【シャニマス】中年プロデューサーの華麗なる暗躍 作:黒胡椒サラミ
伊庭が勢いよく頭を下げたとき、確かに社長室の空気が変わった。社長の天井は肘掛椅子から立ち上がり、陰平は何も言わなかったが、伊庭の頭を見下ろすその目が、殺気立って見えた。
――そう、表情こそ平静に見えたものの、陰平は殺気立っていた。天井が立ち上がったのは、まさに「殺意」と呼ぶべき感情を、陰平が伊庭に向けたのを感じ取ったからだ。
「……どういうことだ? 伊庭君」
しかし、陰平は自分を抑えた――ように見えた。一触即発の空気が残る中で、伊庭は言葉を続けた。
「陰平さん、俺にもう一度、『アンティーカ』をプロデュースさせてください!」
「総士……お前、それは」
天井がいつの間にか、いつでも伊庭と陰平のあいだに割り込めるような位置に立っている。大きな声で、半ば喚くように伊庭は言った。
「わかってます社長! 俺が……こんなことを陰平さんに頼める立場じゃないっていうのはわかってます! でも、お願いします!」
それは、社会人として許されるギリギリの範囲の大声だ。しかし、伊庭が単に血迷って言っているのではないことは、天井にも陰平にも伝わっていた。
「あの5人は……『アンティーカ』というユニットです」
少し声を落とした伊庭が、頭を下げたまま続ける。
「1人や2人よりも、5人のほうが、アイドルとして輝ける」
そうだ、それは伊庭の言う通りなのだ。センターになるはずだった恋鐘を始め、彼女たちは5人が5人とも強烈な個性を持っている。確かに1人ずつを見てもトップアイドルに相応しいかもしれない。だが、5人でいてこそ、その魅力は最大限に発揮される。そう思ったから、彼女たちをユニットにしたのではないか。
――伊庭も、陰平も、天井も、その考えは元々共有している。
しかし、それを理解しているのなら、なぜお前はあの時。陰平にそう詰られる前に、泣くような声で伊庭が言った。
「わかってます……俺がこんな事、陰平さんに言っちゃいけないんだ。恋鐘のデビューを失敗させて、陰平さんに彼女を押し付けたのは俺なんだから……!」
「…………」
「――総士、落ち着け」
何も言おうとしない陰平の代わりに、天井がしゃべり始めた。先ほど一瞬みせた殺気が嘘のように、陰平は冷静な表情をしていた。だが、それが余計に危険な兆候であるかのように、天井はさり気なく、横目で陰平の様子を窺っていた。
「……俺たちの仕事は、わかっているな?」
だから天井のこの言葉は、伊庭に向けてというよりも、陰平に向けて言ったのかもしれない。
「彼女たちを――アイドルたちを輝かせることだ。そのためには、俺たちのプライドやこだわりなんか、小さなことだ」
「……はい」
伊庭はうつむいたまま肯定し、やはり陰平は何も言わなかった。しかし、場の空気は幾分か和らいだ気がした。
「アンティーカは、お前の初めての担当ユニットだ。特に月岡は、お前が初めてオーディションを見たアイドルだ。だから、思い入れがあるのはわかる。思うようにプロデュースできなくて、後ろめたく思っている気持ちもわかる。だが、それで――お前の後ろめたさを解消するために、彼女たちを振り回す気か?」
「…………」
ついに伊庭が黙り、社長室で喋っているのは、天井だけになった。天井は言った。しょせん、俺たちはステージに出ない裏方だ。スポットライトを浴びるのは、俺たちじゃないんだと。
「なら俺たちは、何のために存在する? 彼女たちのためだ。アイドルを輝かせ――さらに強く輝かせるためだ。そうじゃないのか?」
