【シャニマス】中年プロデューサーの華麗なる暗躍 作:黒胡椒サラミ
「陰平さん、なしてこがん乱暴な事――」
恋鐘が陰平に抗議しても、陰平は無言で、ただひたすらに運転を続けている。
二人を乗せた車は、既に高速に乗っていた。凄まじいスピードで追い越し車線をひた走る。
誘拐されるかのように後部座席に乗せられた恋鐘は、シート越しに鬼気迫る表情の陰平の横顔を見、それからたまに、後部座席に積まれた荷物を見る。二つの大きなボストンバッグ。まるで、旅行の支度のようだ。
「どこに、行くつもりやと……?」
「…………」
何度聞いても、陰平は全く答えない。恋鐘の中に不安な気持ちが募るが、疾走する車から飛び降りる事はできないし、陰平が恋鐘のためにならないような事をするはずが無いから、やがて大人しく座席に座った。
そして283プロのバンは、ビュンビュンと他の車を追い抜いていく。
陰平は、ライブ後の事務所における、恋鐘と伊庭のやり取りを一言一句正確に聞いていた。寮にすら盗聴器が仕掛けてあるのだから、あの会議室に仕掛けていないはずがない。話のなり行き次第では、いつでも会議室に踏み込める用意を整えながらも、敢えて二人を二人きりにしてやって、どんな話をするのかを観察していた。
このライブを区切りにして、恋鐘が伊庭に告白するつもりだという事は、なんとなく察しがついていた。もしも伊庭が恋鐘の告白を受け入れて、恋鐘をその腕で抱きしめるような事があるなら、それはそれで恋鐘のため、仕方無いのかもしれないとも薄々考えていた。これは、一種の賭けのようなものだ。
結果はあの通りである。
やはりあのフニャチンのイケメンには、恋鐘を任せておくことはできない。あんな男のために恋鐘の輝きが空費されていくことを、これ以上見過ごすわけにはいかない。それは世界の損失であり、それ以前に恋鐘のためにならない。思い通り賭けに勝利したというのに、内側から込み上げてくる怒りが、陰平を鬼の形相にさせていた。
一度自分がプロデュースし始めたアイドルは、何があっても手離すな。どこに行くのか、何をするつもりなのかと恋鐘は聞くが、その意味を、陰平はこれから恋鐘に身をもって教えてやるつもりだった。高層ビル群が遠ざかっていく。隣県に入ったことを示す道路標識が、暗闇の中を後方に通り過ぎていく。
インターチェンジを下りて、下道に入った。一度車が止まったのは、スーパーマーケットの駐車場だ。
「待ってろ」
それだけ言って、陰平は店内に入っていった。車に戻ってきた時には、大量の食糧品を抱えている。それを用意しておいたクーラーボックスに詰め込んで、再び車を発進させる。彼が待っていろと指示した恋鐘は、逃げるでもなく、彼がそうするのをただ見ていた。
再び車は前に進む。坂道が多くなり、道路わきには森が見えた。夜はさらに深まり、辺りは静かになっていく。今日、大都会の舞台で、スポットライトよりもなお強く輝いたアイドルの少女が、こんな場所で男とドライブしているとは、誰も想像しないに違いない。
電灯の明かりもまばらな中で、恋鐘は今自分たちが居る場所がどこかの避暑地である事を、立て看板を見て辛うじて読み取った。陰平が運転する車が速度を緩めた。そのまま道路を逸れ、どこかの家の前庭に入る。タイヤが砂利を踏む、ゴトゴトという振動。
そして、彼らは目的地に到着した。
「陰平さん……」
陰平は恋鐘の声に耳を貸さず、運転席を降り、後部座席の扉を開いた。そのままそこに積んだボストンバッグを抱えると、じゃりじゃりと足音を鳴らし、その家の玄関まで歩いていく。人の動きに反応した自動灯が玄関周辺を照らし、ようやく恋鐘は、そこがコテージのようなものなのだと気が付いた。
ここはある山中の別荘地で、これはそこの貸しコテージの一つだ。コテージ同士が離れている上、シーズンオフなので利用者はほぼ居ない。予約はガラガラで、陰平が急遽これを借りるのも簡単だった。
そう、正真正銘、ここには陰平と恋鐘しか居ない。陸の中の孤島のようなものだ。
「降りろ」
バンに積んだ荷物をコテージの玄関前に置くと、陰平はぶっきらぼうな声で、最後の荷物――恋鐘にそう言った。
恋鐘は諾々とその指示に従う。砂利の上に立った彼女は、秋らしいえんじ色のブラウスと、ロングのプリーツスカートを履いている。
