【シャニマス】中年プロデューサーの華麗なる暗躍 作:黒胡椒サラミ
「新しいユニット……ですか」
それは陰平と伊庭、二人で同時に発したような疑問だった。
283プロ所属のプロデューサーたる陰平と伊庭は、社長室のデスクの前で並び、椅子に座る社長の天井の言葉を聞いている。
「イルミネも放クラも、既に軌道に乗ったからな。それに、アンティーカもどうやら順調にいきそうだし」
肘掛け椅子に体重を預け、渋い声で喋る天井には、この前の恋鐘のライブ映像が頭にある。伸び悩み、天井も不安視していたユニットのセンターが、あれほどの輝きを放ったのだ。大丈夫そうだと思うと同時に、若いながらやり手の男らしく、すぐにプロダクションとしての次の展開を打ち出していかなければと考えた。
それがまず、イルミネーションスターズ、放課後クライマックスガールズ、アンティーカに続く第4のアイドルユニットを作るという事だ。
「この業界は厳しい……。ほんの少し手をこまねいていたら、次から次へと出てくる奴らに追い抜かれて、あっという間に埋もれてしまう。それはアイドル個人も、プロダクションも同じだ」
そこで伊庭が申し訳なさそうに少しうつむく。その横で、陰平が質問した。
「しかし、うちに所属するアイドルは、もう全員がいずれかのユニットメンバーですが……」
「新しい原石を発掘する。決まってる」
「まあ、そうですね。社長ならそう仰るでしょうね」
「なら、次に俺が何を言うかも分かるだろう?」
「……私たちに、見つけてこい……と」
「分かりました。やらせてください!」
天井と陰平の会話に、顔を上げた伊庭が割り込んだ。その決意した表情は、アンティーカを迷走させてしまった分の損害を、新しいアイドルの発掘によって埋め合わせたいというものだ。
この場に居る三人の男の中で最も若い伊庭が放つ熱気に、天井も陰平も少し優しい表情になった。天井は天井でこの若者の将来性を見込んでいたし、陰平は陰平で――
「オーディションの告知は、はづきに命じてある。応募プロフィールもすぐに集まるだろうから、二人で目を通せ」
「そんなすぐに集まりますか?」
「なんだ忠治? うちが弱小だとでも言いたいのか?」
「いえ、違います」
陰平は、自分より若い社長の前で、肥満気味の身体をぴしりと直立させている。天井にはこの業界に拾ってもらった恩がある。言葉のやり取りは近いものの、その感謝が姿勢に現れている。
陰平に続いて、天井は伊庭の事もファーストネームで呼び、激励する。
「総士も、あまり気負い過ぎずにやれよ」
「はいっ! 社長」
「だから、もっと肩の力を抜け」
苦笑しながら、天井は立ち上がった。陰平と伊庭の間に立つと、二人の肩を両手で掴む。
「お前たちなら、最高の輝きを見つけ出してこれるはずだ。期待してるぞ」
陰平と伊庭は、同時にしっかりと頷いた。
―――――――――――――――
「陰平さんは、オーディションの準備をはづきさんとお願いします」
「ええ、分かりました」
「スカウトの方は、俺に任せてください」
「はい」
珍しく、伊庭が主導で仕事の話を進めている。社長室から出た後、陰平と伊庭は、会議室で今の社長命令について話し合っていた。
役割分担は、伊庭が言った通りになった。オーディションは陰平で、スカウトは伊庭だ。オーディション当日には伊庭も審査員になるだろうが、そこに至るまでの諸々は陰平が用意する。陰平がスカウトに出ないのは、もちろん陰平の顔が悪いからだ。陰平が道で女性を呼び止めた所で、いいとこ通報されるのがオチである。――まあ、伊庭がそう言いたい訳ではないだろうが、陰平自身もそれを事実として認めているし、伊庭のスカウトの腕が確かである事も知っていた。