アイドルという光の陰。それこそが自分たちなのだと。彼女たちが存在しなければ、自分たちはそもそも存在できないのだと。一つのアイドルプロダクションを率いる者としてか、それとも、かつては己もアイドルをプロデュースしていた者としてか、天井の言葉には真が籠っていた。
天井が熱弁を振るい、その言葉を切ったとき、社長室の空気は平穏に戻っていた。
しばらく間があって、再び天井が口を開いた。
「……総士、確認するぞ。つまりお前は、アンティーカの5人をプロデュースしたいんだな。いったん放棄した月岡のプロデュースを、もう一度自分にやらせろと言うんだな。……頭を上げろ。俺の目を見て答えろ」
「――はい」
身勝手と思い知りながら、伊庭はその願いを撤回しなかった。自分ではなく、陰平の目を見て頷いた伊庭に対し、天井は少し苦笑してから、自分も陰平のほうを向いた。
「忠治、とりあえず、このバカに何か言いたいことはあるか?」
「……俺は」
陰平が、久しぶりに口を開いた。
「伊庭君のプランを知りたい。伊庭君が、アンティーカをどうやってプロデュースしようとしているのか」
「それは――」
まだ納得したように見えない陰平に対して、伊庭がすぐに自分なりの答えを返す。伊庭も、全くの勢いでアンティーカのプロデュース権を返して欲しいと口にしたのではなかった。おそらくは、恋鐘を陰平に預けた時から、彼なりにプランを練っていたのだろう。それはとりあえず、天井と陰平が途中で口を挟まない程度には練られた計画だった。
伊庭が計画を話し終わると、天井は社長として命令するのではなく、陰平の意志を尋ねた。
「どうする、忠治」
「……数日、考えさせてください」
ボソッとつぶやくと、陰平は振り向き、社長室を出ていった。その背中を天井は黙って見送り、伊庭は床に額が付きそうな勢いで、頭を下げていた。
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「忠治、ちょっといいか」
その日の仕事を終え、陰平が寮に帰ろうとしたとき、珍しく天井が声をかけてきた。既にとっぷりと日が暮れ、事務所には陰平と天井しかいない。
「今日の総士の話だ」
夜の人気のない事務所は、昼とは全く違って見える。華やかな雰囲気をまとうアイドルたちではなく、既に若さを失った中年男が二人、ソファの傍に立って話し始めた。
「その前に、コーヒーでも飲むか? あ、お前はコーヒーはダメだったな。ココアならどうだ?」
「いえ、お構いなく……」
「そうか。…………なぁ忠治。実はな、今日の話……俺も総士と似たようなことを考えていたんだ。――おっと、怒るなよ」
「怒ってませんよ」
「嘘つけ」
天井は少し笑ってから、ソファの背もたれに腰掛けるような格好で話しはじめた。
「田中と三峰をウチに引き留めるため、アンティーカのプロデュースをあいつにやらせるっていう話……あいつが言い出さないなら、俺がお前に言おうと思っていた。本当は予想してたんだろ?」
「…………」
「――やっぱりな。それでも、腹が立つものは立つ、か。…………そうだよな。プロデューサーにとって、アイドルってのはそういうもんだよな」
天井は何かを思い出すような眼をして、噛み締めるようにつぶやいた。
「だが忠治、俺はな、ここの社長として……総士にも成長して欲しいんだ」
「……ええ、そうでしょうね」
「それだけに……アンティーカの失敗をトラウマにして引きずったまま、あいつが前に進めないのは、社長として困る。できれば克服して欲しい。あいつはいいものを持っているからな。経験を積めば、きっといいプロデューサーになれる」