「陰平さん、ここで……何ばするつもりと? ――あ!」
陰平は恋鐘の右手首を掴み、強引に彼女をコテージの中に引っ張っていく。バランスを崩しながらも、恋鐘はそれに付いて行った。
「イヤ……! 痛いばい! 陰平さん、放して――!」
「…………」
「なして――何か言うて!」
「…………」
「陰平さん!」
二人とも土足のまま、陰平は恋鐘をコテージの中に連れ込んだ。中はほぼ真っ暗闇だ。最低限の明かりだけ付けて、陰平は目的の場所――このコテージの寝室を探す。それはすぐに見つかった。
「きゃ――!」
無理やり連れてきた恋鐘を、ダブルサイズのベッドの上に投げ出した。恋鐘の身体がぼふりと布団に埋まり、スプリングが軋む。彼女はすぐに手をついて半身を起こすと、陰平をきっと睨みつけた。
「陰平さん、なして、こがん酷かこと――」
「――恋鐘」
睨み顔すら、どこか愛らしい。そんな恋鐘を見下ろす陰平は、やはり怒りに満ちた表情をしていた。そんな彼に、初めて面と向かって下の名前を呼ばれて、恋鐘の胸はなぜか跳ねる。
「な、なあに……?」
「伊庭は、お前のプロデューサーとして相応しくない」
「…………え?」
陰平はネクタイをワイシャツから引き抜くと、胸元のボタンを引きちぎるような勢いで外した。
「あいつじゃ、お前をアイドルとして輝かせる事はできない」
「そがん……そがんこと…………」
「あいつにできるのは、お前を曇らせる事だけだ」
「……ちが…………」
「違わない」
陰平は断定した。
そして彼は、恋鐘が横たわるベッドに、一歩近寄る。
「お前のプロデューサーに相応しいのは、俺だ。俺が、お前を輝かせる」
「――――!!」
ベッドの上の恋鐘を、真実だけを語っている瞳で陰平が見下ろしている。今日の本番が始まる前にも、彼はその瞳をして、「思いっきり行ってこい」と恋鐘を励ました。
「うち……」
「……」
「ばってん、うちは、プロデューサーん事が……」
「……」
「プロデューサーの事が……」
「……伊庭の事が? …………続けろ」
「……っ」
恋鐘は息を飲んだ。
恋鐘が伊庭の事を口にした瞬間、陰平の表情が、さらに憤怒に満ち溢れたものになったからだ。
陰平は恋鐘を伊庭から引き離し、自分の手元に置いて、ずっとプロデュースしたいと言っている。そのために彼は、こんな無茶苦茶な手段を取った。その陰平を怒らせないためには、伊庭の事は決して口にしてはならない。恋鐘にも、それはよく理解できたはずだ。
「うちは……、うちは……」
理解して、それでもなお、彼女は口にした。それは果たして本当に、伊庭への筋を通すためだったのだろうか。それとも、それを口にした時、陰平がどんな風に怒るのかを見てみたかったからだろうか。
「ばってん、うちはそれでも、プロデューサーん事を……」
――好いとーから。
その言葉が終わる前に、陰平の身体が、恋鐘の上にのしかかってきた。
――――――――――――――
「イヤばいっ! イヤぁっ!」
「恋鐘! 俺が、お前のプロデューサーだ……!」
「やめて! こがんこと――!」
「お前をプロデュースしていいのは、俺だけだ!」
スプリングが激しい軋みを上げる。彼女を押し倒した陰平の身体の下で、恋鐘が必死に抵抗しているのだ。しかし、男である陰平の膂力の前に、恋鐘という少女の抵抗は大した意味をなさない。陰平は恋鐘の腰に跨り、彼女の両手首を掴んで、ベッドの上に縫い付けている。
「お前は俺のものだ! 俺だけのものだ! それを今から教えてやる!」
「やぁっ!! 助けて、プロデューサー!!」
「お前のプロデューサーは、俺だ!!」
陰平は恋鐘の両腕をまとめると、左手だけでそれを押さえ、彼女のボウタイブラウスに手をかける。次の瞬間、ブラウスの生地は無惨にも引き裂かれてしまった。恋鐘が悲鳴を上げても、このコテージの周囲には、人っ子一人居はしない。
93㎝という恋鐘のバストと、それを覆い隠す薄紫のブラが露わになった。まるで、目の前一杯に飛び込んでくるような迫力。これの正統な所有者も自分であり、あのフニャチンではない。獣のような荒々しい精神で、陰平は恋鐘の谷間に顔を埋め、むしゃぶりつき、舐めしゃぶった。
「――んぅっ……!」
目を固くつぶった恋鐘が、顔を反らす。
(これだ……! この感触、素晴らしいぞ……!)