(こいつが連れてくるアイドルは、確かに極上の原石ばかりだからな……)
どこでどうやって見つけて来るのかと思うほど、伊庭は最高の素質を持った少女たちを連れてくる。現時点で283プロに所属しているアイドルで言うと、真乃・樹里・凛世・咲耶、そして田中摩美々・三峰結華・小宮果穂がスカウト組だ。大半が伊庭一人で見つけてきた。
放課後クライマックスガールズの小宮果穂などは○学生であるのに、一体どういう経緯で声を掛けて連れてきたのかと驚愕した覚えがある。
オーディションでも、陰平と伊庭が推す候補生はほぼ100パーセント一致する。アイドルを見る目という点では伊庭は陰平と同じ――いや、見つけ出すという点においてはそれ以上の能力を持っていた。
「伊庭君のスカウトなら、きっとまたいい子が見つかりますよ」
「お世辞はやめてくださいよ、陰平さん」
伊庭は嬉しそうに微笑んでいる。お世辞でも何でもなく、伊庭は今度も最高のアイドル――陰平のメス候補を見つけてきてくれるだろうと、陰平は信じていた。
それからしばらく男二人で打ち合わせを続けていると、コンコンとノックの音が響いた。開いてますと伊庭が言うと、入ってきたのは二人のアイドルだ。
「疲れたばい~」
「失礼します……」
元気すぎる長崎弁は恋鐘であり、その声でかき消されそうな挨拶をしたのは、アンティーカの幽谷霧子であった。二人ともレッスンウェアを着ていて、肌が少し上気している。彼女たちは陰平たちの会議の間、ダンスレッスンをしていたのだ。
「今日のレッスンは、ばり、ば~り厳しかったと~」
当たり前のように、恋鐘は陰平の隣に座り、霧子は伊庭の横の椅子についた。
ダンスレッスンが終わったら、恒例になった情報交換会を行う事は、事前に約束してあった。じゃあ、早速始めようかと陰平が言う。
「と言っても、あまり新しい話はありませんが。――恋鐘は次のライブに向けて、このままレッスンだな」
「分かっとーよプロデューサー。今度はダンスもあるけん、しっかり気合入れんと」
「まだ無駄な動きもあるが……だいぶキレが良くなったな」
「……そうお? えへへ……」
陰平と恋鐘の会話は、数日前とは明らかに距離が違う。オフのコテージで過ごした丸二日間、二人は常時全裸で、身体のどこかを触れ合って過ごした。互いの身体に知らない箇所などほぼ無く、心の距離も近づくのも当然であった。結局最後まで、恋鐘は伊庭に対する想いを捨てないと言い張っていたが、そうしながら彼女は、陰平の中出し精液を何度も何度も執拗にねだった。コテージを出たら全てを忘れるという話にしても、たぶん恋鐘はその話自体を忘れている。
自分ではない男に自然体の笑顔を向ける恋鐘を見て、さすがに伊庭の表情にも暗いものが走り抜けたが、それは一瞬だった。彼と恋鐘の間には、いずれまた元のプロデュース関係に戻ろうという約束があるし、今日も恋鐘は伊庭のために差し入れを作ってきていたのだ。――まあ、その差し入れは陰平の分もあったのだが。恋鐘は陰平の方がついでだと言っていたが、本当はどうだったのだろうか。
「私もそう思う……。恋鐘ちゃんのダンス……すっごく良くなってたよ」
「霧子もそう思う? えへへ、もーっと褒めてよかばい」
恋鐘は胸を反らし鼻高々になっている。
「前に歌った新曲を、今度は振り付け有りでやるんだってな?」
「うん、伊庭さん……。今度はイルミネの皆も手伝ってくれんし。だから、ばり頑張らんと」
「応援してるよ、恋鐘」
「――うんっ」
