【シャニマス】中年プロデューサーの華麗なる暗躍 作:黒胡椒サラミ
(まさか、泣かれるとはなぁ……)
そんな反応が返ってくるとは思わなかったので、陰平は久しぶりに反省していた。
こうなった原因は単純だ。結論を言うと、無理をし過ぎた。確かに後先を考えなさ過ぎた。だから恋鐘には、プロデューサー失格だと強い調子でなじられた。恋鐘は酷く怒っていたし、それ以上に泣いていた。
ここは病院のベッドの上だ。陰平は入院している。着ているのは、作務衣のようなデザインの青っぽい患者着だ。
一昨日、初めて霧子をゲストに呼んで行われた恋鐘のライブは、無事に成功した。「無事に」と、ライブ直後に倒れてしまった陰平が言うと、また恋鐘は怒るかもしれないが、少なくとも客は大満足していた。それに何より、恋鐘も霧子もステージの上で輝いていた。陰平にとってはそのほうが重要だ。
それに、陰平はベッドの上に寝かされているが、重態ではない。医者が言うには、ただの過労から来る不整脈のようなものだ。
――肥満気味ですし、悪玉コレステロール値も危険ですね。日頃の不摂生がたたったということでしょう。生活を改善しないと、いずれ死にますよ。
その眼鏡をかけた若い男の医者は、ずけずけと物を言ってから肩をすくめた。
――まあ、数日は休養を兼ねて入院しておきましょうか。そのほうが、娘さんも安心されるでしょうし。
医者は恋鐘の事を陰平の娘だと勘違いしたらしく、そう言った。違うと訂正するのも面倒だったので、陰平は適当に頷いた。
ライブ終了後、会場で撤収作業をしている最中に陰平は倒れた。その時、恋鐘は霧子と楽屋に居て、陰平が床に転倒したシーンを見ていない。倒れたと言っても、そんな大げさなものではなかった。ちょっと休憩のために椅子に座ってから立ちあがると、急に眼の前が暗くなり、バランスを崩しただけだ。それを周りに居たスタッフたちが大げさに騒いだ結果、救急車まで呼ばれてしまった。
それで陰平が運ばれた先は、なんと霧子が世話になっている大学病院だ。その日は偶然、救急当番に当たっていたそうだ。
翌朝、陰平が病院のベッドの上で目覚めるまでに、伊庭、はづき、恋鐘の順で病院にやって来たそうだ。中でも恋鐘はベッドの横で泣いてしまったのだと、はづきが言っていた。
――少しくらい休め、忠治。お前は有休も消化してないしな。……イルミネの三人は心配するな。俺とはづきで仕事を回しておく。
陰平が病院に運ばれた次の日の朝――つまり昨日の朝だが、珍しく優しい声で社長がそう言った。このような事態とは言え、自分のアイドルの仕事を他人に任せる羽目になるのは、陰平にとって痛恨の極みだったが、社長が引き受けてくれるのであれば安心できる。それに社長は、イルミネの三人には陰平が倒れた事を伝えていないとも言った。それはありがたいと、陰平も素直に思った。こんな無様な状態を見られたら、めぐるたちにも何を思われるか分からない。
――ばか!
そして社長が帰ってから、恋鐘がまたやって来た。恋鐘はスーパー袋に入った山盛りのフルーツを持ってきていた。
そんな彼女に、陰平は第一声で、「昨日のライブは素晴らしかった」と声を掛けたのだ。これも彼にとっては素直な感想だった。恋鐘のパフォーマンスは前回のライブよりもずっと優れており、霧子と二人で歌った時の恋鐘は、相乗効果でなおのこと輝いて見えた。
それを一言に集約して、昨日のライブは素晴らしかったと陰平は褒めたのだが、それがどうしてか恋鐘の怒りを買った。
――うちん言いたか事ば、なんも、なんも、な~~んも! ぜんぜん分かっとらん! そんでもうちのプロデューサーと!?