ずっとさ迷い歩いた挙句、生まれ故郷に帰ってきたかのような、圧倒的な抱擁感。
「恋鐘……!!」
陰平は恋鐘の胸の谷間から、鎖骨、首筋へと舌を這わせ、そのきめ細やかな肌を文字通り味わう。恋鐘の身体をどこまでも、どこまでもそうやって味わい尽くしたい。そのために邪魔なものは全て取り払おうと、陰平の手が、彼女のブラを剥ぎ取った。
押さえつけるものがなくなって、恋鐘の胸は一段と大きく膨らんだように見えた。手を触れなくても分かる。柔らかさと弾力を併せ持った、奇跡のような物体。白い膨らみの先端にある美しい桜色がハイライトとなって、まさに芸術品だ。永遠に眺めていても飽きないだろう。
「~~~~~っ!!」
恋鐘は声も無く身をすくませた。
陰平がどう思おうと、彼女にしてみれば、この大きすぎる胸は、いつも周囲の好奇の視線を引き寄せてきた厄介者だ。その全てが今、生まれて初めて男の目に晒されてしまった。しかも、こんな形で。手で覆い隠そうにも、陰平に押さえられていてそれはできない。
陰平も結局、他の大勢の男と同じだった。彼も恋鐘の胸にしか興味が無かったのだ。そう思うと、つぶった目の端から涙がこぼれていく。
すると、それを見た陰平が彼女に問うた。
「……恋鐘、お前は俺が、お前の胸にしか興味が無いと思ってるんだろう」
「っ――そうばい! 調子んよかことばっか言うて、あんたなんか、やっぱりうちんおっぱい――身体にしか興味がなかったんね! うち、うち、あんたん事ば――」
そこで恋鐘は言いよどみ、しゃくり上げてから、悔しそうに陰平を睨む。
「うち、あんたん事ば、優しか人やと思うとったのに……」
「…………」
「うちはあんたが、プロデューサーみたいに、うちん事を考えて、大切に思うてくれとーと……」
「……恋鐘」
「……!」
恋鐘と陰平の目が合った。陰平の顔は怒りに燃えているが、それは、恋鐘に対しての怒りではない。恋鐘を見る目はむしろ優しく、穏やかだった。今まさに彼女を組み敷いて、乱暴に蹂躙しようとしているというのに、どうしてそんな目ができるのか。
「俺はお前の、大きな胸が好きだ。この胸は芸術品だ。もっと見たいし、触りたい」
「っ……!」
普通の女子ならば鳥肌が立ちそうな告白。だがこの時の恋鐘は、羞恥に顔を赤らめただけだった。
「……そうだ、俺はお前の胸が好きだ。男でこれを好きにならない奴は居ない。お前のファンだって、皆お前の胸が好きだ」
だが、と陰平は続ける。
「それの何が悪い。この胸も、月岡恋鐘の一部だ。恋鐘の魅力の一部なんだ」
明るい笑顔も、ふとした時に見せるクールな表情も、決してめげない、でも本当は打たれ弱い心も、愛らしい長崎弁も、少しドジな所も、彼女を構成する全てが月岡恋鐘の魅力だ。それと同じように、この胸だって、月岡恋鐘の一部なのだ。いつまでもそれを隠したり、否定していたって仕方がない。
全て、全てが魅力なのだ。恋鐘の持っているものは、全て。
「お前の胸は最高に魅力的だ。他の部分と同じように。月岡恋鐘に、魅力的じゃない部分なんか無い……!」
不細工な中年による最高に気持ちの悪い告白だが、陰平は本気だった。アイドルの月岡恋鐘も、アイドルではない月岡恋鐘も、愛しくて愛しくてたまらない。伊庭などに、他の男にも渡してたまるものか。言葉の一言一句に込められた熱が、恋鐘に彼の本気を伝える。手段は歪んでいるが、この男はある意味で愛情の塊だと言えるのかもしれない。そんな彼の瞳から、恋鐘は目を逸らすことができていない。
「だから俺は、ここで、お前を俺のものにする……!」