恋鐘からの呼び名が「プロデューサー」から「伊庭さん」に変わっている事を、伊庭はどう受け取ったのだろうか。朝に会った智代子は、「ひょっとしてお二人は特別な関係になったんですか?」と疑っていたが、アイドルにとって本当に特別なのは、恋人でも家族でもなく、プロデューサーなのだと陰平は思っていた。
恋鐘の下腹部にはきっと、まだ陰平の中出し精子が居残っているに違いない。そんな少女の横顔をどこか満足そうに眺めてから、陰平は霧子のほうに愛想笑いを向けた。
「幽谷さんも、仕事が順調なそうですね」
「はい……。――プロデューサーさんのお陰で……」
紛らわしいが、霧子の発言におけるプロデューサーとは伊庭の事だ。
額にガーゼを貼りつけ、腕に包帯を巻いた儚げな少女は、陰平に不安そうな目を向ける。警戒されているのだろう。
「ラジオを聞きましたよ。幽谷さんの声で童話を朗読されると、本当にその世界に入り込んだように思えましたね」
「プロデューサー、昨日の霧子の番組、聞いとったん? ふ~ん……いつん間に……」
陰平が霧子を褒めると、恋鐘が少しジト目になった。すると、霧子はより不安そうな、というよりは困惑した表情で、恋鐘と陰平の顔を交互に見る。
「――えっと、あの……」
「どがんしたと? 霧子」
「その、えっと、恋鐘ちゃんと、陰平さんは……。……ううん、何でもないよ」
「そうやった! 霧子、うちは霧子にお礼ば言うん忘れとった」
「――え?」
「お守り、くれたやろー?」
「あ――」
そのお守りという話には、陰平も覚えがある。以前霧子は恋鐘に対し、お守りと称して毛糸のポンポンを渡していた。
「ライブの時、ちゃんと衣装の下に付けとったけん、うちも最後まで頑張れたばい」
「う、うん……」
どうしてか、霧子の困惑はより深まる。彼女はそのお守りを、恋鐘のライブ成功を祈って手渡したというのでは無さそうだ。陰平が霧子の思考を読みかねているのと同じように、霧子もまた、陰平が恋鐘に近づく思惑を案じかねていたというところだろうか。それで彼女は、陰平から恋鐘を守ってくれるように祈りを込めて、あのお守りを用意したに違いない。
しかし、今の恋鐘はあの時よりも陰平と近くなっているにも関わらず、あの時よりもずっと笑顔だ。
「今後もこうやって、情報交換会は続けていければいいと思うんですよ、陰平さん」
「そうですね、伊庭君。お互いに勉強になるし、俺もぜひそうお願いしたいです」
「陰平さんが俺から勉強することなんて……。霧子以外にも、他のアイドルの子たちも参加させてもらえれば」
「それが良いでしょうね。アンティーカとしての活動もそろそろ再開の見通しを付けていきたいし、アイドル当人同士の対話は増やしていかないと」
「放クラの子とかも……」
「ええ、同じプロダクションなんですから、ユニットを越えて学べる事は学んでいきましょう」
恋鐘のプロデュース状況を確認する名目で始まったこの会の形は、陰平にとってより好ましいものになっていく。アイドルたちのために、自身が彼女たちを「プロデュース」する必要性を、彼は固く信じている。そのためにもこの会は続けていきたい。
「でも、もう次の曲を用意するなんて、さすがは陰平さんですね」
「俺の手柄じゃないです。社長のコネを使わせてもらいました。社長も言ってましたしね、次の展開はどんどん打ち出していかないと」
そして、彼らの話は今日のメインテーマに移る。そう、今日の会に伊庭が霧子を連れてきているのは、偶然ではない。それは、陰平のほうから伊庭に指定したのだ。
陰平は、鞄からファイルに挟んだ書類を2セット取り出し、恋鐘と霧子の前に置いた。
「今日届いたばかりですが……これが、恋鐘と幽谷さんのために作曲してもらったデュオ曲です。曲先なので……」
詩はまだついていない。その作詞を、これから恋鐘と霧子の二人に進めてもらいたい。
