食料の生産を開始してから3日目にして、試作段階として作付けした農作物の結果が出た。
たった3日で、植物の結果が出る訳ないと思うかもしれないがこのダンジョンは異空間の聖域なのだから、時間の流れを操作する事だって可能だ。
何しろ、空間支配のスキルがあるので一定の範囲を指定すればその空間の時間や重力、環境を好きに弄れるので農作物がある空間を指定して時間を早めればあっという間に結果が出る。
そして、作付けした農作物の成長具合を確認して光の種類や量を調整した中で1番、成長した各種の農作物を中心に生産する事にした。
とは言え、いくら生産しても消費者の口に合わなければ生産した意味がないので、安定的に生産できる目処が立った時にクッパ達に味見をしてもらう事にした。
この世界で生まれ、現状のクッパ帝国をどうにかしようとする意気込みを体感して、異世界から来た人間である俺もどうにかしたいと思う様になった。
それに、元の世界では既にくたばったであろう事は当時の体験から余裕で推測できるので、帰る場所がないと言うのも大きいのかもしれない。
両親や兄貴達には悪いが、あの世界で趣味の為に働いて仕方なく生きていく人生よりも、やり甲斐がある今の世界の方が俺にとっては好きだからね。
そう思いつつ、ダンジョン内で生産された農作物を調理した物をまずは俺が食べてみるとそこそこ、いける味だと思う。
青臭かったり、酸味がかって食べれた物ではなかったのでクッパやカメックといった何人かの人達に食べてもらうと、絶品ではないが普通の食卓で食べる分には問題ないとの事だった。
これが日本だったら、遠慮して上手い事を言ったりするものだが少なくともクッパ達はそう言った遠慮がなく、忌憚のない感想や意見が聞けたのでそれらの情報をまとめて今後の生産に活かしていくつもりだ。
そして、どうやって農作物をより消費者の好みに変えていくかで頭を使おうとした時、クッパに呼び止められた。
「そう言えば、お主に専属の副官を言い付けてなかったな」
「副官ですか?」
「そうだ。いくら駆け出しの小規模な部署とは言え、いずれは我輩が治める帝国の重要な役職に付いて貰う予定だからな。副官を今から育てておくに越した事はないぞ?」
「そうですね………では、お願いします」
全く、この人はどこまで見通しているのやらと思いながら副官になるであろう人物が入ってくるのを待つと意外なキャラだった。
「お邪魔しまーす」
「ほぉ、これは中々………」
そして、入ってきたのはピーチ姫化したヘイホーであり、赤ずきんに仮面をつけているがダボついた服の上からでも、胸などの出ている部分は出ているし、引っ込んでいる部分は引っ込んでいる。
とは言え、服装がゆるゆるなので正確な体型はわからない上に仮面のせいで顔もわからないから、美人さんなのかもわからないが仕事上での副官だから特にこれと言って気にならない。
その為、普通に挨拶した後である事が気になったのでクッパに打ち明けた。
「なぬ? 眷属化だと?」
「えぇ、いくら副官と言っても代わりにダンジョンコアが操作できる人がいないと、不在中に緊急事態の時に操作できないと色々と不便ですから」
「眷属化するとどうなる?」
「メリットとデメリットがありますが………」
その言葉に、クッパは興味を持ったので簡単に説明すると以下の様な内容だ。
メリットとしては、眷属になった対象はダンマスに準じたステータスとスキルを有する事になり、ダンマスの代わりにダンジョンコアを操作する事が可能になる。
また、単体での戦力はダンマスによってはかなり上昇する上に作業量が分担できる様になるので、ダンジョンの規模が大きくなるに従って眷属を増やす事も考慮していいと思う。
その一方で、デメリットとしてはちゃんとした人選をしないと寝首を掻かれる事になるし、眷属にした対象が低スペックだったり、好みと合わなかった場合だと解除するコストがかかるので、そう簡単にできるものではない。
更に、クッパ帝国の場合は彼女が多種族を束ねるだけの優秀さがあるので元気なウチは気にしなくて良いが、耄碌になった場合や世代交代によって俺との方針が合わなかった場合などで派閥化する可能性があるのだ。
そういった事情を説明すると、クッパは大笑いしてからこう言ってきた。
「ははははは! 確かにその可能性は否定できん! だが、それがどうしたと言うのだ、ワタル。我輩やその程度で眷属化を許可しないと思うのか? 馬鹿馬鹿しい!」
そこで区切ってから話を続けた。
「この国ができるまで幾多の困難があり、今までにも数多くの困難が発生し、現在でも問題はいくつもある。その中で結合と分離を幾度となく、繰り返してきたのだからその程度の問題なんぞ、容易く平らげてくれる!」
「そして、お主に言い渡した命令は食料の生産であり、それが捗るなら副官をいくらでも眷属化するが良い!」
狡いぜ、クッパさんよ。
そこまで、堂々と明言されたらやるしかねぇじゃんか。
そして、今のやり取りを聞いていたヘイホー姫が全く付いて行けていないので、オロオロとする彼女に対して俺はこう言った。
「今から君を俺の副官として雇い、眷属化する。君はそれを聞いてどう思う?」
「話の流れはイマイチ、理解できませんがそれで仕事が捗るなら大丈夫です」
「………そか。じゃあ、俺の目を見てくれ」
「はい」
余りに素直な答えが返ってきたので、少し戸惑ったが無理に言わされた感じはなく、彼女自身の意思が垣間見れたので眷属化する儀式を行なった。
それは、互いに目を合わせた状態で『対象の人物を眷属にする』と強めに念じるとヘイホー姫の周りからどことなく、影の様な物体が現れて彼女を包み込んだ。
そして、影の様な物体が霧散すると正式な眷属として生まれ変わったらしい。
何しろ、眷属の話はダンジョンコアに情報としてあったのでそれを流用して説明したのだがうまく成功したようで、眷属になった後のヘイホー姫が身に付けている仮面に模様がつくようになった。