しかし同時に、言葉では恋鐘は決して納得しないという事も、陰平には分かっていた。イケメンの伊庭が言うならともかく、陰平がこんな告白をしても、恋鐘に気味悪がられ、怯えられるだけだという事も分かっている。
だから陰平は、こんな場所まで恋鐘を攫ってきたのだ。言葉で言って分からないなら、身体で徹底的に分からせてやればいい。強制的に嬲り尽くし、支配して、無理やり自分のものにしてやればいい。
陰平は、己のワイシャツを身体からむしり取る。彼のたるんだ毛深い肉体は、どこを見ても滑らかな、奇跡のような恋鐘の肢体と対照的だ。こんな汚ならしい中年男が、はち切れんばかりの若さと美しさに溢れる恋鐘の肌に触れる。それは、彼が恋鐘と合意無く無理やり事に及ぼうとしている犯罪性を取り除いても、酷く冒涜的であった。
陰平のごつごつした手によって、恋鐘がまとう衣服が剥ぎ取られていく。まずは足からショートブーツを抜き取り、ソックスを脱がす。そこから立ち上る少し蒸れた空気すら、彼女の足の小指すら愛おしくてたまらなくなり、陰平は抱えあげた恋鐘の脚にも舌を這わせた。
恋鐘の脚を味わう事に満足した陰平は、次に彼女のプリーツスカートに手をかけた。恋鐘はいやいやと言いながら、激しく身をよじっている。しかし、そうしようと思えば、自身の脚を舐める陰平の顔を蹴り飛ばす事もできたのに、彼女はそうしなかった。恋鐘の服を脱がすことに集中するため、陰平が恋鐘の手の拘束を解いたにも関わらず、殴りつけても来ない。恋鐘の両手は、シーツをぎゅっと固く掴んでいるだけだ。
ロングのプリーツスカートの下には、ブラとおそろいの、薄紫のショーツがあった。いつもの陰平なら、助平心を出してそのショーツをマジマジと眺めるかもしれないが、今夜の彼は、その布も自分と恋鐘を隔てるための障害物の様にしか感じられず、さっさとそれを恋鐘の脚から引き抜いてしまった。
本気で相手を貪ろうとしている時、己と相手の肉体以外に、必要なものなど何も無いのだ。いや、あるいは肉体すらも不要であって、魂だけ残っていれば良いのかもしれない。今の陰平は、恋鐘の中に永遠に溶けて混ざりたいとすら思っていた。
だがそれは出来ないから、せめて身体で混じり合いたい。
恋鐘の服を脱がし終えると、陰平は彼女の裸体を、頭の頂点からつま先まで食い入るように眺めた。
どの部分も、やはりたまらなく魅力的だ。まさに完璧な偶像。古今東西の女神像でも、これほど美しいものは存在しないだろう。
どうしても触れてみたくなって、陰平はその右手を、恋鐘の腰の丸みに添えた。
「――――っ!」
既に恋鐘は拒絶の声を発するのを止めていた。身体をこわばらせた彼女は、強く目をつぶり、ぎゅっと唇を噛んで、男のされるがままになっている。
陰平の手が、恋鐘の皮膚を這いまわる。太ももを愛で、腰を掴み、腹のラインを確かめ、たわわな乳房を撫で擦る。男の太い指が動き、柔らかい乳房の形を変えた時、恋鐘の口からほんの少しだけ甘い音が聞こえた。
「ぁ…………っ」
咄嗟に恋鐘は、自身の口を両手で塞ぎ、漏れかかった艶声を無理やりに飲み込む。
その愛らしい堪え顔を見ながら、陰平は羽で触れるようなわずかな力で、緩やかに円を描くように、恋鐘の胸をマッサージしていく。
「……っ! …………ゃぁっ!」
細い指の隙間から漏れるのは、何ともいじらしい喘ぎだ。陰平は、恋鐘の体内にある性感の芽を育てるように、ゆっくりと彼女の胸の凝りをほぐしていく。恋鐘の肌全体が、ほんのりと赤みを帯びはじめた。
(うちの胸っ、どうしてこがんに……!)
