「諸君、よく集まってくれた。いきなり、呼ばれた事で困惑している者もいるだろうから余計な事を言わずに本題を言おう。先程のキノコ王国よりピーチ姫返還を要求する書状が届いた」
会議室にて、クッパ姫からそんな事を言われて集まったメンバーは信じられない様子で口々に議論を始めたが、そんな彼らを制してからピーチ姫を攫っていないかを聞いて全員から否という言質を取ってから話を進めた。
「ワガハイも攫っていない事をここに誓おう。だが、奴らからすれば我等が攫う云々は些細な事でしかない。何しろ、これをきっかけにしてこの国を占領からの傀儡化するかもしれんからな」
「しっしかし、あまりにも身勝手な言いがかりで本当に戦争をするのでしょうか?」
「奴らならやりかねん。何しろ、ここ数ヶ月の間にワタルのお陰で壊滅的だった食料自給率は大幅に改善しているのだ。その結果、ワガハイらから絞れる物がなくなれば言いがかりであろうとも戦争を仕掛けるだろうよ」
「そ、そんな………」
彼女の言葉に、軍団長や大臣達が唖然として頭を悩ませていると意外な言葉が出てきて驚く事になる。
「さて、ワタルよ」
「はっ」
「お主ならこれからの展開をどう予測する?」
「自分は文官なので詳細までは分かりかねますが、それでもよろしいので?」
「構わん。寧ろ、第三者の意見を聞きたいぐらいなのだ」
何しろ、クッパ帝国はクッパ姫をトップに据えて意思決定を行なうトップダウン方式であり、事前情報を集めて全体的な方針を決めるのに他者の意見を聞くとは思ってもいなかったのだ。
勿論、分からない事があれば担当者を呼び出して聞くだろうがそれ以上の事はしないと思っていたので、認識が改める必要があるなと心の片隅で思いながら今の状況を整理してみた。
まず、何かしらの理由でキノコ王国のトップであるピーチ姫が居なくなったと認識している事によって、キノコ王国からあらぬ言い掛かりを受けいるのは確かだ。前々から様々な因縁はあるしね。
その上で、考えられる可能性としてはゲームにおける主人公であるマリオが動くのは確定なのに加え、キノコ王国を筆頭に今までの輸出入による甘い汁を吸えなくなった国が“御礼参り”と称して宣戦布告を仕掛けてくる可能性が高いだろうな。
法外と受け取れる程、格安で最新の技術を受け取れていたのだから下手に歯向かうなら懲らしめてやる、という事をピーチ姫が攫われたので奪還するという大義名分を持ってやれるので乗らない国がどれだけいるのか、こちらから聞いてみたい物だ。
実際、元の世界でも国家間でのやり取りは己の欲望を建前で着飾って全面に押し出す物だし、周辺国に限っても隙あらば実効支配しようとする国が大半だった。
となれば、こちらとしても全力で国を守るしかないと判断して作戦を立案するしかないだろうなぁ、と思い至ってから答える事にした。
「まぁ、普通に考えれば周辺国とは戦争になるでしょうね」
「やはり、そうなるか」
「えぇ。最悪、全世界を相手取って戦う羽目になるでしょうし、こちらが負ければ領土分割や武装放棄からの属国化、なんて事も考えられます。そうなる事が確定したら自分、速攻で逃げ出しますよ」
「うぅむ。そこまでなると、流石に立て直すのは不可能になるな」
「そうです。なので、今すぐにでも国家存亡の危機と題して皆さんの力を一丸にして当たらないと負け確定ですね」
俺とクッパ姫とのやり取りを聞いて、その場にいた面々は議論し合ったり、顔を青くしたり、思案して自分の身の振り方を考えたりと騒がしくなったので再び、クッパ姫がその場を制してから今後の方針を発表した。
「ワタルの言う通り、これは国家存亡の危機なのだ。最早、我らは奴らに足元を見られずに好きなだけ、暴れる事ができるのだ。だから何を躊躇う必要がある?」
クッパ姫の言葉に、全員のやる気が湧き上がってきたので俺も気を引き締めるとしますかね。
「まぁ、気になる点となればマリオぐらいだがその辺りの対処は考えているのだろう? ワタルよ」
「勿論です。いくつか、プランを考えていますのでいつでも実行できます」
「わかった。では各員。戦闘配置に移行せよ」
その言葉と共に、一気に動き出したので俺も軍団長達と共に作戦室へと向かった。
何故なら、今までに練ってきた対マリオ戦術を改めて確認して認識の共有を深めつつ、補給物資の輸送ルートを確認する必要があるからだ。
人間を含めた生物は、水や食料がなければ生きていけないし、軍人は戦闘に必要な兵器を含めたあらゆる物資がなければ戦う事ができないので、それらを前線にまで送り届ける必要がある。
その為、この数ヶ月間でやってきたのは食料や武器弾薬の生産だけではなく、長持ちさせる為の保存や管理の方法を考え続けてきた結果、食料はフリーズドライや缶詰などの長持ちする保存方法を生み出した他に、前線でも可能な限りの暖かい食事を提供できる様に各種装備の生産を行う事にした。
また、武器弾薬もキラーと呼ばれる弾丸状の兵器ではなく、個人装備の銃火器を充実させて訓練と殺意の簡略化を推し進めた結果、こちら側の交戦距離は大幅に伸ばした。
正直、軽くミリタリー系の知識を備えた元一般人からすれば戦いは起きてほしくはなかったが、向こうがその気ならやむを得ないと割り切るしかない。
そんな思いと共に、防衛線の構築とどの戦線にマリオが来るのかの情報収集で忙しくしている中で、遂にある報告が上がってきた。
『キノコ王国、連合諸王国を結成。クッパ帝国に侵攻開始』
『マリオ、○○戦線に出現。指示を請う』