偽蟲 ニセノムシ 作:淫徳
第六蟲
夜、と言っても日が完全に沈み、世界が月の光の支配に置き換わった、人間たちの殆どが熟睡する時間。
空の星が踊るように瞬き、鋭利な先端を出した三日月が森を照らす真夜中のこと。
かの童話のごとく風が木を揺する音しか聞こえてこない森に、異常とも言える変化が起こっていた。
森の最も奥、開けた場所にひっそりと存在する奇妙な塊を覚えているだろうか。動物が近付かずその塊と木だけがあった場所は、今や沢山の動物の姿で溢れかえっている。
リスは尻尾をさげて無防備に塊の側に群れで集まり、鹿は塊に服従するように集団で地面にひざを付けて座っていた。
鳥たちは息を潜めるように、塊を囲うように辺りの木々にびっしりととまっている。他にも熊、山猫、猿、狐などがお互いに争うことなく、不気味な沈黙を守って塊を見つめていた。
オレンジ色の光を発していた塊は、いつの間にか赤く毒々しい色の光を発し、辺りをスポットライトのように照らす。
この光景をもし空から見た人がいたならば、夜空に輝くプロメテウスなどの巨大恒星だと評価するだろう。血のように真っ赤に輝く一点は、空からしか見ることが出来ない。
そして、妖しげな光に導かれるようにしてゆっくりと近付いてくるのは、麦わら帽子を被った、ワンピース姿の女の子。
彼女は、塊に近づくことなく見ているだけの集まった動物たちとは違い、塊に手を触れ、やがて抱き締めるように身体を密着させた。
身体が塊を抱き締めると、それに答えるかのように、塊はより強い光を発し始める。スポットライトから、車のナイトライトのように強烈な光へと。
瞬きも早く変化し、中から心臓の鼓動のような血液が流れる音が溢れ、静かな森に響き浸透する。
「あ、あああ…」
彼女は声にならない呻きを口から漏らし、どこか潤んだ瞳で愛おしそうに塊に頬ずりをする。塊に麦わら帽子が引っかかり、頭から落ちてしまっても、彼女はそれをとろうとしない。
塊に触れることが最上の使命だと言わんばかりに、彼女は自らの肌を塊にすり付けていた。
深く広い森を抜けてきた彼女の肌は、木の棘や枝で無数に傷がついており、中にはまだ出血しているものまであった。塊をなで上げる手からは、堅く荒い表面を触る度に傷口が口を開け、ぬるぬるとした鮮血が塊へと塗り込まれていった。
呼吸は何メートルも走ってきたように荒く、体温も常温ではないようで頬は桜色にそまり、メッシュのきいた髪から額に何すじもの汗が流れ落ちていく。
だらしなく半開きになった口からは涎が糸を引き、塊へと流れ鮮血と混じり合い塊に吸い込まれるように消えてしまう。何度も何度も自分の傷ついた身体を塊に狂ったように擦り付ける。
まだ快楽を知らない幼さの残る股の間からは、トロリと汗とは違う液体までも溢れ、太ももを伝って流れていくのだ。
真っ暗闇に赤い光に照らされて映る彼女の姿は傷ましいまでも、ひどく官能的であった。
塊から発せられる鼓動は、徐々に強く耳に、身体に響くような大きなものに変わり、側にいる動物たちの身体までも震わせる。
森はある一つの悲劇を感じているかのように、不気味な風を吹かせ、草は恐怖にさざめき、木々は悲鳴を上げるように葉をすりあわせた。
ピシリとガラスが割れたような鋭い音が塊から発される。卵形をした塊のちょうど彼女がいる部分が小さく避け、角のような突起が飛び出した音だ。
針のように鋭く、彼女の腕ほどもある突起は赤黒い蛇のように長い胴体と繋がっており、塊から出でると同時に、塊に抱きつく少女の身体へと巻き付いたのだ。
赤紫色の濃いスライムのような粘液が滴る長い蛇…触手は、少女の身体を探るようにワンピースの脇から中に侵入し、汚らしく艶めかしい液体を日に焼けた小麦色の肌に塗り込んでいく。
きめの細かい幼い肌は、しだいに頬のように朱に染まり、心音も呼吸も荒いから激しくなっていく。
「ふ…はぁ…んっ、ああっ!」
ひび割れが塊の天辺に増え、少女に巻き付いているものと同じ様な触手が、今度は無数に噴き出すように溢れ出た。
一見イソギンチャクのように見える触手の束は、意志を持っているかの如く一点、少女へと向かい彼女の全身を覆い隠すように肌に巻き付いていく。
ワンピースの中にも何本も侵入し、膨らみ始めた乳房や、発達し始めた白い桃尻に絡まり粘液を貼り付ける。
それに合わせて少女の顔が花が咲いたようにとろけた笑顔を浮かべ、気持ちよさそうな喘ぎ声をあげるのだ。
「んんっ…うあっ、はああああっ!」
腰から電撃が通ったように、ガクンと大きく身体が揺れた。
小学生と言うことで男性経験もあろうはずもない少女に降りかかる、異常なほどの快楽は、彼女の心を壊し解き深い闇へと沈めていく。
そして、ある程度時間が経った頃だろうか、少女の四肢にこれでもかと巻き付いた触手の先端に生えた鋭い突起。
それが経験したことのない快楽に溺れ、周りの状況が見えていない無知な彼女に先端が近づき肌にあたる。
注射器を突き入れるような、ゴムのように軽い抵抗があっただけで、少女の肌は触手の突起を難なく受け入れてしまった。
腕に、両手に、胸に、首に、背中に突起が刺さり、水滴のように漏れ出た血液が、溢れ出る雌のにおいを含んだ汗に混ざる。
もう彼女は全身にのみ広がる快楽しか脳で受け入れていないらしく、肉をかき分け進もうとする痛みでさえも、快楽へと変換されてしまう。
そうしてある程度時間をかけて、彼女の身体を、心を完全に屈服させた後、本番ともいえる行為に事は進むのだった。
触手の中でも子供の腕ほどの突起と、針のように細い先端を持ったものが、脇腹へと、その鋭利な先端を突きつけたのだ。
肉の裂ける鈍く水っぽい音が、彼女から聞こえた…
「ぐぶっ…」
深く腹へと突き刺さった突起は、触手のようにより深くその胴を伸ばし、彼女の肌を裂くように体内へと潜り込んでくる。
固い繊維である筋肉に行き当たると、突起はドリルのように回転し、肉を削り切り取りえぐり取って、先へと進むのだ。
胃を傷つけたのか、彼女は小さな体を小刻みに震わせて口から真っ赤な液体を吹き出した。
蛇のように蠢き身体を貪るように、動き続ける塊の突起に、とうとう彼女は限界を迎えてしまう。目がぐるんと上を向き、口から噴水のように大量の血液を吹き出して、塊をささえるようにゆっくりと地面に、仰向けに崩れ落ちたのだった。
「い、たい」
舞と呼ばれ、愛された少女はそう呟き短い生涯を終えた。