「次回以降の恋鐘のライブに、幽谷さんも出演してもらう事を見据えて」
陰平はそう提案した。
彼の「プロデュース」は着実に、より広範に侵食しつつあった。
―――――――――――――――
「よぉオッサン、元気か?」
「――ああ、樹里。こんばんは」
「こんばんは」
その日の夜、陰平は寮の洗濯室で、放課後クライマックスガールズの西城樹里に会った。陰平はジャージ姿で、樹里はTシャツとホットパンツというラフな部屋着だ。樹里の格好に目を向けて、陰平は、そろそろ風邪を引くぞと彼女に言った。
「まだ大丈夫だろ? それに、アタシはこーいう格好が一番ラクだしさ」
そう言って、彼女はTシャツの裾を摘まんで引っ張ってみせる。チラリとだが、腹の下部分が見えた気がした。そうでなくとも、胸元に見えている鎖骨のえぐれがあまりにも眩しい。持ってきた洗濯籠の中身を洗濯機に突っ込むと、樹里は陰平の隣の壁に寄り掛かった。何というか、自分の「女」としての魅力に無自覚な少女にありがちな、あまりにも無防備な距離感だ。お前の隣に居るのは、お前を立派なメスとして認識しているオスなのだと、思い知らせてやりたくなる。
だが、表向きは平静を保ちながら、陰平は気さくな調子で樹里と話した。
「今日はどこで仕事をしてたんだ?」
「学校だよ……。つーかアタシは高校生で、今日は平日なんだぜ? 事務所には、放課後にちょっと行っただけ」
「ああ、じゃあすれ違ったのか」
「オッサンは外回りしてたんだってな。アイツが言ってた」
「――アイツ? 伊庭君か」
「そうそう」
二台の洗濯機が回る前で、二人はどうという事のない会話をする。
「アイツはアイツで、摩美々に悪戯されて、何か事務所の中で走り回ってた。アタシはちょっとレッスンして――あとは果穂を家に送ってから、寮に戻ってきたんだ」
「相変わらず面倒見がいいな、樹里は」
「フツーだろ?」
手持無沙汰な感じで、樹里は素足につっかけた室内用のサンダルをパタパタさせている。
「なあ、オッサン」
突然樹里の声が改まった感じになったので、陰平は彼女のほうに顔を向けた。樹里も陰平のほうを向いて、自分より身長の高い陰平を見上げている。ちょっと照れ臭そうに、樹里は笑った。
「……ありがとうな」
「……? 何か、樹里に礼を言われるような事をしたかな、俺は」
「いちいちアイツみてーにニブい振りしなくていーよ」
「……恋鐘のことか?」
「やっぱり分かってんじゃん……」
そこで樹里は、陰平の肩を拳で小突いた。
「恋鐘、元みたいに笑うようになったからさ。……あ~あ、アタシも恋鐘のライブ、見に行けたらよかったのになぁ」
「やっぱり面倒見がいいな、樹里は」
「言うなって」
また肩を小突こうとする樹里の拳を、陰平は手で受け止める。樹里は一度頬を膨らませてから、へへっと笑った。
そこで陰平の洗濯機が止まったので、彼は洗い物を乾燥機に入れ替えた。時間設定をしていると、樹里が言った。
「アンタも忙しいんだろうし、アタシが見てるからいいよ。部屋に戻ってたらどーだ?」
「……て言うか、別に見てる必要無いだろ。自動的にやってくれるんだし」
「え……、何かこういう機械って、目を離したらダメなんじゃねーの?」
「本当に機械音痴なんだな……」
「バカにしてんのかよ」
「ああ、してるよ。今時の女子高生がそれでいいのか?」
「何だと? オッサンのくせに」
陰平のそのからかいは、樹里の機嫌を少々損ねてしまったようで、彼女は腕を組んでむくれてしまった。
すまんすまんと陰平は言い、再び樹里の横の壁に寄り掛かった。結局、洗い物が乾くまでは、彼もそこに居る事にしたようだ。
