「は、ん……や、っ……」
「くすぐったいか?」
「は、い……」
クラヴィスとリズの触れ合いは、既に30分が経過していた。
彼女のありとあらゆる体の部分を、丹念に丁寧に触れていくクラヴィス。
「………ぁ、や……」
「……それなりに頬が紅潮しているな。可愛らしいぞ」
「……ありが、とう…ございます……」
顔、肩回りと撫でさすった彼は、そのまま腕、手へと触れていき、現在は彼女の柳のようなしなやかで細い腰に手を這わせている。当然、衣服は着用したままで。
腰回りというのは、人によってくすぐったさを感じるかどうかが別れる部位だ。触られても何ともない人もいれば、ちょっと触れただけで過敏に反応してしまう人もいる。
「……クラ、ヴィスさん……そろそろ、他の場所へ……んっ」
「あ、ああ、すまない。あんまりにも触り心地が良かったものだから」
リズの反応具合は、おおよそ中間程度。少しだけ触れられるのは問題ないタイプなのだが……クラヴィスは既に10分も触れ続けていた。そんなものだから、彼女の腰はだんだんと熱を帯びて敏感になっていくのも仕方のないこと。
既にリズの顔には赤みが差し、息は軽く乱れ、くすぐったさとは別の、変に微弱な“何か”が彼女の腰を中心に駆け巡っていた。その“何か”の正体には、彼女は当然気付いていない。
ここまでずっと彼女がクラヴィスに触られ続けていたことも影響して、彼女はとっくに彼に身を預ける体勢になってしまっていた。
「……じゃあ、次はお腹を触るぞ……」
「え……っ」
「……服の上からでも、やはり君の体温は暖かいな……」
彼の腕に弱々しくしがみつきながら、正体不明の感覚に耐えるような形になっているリズ。顔を伏せ、自然とクラヴィスの胸へと飛び込むような形。
「……リズ……」
そんな
ひとたび彼女に触れ、撫でまわすたびに、“何か”がゾクゾクと背筋を駆け抜ける感覚。短い生の中で初めて感じる、正体不明の衝動。
「…………っ」
「………っ……っ!」
彼はその衝動のままに、きゅっとくびれた腰回り、臍のある前面、あるいはかなり臀部に近くなってきた背面と余すところなく手触りで確かめていった。
「………」
_____その時にあちらこちらで感じた
それから更に幾分経った。2人は既に口を開くことすらままならず、無言。
「……リズ」
「は……っ…はぁっ……」
突然____あるいは必然的な流れか。
クラヴィスの手は、一度避けて通っていた“ある部位”へと伸ばされようとしていた。
全男性が憧れる、と言っても差し支えない部位。母性の象徴とも呼べる、アレ。彼にはそのような憧憬はなかったが、それでもなお……そこを求める本能というものには、彼は逆らえなかった。
するっ……ふにゅ。
「ぁ、っ……」
「……おお……」
彼の手は、リズが一番上に着用している服の下に差し込まれ、リブ生地の上から直接彼女の乳房に触れていた。
「……こういうのは、あまり分からないのだが……その、大丈夫か……?」
「……は、い……」
「……それにしても、これは下着か……?もう一枚あるように見えるが……」
「……はい、下着は……つけて、いますっ……」
さわ……さわさわ、ふにゅり。
壊れ物を扱うような、ひどく繊細な手つきで彼女の胸を触っていく。
リズの胸は、平均と比べて小ぶりなサイズである。服の上からの目視では流石にアズリウスやプラチナよりかはあるようにも見えるが、それはアンダーバストに巻いているベルトが胸の形をより強調しているだけであろう。
当たり前だが、リズ本人は自分の胸になどなんら執着はないし、ましてや「世間一般では胸の大きさの云々で議論が絶えなかったり派閥が分かれている」といったことも知っているわけではない。
しかし彼女には、豊富な医療知識と生体知識が備わっている。
「……あの、クラヴィスさん……」
「……どうした」
「……ん、その…男性は、大きい乳房に対して安心感を感じるだめ、自然とそちらを求める本能があるという研究論文を、記憶しているのですが……っ…私のものは、恐らくかなり小さいものですので……少々、物足りないとは……感じていませ………っ?」
そのときリズは、自身の言葉にひどく驚愕していた。
記憶は失えど、自分の中には広く深い知識が存在している。彼に自身の母性の塊を触れられているとき……その知識の大海の中から、触れたことがほとんどなかった部分の知識___すなわち、女性の乳房に関する知識がふと思い起こされたのである。
「……っ?」
「……ど、どうした、リズ……?」
「い、いえ……」