恋鐘は頭から湯気を立て、ぽろぽろと涙をこぼしながら、それでもリンゴの皮を一つ分、丁寧に剥いてから、乱暴に病室のドアを閉めて出て行った。どうやら自分は行動と発言を致命的に間違ったらしいと陰平が気付いたのは、ウサギの耳を生やし、爪楊枝の刺さったそのリンゴを、一切れ口に入れた時だ。
そして、恋鐘が帰ってから一晩経った朝、それが今だ。
体調に問題は無い。むしろ久しぶりに十分な睡眠をとったおかげで、気力・体力ともに充実している。しかし陰平は、大人しく入院していた。恋鐘が泣いた意味を、本当の意味でこの男が理解しているのかは怪しかったが、それでも数日は休養する事に決めたのだ。
しかし、あのライブは素晴らしかった。二日経った今でも、陰平はそう思う。
前回のライブで自信を取り戻したのか、恋鐘は前よりもっと堂々として見えた。ソロ曲のクオリティも飛躍的に向上していた。イルミネをゲストにして客を呼び込まずとも、恋鐘自身に付いたファンが、しっかりと観客席を埋めてくれた。あのハコでもう数度ライブをやる予定だが、次はどうにかして席数を増やす事を考えなければいけないかもしれない。
そして、霧子である。霧子があのライブで歌う事は、客には事前に告知されていなかった。というか、霧子がステージ上に登場した時も、特に紹介のMCはなかった。そんなものは要らないのだ。霧子を見て、霧子の歌声を聴けば、彼女が何のために出てきたのかは、観客には分かる。
霧子たちが作詞し、陰平が急遽手配した曲も、三曲までは本番に完成が間に合った。もともと用意していた曲を合わせて四曲分。霧子というアイドルの魅力を観客に分からせるには、十分すぎるほどの時間だ。
(次は霧子も初めから登場させて……。握手会もやってみるか)
ベッドの上に居ても、陰平の頭の中にはアイドルの事しかない。静養するはずなのに、彼は次のライブについて考えていた。
次のライブは、きっともっと良いものにできる。何しろ今回は、前にも増してスケジュールに無茶があり過ぎた。新曲のCDを業者に発注するのは間に合わず、量販店でブランクCDを買ってきて、一枚一枚手で焼いたくらいだ。ジャケットすらないそんなCDですら、用意した分は全部売れた。
今後は恋鐘と霧子が二人で出来る仕事を増やそう。霧子のラジオで、彼女たちの曲を宣伝してもらう事は可能だろうか。次のライブ、次の仕事について考える陰平の中では、霧子は既に自分のアイドルだった。伊庭からプロデュース権を奪い取ったという観念すら、陰平の頭の中には皆無だ。
(霧子……)
恋鐘と同じく、霧子もステージ上で輝いていた。あの輝きをもっと浴びたい。浴び続けていたい。そう考える陰平のペニスは、ギンギンに反り返っていた。ライブの準備期間中に溜め込んだものが、今にも暴発してしまいそうだ。
(霧子も、俺のものだ……。霧子は、俺のアイドルだ……)
そして肉体の欲求以上に、陰平の精神は霧子を強く求めていた。霧子の全存在を我がものにしたい。そして一番近くで、その輝きに永遠に見惚れて居たい。それは極限の喉の渇き、飢餓にも似た感覚である。シーツと薄い患者着の下で、肉棒が怒張しているのがはっきりと判る。それどころか、充血し過ぎて痛いほどだ。
(霧子を、俺のものに……)
自分はアイドルを輝かせたいのか、汚したいのか。少女たちを守りたいのか、傷つけたいのか。
どうしようもなく矛盾した想いを抱えた陰平という男は、肉棒をいきり立たせたまま、ベッドの上で表情を暗くしうつむいていた。
――――――――――――
「……こんばんは、陰平さん」
「やあ、幽谷さん」
夜、霧子が一人で陰平の見舞いに来た。来ないだろうと思っていたのだが、さすがに自分が住む寮の近くで知り合いが入院しているとなれば、いくら陰平のような男が相手でも、無視する事は出来なかったようだ。しかし、その無警戒ぶりが、いずれ命取りになる。陰平は、内側にある黒いものを、愛想笑いで覆い隠した。
「幽谷さんがあれだけ立派に歌って、ライブを成功させてくれたのに、こちらの健康管理が不十分なせいでドタバタさせてしまいましたね。本当にすみませんでした」
そして、慇懃な言葉遣い。お人好しの信頼できるプロデューサーという虚像を、そうやって作り上げなければならない。ライブ前はスケジュールに追い立てられたせいで、ついつい乱暴な態度をとってしまった、許して欲しいと、陰平は霧子に詫びた。