それから陰平は、すぐに機嫌を直した樹里と会話を続けた。話題は趣味や、樹里の高校の話などだ。樹里の陰平に対する接し方は、目上の大人に対するものというよりは、年上の友達に対するものと言った方が近い。樹里は最初から陰平に対して警戒の念を抱いていなかったようだが、恋鐘という、樹里の大切な友人の明るさを陰平が取り戻したことで、樹里は陰平の事も友人だと思い始めたのだろうか。
実に優しく、分け隔てなく、無防備である。
「そう言えばさ、聞いてくれよ忠治のオッサン」
「何だ?」
「アンタ寮監だろ? この寮、どっか壊れてんじゃねーのかな」
「……? どこが」
「いやあ、最近さ、寝てる時に音がすんだよ。なんか、ギシギシって感じの」
「あ~……」
陰平にはすぐに思い当たった。それは多分、真乃やめぐるがこの寮に泊まりに来た時、彼女たちが陰平に跨って、あるいはのしかかられて腰を振る時の、ベッドと床の悲鳴だろう。
「それとももしかして、幽霊でもいんのかな……。悲鳴みたいな声も聞こえる気がするし」
「あ~……」
「何だよ、さっきからそればっかだな」
「あ~……いや、そうだな。俺も聞いた気がするな、その悲鳴って奴」
「やっぱりか……!」
夏葉が今度泊まりに来るんだけど、アイツが知ったらヤバいなぁと、樹里はお化け嫌いのユニットメンバーの事を心配している。適当に誤魔化すため、陰平は言った。
「まぁ、本当にお化けって事は無いだろうから、天井裏かどこかが傷んでるのかもな。時間がある時、ちょっと見てみるよ」
「なんか悪いな……、オッサンも忙しいのに、逆に仕事を増やすようなこと言っちゃって」
「気にするな。俺も好きでやってることだからな」
文字通り、彼は本当に好きでやっている事である。アイドルのプロデュースも、調教も。だから彼は乾燥機が止まると、洗濯物を寮監室に取り込んで、まだ洗濯機の前に立っている樹里にこう言った。
「早速、二階の方を見てくるかな」
そう言って彼が目指したのは、二階にある恋鐘の部屋だ。
―――――――――――――――
「誰ねー?」
恋鐘の部屋の扉をノックをすると、そんな声が帰ってくる。陰平が一言「俺だ」と言うと、中で動いていた気配が止まった。そしてしばらくの間を置いて、カチャカチャとロックが外され、内側からドアが開く。恋鐘はまだ寝間着に着替えておらず、ニットセーターとスカート姿だった。
「プロデューサー……、こがん遅うに、何しとー……?」
彼女はとぼけたが、彼の顔を見た瞬間、恋鐘の顔に期待の色が見えたのを、陰平は見逃さなかった。
陰平は恋鐘の腕を掴むと強引に廊下に引き出し、抱擁して唇を奪った。
「んぅ……、んぁ……、プロデューサー……」
コテージで調教しまくった甲斐あって、恋鐘はすぐに陰平の舌に自分の舌を絡め始めた。
「ん……、ちゅ……、いやぁ……」
まだ嫌がっている振りを続けているが、そう思う人間は、そもそも相手の男の頬を、自分の手のひらで挟み込んだりしない。彼らはしばし、恋人同士のキスを続けた。
「もうやめてくれん、プロデューサー……。うちたち、もう――――んむぅ」
唇を解放してやると、まだそんな事を言っていたので、再びキスを与える。ニットセーターの上から胸を揉んでやると、やがて切なそうにもじもじと腰をくねらせ始めた。
「……俺をお前の部屋に入れろ、恋鐘」
「…………」
「そこでだけ、あのコテージの続きをさせてくれ」
「そこで、だけ……?」
「ああ、お前の部屋でだけ、俺をお前の恋人にさせてくれ」
「…………うん」
恋鐘が頷くか頷かないかのところで、陰平は荒々しい衝動に任せて、恋鐘と共に彼女の部屋の中に消えた。ぱたんと扉が閉じ、ガチャリと鍵がかかる。そこで、腕に洗濯籠を抱え、パタパタとサンダルを鳴らして二階に上ってきた樹里が首を傾げた。