長年のコンプレックスである胸を揉まれて、とても嫌なことをされているはずなのに、この内側に感じる暖かさは何なのだろう。まるで陰平の指が触れる部分から、じんわりと熱が広がっていくようだ。不感症を装おうとしても、身体が勝手に反応し、身をよじってしまう。
(イヤっ! イヤばい! 無理やりこがんな事されて、感じとうなかぁ……!)
しかし、もはや手で口を押えていなければ、ハッキリと感じていると分かる甘い声が出てしまっていたに違いない。それくらい陰平の指の動きは優しく、執拗で、確かな愛情をもって恋鐘を求めているという事が分かるのだ。
さっきの告白だってそうだ。あの言葉には、何の嘘もためらいもなかった。身勝手で理不尽で不器用でも、形を持って叩きつけてくるような愛情がそこにはあった。これほどまでに恋鐘を求めてくれた男が、彼女の人生の中で、他に居ただろうか。
(んぅっ……! 陰平さんの指、うちの乳首っ、触っとー……!)
両親指で乳房の先端を軽く弾かれると、それに合わせて恋鐘の腹が波打ち、腰が引ける。胸全体を揉まれるのとは違う、ポイントに集中したハッキリとした刺激。指で弾かれる度、恋鐘の乳首は彼女の意思に反し、ぷっくりと膨らんでいく。そうやって勃ち上がった乳首を触れられると、さらに明瞭な刺激が伝わってくる。
恋鐘は、自分の胸がこんなにいやらしく形を変え、腰が浮き上がるほどの快感をもたらすものだとは知らなかった。そうやって陰平の手は、恋鐘が今まで知らなかった、彼女自身の身体の秘密を、次々と暴き出していく。
首筋をくすぐられると、恋鐘の口からは甲高い嬌声が出かかる。脚の付け根あたりを撫でられると、どうしようもなく安心してしまう。腰を掴まれると、身体から力が抜ける。耳を揉まれたら、頭の中にビリビリと電流が走るのだ。そんな事は全部、恋鐘は今まで知らなかった。
たぶん既に陰平のほうが、恋鐘の肢体の事をよく知っている。
陰平による愛撫は、手指から舌によるものに変わった。太ももや胸をはじめ、鎖骨、手の指、ひじや腋、膝裏からヘソに至るまで、彼は恋鐘の全てを味わい尽くそうとする。恋鐘もまるで、彼に本当に捕食されているような感覚に陥っていた。
「ンっ――!」
その時、恋鐘は股のあたりに異物感を感じた。
陰平が、恋鐘の全身を舐め回しながら、その指を彼女の秘裂に添えたのだ。ぐちゅりと湿った音がするのが、恋鐘にも分かった。
恋鐘の割れ目からは、既に相当量の蜜が漏れ滴っている。それだけ興奮しているのかもしれないが、それ以前に、恋鐘は濡れやすい体質のようだ。この分なら十分耐えられるだろうと思い、陰平はいったん恋鐘から離れた。もう限界である。早くこの女と一つにならなければ、気が狂ってしまいそうだ。
息を荒くして胸を上下させる恋鐘の前で、陰平は、下半身を覆っていたズボンと下着を脱ぎ去った。
陰平の肉棒は、既に青筋を立てて反り返っていた。ここのところ射精を控えてきたことも有って、亀頭はパンパンに膨れ上がり、触れればすぐに出てしまいそうなほど、裏スジと睾丸に精液が溜まりまくっている。
彼は再びベッドに横たわる恋鐘のもとに戻り、彼女の両膝を掴んで、脚を開かせた。そして、まだ手で口を押えて目をつぶっている恋鐘に、むしろ穏やかな声で呼びかけた。
「恋鐘、見ろ」
恐る恐る、恋鐘が目を開く。彼女の綺麗な瞳に、屹立した男のモノが映る。なんだかんだ言って、恋鐘は19才だ。想像よりもずっと大きく、太かったが、それが何なのかは理解できた。陰平が本気なのだという事も、よく分かる。
「俺はお前のプロデューサーだ。お前は俺のアイドルだ」
アイドルはプロデューサーのものだ。
それと同時に、プロデューサーはアイドルのものだ。
どちらか一方だけでは輝けないし、そもそも存在できない。