それに伴って、彼女の中ではある変化が起こり始めていた。しかしそれが何であるかは彼女はまだ把握しきれていないのか、今は疑問に思うだけに留まっている……。
「……すまない、更にリズに触れたい……服を、脱いでくれるか」
「………」
突如としてクラヴィスから放たれた、
それは、ただ「リズの生まれたままの姿が見たい」という情欲だけに非ず………その細く、白く____病に侵された体を自分に晒してほしい、という意味を持った、文面以上に重い言葉としてリズの耳朶を打った。
2人の関係性の確認という意味も込められているだろう彼の頼み事にリズは何も言わず、潤んだ目で彼を見つめながら……こくん、と少しだけ首を縦に振ることで、同意を示した。
______
___
_
「……あの…クラヴィス、さん……」
「……言わんとすることは、分かっている……が、敢えてこのままやってみてくれ」
「……わかり、ました……っ」
“クラヴィスさんが、私の一挙手一投足を凝視している”。
そのことを意識してしまうと……自身の腕が、途端に言うことを聞いてくれなくなります……。
私の記憶の中では、他人と同じ空間で着替えるという動作でさえ、シャイニングさんやニアールさんなどとしかしたことはありません。それなのに……こんな、クラヴィスさんが見ている前で、というのは……
「……ぅ……」
「……」
……最近知覚したばかりの、羞恥という感情が、私の意に反して治まってくれないのです。
それでも、それが十全な性行為というものに必要であるならば、しないわけにはいきません。
「……はーっ………はーっ……」
外套を留めている複数のベルトを外し、震える手つきで脱いでいきます。しゅるしゅるという衣擦れの音が、これほどはっきりと聞こえたことがあるでしょうか……。
「………」
「……うむ」
……通常かかるよりも遥かに長い時間をかけて、ようやく外套を脱ぐことが出来ました。
クラヴィスさんはただ頷くだけで、引き続きこちらには何も仰いません………自分でやるように、目線で命令されているようです……っ。
外套を脱ぎ捨て、ノースリーブのインナーだけになりました。それから、更に肋骨の辺りに留めているベルトを外し……ゆっくりと、ベッドに置きます。
……そして、背中にあるジッパーに手を伸ばし、うまく動かない腕でゆっくりと降ろし……
「……」
「………おお……」
……するり、と緩慢な動作で脱ぎました。
*************
クラヴィスは、ただ言葉を失っていた。
いい意味でも____
服の上から触れている時点で“リズの体はかなり細い”ということは既に知っていたクラヴィス。華奢という言葉がこれ程までにしっくりくる女性はいないだろうと感嘆すらしていた。
そこから衣服という神秘のベールが取っ払われて出てきた、下着一枚だけのリズの姿。
彼女の白一色に染められた戦闘服や肌とコントラストになっている、黒色の眩しいセパレートの下着だ。
……だが、初めに彼の目に飛び込んできたのは、彼女の幾分か小ぶりな胸でもなく、不健康から来る浮いた肋骨でもなく、くびれた腰つきでも____ましてや、その下で揃えられた足の隙間からチラリと見えている魅惑のショーツですらなかった。
白皙の上で不自然に目立っている黒色の結晶を、軽くざらりと撫でるクラヴィス。その手は、小刻みに震えている。
「……はっ、はっ、はっ……」
「……クラヴィスさん……」
過呼吸気味になっていることにも気が付かぬまま、彼の双眸は、リズの体表のあちこちに散見される源石にただ釘付けになってしまっていた。
「……こんなもの、なければよかったのに」
「____」
ぽつりと呻くように呟かれた低い声。
それは、彼女にクラヴィスの感情を推測させるには十分過ぎるものだった。
彼女の命を今なお蝕み続ける、多くの病。その最たるものが、こうして目に見えてしまっている
だから、彼は涙を流さずにはいられない。
「………クラヴィスさん……」
「____っ」
____そしてそんな彼を見るたびに、リズは彼のことを守ろうと、癒し支えようとする。
自分ではそれしか出来ないと知っているから。
「……安心してください、クラヴィスさん……この命が潰える最期の瞬間まで、貴方のお傍におりますから……」
「………リズ」
彼女は、既に下着だけになってしまった自身の懐へクラヴィスの頭を抱え入れていた。
______
___
_
「……リズ、その……」
「………お嫌ですか?」
「……いや、そうではなく……これはっ……」
____クラクラする。
突然のリズの凶行……と言っても差し支えない行為。鉱石病への無力感を感じていたら、急に私の頭部が彼女によって抱きかかえられていた。