「…………」
霧子は病室の入口に立っている。彼女が好んで着る白い私服は、一見すると看護師のようにも見える。霧子は少し不安げな表情で、胸のあたりに手をやっている。袖から見える腕には、彼女の「お守り」である包帯が巻かれているのがちらりと見えた。
そのまま入口に立ち尽くしているつもりかと思えば、霧子は陰平のベッドの傍まで寄って来た。この病室は個室ではなく、ベッドが四台ある。だが、陰平の他に入院患者は居なかった。
「お身体の調子は、どうですか……?」
本当に気遣っている様子でそう言いながら、霧子は相変わらず、全てを見透かすような瞳を陰平に向けてくる。陰平は心を読まれないよう、愛想笑いを大きくした。
「全く問題ありません。ちょっと立ち眩みをして、転んだだけですよ」
「…………本当ですか?」
「ええ、本当に。一応検査しましたが、脳や内臓に何かあるわけでも、怪我をしたわけでもないですから……」
そこで陰平は言葉を詰まらせた。眉をひそめた霧子が、徐々に顔を近づけて、こちらの目を覗き込んでくる。陰平は慌てた。
「ま、まあ、最近ちょっと寝不足気味でしたから、そのせいかもしれません。でも、十分寝たので、むしろリフレッシュした気分……で……」
陰平の台詞は、やはり途中で止まった。霧子は陰平の言葉を聞くのではなく、瞳から直接、心を覗こうとしている。陰平の表情から愛想笑いが消えた。だが、相手のペースに飲まれてはならない。
「幽谷さんがお世話になっている病院に運ばれるとは、私も驚きました。あのお医者さんも、ひょっとしたら幽谷さんの知り合いでしょうか? 点滴してもらいましたが、本当に大した事は――――――……!?」
その時、陰平は軽く左腕を上げ、霧子に点滴の注射痕を見せたのだ。別にどうという事は無い。既に血は止まり、止血用のガーゼも外してある。陰平の毛深い腕に、ほんの少しうっ血した痕が見えるだけだ。しかし陰平が驚いたのは、彼の左腕に、霧子が何気ない調子で手のひらを添えたからだ。あまりに自然な動きだったので、避けようと思う暇も無かった。
霧子は傷跡には直接触らず、ただその痕を見やすくするために、羽が触れるような感じで手のひらを添えた。いつもの陰平ならば、アイドルとのボディタッチは大歓迎だったはずだ。しかし、彼は霧子の手が触れた瞬間、まるで熱い物に触ったように、反射的に手を引っ込めてしまった。
「う…………」
陰平は、自分がそうしてしまった意味が分からず、さらにうろたえた。対する霧子に驚いた様子は無い。彼女は相変わらず、真っ直ぐと陰平を見ている。既に、陰平には愛想笑いという外面を維持する事は出来なくなっている。だが彼は、それでも己の醜い内面を見透かされまいと、今度は牙をむき始めた。
「こんな夜中に、アイドルが一人で出歩くのは、少し不用心じゃないかな……?」
消灯時間も近い。勝手知ったる病院とは言え、どんな不届き者が居るかは分からない。さっきまで、霧子を警戒させまいと振舞っていた陰平だが、今度は全く逆の事を言い始めてしまった。その口調には苛立ちが見える。
陰平の言葉に対し、霧子はどう答えたのか。それは、全く予想外の言葉だった。
「わたしが、あなたのためにできる事は、ありますか……?」
「…………え?」
「わたしは、あなたの力に、なれませんか……?」
「…………な」
陰平は呆気にとられた。
霧子は何かの冗談を言っているのではない。彼女の言葉に裏などない。彼女はただ、その言葉そのままに、陰平のために、自分が何かしてやれることは無いかと聞いている。
一昨日のライブまでの間、霧子は霧子なりに、陰平という人間を観察してきたのだろう。
鬼気迫る獣のような表情で霧子たちをレッスンし、時に厳しい言葉を投げてくる陰平に、彼女は何を思ったのだろうか。新しい曲を用意するために走り回り、疲労困憊し、時には失望した様子で事務所に戻ってくる陰平を見て、彼女は何を考えたのだろうか。夜遅く、レッスンが終わって霧子が帰る時、デスクに向かって書類仕事をしている陰平の背中に、彼女は何を感じたのだろうか。
――笑顔だ、霧子。笑顔で行ってこい。
本番直前、舞台袖でガタガタと震える霧子に、柔らかい表情で笑いかけた陰平から、彼女は何を受け取ったのだろうか。