だから一つになるのだと、陰平の目が言っている。
恋鐘の鼠径部に生えた密やかな茂みに、陰平の剛直が押し当てられる。火傷しそうな熱を持ったそれは、先端から粘り気のある透明な液体を垂らしながら脈動している。
陰平は茫然とする恋鐘の手首を掴み、彼女の口から引きはがす。そして恋鐘の手を掴んだまま、少し開いた彼女の唇を強引に奪うと、口内を舌で舐り回した。恋鐘の舌も、陰平の中に入ってくる。
貪り合うようなキスが終わると、陰平は恋鐘から唇を離し、彼女と目を合わせた。そして、恋鐘が何か言うのを待つ。
「…………プロデューサー……」
その時の恋鐘は、その言葉で伊庭に助けを求めたのではない。
恋鐘は、陰平の目を見て、陰平の事をそう呼んだのだ。
陰平もまた、恋鐘の名を呼ぶ。
「……恋鐘」
「プロデューサー……」
「恋鐘」
「プロデューサー……!」
それだけで、もうそれからは言葉は無かった。
陰平が黙ったまま亀頭を恋鐘の秘裂にあてがうと、恋鐘も無言で、彼が思う通りにしやすいように、僅かに腰を浮かせる。そして、陰平の腰がゆっくりと、あくまでゆっくりと前に進む。
「ア……、あぁ…………」
吐息とも喘ぎともつかない音が、恋鐘の口から洩れていく。
身体を引き裂かれるような、それでいて心の隙間が埋まっていくような不思議な感覚。痛いと聞いていたのに、ほとんど痛みは無い。気持ちいいのかは分からないが、中に入りこんで来た陰平のモノの形が、血管の一本一本まで分かる気がする。
一つになっていく。自分は彼と、一つになっていくのだ。
陰平のほうも、恋鐘の身体を壊さないように、ガラス細工を扱うような繊細な力加減で、恋鐘に己の分身を侵入させていく。初めて味わう恋鐘の中は、溺れそうなほどの蜜に溢れている。陰平以外を誰も受け入れた事が無いとすぐに分かる狭さだが、その蜜のお陰で、どんどんと奥に入り込むことができる。そして入り込んだらもう出たくなくなるような、圧倒的な居心地の良さだ。
自分はついにこの娘と一つになった。一つになったのだ。
「はぁっ――、はぁっ――、んっ――、はぁっ……」
奥の奥まで入り込むと、陰平はそこで腰を止めた。恋鐘の荒い息が収まるまで、じっと待つ。恋鐘が陰平に目を合わせてくる。視線が絡まると、二人の唇は当たり前のように近づき、どちらからともなくキスをする。そして、陰平の腰が再び動きだす。
「んっ……、あっ……」
静かなコテージの中、二人はベッドの上で、正常位で交わる。陰平の緩やかな腰の律動は、己が快楽を得るためというよりも、恋鐘に彼のモノを慣れさせるためという意味合いが大きい。
恋鐘は恋鐘で、目の端に処女喪失の涙を浮かべながら、陰平のカタチを覚えようと、膣に全神経を集中させている。
恋鐘は自分の大切な初めてを、白馬の王子様のような伊庭に捧げる事を、ほんのりと想像していた。それをこんな不細工な冴えない中年男に、ほとんど無理やり奪われてしまったというのに、彼女の心にあるのは絶望ではなく、全く別の感情だった。
恋鐘は大切な初めてを、伊庭に捧げたかったと思っていた。いや、この時点ではまだそう思い続けていた。
大切な初めては、恋する伊庭に捧げたかった。しかし、陰平だって恋鐘に、大切な初めてを色々とくれたのだ。初めてのソロ曲や、初めてのメインステージ。アイドルとして大切な喜びを、陰平は恋鐘に与え続けてくれた。
だからきっと、陰平の事をこう呼ぶのは、伊庭に対する裏切りにはならない。
「プロデューサー……!」
恋鐘は陰平の大きな背中に腕を回し、彼の事をプロデューサーと呼ぶ。そうすると、陰平の腰の動きが少し早まる。お腹の奥を突かれて、恋鐘の口から鼻にかかった吐息が漏れる。
「あっ…………! はぁ……っ……んっ」