「そう思いますよ。何しろ、社長が認めたんだ」
「そうさ。――お前と同じでな」
やはりどこか不機嫌に、ぶっきらぼうな調子で話していた陰平が、そこで初めて、照れたように天井から目を逸らした。
「泥臭さだよ、あいつに一番足りないのは」
「…………」
「アイドルのためなら、自分のプライドを捨てられるような覚悟さ。それが、あいつがお前に負けてる部分だな」
しかし、伊庭は今日、その泥臭さを身に付けたように思える。今日の伊庭が陰平の前でなりふり構わず頭を下げたのは、自分自身のプライドのためではなかったように見えた。――摩美々と三峰を辞めさせたくない。アンティーカの5人を、アンティーカとして輝かせたい。きっと、それだけのためだ。
それが伝わったから、陰平はあのとき、「考えさせてくれ」と口にしてしまったのだ。一度手に入れたアイドルは、何があっても手放さない。それが陰平の信条だったはずなのに。恋鐘と霧子をあの男の下に返すなど、想像するだけでも虫唾が走り、胸をかきむしりたくなる。それでも、そうすることでアンティーカの崩壊を防げるなら仕方ないのか――そう思ってしまった。
「忠治」
「……なんですか?」
「お前ほど、プロデューサー向きのやつはいないよ」
「……え?」
その時ふと、陰平はこのプロダクションに雇われたときのことを思い出した。「お前はきっとプロデューサーに向いている」。あのとき陰平にそう言ったのは、やはりここにいる天井だった。
「お前は、本当に頭のおかしいやつだからな」
「……社長もでしょう」
「ははは、そうだな。俺も十分頭がおかしい。だが、お前にはかなわない」
ステージの上での、彼女たちの輝きを見たい。そのためになら、何だってできる。どんなものでも犠牲にできる。文字通り、どんなものでも。それがプロデューサーという人種の業だ。
「さて……総士は、お前みたいになれるかな?」
「…………」
「頼む、忠治。俺に免じて、今回はあいつの思う通りにやらせてやってくれないか」
「…………」
「お前は明日は休暇だったな。休みがてら、考えてみてくれ」
そう言うと、天井は陰平の肩を叩きながら、彼の横を通り過ぎ、事務所を出ていった。
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寮に車を走らせるあいだ、陰平は一人で考えていた。
確かに天井の指摘した通り、今日の伊庭の申し出は、陰平の予想の範囲内にあった。伊庭から「預かっていた」恋鐘と霧子をあの男に返し、まずは田中摩美々と三峰結華の引き留めと、アンティーカの維持を優先するというシナリオである。
もちろん陰平のほうも、何の交換条件も無しにそれを受け入れるつもりはない。狙うのは、現在は伊庭との共同となっているアルストロメリアのプロデュースに関する全権と、放課後クライマックスガールズのアイドルを手に入れるための足掛かりだ。少なくとも、デビュー前のアルストロメリアのほうは、伊庭を丸め込める目算は高い。
恋鐘と霧子を伊庭のプロデュース下に戻すということについても、一応は想定内だ。恋鐘と霧子は、既に完全に陰平のものになった。一時的に手が離れても、彼女たちの心が再び伊庭に傾くことはないだろう。
よってこの状況は、むしろ陰平の思い描いていた通りなのだと言える。陰平の冷静な部分は、この状況を受け入れ、それを最大限に利用する方策を考えていた。だが――
(……俺のものだ。恋鐘と霧子は……俺のものだ……! あいつらはみんな、俺のものだ……!!)