その答えは分からないが、霧子は今、陰平のベッドの傍らに座ってこう言った。
「わたしに、あなたのために、何かできることがあれば……」
霧子は太陽――というよりは、お日さまのような少女だと、恋鐘か誰かが言っていた。
「…………っ!!」
そのお日さまに照らされ、自分の醜さがハッキリと映し出されたように感じ、陰平はカッと頭に血を登らせた。
そこまで言うなら、自分のためにならせてやる。彼は霧子の腕を掴むと、後先を考えず、その細い身体を乱暴にベッドに引き込んだ。
―――――――――――――――
「きゃっ」
ベッドに押し倒された瞬間、霧子は叫んだが、それは小さな悲鳴だった。少なくとも、扉を越えて、廊下の先にあるナースセンターにまでは届きそうもない。
「――――――んぅっ!」
陰平の手が霧子の上着の下に侵入し、彼女の身体をごそごそと乱暴にまさぐる。霧子の肌はしっとりと手に馴染むようで、それでいて十代の若々しいハリが有る。陰平は激情にまかせ、この穢れの無い少女の肉体を思うさま嬲り、完全に自分の支配下に置くつもりだった。そうすれば、見透かすような瞳で見つめられる事も無くなる。
「……んっ、――――あぁっ!」
霧子は手で陰平の胸元を掴んで抵抗しているが、彼女の細腕が陰平の巨体を押し返せるはずも無い。――いや、そもそも彼女には本当に抵抗するつもりがあるのだろうか。人を傷つける事を厭う霧子に、陰平の手を噛んだり、引っ掻くような真似はできないとしても、大声で叫べばすぐに誰かが飛んでくる。
「ダメ……っ! ダメです……!」
なのに、その声すら、極力低く抑えられている。まだ彼らの身体の動きによって起きる衣擦れと、ベッドのスプリングの音のほうが大きいくらいだ。
陰平の手が、霧子の白い肌の上を這いまわる。少女がずっと他人に触れられたことのなかった部分が、中年男のごつい手のひらによって、あっという間に蹂躙されていく。そうやって手で霧子を穢しながら、陰平は霧子の首筋のあたりに顔を埋め、その芳しい体臭を堪能していた。
自分を慈しみ、受け入れるような事を言っていたが、霧子も所詮はただのメスだ。これまで陰平に嫌悪の目を向け、蔑んで来た女たちと同じ。そんなメスでも、身体の内側に快楽を叩き込んでやれば、じきに従順な奴隷になる。抵抗はするだろうが、いっそ抵抗してくれたほうが、支配のし甲斐がある。
「ダメ……です! 陰平さん……!」
しかし霧子は、言葉でそう伝えるだけで、本気の抵抗を見せて来ない。それが逆に、獣性に支配された中に、わずかに論理的に思考する能力を作り出していた。
「――んぅっ」
霧子は肩を震わせ、唇を噛んだ。陰平の手がスカートの下に侵入したのだ。太ももを撫で上げた男の手が、ショーツ越しの彼女の秘部に近づいていく。
「ハぁっ――――!」
ベッドの上で霧子の背がしなり、その目が大きく見開かれた。陰平の指の腹が、彼女の割れ目をなぞり、陰核をトントンと刺激している。――霧子の本音を暴き出すために、苦痛ではなく快楽で責めてやろう。そういう指の動きだった。
「あ……っ! やぁ…………!」
霧子に自慰の経験があったのかは不明だ。しかしあったとしてもどの道、おままごとのようなものだったに違いない。それくらいの性経験しか持たない少女が、乱暴に犯されているとは言え、既に何人もの清純なアイドルを、淫蕩なメスへと変えてきた中年のねちっこい責めに耐えられるはずがなかった。
「んッ………………!」
ビクンビクンと、霧子の全身が細かく震える。陰平は自分の手練手管を総動員して、生娘をあっという間に軽い絶頂へと導いた。
「はぁっ……、はぁっ……、はぁっ……」
着衣を乱した霧子が、ベッドの上で激しく喘いでいる。膝立ちになり、勝ち誇った表情でそれを見下ろす陰平に、胸を呼吸で上下させながら、霧子が何かを言った。
「……お水…………」
「……? ……水が欲しいのか?」
わずかに、霧子が首を横に振った。彼女は言葉を続ける。
「……これで、あなたの胸に、お水を届け、られますか……?」
「――!!」
霧子が何を言っているのか、陰平には分からなかった。だが、霧子の言葉は陰平の頭にさらに血を登らせた。
「ああっ……! んっ、あぅ――! や――、ん、んん――!!」