気持ちいいのかは分からない。でも、もっと奥を突いてほしい。
(ごめんなさい……伊庭さん……。今だけ……今だけやけん)
恋鐘は頭の中で、伊庭に謝る。そこですら、彼女は彼をプロデューサーとは呼ばなかった。
(うちの本当のプロデューサーは、伊庭さんだけやけん……。ばってん、陰平さんは――)
今日のライブを成功させるため、文字通り全力を尽くしてくれた。それに、まだしばらく陰平のプロデュースが続くなら、陰平の事をプロデューサーと呼んでも問題ないはずだ。その事は、伊庭だって認めたのだ。むしろ、伊庭の方から恋鐘に提案したのだ。――だから、今だけは。
頭の中の伊庭への言い訳と、陰平の肉体にしがみ付くことへの正当化を終えると、彼女は消えそうな小声で、陰平に願った。
「プロデューサー……、もっと、そこ…………、ふあっ……」
そこというのがどこなのか、詳しく説明せずとも、陰平は恋鐘が伝えたい事を理解してくれた。恋鐘の中に深々と入っている彼の肉棒が角度を変えて、恋鐘がもっと突いてほしいと思った箇所を繰り返しトントンとノックする。
痒い所を掻いてもらったかのように、恋鐘の苦し気な表情の中に、甘さが混じる。でも、まだまだ痒みが取れそうにない。
「んぅ……、プロデューサー……、もっと……」
二人は正常位で、きつく抱きしめ合っている。そこに「そうしよう」という思考など無い。ただ、純粋にそうなっているだけだ。アイドルとプロデューサーが一つになるのは、当然の事なのだから。
「恋鐘……っ」
陰平が耳元で、恋鐘の名を呼んだ。その声に込められたものを、恋鐘もすぐに理解した。
恋鐘が下腹部に力を入れて膣内を引き締めると、陰平は満足そうにむぅと唸る。自分も彼を理解できたと知って、恋鐘の心が満たされていく。
「プロデューサー……っ」
コテージの寝室の中で、ギシギシというスプリングの軋みだけが、いつまでも途切れなかった。彼らが互いを呼び合う声も聞こえなくなったのは、互いの口を口で塞いだまま、彼らが離れなくなったからだ。陰平の腰以外に、二人の身体が時折もぞもぞと動くのは、そうやって互いの肌が最も密着する体勢を探しているのだろう。恋鐘はそのむっちりとした脚を陰平の腰に絡みつけて、自らも迎え腰を揺すり始めている。
(うちのお腹ん中、プロデューサーで一杯……。うちとプロデューサー、身体の全部でくっついとー……)
でも、まだ足りない気がする。もっともっとくっつける気がする。その想いが、陰平を抱きしめる腕や脚に力として伝わる。彼の口内深くまで、舌を侵入させていく。同じように、恋鐘を抱きしめる陰平の腕にも力が籠る。少し痛いと感じるくらいだが、それでも構わないと思ってしまう。むしろ、折れるまで抱きしめて欲しいと思ってしまう。
そうやって密着する事で、肌を通して陰平の考えている事が伝わってくるようだ。陰平が考えている事は、恋鐘と同じ。ただただ、一つになりたいという事。
(あっ……もっと奥、入る……。うん、入って来てよかよ、プロデューサー……。もっと奥まで……)
陰平の肉棒は、既に恋鐘の最奥まで侵入していたかに見えた。だが、まだ奥がある。陰平が恋鐘の腰を掴むと、それをサポートするように、恋鐘は彼の手に、己の手を添えた。そして、ひときわ強く男の腰が押し付けられる。
「ふああっ……! んんっ……!」
串刺しにされた恋鐘の身体が、弓なりになる。目の端から涙がこぼれて、シーツに落ちる。しかし、その涙がとても暖かい。自動的に引き締まる膣肉が、内側に入りこんで来た陰平の全てを、細胞の一つ一つまで理解し、覚え込もうとする。
「んぅ……っ!」
たまらなく胸が苦しくなり、男の胸板に、自分の胸を押し付ける。恋鐘が不格好と思い込んでいる大きな胸は、マシュマロのように形を変えた。陰平の心臓の鼓動を感じる。恋鐘の心臓の鼓動を、陰平が感じてくれている。きっと、ライブの時からずっと、自分の心臓は陰平と同じ速さで動いていたのだと恋鐘は思った。
