偽蟲 ニセノムシ 作:淫徳
第十六蟲
他人の股など、舞は今まで見たこともなかった。まして秘裂を開いた先にある粘膜の通路など自分のモノでも見たことはないのだ。
だが、舞にはどうしてか、雪の桃色のいやらしく蠢き密を垂らす穴から目をそらすことが出来なかったのだ。
漂う匂いは、香水のように脳の奥に染み渡り、熱く壊れてしまいそうな情欲が舞の身体に燃え上がった。
食欲でも睡眠欲でもない、もう一つの根源的な欲望が鎌首をもたげ、舞に命令する。
目の前の牝を食べろと、蹂躙し支配し己のものにしてしまえと。
熱に浮かされた病人のように潤んだ瞳に、鋭く淫猥な欲望が走り、眼の色を赤黒く変える。
変なのだ、経験したことのない技術が、行為が舞の頭に次々と浮かび、彼女の理性を壊そうとする。
違うことが考えられない、雪をどうにかしてしまう事こそが、自分の生きる道なのだと思わされてしまう。
頭の中が書き換えられていく、親友の雪を犯せ、その肢体を陵辱せよと、ささやき声は耳鳴りのように、舞へと鳴り響いた。
「雪…ゆきぃ…」
我慢できない、もう自分で自分を止められない。
これは捕食者の目だった、獲物を狙う肉食動物の強靭で、獰猛な視線。
舞は雪のピンク色にいやらしく蠢く秘裂に顔を押し付け様として、突如として襲ってきた腹痛に顔をゆがめたのだった。
「うあっ…」
止められた、様な気がした。
舞の身体の内なる部分が、暴走し始めた精神を無理矢理ストップさせたのか…
否、雪を狙う舞の本能はもはや理性では止められるものではなかった。
ならば、どうして舞は悶え苦しんでいるのか、その真実はもしかすると精神の変化にあるのかもしれない。
彼女の身体は彼女の本能による暴走をトリガーに、何かを起こそうと変化しているのだろうか…
雪の太ももをさすっていた手で自分の腹を押さえ、全身を震わせて唸りやがてその場でうずくまってしまう。
「ま、舞ちゃん、大丈夫!?」
舞の様子の変化に気がついた雪が、自身のはだけた衣装の事など気にかけず苦しみ、脂汗を掻く舞の背をさする。
声も出せないほどの痛みを堪えているのか、舞は雪の語りかけに頷いて答えるだけで、まったく大丈夫そうではない。
このままでは舞は死んでしまうのではないかと、自身の病院通いが続いた境遇を重ねてしまった雪は、ただでさえ白い肌を真っ白にし、あたふたと混乱してしまう。
救急車を呼ぶにしても此処は森の中、車が入ってこれるスペースなど、あろうはずもない。
助けを呼びに行くという手段もあったが、森のどの場所に居るのかわからない上に、もし外へ出られたとしても、この場所に戻って来れるのかという問題があった。
迷ってしまった雪は、取りあえず苦しむ舞の背中をなで、少しでも気分が良くなるようにと努力した。
取り出したハンカチで、漏れ出た紫の粘液を拭い、優しく声をかけていく。
「…ふっ…ふううう、ゆき?」
しばらくそうしていると舞も次第に落ち着いてきたのか、涙に濡れた眼を擦って雪の姿を探したのだ。
雪は背中から抱きついて、舞のまだ痛みが残っているのか震えている身体を支えてやる。
暖かい雪の体温が伝わり、舞の頬が強ばったものから、いつもの笑顔へと戻った。
背中から巻きついた雪の腕に、舞は自分の手を重ね、ほぅとため息をついたのだった。
朝日の心地よい光を浴びながら、互いに緊張の糸が途切れた二人は、そのまま重なるように地面に崩れ眠ってしまった。
舞の身体で起こり始めた変化は、彼女が眠りについた後も続き、後に開花する事になる。
激痛もその序章に過ぎないのだと、この時は舞も雪も気づいては居なかった。