陰平の感情は、冷静さとは相反するところにあった。
例え計画の上だろうと、せっかく手に入れた恋鐘と霧子を手放して、万一のことがあったらどうするのか。そうでなくとも、他の男にプロデュースされる彼女たちを見なければならないと思うと、心臓が直火で焙られる思いがする。頭を掻きむしり、叫びたくてしょうがない。どんなにアイドルの輝きが最優先だと分かっていても、こればかりはどうしようもない。
恋鐘と霧子に会いたい。会って彼女たちを犯し尽くしたい。内側も外側も自分のザーメンで白く染め上げマーキングし、自分のこと以外は何も考えられないようにしてやりたい。同時に彼女たちの足元に跪きすがりついて、どうか自分のものでいてくださいと懇願したい。もはや狂気のような据わった目をして、陰平はハンドルを操作していた。
そして、陰平が寮に帰り付いたとき、半ば妄執に取りつかれた悪鬼のようになった彼の前に、不運にも立ってしまったアイドルがいた。
「…………あっ」
それは、桑山千雪だった。
ネグリジェのような寝間着を身に着けた千雪は、こんな夜中に、寮監室の扉の前に立っていた。彼女は玄関から入ってきた陰平を見て、小さく声を発してから、完全に硬直してしまった。
「……か……陰平、さん」
だが、千雪がこの場に居合わせたことは、おそらく運命なのだ。陰平という男を知って発情した肢体を持て余し、最後の一線を踏み外すか否かの葛藤を続けていた千雪が、かつてなく凶暴な雰囲気をまとったこの男の前に立ってしまったのは、紛れもなく千雪の――陰平のモノになるべくして生まれてきた千雪の、逃れられない運命なのだ。
「…………」
「わ……わたし」
千雪の肩は恐怖に震えていた。だが、それでも、千雪の口は独りでに動いた。
「わ、わたしを…………――あ……」
無言の陰平の眼光に射すくめられ、千雪は悟った。昨日までなら、「私を抱いてください」と言葉で願うだけでよかった。でも、今日はそうでなくなった。後戻りする余地を完全に失うような形で千雪が懇願しないと、陰平は彼女を許してくれない。
(だめ……だめよ千雪……)
それを理解すると、千雪の身体は動いていた。千雪はスーツ姿の陰平の目前で膝を折りたたみ、廊下に正座して、身体の前に手を突いた。そしてゆっくりと、床につくまで頭を低く下げていく。
「お願い……します」
本気で土下座する機会が自分の人生に訪れるとは、この瞬間まで、千雪も思っていなかったはずだ。しかし、これだけはっきり上下関係を示さないと、千雪の「ご主人様」は納得してくれない。彼女はそう思ったのだ。
「お願いします、陰平さん」
一度そうしてしまえば、屈辱など、どこにもなかった。彼の前でこうすることが、自分の当たり前なのだと千雪には思えた。
「千雪を、抱いてください。わたしを、あなたの、ものにして……」
堕ちていく心地よさ。これまでの葛藤が消えてなくなり、鍵をかけてしまい込んでいた欲望が表に出ていく。ずっと千雪に囁きかけていたもう一人の自分が、今の自分に溶け合わさっていく。
「千雪」
「……はい」
「お前を俺のものにしてやる」
「ありがとうございます……」
千雪は彼の宣告を、本当に嬉しいと思えた。これでもう、悩まなくて済むからだ。
「車に乗れ」
「……え?」
だが、彼女はまだ、陰平というオスの恐ろしさを知らなかった。この男のものになるというのがどういうことか、本当には理解していなかった。彼女は寝間着のまま、腕を引っ張られるように事務所の車に乗せられた。
こんな場所で抱いたのでは、千雪が堕ちる声は、寮全体に響いてしまう。ゆえに、どこか静かな場所に行かなければならない。陰平はそう考えたのだ。