何も要らなかった。
真にアイドルとプロデューサーになった二人が理解し合うのに、お互い以外に何も要らない。恋鐘に足りないものを陰平が埋め、陰平の満たされないものを、恋鐘が癒す。時間の感覚はとっくの昔に消えて、二人は互いに溶け合った。
「恋鐘……、出すぞ」
耳元でそう囁かれる前に、恋鐘は彼の限界が近いことを悟っていた。このまま何時までもとろとろと混じり合っていたい。しかし同時に、二人一緒にその果てまでたどり着きたい。陰平が果てを迎えるなら、恋鐘も同じようにしなければならない。
「ァ…………っ」
ぞわぞわと、腰から痺れが昇ってくる。陰平の挿入によって、恋鐘が今まで感じていたものは快感だったのだと、ハッキリと判り始める。一度それが分かると、快感はあっという間に堪えがたいものになる。まるで、陰平と触れている全ての場所に快楽が詰まった気泡がついていて、彼にそれを触られる度、ぷちぷちと弾けていくようだ。
振り落とされそうな衝撃の中で、恋鐘は自分を支えてくれる逞しい背中を求めて、陰平に全力でしがみ付いた。それは赤ん坊が食いしばるような膣肉の締まりにもなって、陰平の射精を誘う。
「恋鐘……! いいんだな……?」
「プロデューサー……! プロデューサー……!」
「これで、お前は俺のものになる……! お前は俺のアイドルだ……!」
「何も、ゆわんで……! プロデューサー……!」
「恋鐘……っ!」
陰平は奥歯を噛み締める。どくりと、肉棒が脈動する。ずっと溜め込んでいたものが、白濁した奔流となり、堰を切って溢れ出してくる。これで恋鐘の奥の奥、子宮の中までも彼の色一色に染め上げようとして。
その点はアイドルとしてあるまじきことだが、この時の恋鐘の心に、妊娠するかもしれないという危惧など微塵もなかった。ただ一刻も早く、彼の存在を一番奥で感じたかった。自分を本当にアイドルにしてくれた人の生命の熱さを、胎内で味わい尽くしたかった。
こんな形の初体験にも関わらず、恋鐘が激しく絶頂したのは、身体の相性がどうこうとかを飛び越えて、心が満たされていたからだ。陰平の肉棒が震える度、恋鐘の意識は、もたらされる快感で飛びそうになる。しかし彼女は、気を失うのを必死で耐えた。気絶してしまえばそこで終わりだ。彼と一つの時間が、そこで終わってしまう。
どくどくと音をたてて、ライブの準備期間中ために溜め込んでいたものが、全て恋鐘の膣内に吐き出されていく。自分の生命の証を、この輝く少女の中に植え付けている。それは堪らない充足感となって、陰平の餓えを癒していく。
そう、二人は満たし合い、満たされ合っていく。
「…………っ」
「…………あっ」
二人の身体の細かな震えは長い時間続き、最早彼らは、苦しそうな程に表情を歪める。苦しみとまごう程の快楽と一体感。
「…………プロデューサー……」
「…………恋鐘……」
どうにか波が収まると、二人は見つめ合い、互いを呼んで、口づけを交わす。固く抱擁し、秘部でつながったまま、ベッドの上をごろんと転がる。
次は恋鐘が上になり、互いに腰をくねらせる。そうすると、すぐに次の絶頂が訪れる。でも、まだ足りない。まだ一つでいたい。相手の事を、もっと深くまで理解したい。
今度はまた、陰平が上になった。いや、上下の感覚すらも既に曖昧だ。唯一ハッキリとしているのは、皮膚一枚を隔てた先に、お互いが居るということ。ここに至るまでの経緯も何も、最早どうでもいい。
「プロデューサー……!」
「恋鐘……!」
ライブ終わりの、二人だけの夜が更けていく。
ベッドを軋ませながら、いつまでもいつまでも、彼らはつながり続けた。