修正していないとお断りする方がアレになってきましたが。
ホントすみません。
優一郎を買物に行かせている間に、絵美佳はこっそり隣の部屋に足を踏み入れた。何で僕が、と優一郎は買物を命じられて文句を言っていたが、強引な絵美佳の言い分に負け、今は外に出ているのだ。
絵美佳は薄暗い優一郎の部屋で息を押し殺していた。別に優一郎に見られている訳ではない。だがやましいことをしているという気分は拭えない。絵美佳は黙って優一郎の机に歩み寄った。
吉良先輩の弟、人形に遊ばれてるぜ? 多輝の耳打ちした言葉が脳裏に蘇ってくる。絵美佳は舌打ちをしてため息をついた。優一郎が機械人形に興味を持っているのは、主に自分が原因だ。だからそれを咎める気にはならない。仕方のないことだと思う。けれど相手の機械人形がのうのうと高校に通っているのだと聞いた時には驚いた。同じ学校に機械人形がいる。それと判らないように生徒に紛れ、周囲の人間を騙している。そのことが腹立たしい。
絵美佳は優一郎のパソコンを立ち上げた。優一郎は大事なものをハードのどこかに隠す習性がある。決して完全に消去したりはしない。見えないどこかに今も証拠が残っているに違いないのだ。
「ふん。相変わらずセキュリティがなってないわね!」
指を鳴らしてキーボードに向かう。絵美佳は滑らかなタッチで優一郎のパソコンを操作し、ハードディスク内を覗いた。見える場所にそれらしいデータはない。
「とりあえず、あたしのマシンに全部コピって、後でゆっくり解析すればいいわ!」
スマートな方法ではないが、確実だ。そう考えて、バックアップを取ろうと持ってきた光ディスクドライブを挿入しようとした、その時。
「あら? メール?」
電子音がして、メールの受信音がした。メールソフトを開くと、新着メールが一通ある。差出人の名前はTKとだけあった。
「なにこれ? URLだけしか書いてないけど……」
絵美佳が思わずURLをクリックすると、閲覧ソフトウェアが動き出しURLにリンクしたサイトが開く。しかし、サイトの中に入るにはパスワードの入力が必要なようだ。
そのサイトの置かれているサーバーは、吉良瀬テクノロジーセンターのものだった。そのとき、絵美佳の脳裏に閃くものがあった。
「これだわ!」
URLにはアクセスできないが、一時ファイルがコンピュータのどこかに残っているはずだ。絵美佳の予想どおり、一時ファイルを格納するフォルダを開くと、前回、このサイトにアクセスしたときの内容が保存されていた。
絵美佳は画面が切り替わると同時に身を乗り出した。一体、優一郎は何を隠しているのだろう。そして現れた画像に息を飲む。昔、総一郎が模型で見せてくれた機械仕掛けの女性器が映っている。画面の中で女性器は愛液を垂らしているのだ。
「メカ女性器だわ!」
母である由梨佳に装着されているものとは少し形状が異なる。画面で動いている女性器は由梨佳のものより生身からはかけ離れていた。蠢いている膣壁も、開いている膣口も作り物に間違いない。それに何よりもその女性器が異質だと感じるのは、クリトリスの下につけられている幾つものランプだ。横二列に並んでいる極小のランプが点灯している。
「あの子、こんなものを見ていたのね」
カメラが引くと、悶えている女性の全身が画面に映し出される。その女性の横顔には見覚えはない。だが年頃で言えば自分と同年代ではないだろうか。絵美佳は顔をしかめてじっと画面を見つめていた。
卑猥に喘ぐ機械人形を見ながら、優一郎は何を思ったのだろう。同年代の女の子を模した人形を見て、何を想像したのだろう。そう考えた絵美佳は身震いした。きっと優一郎はこの画面を見ながら欲情したに違いない。もしかしたら自慰すらしたのかも知れない。それを思う絵美佳の顔には、次第に怒りの色が浮かんできた。
だが怒りはどこにもっていけばいい? 絵美佳は激しい自己嫌悪に陥った。全ては自分の企みで始まったことだ。そうでなければ優一郎はきっと人形などに興味は抱かなかったに違いない。あの日、母に欲情しなければ。
絵美佳はのろのろとコンピュータを終了させた。ため息をついて優一郎の部屋を出る。捜索の跡は全て消しておいた。優一郎が気づくことはないだろう。絵美佳は力なく俯いたまま、自分の部屋に入った。
パパ。閉じたドアに寄りかかった絵美佳は小さく呟いた。助けて、パパ。優一郎がどんどん離れて行っちゃうの。本当はそう言いたい。けれど総一郎には相談できない。どうして自分が原因である優一郎のトラウマを話せるだろう。絵美佳はドアから離れ、頼りない足取りでベッドに向かった。ベッドに突っ伏す。
多輝が言っていたことは本当だったのだ。絵美佳は夕方に会った多輝のことを思い出していた。もしかしたら多輝なら人形を優一郎から離してくれるだろうか。そう考えてみる。だがすぐに絵美佳はため息をついた。布団に吸い込まれた息がぬるい感触になって顔に触れる。
無理だ。そう思う。自分が壊そうとしても由梨佳はどうしても壊れなかった。代わりに壊れたのは優一郎だった。絵美佳は悲しい気分でもう一度息をついた。再び顔に熱い息が触れる。
どんなに憎んでいても人形は簡単には壊れてくれない。だからこそ、人が人形の性能を上回ればいいのだと思った。人形以上に働けば、きっと人形など必要ない。由梨佳もきっと要らなくなる。
だってパパと優一郎にはあたしがいるもの。ママなんていなくたって平気。きっと大丈夫。
でも、そうは思っても絵美佳は悲しみに囚われていた。多輝が人形をどうにかしてくれるだろうか。優一郎から離してくれるのだろうか。そしてそれは本当に出来ることなのか。自分に無理だったことを、多輝なら実行してくれるのだろうか。
絵美佳は暗い部屋で一人、静かに考え続けていた。
こんな正確じゃないんですけどねー(棒
色んな意味でキャラがブレブレです。