陰平は再び霧子に挑みかかると、彼女を執拗に愛撫し、手指の動きだけで何度も絶頂させた。ショーツの中に手を突っ込んで、ぷっくりと膨らんだマン筋をなぞり、クリトリスを虐める。そうすると、ショーツ内の湿度が加速度的に高まっていく。
さらに、下着越しに胸を触るだけでは飽き足らず、ブラを上にずらし、直接揉み始めた。男に揉まれ慣れていない胸に、ここが性感帯なのだと教え込むように、時に緩やかに、時に激しくマッサージしていく。霧子はそれに翻弄されて、全身を身悶えさせるしかなすすべが無い。
「ンっ――――! あ、あ、んぅ――――――っ!」
霧子がどんなに辛そうな表情をしても、陰平は手を止めない。やがて、陰平の右手が差し込まれている彼女の股間部分から、ちゅくちゅくという湿った水音が響き始める。陰平が戯れに右手を確認すると、人差し指と中指の間に、粘液が糸を引いていた。彼はそれを、霧子の顔の正面に近づける。
「見ろ、霧子」
何を言おうと、お前はただの浅ましいメスであるという思いが、その短い台詞には込められていた。霧子は頬を真っ赤に染めて、ふいと首を横に向ける。――勝てる。なぜかそう思った陰平は、口の端を邪悪にゆがめた。
それからも、陰平による責めは続いた。霧子の感じ方と、陰平の右手が鳴らす水音は段々と大きくなっていく。これをすることで、陰平が霧子を苦しめたいのか、それとも快楽を与えたいのか、はた目からは判然としない。とにかく陰平は、最大限に勃起した己の肉棒を放って、霧子を絶頂させることだけに腐心していた。
だが、そこに割り込んだ声がある。
「消灯時間ですよー、陰平さーん」
見回りに来たナースの声で、彼らの時間は中断した。
「もうお休みになられましたかー?」
そのナースは、陰平のベッドを覗き込みながらそう言った。だが、返事は無い。布団はこんもりと盛り上がっていて、顔は見えないが、中に人が居る事は分かる。もう寝てしまったのだろう。少しばかり盛り上がり方が大きいように見えるが、ここの患者は肥満体だから仕方ないかとナースは考えた。ついでに言えば、あんな不細工と余計なやり取りをしなくて済んで、ラッキーだったとも思った。
布団の中では、陰平と霧子が抱き合うような体勢で息を殺している。扉が開く瞬間、陰平がベッド端にずり落ちそうになっていた布団を掴むことができたのは僥倖だった。
「電気消しますねー。お休みなさーい」
業務的な口調でそう言うと、病室内の蛍光灯を消し、ナースは出て行った。
しかし、ナースが出て行ってからも、しばらく布団はピクリとも動かなかった。もう大丈夫だろうと、陰平が布団をはねのけたのは数分経ってからだ。
念のためと、陰平はベッドを降り、扉に寄って、誰か来ないか確認していた。さらに、扉が開けにくいように適当なものを隙間に噛ませる
「……陰平さん」
「……!」
霧子に名を呼ばれ、陰平はそちらを振り向いた。霧子はベッドの上で起き上がっている。今しがたの一幕は、霧子に息を整える暇を与えてしまったようだ。
では、それで彼女が逃げ出すかと言えば、そうするつもりも無いようである。
「満足、できましたか……? わたしは、あなたを癒せましたか……?」
それどころか、そんな事を尋ねてくる始末だ。怒りは既に失せている。もはやどんな表情をしてよいか分からなくなって、陰平は、無言でベッドの横に立った。
「……目…………」
「……?」
「目を、見せてください」
霧子はまた、陰平の目を見たがった。
自分の薄汚い本性は、既に見せた。ならばもう、どうでも良いか。ベッド脇に腰かけた陰平が、霧子に請われるままに、彼女に目を近づけたのは、そんな気持ちからだった。
「…………」
「…………」
陰平の顔を、霧子の両手がそっと挟み込む。
最初、陰平は霧子の顔を見ていた。少女のような可愛らしさと大人の女性の美しさが同居した、整った顔だ。自分とは、初めから持って生まれたものが違う。伊庭のような男でないと、やはり彼女たちの横に立つには釣り合わないのだろう。そんな事を思ってしまう。
「…………あなたの、心を、見せてください」
霧子の顔が、さらに近づく。見えるのは彼女の眼だけになった。清浄な深い湖のような、果てしない宇宙のような、どこまでも透き通った瞳。
陰平が本当に歪んでいるのは、顔立ちではなく、心なのかもしれない。そんな事を思わされる。
