偽蟲 ニセノムシ 作:淫徳
第四蟲
三人の子供たちが森へと消えた。
これは間違えようのない事実であり、嘘であって欲しい本当の事だ。
園山市、美土里町。森が町を占めていると言っていいほど、広い命の森の面積には、ある文献が残されていた。
美土里町の郷土資料館には二冊、園山市の国営図書館には一冊の資料が残っている。
内容はいずれも同じで、桃太郎やかぐや姫などに準ずる童話のようなものだったが、その話にはぞっとするような結末が待っていた。
この童話が各所に広まらなかった事も、この修正のしようもない燦然とした展開が理由だろう。
むかしむかしあるところに、古いじだいからある、おおきなもりがありました。
もりには、たくさんのどうぶつたちであふれ、いつもにぎわっていました。
ですが、あるとき、そらから、おおきなたまごがふってきたのです。
どうぶつたちは、おどろいてもりからにげてしまいました。
おおきなたまごは、もりのまんなかにとどまって、あかいひかりをだしました。
すると、こんどはどうぶつたちがあつまってきたのです。
たまごにすりよってきた、どうぶつたちは、だんだんとかずがふえ、もりはしずかになりました。
しずかなもりに、たびびとがやってきていいました。
「あのもりは、いつもしずかなのかい」
「いんや、あそこはむかしはにぎやかだったんだ。
それがそらからなにかふってきたときから、しずかになってしまった」
たびびとは、このもりにきょうみをもってしまいました。
やめておいたらいいのに、たびびとはむらびとにむりをいって、もりへはいるきょかをもらいます。
たびびとは、しずかになってしまったもりにあしをふみいれました。
するとどうでしょう、いままであかるかったもりのいりぐちが、きえてしまったのです。
あわててでぐちをさがす、むらびとはとちゅうにあるものをみつけました。
おおきなたまごのからです。
こわくなったたびびとは、ひっしにもりをさまよいあるきました。
でも、もりからはでれません。
どうぶつたちのすがたもみえませんでした。
しずかなもりは、たびびとをくるわせてしまいます。
やっとのことでもりのそとにでた、たびびとはそこでみてしまったのです。
とてもおおきな、むしを。
たびびとはそんなものはいないとおもって、じぶんをわらいました。
諸説ある昔話はここで中途半端な終わりを告げる。それはこの登場人物で主人公のような立ち回りだった旅人の話がそこで途切れたという説があるのだ。
昔話にはかならず作者がいる、ならばこの童話ももとになった事実があるのかもしれない。
村人は旅人から森の中での様子を聞き、それを子供たちへの戒めとして童話として残そうとした。
だが、旅人は巨大な虫をみた後のことを自分の妄想だと一蹴してしまったとしたらどうだろう。
あんなものは無いと、自分の心の安定の為に事実を否定してしまったとしたら。
森、そして卵、この童話は今の状況にぴったりと合いすぎている。
愚かな大人はそれらを旅人と同じ様に一蹴してしまうだろう。あんなもの幻だ、と。
しかしどうだろう、今回その主人公に回った、回されてしまった彼女達はそれらを嘘だと一蹴できるのだろうか。
有り得ない、有り得るの境界がまだ定まっていない彼女達は、見たものをありのまま認識する。
さて、嘘だと思った旅人は帰ってきて文字に童話を残すことが出来た。
彼女達は、それを見て帰って来ることが出来るのだろうか。
行方不明の捜索願が警察へと、母親の手で届けられはや三日。
誘拐だと疑う警察も、そろそろ森を調べる頃だろう。始まる、その日から運命を恨む悲劇が次々と起こり始める。