた部分を両手で掴み、そのまま軽く揉んだり。
控えめな胸の下で浮き出ていた肋骨を人差し指の腹でさすったり。
果てには、普段と違ってむき出しになっている綺麗な首筋が丁度目の高さにあったから顔を近づけたり。
「ちゅる……ちゅぴ……美味しいな………」
「っ、ふぅ……音、あまり、立てないで……ください……恥ずかしいです………」
何だかこの反応も随分と久しぶりのように思える。僅かに体をのけ反らせ少しだけ身もだえする、鼻血が出るほど可愛らしい反応だ。実際顔への血流は既に巡り切っている。
染み一つない新雪のような肌を、己の舌で穢し回すという確かな征服感が私の胸を、脳を焦がしていく。思考停止を加速させていく。
「はーっ……はーっ………リズ……もっと、君を感じたい……っ」
「は、あ、や………クラヴィス、さ……ひあっ」
もう我慢できない。
衝動に支配された右手が彼女のニットワンピースの裾の中に入り込み、一気にずるりとめくり上げた。すると途端にまろび出る、彼女のあられもない姿。さしずめ危機契約で言うグレード1の契約と言ったところか。
「……?下着の上に着ているこれは何だ?」
「……ふあ……これは、キャミソールと呼ばれるものらしく……これを着る際には、必須だと……」
「……まあ、確かにこれがないと下着の形が浮くだろうしな……」
と知らなかったことについて感心していると、私の中の邪な感情がなんともまあひどい「提案」を思いついてしまった。
これ、言って大丈夫だろうか……いや、私は何かあれば逐一リズに伝えてみると決めている。ちょっとだけ言ってみよう。
「……リズ。少し、お願いがあるのだが」
「……はい、何でしょう?」
すぅ、と一つ深呼吸。
「……上の下着とキャミソールを脱いで、そのワンピースだけを着てほしい」
「………はい?」
遅くてすみませぬ。