下着越しでもしっかりと存在を主張している存外に柔らかい膨らみが顔の全面に当たっており、まるで赤子にでもなった気分………なのだが。
「………すん、すん……」
「……私の匂いは、お好きですか……?」
……この香りさえ直に鼻孔に入り込んでくるから、それだけでは済まなくなっている。
もう幾度となく経験している、彼女特有のミルクめいた甘やかな香り。最初はその不思議な匂いにドキドキしたものの、回数を重ねるごとに段々と慣れていき、今ではすっかり私を安心させるもののうちの1つとなっている。
……だが。
「……すん、すん…はぁっ……」
「ぁ……ぅん……」
____これは、まずい。
今まで感じたことのない、乳房の感触。大きさ的にはそれほどサイズのないように見えるが、実際に顔面で感じてみてわかる。こんなにも柔らかく、執務室にあるソファなんかよりも遥かに気持ちいい……顔を埋めたくなってしまう。
それに、匂い。今までは髪などを中心に濃い匂いが漂ってきたのだが、これは比較にならない。まるでここが発生源かのように、高純度の甘やかな香りがしている……してしまっている……。
プラス、体温。人肌の安心感を知ってしまった身からすれば、
甘えてしまう。
この天国に、どうしようもなく溺れてしまう______!
「……良いのです、クラヴィスさん……貴方は、甘えることを許されているのですから……」
「___っ、駄目だ、そんなことを言っては……」
「……どうしてでしょうか?私が、貴方に甘えてばかりなのです……ですから、その分だけ貴方も存分に甘えてくださっても結構ですよ……?」
そう言いながら、リズは更に私の頭すら小さな手で撫でてきている。それが妙にくすぐったくて、しかしとても心地よくて……。
「……駄目だっ、溺れてしまう……君という存在に、溶かされてしまう……っ」
「……良いのです、クラヴィスさん……私と共に、どこまでも____」
………そんなことを言われたら、もう、もたない。
______
___
_
……私が先ほどから抱いている感情。ようやく分かりました、
クラヴィスさんの苦しそうな……無力感を彷彿とさせる表情を見たときに真っ先に沸いたのは、当然、「これ以上貴方に苦しい思いをさせたくない」という感情。その次に沸いたのは_____「この胸にかき抱いて、包んで差し上げたい」という、今まで一度も抱いたことのないものでした。
その感情のままにして差し上げると、どうでしょうか。先ほどまで震えていたクラヴィスさんの手の震えは止まり、乱れた呼吸も落ち着いてきたではありませんか……。
「すん…すうっ……すはーっ………すまない、リズ…これはっ……」
「あっ……いいえ、構いません……どうぞ、んっ、心ゆくまで……」
……クラヴィスさんは、先ほどから執拗に私の体の匂いを嗅いでいらっしゃいます。彼が言うには、「ミルクめいた甘やかな香り」ということだそうですが……自分では、少々把握しかねます。
ですが……こうして悪感情の発露もなくなって、ひたすらに私の懐に顔を埋めているクラヴィスさんを見ていると……その、延々とこうして差し上げたいと……いえ。
それに………。
「………すん……」
……クラヴィスさんからも、とても安心感をもたらしてくださるような匂いが放たれていて、私もこうして彼の髪に顔を近づけては、衝動的に嗅いでしまうのです……。
このような心安らぐ時間が恒久に続けばいいのに、と思わずにはいられません。
「……すまない、もう大丈夫だ。そろそろ、続きを再開しよう」
「………はい」
_____それでも、今日に限っては、まだ夜は終わらないのでしょう。
もしかしてこれ共依存√待ったなしどころかガッツリ突入済だったりしま………ええ-い知らぬ知らぬ((;^ω^))
ドクター、リズにバブみを感じるの巻。リズ、ドクターに母性発揮するの巻。
正確に言えば、バブみとはちょっと違いますが。
ちなみに現時点ではリズは精神快楽は得ています。
直感でお選びください
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A
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M
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T
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上記以外