※この作品はR-18です。

鳥籠と博士は無知である   作:織部よよ

5 / 33
小ネタ

リズは十全に歩けるようになってから、医療チームの方に顔を出す頻度が大幅に上がっている(だいたい週3~4)。今までは歩くのもままならなかった&秘書任命されていたので基本的に執務室と自室の往復がメインだった。




アビサル勢に全幅の信頼を置いています。間違いなく先のイベントのMVP。結局リズは一度も使わないまま全ステージクリアです。







調査①

 

 

 

 

 

 

 

昨日、私はリズと接吻をしてしまった。

………字面ではこれほどあっさりしているが、実際には脳裏に焼き付いたまま離れてくれないほど強烈なものだった。

 

少し前まで眉1つも動かすことがなかったその人間離れした美貌、そしてそれを持ちながら全く感情を示さなかったはずの女性が、あんなにも自分の生の感情をむき出しにして自分を求めてくれている。

 

そんな非現実的だけど現実にある光景は、間違いなく私の要領の少ない記憶スペースに一生刻まれるだろう。

 

……だが、私たちの憂慮に反して、「夢中になり過ぎてずっと接吻ばかりしてしまう」というような目も当てられない事態にはならなかった。しっかりと昨日の体験は体に刻まれて覚えているのに、ひどく心はいつも通り。リズの方も同じらしく、昨日の今日で接吻に溺れている様子はなさそうだ。

 

ただ、全くないわけではなく____

 

 

「茶が入った、少し休憩しよう」

 

「はい………あの、クラヴィスさん」

 

「……また、か?」

 

「ぅ……はい……申し訳ございません……」

 

「いや、予想よりも遥かに頻度は少ないから全然構わない……ほら」

 

「………んっ」

 

リズにせがまれて、今日にして既に3回目の接吻を交わす。私の両頬へと手を添えてくる彼女の、為すがままに。

 

この短期間で味を覚えてしまった彼女の唇は、1日経った程度ではまったくその瑞々しさを衰えさせていない。むしろ重ね合わせるごとにどんどん熱く柔らかくなってきている気さえする。

 

目を細め、親の嘴から必死に餌を取り出す小鳥のような必死さを感じるリズは、確かに私に感情を、この身に宿る生を教えてくれる。それがひどく愛らしく思えてきて、私の方も自然と接吻という行為に身が入ってしまう。

 

「ふぁ……ん……ちゅっ………」

 

「……これで大丈夫か?」

 

最後にひと際水音を立てて唇を吸ってきたリズは、私から離れた後しばらくボーっとしていた。

 

「……あぅ……その、申し訳ございません…」

 

そうして、しばらく間が空いてからその端正な顔を視認できるレベルの赤に染まってしまうのだった。

少し前までは見ることの出来なかった、彼女自身の生の感情………それが顕著に表れているのを見るだけで、私の心はどうしようもなく暖かくなってしまう。

 

「………構わないさ、私も同じ感情だ」

 

「あっ…………」

 

そんな愛らしい姿を見ては、ぎゅっと胸元へ抱き入れる。

 

 

 

 

 

ここまでが、今日の三回の接吻で構成された一連の流れ。今日一日で恒例となってしまった、私とリズの事実上の習慣だった。

 

いい意味で心が持たない。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

「え……ケルシーは今は会えないのか?」

 

「はい。大きな学会が4日後に控えているので、ケルシー先生は今はその準備に追われています。何かご用件があれば預かっておきましょうか?」

 

今一度リズの体を検査して、性行為が可能か調べてもらおうとケルシーのいる医療チームへ訪れたのだが……どうやら今はダメらしい。善は急げ、思い立ったが吉日と言うから昨日の今日で早速動いたのだが、見事に空振りだったな。

 

「いや、いいよ。また日を改めるさ。対応ありがとう、アンセル」

 

「いえ、他ならないドクターとナイチンゲールさんが来られたのですからこれくらい。ナイチンゲールさんもお元気そうで何よりです」

 

「お陰様で……本当に、ありがとうございます。ドクター、行きましょう」

 

くいっと繋(・)が(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)手(・)を(・)引っ張って、上目遣いで意思を伝えてくるリズ。こういうところも非常に可愛らしい。頬が緩む。

 

「ああ。それじゃあな、アンセル」

 

「……さようなら」

 

こればっかりは運が悪かったとしか言いようがない。ケルシーは医療チームの……ひいてはロドスの大黒柱のような存在だ。余裕のない時にまでこちらに時間を割いてもらうことなんて出来ないさ。

 

「戻って仕事を再開しよう」

 

「はい」

 

 

歩行補助をしていた時の癖が抜けずについつい繋いでしまっている彼女の手をしっかりと確認しつつ、執務室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

__________

_____

_

 

 

 

 

 

「…………」

 

「?どうされました、アンセルさん?」

 

「……いえ、少しだけドクターとナイチンゲールさんのことについて考えていました」

 

「ああ、あの二人ですか!最近ひっきりなしに話題に挙げられていますよね!」

 

「ええ。たった今ケルシー先生に用があるといらっしゃったんですが、今は忙しいからまた後日に来るように伝えました」

 

「そうだったんですか……ナイチンゲールさん、足が無事に治ってからここにいらっしゃる頻度が高くなりましたよね。あの人の知識の豊富さには本当に驚かされるばかりです!」