霧子の瞳を見ているうち、陰平はたまらなく哀しく、寂しくなった。目の前の少女が、たまらなく欲しい。その気持ちは変わらないのに、肉棒はしぼんでいく。
「…………もういい、霧子」
そう言いながら、陰平は自分の顔を挟む霧子の手を掴んだ。そして、理由不明の、しかし途轍もない敗北感によって、彼は自ら霧子から離れようとした。
だが――
「…………んっ」
霧子のほうが顔を寄せ、陰平の唇に、自分の唇を重ねた。霧子の柔らかい唇の感触が、陰平に伝わってくる。そして唇を離すと、霧子はそのまま陰平の頭を抱え込み、自分の胸に抱き寄せた。
「――よし、よし」
頭を撫でられて、とげとげしい心が消えていく。
「……霧子?」
「我慢、しないでください」
「……!」
「わたしの心の音……聞こえますか?」
とくとくという、霧子の心音が聞こえる。それは少しずつ早くなり、ドキドキという音に変化している。
恋鐘も以前、陰平に同じことをした。霧子がここでこれをした理由も、恋鐘と同じだったのだろうか。それは分からない。しかし、霧子によって愛想笑いを剥ぎ取られ、怒りに似た獣欲を失った陰平の中に残ったのは、恋鐘を初めて抱いた時にあった想いと同じだった。
「霧子……」
ただただ、目の前の少女と一つになりたい。相手を理解し、自分も理解してほしい。
「霧子……!」
その純粋な熱情が、陰平を突き動かした。
――――――――――――
「んっ―――――!」
「霧子、霧子、霧子……!」
「あっ、んっ……、やっ――――!」
「霧子――!」
霧子の服を剥ぎ取り、自分も患者着を脱ぎ捨てて、陰平はベッドに寝かせた少女の股間に顔を埋めている。くぐもった声で何度も何度も少女の名前を呼んで、舌で彼女の秘裂を愛撫している。病棟が消灯されてから、もう一時間以上もこの調子だ。
既に霧子の全身は汗に濡れており、艶やかな肢体がとんでもなく淫靡な空気を放っている。彼女はシーツをぎゅっと握り締め、時たまつま先をピンと伸ばしながら、自身の太ももの間に挟まれた男の舌が与えてくる刺激に耐えている。
陰平の舌による責めに、霧子は初めは激しく反応していたが、もはや身じろぎもままならなくなるほどイキ疲れ、彼女の身体はふやけてとろけきっていた。
しかしそれでも、陰平はクンニを止めようとしない。さっきの手による愛撫の時とは違う。今度はただひたすら、霧子を気持ち良くしたい、霧子と気持ちよくなりたいという一心で、彼はこれを行っている。だからなのか、霧子の身体は前にも増してぽかぽかと温まり、奥からはいくらでも蜜が湧き出てくる。陰平は、音を立ててその愛液を啜った。甘露とはまさにこの事である。喉だけでなく、もっと深い渇きが癒えていくようだ。
だが、本当の渇きは、こんな方法では満たされないのだ。オスとメスとして生まれた以上、彼らは互いに繋がるための器官を持っている。それを介して一つになり、互いの全てを与え合う事でしか、本当には満たされない。
「はぁ……、はぁ……、はぁ……」
陰平の責めが止まって、霧子は四肢を投げ出したように仰向けで喘いでいた。そんな姿すら、気が遠くなるほど美しく愛おしい。
片腕と片脚に巻かれた包帯と、額に貼られたガーゼ。霧子の抜けるように白い肌を覆い隠すのはそれだけだ。呼吸と共に上下する双丘の中央には、桜色の蕾がピンと張り詰めて立っている。陰平によってぐずぐずに蕩かされた秘裂の上部には、彼女の髪色よりもなお薄い、ほんのささやかな茂み。
「霧子、挿れていいか……?」
前戯は十二分に行った。しかしそれでも、陰平の規格外の逸物を受け入れるには覚悟が必要だろう。霧子の瞳一杯に、拳のような亀頭と、柱のような肉竿が映る。さすがに彼女も生理的な恐怖を感じたか、こくりと唾を飲み込んだ。
「……はい、陰平、さん…………」
しかし、霧子は受け入れた。荒い呼吸のまま、何もかもを許すような微笑みをその顔に浮かべると、彼女は恐々と股を拡げ、衝撃に耐えるために、シーツを強く握りしめた。
「……プロデューサーだ」
「……え?」
「プロデューサーって、呼んでくれないか」
恋鐘の時と同じく、陰平はそう要求した。その理由はやはり、彼女の口から、彼女のプロデューサーとして認められたいという思いが一つ。だが、もう一つ、彼自身も自覚しない理由があった。
「頼む、霧子」