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都内から高速道路を走り隣県に出て、さらに下道をしばらく行ったところに、貸しコテージの村がある。そこは陰平が、何度か恋鐘と霧子を連れてきた場所だ。徹底的にそのメスのカラダを貪りたいと思うとき、ラブホテルなどでは不十分なことがある。そういう場合、陰平はこのコテージを利用した。
今回もそうだ。千雪というメスを完全に自分のものにするために、陰平は千雪を周囲から隔絶した状況に置いて、徹底的にハメつくし、骨までしゃぶりつくそうと思った。
千雪はそのとき身に着けていた寝間着以外には、化粧道具すら持つことを許されず、陰平にそのコテージまで連れ去られた。そこで何が行われるのか、陰平のものになると自ら宣言した千雪は、ある程度は想像していたに違いない。だがしょせん、女になりたての少女だった千雪の想像は、甘すぎたと言わざるを得ない。
(あーっ♡♡ あ゛っ♡あ゛っ♡あ゛っ♡ あああーっ♡♡ んお゛♡お゛♡お゛♡お゛♡お゛♡ お゛~~っ♡♡♡ ん゛いぃぃいっ♡♡♡)
陰平が千雪を連れ込んだコテージからは、彼らが到着した数分後から、ずっと悲鳴が聞こえていた。
(やめっ♡やめてっ♡やめてっ♡やめてっ♡ もうやめてっ♡ もうイクのムリですっ! おねがっ、許してっ! だめっ! あっ♡ああっ♡ あああああっ♡ んぅううううっ♡♡♡ お゛~~~っ♡♡♡ んひっ♡ あ゛あああ♡♡♡♡)
コテージの周りが林でなければ、その悲鳴は三軒隣にまで聞こえていたに違いない。それほど凄まじいものだった。
「知らないっ! こんなの知らないっ! 何これっ♡ 気持ちイイの終わらないっ♡ 終わらないのぉっ♡♡♡ もうや゛めでぇっ!!」
コテージの玄関の扉を開けると、悲鳴はより明瞭になる。まるで恐ろしい殺人鬼に殺されそうになっている被害者の断末魔――それは当たらずとも遠からずだ。なぜならば、まさにいま、桑山千雪という一人の女性が、まともな人間としての生命を奪われ、一匹のメスに生まれ変わろうとしているのだから。
音の発生源は寝室だ。どうやらそこで、オスとメスは扉も閉めずにまぐわっているらしい。寝室に向かって廊下を進むと、千雪のメス声に加わり、バチュバチュと湿った肉を打ち合わせる激しい音が聞こえてくる。
「んい゛ーっ♡ んぉおおおおおおっ♡」
その喘ぎ声からは、清楚さや慎ましさなどは微塵も感じられない。山の獣のほうが、まだお上品にセックスすると思われる乱れ方だ。
少し開いた寝室のドアの隙間から、中の様子を窺おうとすると、そこから急に女の腕が飛び出てきた。
「――ひぃっ♡ はぁっ♡はぁっ♡はぁっ♡はぁっ♡ た、たすけてっ!」
腕に続いて匍匐するように出てきたのは、千雪の頭と上半身だ。編み込んでいた髪は既にほどけ、肌を汗でじっとり湿らせ、目の周りと頬には幾筋もの涙のあとが残っている。
「おかーさん……おとーさん……たすけてぇ……! やっ――」
アイドルという狭い業界の中では年長でも、23歳という年齢は、「大人」というにはあまりにも未熟だ。千雪の中には、まだまだ「少女」の部分が多く残っている。その少女が切実な声で両親に助けを求めたのもつかの間、彼女は部屋の中にいるオスに身体のどこかを掴まれ、ズルリと室内に引っ張り込まれた。床を掴んで抵抗しようとした手はむなしく空を切り、千雪が寝室に戻されたあと、扉の隙間は無慈悲にバタンと閉じられた。
そして再び、少女の悲鳴が始まる。
「ああっ♡ ああっ♡ ああっ♡ ああっ♡ やだっ♡ やだやだやだっ! 壊れるっ! これ以上気持ち良くされたら、わたしが壊れちゃうのぉっ! おチンチンやだぁっ!! ――――えっ? こわすって……ほんとうに? わたしを……こわしちゃうの……? ぁっ――♡♡♡」
千雪は山口に住む両親の手を離れ、東京に出てきて雑貨屋に就職した。人混みの中で目を回しそうになったり、故郷と家族が恋しくて寂しくなる夜もあった。仕事のことや人間関係で悩むこともあった。それでも、桑山千雪という少女は、弱音を吐かずに生きてきたのだ。