 

「そうですね、本当に、前とは大違いです。それもこれもきっとドクターのおかげでしょう……まあ、人前であんなに堂々とされるのは少し遠慮してほしいですけどね」

 

「ああ、あれですか!?『まるで熟年夫婦のように自然に手を繋ぐものだから見ていて微笑ましいわ!』って人事の人が言ってましたが、私はまだお見かけしたことないんですよね……!!どこに行けば見られるでしょうか!」

 

「落ち着いてください……そういえば、グムさんによるとあの2人は昼ご飯を食べに食堂には来るそうです。おおよそ12時くらい、と言ってましたが」

 

「本当ですか!明日行ってみたい……けど今は忙しいし……ぬおおおお……!」

 

「……明日の分の仕事は一部私が引き受けますから、貴方も一度ドクターとナイチンゲールさんの様子を見に行っておくといいですよ。医者としても、ロドスの一員としても」

 

「本当!?ありがとうアンセルさん!よーし、今日もあと少しだけど頑張るぞ!アンセルさんもこれから頑張ってくださいね!」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

9:00 p.m. ロドス/晴天

 

 

 

 

 

結局、今日のところは仕事をするだけで一日を過ごしていた。

 

最近はアーミヤが少しだけ優しくなったのか、仕事量が前よりも少ない。それでいて前よりも遥かに仕事能率が上がったので、20時に差し掛かるころにはほとんどの業務を終わらせることが出来ていた。

 

「____よし、終わった……」

 

「……お疲れ様です、クラヴィスさん」

 

「ありがとう。そっちも終わったみたいだな」

 

いつもなら、一日のやるべきことが終われば後は茶を飲んで一息ついてゆるりとリズと談笑していただろう。

けれど、今日は違う。

 

「リズ、茶を作ってくる。それで、今日からはア(・)レ(・)をしよう」

 

「わかりました」

 

 

 

 

 

「………さて、と」

 

最早いちいち意識することすら不要になった茶を淹れる作業を軽く流しつつ(最近は手順にも慣れてきた)、お茶請けのグム謹製クッキーをテーブルの上に用意する。

 

ソファに2人並んで腰を下ろし、デスクから持ってきた情報端末も2人で一緒に見られるようにテーブルに置いた。

 

 

「ではこれより、第一回“俗世の性行為及び愛情表現についていろいろ調べようの会”を開催する」

 

 

こういうことだった。

 

「昨日の接吻の件とリズの聞いた話を受けて、私たちは世間一般の知識が著しく欠如ことを改めて思い知らされた。だからこそ、それらを知ることで私たちの生活がより良いものになるかもしれない」

 

「………私もクラヴィスさんも、記憶に瑕疵がありますからね……」

 

「そう。そこで時間のある時に、このような情報端末を用いてインターネットの大海から様々な情報を仕入れようと思う。当然、情報は玉石混交でありどれもが真実とは限らないからそこは留意したい」

 

「……して、今日は何を調査するのですか?」

 

こてんと可愛らしく首を傾げ、こちらに訊ねて来るリズ。いつ見ても私に安心と安寧を齎してくれるな。

 

「今日はまず基本的なことからだな。私は基礎知識として、リズは医学知識として性行為を知ってはいるが、そうじゃない俗世における性行為の流れなんかも知らなければ実際に経験した記憶もない」

 

言いながら情報端末を起動し、手早く検索サイトに繋げていく。仕事用のものではなく個人用のものなので、他のオペレーターへの情報の漏洩なども特に心配はないだろう。

 

「とりあえず……そうだな、『性行為 方法』とでも検索をかけようか。それでいいか?」

 

「私は……何も分からないので、貴方の為すままに従います」

 

「わかった」

 

大手有名検索サイトに「性行為 方法」と打ち込む。ずらりとそれっぽい文面のサイトが並んでいるが。

 

「ん……この『完全版 めちゃくちゃ気持ちいいスローセックスで女性を快楽の虜に!』というサイトが気になるな……」

 

「……確かに、生殖行為時には性的快楽が伴うと聞いたことがありますが……虜、とは一体どういうことなのでしょう」

 

「そもそも性的快楽がどのようなものなのかすらも分からない……「スローセックス」を先に調べようか」

 

 

_______

 

__

 

 

どうやらスローセックスとは、普通の性行為(恐らく我々が知識として知っている範囲のもの)とは違い「動かずとも快楽を得られる性行為」のことを指すらしい。あまりイメージは付かないが、どうやら私たちが現在欲している知識とは微妙にずれているかもしれないな。

 

それではこの会の趣旨からは少し外れているな。他のサイトを見た方がよさそうだ。

 

「………おや、このサイトは……」

 

「『これで分かる!基本的なセックスの流れ完全版』……?」

 

「こちらの方がタイトルは私たちに合っているかもしれない。見てみるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、まるで別世界のもののような未知の単語がずらりと並べられていた。

 

 

 

 

 

 

 





軽めのご都合主義とは言ったけど何の障害もなく簡単にセックス出来るとは一言も言ってない。

1話が約4000字なのは、単に終わらせたくないがためです。書きたいネタも10個くらい溜まっています。

直感でお選びください

  • A
  • M
  • T
  • 上記以外
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。