きっと、「陰平」ではだめなのだ。「陰平」では、輝く彼女たちの隣には居られない。だが、プロデューサーとしてなら、陰平は堂々と立っていられる。アイドルたちのために、どんなことでも出来る。
陰平の要求を聞いて、霧子はまた、彼の瞳をじっと見た。そして、やはりすべてを受け入れる微笑みを浮かべると、陰平のほうに両手を伸ばしてきた。
「……どうぞ、プロデューサーさん」
「……!」
陰平は、自分の両手を霧子の両手に絡ませた。ほどけないように、指の間に指を挟みこんで、しっかりと。ペニスに手を添えずに挿入するのは難しいが、きゅっと彼の手を握り締める霧子の握力が、彼女もこの体勢のままでいる事を望んでいると、陰平に伝える。
「んっ――」
腰だけで照準を定めようとすると、パンパンに膨らんだ亀頭が、霧子のぴっちり閉じた割れ目を焦らすかのようになぞる。そこで霧子が浮かべる、甘さと処女消失の恐れが入り混じったような表情が、なおのこと愛おしい。結局、口で何を言おうとも、陰平は彼女たちの事が愛おしくてならないのだ。めぐるも、灯織も、真乃も、恋鐘も、はづきも、そして霧子も、皆平等に愛おしい。愛おしさに耐え切れないから、一つになりたくなる。
「んぅ――――」
陰平の亀頭が、霧子の割れ目にめり込み始める。凄まじい抵抗感だが、しつこく丁寧に蕩かせた甲斐あって、確実に前に進んでいく。
霧子の下腹部が波打ち、目尻に涙が浮かぶ。内側を少し進んだところで、亀頭に当たるものがあった。
「いくぞ、霧子」
「は、はい……」
確認し、互いに手を強く握りしめると、陰平の亀頭が、霧子の処女の証をゆっくりと裂き、押し広げていく。
「――――――っ!!」
一度しか味わえない痛み。穢れを知らなかった少女は、今まさに女になっていく。
「痛いか?」
かなり痛いようだが、陰平が尋ねても、霧子はふるふると首を横に振る。その健気さがなおさら愛おしくなり、性急に腰を進めたくなるのを堪えて、陰平はあくまでゆっくりと霧子の中を進んでいった。
「あ…………」
陰平の肉棒が最奥まで来た時、霧子は甘やかで切ない声を出した。
深夜の病室で、霧子は処女を喪失した。しかも、自分の倍ほどの年齢のプロデューサーに犯されて。それでも彼女は、自分を犯す男に対して、優しく微笑みかける。
「……プロデューサーさん」
「ああ」
「……プロデューサーさんで、いっぱいです」
「霧子……」
「……わたしは、プロデューサーさんの、お水になれてますか……?」
霧子の微笑みは、優しいだけでなく、満たされているように見えた。陰平という、救いようのないほどに歪んだ男の渇きを癒すために、彼女は健気にもその身を捧げたというのだろうか。その満足が、彼女をこんな笑顔にさせているのだろうか。幽谷霧子というアイドルだからこそ浮かべられる微笑み。他の人間には絶対に不可能だ。
偽ることを止めた陰平は、正直に言った。
「もっとだ」
「…………」
「まだ、足りない」
「…………はい」
動いても構わないと、霧子の微笑みがそう言った。
陰平が腰を引くと、ずるずると肉棒が抜けていく。その動きを追いかけて、霧子の膣内がぴっちりと追いかけてくる。霧子はぎゅっと唇を噛み締めて、その刺激に耐えていた。
「あぅ――――――!」
亀頭が抜けるギリギリまで腰を引くと、同じ速度で前に動かす。それを何度も繰り返した。一往復するのに一分くらいはかけている。だがそうしていると、霧子の膣は徐々に陰平に馴染んできた。霧子の膣内は、強く食い締めて肉棒に凄まじい刺激を与えてくるが、同時に何故か安心できる。ゆっくりとした抽挿でも、射精するには事足りる名器だ。
いつまでもこうしていたい。だがあまり長引かせるのは、霧子の体力的に良くないか。陰平はいつの間にか、自然に彼女の身体を気遣っていた。
「霧子、出すぞ――」
「は……い、プロデューサー、さん。――んぅ! 出して、ください。――わたしの、お腹の中に」
「――!」
「んんん――――っ!」
霧子自身の口から出た、膣内射精を誘うような言葉。それに釣られて、思わず陰平は腰の動きを速くしてしまった。慌てて元のゆっくりとした動きに戻すが、霧子は首を振る。
「だいじょうぶ、ですっ。もっと、速くても、強くても――」
霧子はどこまでも、陰平の事を受け入れる。そう言われては、陰平も我慢ができなかった。
「そう、ですっ。――んっ! がまん、しないでください――――あっ!」