「……あれ? あのオッサン、二階の様子を見るって言ってたのに……」
どこにもいないじゃねーか。
人気の無い廊下を見回した樹里は、もしかしたら本当にお化けが出るかもという不安を覚え、少し肩を震わせると、急ぎ足で三階へと上がっていった。
実際、樹里はその夜も、ギシギシというラップ音と、何かを堪え訴えるような女性の悲鳴に悩まされたのだ。
――――――――――
「プロデューサー……! プロデューサー……!」
「恋鐘……声を抑えろ。樹里や凛世に聞かれるぞ」
「うん…………あぁっ!」
恋鐘のベッドの上、陰平は恋鐘の右脚を抱え込み、松葉崩しの体勢で恋鐘の穴にハメていた。恋鐘だけならともかく、肥満体の陰平が乗ると、シングルベッドは狭すぎる。落ちないようにするために、出来るだけ深く繋がり合うのは当然の事だ。
「あぅっ、そこ、ダメばいっ……! ぐりぐりされると、声、抑えられん……! んぅうっ!?」
「ここだな? ここがいいんだな?」
「うんっ……、うんっ……! そこぉ……! ばってん、そこ以外も全部気持ちいーよ……?」
「お前のマンコも気持ちいいぞ」
「嬉しか……。プロデューサー、もっと感じさせて? うちの奥で、もっと気持ちよーなって?」
この部屋の中だけでは、恋人同士であり続ける。そういう約束をした以上、彼らがしているのはお互い合意のもとのラブラブ恋人セックスだ。愛し合う恋人同士だから、当然種付けもする。
――ビュルルルルルルッ!!
「んぅ――――っ! 出て、るぅ……! ――ァっ、プロデュ、腰、振らんで……! 出したまま、動かんで……! うちも、イッてるのに……! んん――っ!」
悩まし気に眉をひそめ、恋鐘は大きな胸をブルブルと震わせながら、絶頂に下腹部を波打たせる。男が吐き出した熱い精の塊が、彼女を否応なしに無類の幸福へと押し上げる。
ピンク色の壁紙が張られ、所々にフェミニンな小物が飾られた19歳の少女の部屋で、中年男の陰平は、彼女の愛しい恋人として、恋鐘の奥の奥に侵入してその味を堪能していた。
この部屋は、恋鐘そのものである。恋鐘の趣味と恋鐘の匂いに満ちていて、呼吸をするだけで、恋鐘の成分が肺に入ってくる。伊庭だってここには入った事が無いだろう。そんな場所で彼女を犯し、種付けできるのは陰平だけなのだ。
もっともっと恋鐘を味わいたい。そう考えた彼は、恋鐘の上に覆いかぶさり種付けプレス状態になると、布団を掴んでそれに二人で包まった。あっという間に、布団の中の熱気と湿度が上昇していく。恋鐘の肢体から立ち上る薫りが、陰平の理性を簡単に塗りつぶしていく。
「プロデューサー、好き……! ばり好きよ……! 好いとーよ……! うち、ちゃんとプロデューサーの恋人になれとる……? プロデューサーも、うちのこと好き……?」
恋鐘の声は、布団の中でくぐもって聞こえる。陰平が感じている匂いも恋鐘だけだが、聞こえる音も恋鐘だけだ。チンポに送り込まれる血液の量が、ぐんと増える。
「あ……、言われんでも分かったぁ……♡ プロデューサーのオチンチン、うちのこと、ばり好きって言うてくれとる……♡ ――ん、ちゅ。ばってん、プロデューサーも好きって言うて……? ちゃんと口で言うて……?」
「好きだぞ、恋鐘。愛してる」
「うん……♡ うん……♡」
「お前は俺のものだ。俺だけのものだ……!」
「うん……♡ うちはプロデューサーのものやけん、安心して……♡ んんっ……! ふかいぃっ……! もっとぉ……! もっとしてぇ……!」
感極まって、恋鐘は涙を流している。その涙をべろりと舐めとって、陰平はピストンを続けた。