唐突にアイドルにスカウトされたときも、新しいことにチャレンジするのだと自分を励まし、優しい笑顔を絶やさずに頑張ってきた。
その中で無意識に作られてきた千雪の鎧が、奥深くまで突き刺さる男の肉棒の一突き一突きによって破壊され、彼女は本当の丸裸にされていく。
「やだっ♡ やだっ♡ やだぁっ! 見ないでっ! ――嘘っ! 綺麗なんて――ンっ♡ ……ちゅ♡ ちゅぱ……♡ はぁ……♡ うそ……わたしがきれいなんて、うそ……♡ ちゅ……♡」
荒々しかった室内の物音が、打って変わって穏やかになった。寝室では、ベッドの上ですらない部屋の隅で陰平に抱きしめられた千雪が、鎧を剥がされむき出しになった心に、陰平の「男」を刻みこまれていた。
「……ふぁ♡ ん……♡ ちゅる……♡ じゅるる……っ♡ ……はい。キス、気持ちいいです……♡ とっても安心します……♡」
壊したあとには再構築が始まる。千雪は、陰平の手によって、自分が新しく作り替えられていくのを感じていた。「これまでの桑山千雪」と、これからデビューする「アイドルの桑山千雪」が、両方とも陰平のものになって混ざり合い、彼好みに一からプロデュースされていくのだ。
「はい……♡ そのままで大丈夫です……♡ コンドームなんか要りません……♡ あっ♡ あああ……っ♡ お腹のなかに……出されて……るぅ……♡♡ イっちゃう……っ!」
千雪は部屋の隅で陰平に種付けされた。安全日だから恐らく妊娠はしない。それでも、彼女はあっさり陰平に子宮を明け渡した。
「す……ごい……♡ あ……っ♡ またイク……♡ もっと大きいのが……っ♡ うあ、ん~~~~っ♡♡♡♡」
初めてのとき以来のナマ射精。今の千雪には、自分がこれを望んでいたのだとはっきりわかる。自分は、逞しくて頼りになって、それ以上に自分を強く求めてくれる男性の腕の中で、何もかもその人にゆだねて、その人のものにされたかったのだ。
「陰平さん……♡ ……ちゅ♡」
子宮の中を陰平の遺伝子で満たされながら、千雪は自分から陰平の唇に吸い付き、彼の大きな体に全身で抱き着いた。今まで経験したことも無いほどの圧倒的な幸福感が、彼女の心を満たしていく。
(そっか……そうだったんだ……)
千雪はそのとき理解した。恋鐘も、霧子も、真乃も、灯織も、めぐるも、そしておそらくは甜花も、陰平にプロデュースされて、彼のことを慕っているアイドルたちは、みんなこうやって陰平のものにされたのだと。彼女たちはアイドルとして以上に、メスとして陰平というオスに恋焦がれていたのだと。
そして、千雪もいま、彼のメスになるのだと。冴えない顔をした中年男の陰平のことが、大好きでたまらなくなるのだと。
(ああ……私いま……陰平さんに堕とされてるのね……)
自分が彼にとって大勢のメスの一人に過ぎないと悟っても、千雪の表情は恍惚として、淫らな輝きに満ちていた。それはそうだ。いまの千雪はただの動物であり、強いオスが複数のメスを従えて群れを作ることに、何の違和感も抱けないのだから。
それよりも、陰平に抱かれて彼の精を受け入れたことで、ずっと彼女を苛んでいた寂しさが収まったことのほうが重要だ。切なさと身体の疼きは残っているが、この切なさと疼きは、それまでのものよりずっと甘い。とても甘くて、いつまでも浸っていたくなるほどだ。
「陰平さん……♡」
千雪は両手で愛しい人の顔を撫でながら、その名を呼んだ。
陰平に抱かれ、快楽に流されるまま、彼女はどこまでも堕ちて、堕ちて、堕ちていった。
感想ありがとうございます。ちょっと返信をサボり気味でしたが、心を改めます。
皆さんあっての作者ですものね。
次は恋鐘と霧子のえっちシーンの予定です。