この時期は段落が短い……w
新学期が始まった。斎姫は久しぶりに入った教室でそっと息をついた。別荘で過ごした時間がやけに短かったように感じられる。斎姫は真っ直ぐに自分の席に向かった。
今日は身体の調子はいいようだ。別荘にいた間は環境が違っていたからあんなに調子が悪かったのだろう。斎姫はほっとしながら席についた。毎日のように激しく欲情し、毎日のようにあの小箱を開けた。だが、今日の斎姫は憑きものが落ちたように晴れやかな気分だった。
やっぱり学校は好き。斎姫はそう思いながらちらりと横の席を見た。今日はまだ優一郎は登校してきていない。だが、これから来るのだと思うと胸が躍る。斎姫は高鳴る鼓動を抑えるように胸に手をあてた。
斎姫の周りには仲良くしているクラスメイトの女子生徒たちが集まってきた。斎姫は久しぶりのお喋りを楽しんだ。一ヶ月と少ししか離れていなかったのに、何だか酷く懐かしく感じられる。
斎姫たちが楽しく喋っているうちに優一郎が教室に入ってきた。斎姫は出来るだけ嬉しさが顔に出ないように努力しながら挨拶をした。だがどうしても顔が緩んでくる。優一郎は夏休み前と同じように優しい微笑みで斎姫に応えた。
今日は始業式だけで授業はない。あっという間に学校での時間は過ぎていく。すぐに帰りのホームルームが始まった。
片思いなら構わないわよね……。そう思いながら斎姫は隣に座る優一郎を見た。優一郎は何かの本を読んでいる。ふと、優一郎はカバーのかけられた本から目を上げた。視線に気づかれた斎姫は慌てて目を逸らす。だがそんな斎姫に優一郎は静かに微笑みを浮かべていた。それを知った斎姫のクリトリスが敏感に反応する。他愛ないことで勃起してしまったことを恥ずかしく思いながら、斎姫は俯いた。
日直の号令に合わせて立ち上がる。その時、優一郎の机の上から本が落ちた。斎姫は何気なく腰を屈め、本を拾い上げようとした。
本を見た瞬間、硬直する。めくれた本のページにはヒューマノイドについての解説が書かれていた。目を見張って動けなくなった斎姫をよそに、クラスメイトたちが礼をする。斎姫は本を凝視したまま動けなくなっていた。
「あっ、ごめん」
優一郎がそう詫びて斎姫の目の前の本を拾い上げた。斎姫は慌てて顔を上げ、優一郎を見つめた。だがすぐに思い直す。こんなに反応したら怪しまれるかも知れない。斎姫は出来るだけ動揺が顔に出ないように努めた。
「こんな本読んでるなんて、変かな?」
優一郎は苦笑しながら告げた。屈めた腰を戻す優一郎の手が斎姫の手に軽く触れる。斎姫は思わずびくりと肩を震わせ、慌てて首を横に振った。
「僕は科学者になりたいんだ。だから、少しでも知識を増やしておこうと思ってね」
椅子に戻った優一郎はそう言って笑った。斎姫はぎこちなく笑みを返しながら席についた。クラスメイトたちはもう、帰り支度をはじめている。近くの席の友達に声をかけられ、斎姫は曖昧に笑いながら挨拶をした。優一郎も本を鞄に納めている。だが斎姫は黙って優一郎を見つめていた。
気が気ではなかった。別に優一郎は自分のことを言っている訳ではない。だが斎姫は緊張しきっていた。
「ヒューマノイドって知ってる?」
優一郎は鞄の蓋を閉じ、そう言って斎姫を見やった。斎姫は無言で首を横に振る。殆ど反射的な動きだった。そんな斎姫を見た優一郎はそう、と笑って続ける。
「機械の身体と人間の脳を組み合わせた機械人間のことさ。もちろん、まだまだ実用化は先だけどね」
機械人間。優一郎がそう告げた時、斎姫は目を僅かに見開いた。
「将来の研究対象の候補のひとつなんだ。今はまだ、ヒューマノイドに対する注目度は低いけど、将来性は高いと予測してる」
真面目な顔で語る優一郎の声が遠い。斎姫はぼんやりと優一郎を見つめていた。
機械人間。その言葉がどうしても頭から離れない。斎姫は哀しい気持ちで静かに息をついた。熱心に語る優一郎はそのことには気付かなかったようだ。
「だけど、人間の尊厳を蔑ろにし、神を冒涜する研究だって批判もあるからね。そのへん、迷ってるとこなんだ」
優一郎が困った顔になる。だが斎姫はどんなフォローも思いつかなかった。それどころではなかったのだ。蔑ろにする。冒涜する。だが自分はその技術がなければ生きられない。斎姫は自然と悲しみに目を潤ませていた。
「君はどう思う?」
急にそう振られる。斎姫はだが優一郎に応えられなかった。黙って首を横に振り、優一郎から顔が見えないように俯く。すると優一郎が慌てたように身体を乗り出してきた。
「あっ、ごめん。興味もないのに、いきなりこんな話されても困るよね……」
心配顔の優一郎が斎姫の顔を覗き込む。斎姫は無理に笑って首を横に振った。優一郎が悪いのではない。意識する自分がいけないのだ。優一郎は将来の夢を語っているだけで、何ら悪意はない。そう思いながら斎姫はきちんと顔を上げた。
「そんなことないわ。素敵な目標だと思う。わたしなんか、将来のことなんか何も考えてないもの」
斎姫がそう告げると恥ずかしそうな顔をして優一郎が頭をかく。斎姫は努力して微笑みを浮かべた。優一郎も照れたように笑っている。
だが斎姫の下着の中は濡れ始めていた。間近に優一郎の存在を感じているからだろう。身体が勝手に反応しているのだ。クリトリスは勃起しているし、身体は疼いている。ヒューマノイドというのはこういうことなのだ。斎姫は悲しみを覚えながらそう胸の内で優一郎に告げた。
「おーい、吉良ー」
不意に誰かの声がする。呼ばれた優一郎が振り返った先に、クラスメイトの男子生徒がいた。男子生徒はドアの方に指を向けて顎をしゃくっている。斎姫はため息をついて鞄を机に乗せた。
「お客さんだぞー」
そう言われた優一郎が席を立つ。斎姫に笑顔で挨拶し、優一郎は教室を出て行った。斎姫はその後姿を見送りながら、目に涙を浮かべていた。
部品の名前がなあ……
ダメダメですね!