※この作品はR-18です。

妖精王の妃   作:Maamajin

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グランドクエスト

ようやくここまで来た。

 

アスナが捕われているのは世界樹の樹上。そこへたどり着くためには樹の根元にあるドームの中のゲートを突破しなければならない。

ゲートの突破はアルヴヘイム・オンラインにおけるグランドクエストであり、これまで幾多の軍勢が攻略を試みるもゲートを守護するガーディアンが突破を阻み続けている。あまりの高難度さに、現時点では《突破不可能》という話が共通認識になっている。

 

それでも、行かなきゃいけないんだ。

 

ーーー待ってろよ。アスナ。すぐに行くからな・・・。

 

 

 

 

 

 

ドームの大扉の前に立った途端、粘つくような笑いを含んだ甲高い声が響き渡った。

 

“いやぁ、驚いたね!こんなところまでゴキブリが迷い込んでくるとはね!“

 

抑えきれない嘲弄の色を含んだその声には、聞き覚えがあった。眠るアスナを前に、俺を英雄くんと揶揄したあの男の声。

 

「須郷!!」

 

"チッチッ、この世界でその名前はやめてくれるかなあ。君らの王に向かって呼び捨ても戴けないね。妖精王、オベイロン陛下と、そう呼べ!"

 

声の語尾が高く跳ね上がって絶叫に変わり、同時に俺の視界に突然ウインドウ画面が表示され、オベイロンの醜悪な笑みをたたえた顔が飛び込んでくる。

 

“どうかな?この視界共有の機能は?今度のアップデートで導入される予定なんだけどね。特別に試用させてあげるよ!“

 

強制通信に意識を奪われそうになったが、俺は意識してそれを視野の隅に追いやる。

 

「須郷・・・貴様!」

 

リアルとは姿が違えど、俺にはわかった。この男は須郷だ。アスナの魂を強奪し、こんなところに閉じ込めた、憎んでも憎み足りない男。

 

"それにしても桐ヶ谷くん。いや、キリトくんと読んだほうがいいのかな?まさか本当にこんなところまで来るとはねぇ。勇敢なのか、愚鈍なのか。そんな君に敬意を評してこれから楽しいショーを、特別に君に中継してあげるよ。"

 

「どういう意味だっ!?」

 

オベイロンを映していたウインドウ画面の視点が切り替わる。

表示されたのは薄暗い部屋。真ん中にはライトアップされた粘液質のプールが置かれている。

 

プールの中に・・・アスナが横たわっていた。へそが見える白いワンピースに身を包んだ身体がどっぷりと漬かり込んで、粘液が纏わり付いている。

 

「アスナ!?須郷っ、貴様っ、アスナに何をした!?」

 

『・・・っ!?キリト君!?来て・・・くれたんだね。』

 

アスナにもこちらの声が届いているようだ。

特に身体を拘束されている様子はないようだが、プールから抜け出すことができないのだろうか?

 

「アスナ、動けないのか?」

 

『それが・・・どうしてだか・・・身体に力が入らなくて』

 

プールの縁、身動きの取れないアスナの目の前にまでオベイロンが近寄り、舐めるようにじろじろと見ている。

 

"小道具は色々用意しているんだがね、これはその中でもとっておきだよ"

 

オベイロンがアスナに手を伸ばす。髪を触り、腕を撫でようとする。

 

『や、やめて・・・触らないでっ・・・!』

 

"見えるかい、キリトくん・・・?この溶液には3つの特性がある・・・。ひとつ、触れている者に麻痺ステータス異常を付与する!!"

 

「なんだと・・・」

 

あのプールから引き出さない限り、アスナは自分の意思で動くこともできないということか。

 

"そして、ふたつめは・・・おや?そろそろ効いてきたかな?"

 

粘液に塗れた衣服がまるで水に濡れたティッシュのように、ボロボロに溶けて、流れ落ちてゆく。

 

『嘘・・・これは・・・!?』

 

"ふたつっ!武具・装飾品の耐久力を減少させっ!溶かしっ!アバターの身体をむき出しにする効果っ!"

 

『・・・っ!そんな・・・?』

 

"そ〜ら?早く脱出しないと素っ裸になってしまうよ?まあ、麻痺してるから動けないだろうけどね!"

 

『なんて悪趣味・・』

 

"ふひひひっ・・・どんなに抗っても、最後にはあられもない姿にっ!その経緯が実にそそる訳だが、さて、キリトくんもそそられるかな?"

 

「貴様あっ・・・須郷おおっ・・・!」

 

"はははははっ!さあゲームの始まりだ!ガーディアンを突破し、アスナくんが素っ裸になる前にここにきてみたまえ!もっとも・・・ここまでたどり着けないだろうがな"

 

大扉が地響きを轟かせながらゆっくり左右に開いていく。

俺は己を叱咤するように雄叫びを上げ、猛然と地を蹴り、ドーム内に突入した。

 

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