「イクぞ霧子。お前の中でイクぞ!」
「はいっ、どうぞ、プロデューサーさ――んんっ!」
「うううううっ!」
「あ、はぁ――っ!」
最後に強く腰を打ちつけると同時に、陰平は己を解き放った。ずっと溜め込んで来た欲求が大量の白濁となって、霧子の奥に流れ込んでいく。この時に得られた充実感は、彼女たちのライブを見ている時と同等だ。叩きつけられるような衝撃に、霧子はひと際高く鳴いた。陰平と恋人繋ぎをしたまま背中を弓なりにし、つま先をピンと張り詰める。どくどく、どぷどぷと、射精の勢いはいつまでも弱まる気配がない。ようやく収まり始めたかと思えば、霧子の膣内がうねって、尿道に残る精液すらも搾り取ろうとする。二人はしばし、同じようにビクビクと体を震わせながら、肉の悦びに我を忘れていた。
「霧子……」
「プロデューサーさん……」
「お前もイケたか……?」
「……はい、たぶん。……プロデューサーさんのおちんちんさんが、ぴくぴくって、まだ、動いてます」
額に汗をにじませながら、はにかんだような表情で、霧子はそう言った。すると、彼女は自分の中で起こった陰平の肉棒の変化に気付いたようだ。
「――あ、おちんちんさん……また、元気に…………」
「まだ、もっと出していいか?」
「……はい」
陰平はしばらくぶりに霧子との恋人繋ぎを止めると、彼女の細い腰に手をやった。そして、さっきよりも小刻みに、リズミカルなピストンを行い始める。大量の精液が潤滑剤となって、もはや霧子は痛みをわずかしか感じていないようだ。
「――あ、んっ、やっ、んんっ♡」
霧子の喘ぎに含まれる糖度が上がる。そうすると、陰平の腰の動きもより速くなる。
「プロデューサー、さんっ、そこっ、コツコツ、しないでくださいっ」
「ここだな、霧子。分かった」
「――んぅっ! ちがいますっ、そこっ、ダメです……! 声――――んっ」
キスしながらハメると、霧子は陰平の舌に己の舌を絡め、脚を腰に巻き付けてきた。そのまま腰を振り、陰平は二発目を発射する。溜まっていただけあって、いつもよりも勢いが凄まじい。
「はぁ――、はぁ――、はぁ――」
だが、霧子はこの辺が限界のようだ。肉棒はまだバキバキに硬くなっているが、霧子という水のおかげで、どうしようもないほどの渇きは、何とか抑え込むことができた。
「霧子……ありがとう」
陰平が霧子の頬を撫でながら言ったその礼は、恐らく心底からのものだった。霧子はまたしても優しく微笑む。霧子は最後まで、我を忘れるほどには乱れなかった。彼女にとって、この行為はあくまでも、医者による治療の一環のようなものだったのかもしれない。陰平に不満があるとしたらそれだけだ。しかしここは病室なのだから、それは仕方無かったのだろうか。
「――ん?」
そろそろ今夜はお終いにして、霧子を寮に帰すべきだ。ようやく分別が戻って来た陰平は、霧子の脚と腕に巻かれた包帯に目を止めた。霧子が汗だくになったせいで、包帯もぐしょぐしょに濡れてしまっている。額のガーゼもテープの粘着力が弱まって、今にも取れそうだ。
霧子がこれらをしているのは、怪我をしているせいではなく、心を落ち着けるための、ただのお守りのようなものだと聞く。どの道こうなっては、新しいものに取り替えなければならないだろう。陰平は純粋なお節介のつもりで、それらを外してやろうという気になった。
「あ――」
しかし、陰平が太ももの包帯に手をかけた所で、霧子の様子が変わった。
「ダ、ダメ、です…………」
霧子が蚊の鳴くような声でそう言い、その肌が、顔を中心に見るからに赤くなっていく。
「ん?」
「ほう、たい、取らないで、ください……」
霧子は両手で顔を覆っている。指の隙間から陰平が手にかけた包帯を見る瞳は、肌と同じく羞恥の色に染まっていた。太ももの間に垂れる愛液も、何かのスイッチが入ったように、見るからにその量を増やしていく。
「…………」
「お願い、します……。プロデューサー、さん……」
その懇願は逆効果であった。既に陰平の肉棒には青筋が浮かんでいる。彼は無言で、霧子の包帯をするりと解いた。
「あ……」
霧子は絶望と快楽が入り混じったような声を出した。
全ての包帯を解かれ、陰平に再び貫かれた時、霧子は、本当にこれが彼女かと疑ってしまうほどに、淫靡に乱れた。