※この作品はR-18です。

パペットプリンセス   作:伊駒辰葉

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ちゅーシーンはありますけど色気もくそもありません。


キスと力の流れと

「治してあげようか?」

「は?」

 

 すらりと告げられ、多輝は思わず声を上げた。だが立城は微笑みを浮かべたままだ。立城は女性秘書に頷き、隣に座るように促してから多輝に顎をしゃくった。

 

「その傷だよ。そのままだと学校にもいけないだろう? それとも多輝は痛いのが好きなの?」

 

 多輝はそう言われて反射的に首を横に振った。誰も好きで痛がっている訳ではない。すると立城がにっこりと笑って頷いた。腰を上げて近づいてくる。息を飲んだ多輝に覆い被さろうとする。多輝は慌てて肩にかかった立城の手を振り払った。

 

「なっ、なっ、何しやがる!」

「え。傷の治療」

 

 立城は不思議そうな顔をして屈めていた腰を上げた。多輝はじりじりと立城から離れて激しく首を振った。冗談じゃない。どう考えてもさっきの立城は多輝に口づけをしようとしていた。多輝は冷や汗を流しながら嫌だ、と喚いた。

 

「ぜえったい、やだ!」

 

「何で?」

 

 相変わらず立城は微笑みを浮かべている。多輝は冷たい汗をかきながら懸命に首を振った。

 

「おれはノーマルだ!」

「ああ、なるほど」

 

 叫んだ多輝に立城が頷く。そして立城はふわりと動いてソファに戻った。元の位置に座り直してにっこりと笑う。

 

「つまりは男同士だから嫌だということだね?」

「だからっ、さっきからそう言ってるだろうが! ぜったい、やだからな!」

 

 男同士という以前に、どうして口づけすると傷が治ることになるのかということを多輝は考えなかった。動揺のあまり、そっちにまで気が回らなかったのだ。ソファの隅に寄って睨んでいる多輝を眺めながら、立城は楽しそうに笑っている。

 

「じゃあ、女の人なら構わないと?」

「どっ、どっちかと言えばそだなっ」

 

 多輝はやけくそ気味にそう叫んだ。他にどう言えばいいのか判らなかった。ただ、立城からキスされるのだけは我慢できなかったのだ。

 

 ふいに立城が多輝から目を逸らす。立城は隣に座る女性秘書を見つめた。

 

「桜」

 

 立城が秘書に呼びかける。桜と呼ばれた女性ははい、と頷いてゆらりと立ち上がった。長い髪が動きに合わせて肩から零れて落ちる。多輝はぼんやりとそんな桜を見上げた。

 

「女性ならいいんだね?」

 

 立城は多輝を見ながら念を押す。多輝は訳が判らないままで力なく頷いた。一体、立城はどうするつもりなのだろう。そう思っていると、唐突に立城が桜の腕をつかんだ。桜が腰を屈め、立城に口づける。多輝は思わずあっ、と声を上げた。

 

 二人はしばらく唇を合わせていた。多輝は呆然とそんな二人を見つめた。やがて桜が顔を上げ、立城がつかんでいた腕を解放する。呆然としていた多輝に、立城が笑いかけてきた。

 

「桜。頼むね」

「はい」

 

 桜が近づいてくる。多輝は焦って身体をよじった。唇を寄せてくる桜を何とか腕で防ぎ、立城を睨みつける。

 

「なに考えてんだよ!」

「え。だって女の人ならいいって」

「そっ、そういう問題じゃなくて! 何でおれがこの人と!?」

 

 多輝は懸命に桜の腕から逃れようとしていた。だが桜の力は思った以上に強い。傷の痛みも手伝って、多輝は思った通りに動くことが出来なかった。嫌がる多輝の肩をつかみ、桜がふわりと微笑む。

 

「失礼します。多輝様」

「うわっ、ちょ、失礼っておい!」

 

 必死で顔を背ける。だがそんな多輝に構わず桜は覆い被さってくる。

 

「……往生際が悪いね」

 

 立城の呟きが聞こえてくる。多輝はなんだと、と反射的に喚き返した。立城はため息をつきながら肩を竦めている。だがその様子は桜の陰に隠れて多輝には見えなかった。

 

「今更、キスを恥ずかしがることもないんじゃない? 君の素行くらい、お見通しなんだよ?」

「そっ、そんなこと言われてもだなっ。いや、ちょ、ちょっと待ってってば! おれにも心のじゅ」

 

 多輝の声は途中で桜に封じられた。桜の柔らかな唇に唇を塞がれる。多輝は目を見開いてばたつかせていた手足の動きを止めた。何かが強制的に身体の奥底にねじ込まれてくる。多輝は得体の知れない感覚に思わず目を閉じた。

 

「ほら。身体の力を抜いて。多輝がそんなだと、治るものも治らないよ?」

 

 どこかで声がする。多輝は声に操られるようにして、全身にこめていた力を抜いた。途端にあたたかい何かが唇からなだれ込んでくる。桜の舌が多輝の唇を割り開き、滑り込んでくる。多輝は反射的に桜の腰に腕を回した。

 

「そうそう。感覚を研ぎ澄ましてごらん。身体の痛みがゆっくり消えているのが判るだろう? 試しに力の流れに身を任せるといい。そうすれば自分の中に入ってくる力がもっとよく判る筈だよ」

 

 身体の力を抜く。流れている何かを感じる。多輝は立城の声に従った。桜と舌を絡めながらあたたかい何かの動きを感じる。

 

「それが君を構成するものの正体。力の流れや吹き溜まり、そういった目に見えないもので僕たちは構成されている」

 

 声が遠い。多輝は桜と深い口づけを交わしながら遠くで響く声を聞いていた。いつの間にか身体の痛みは消えている。だが、同時に意識も朦朧とし始めている。多輝は意識を保とうと、桜の身体を強く抱きしめた。細い身体だけが現実のように感じられる。

 

 やがて多輝の意識は闇に沈んだ。




修正していないのがデフォなので断りは要らないかな……と思って書きませんでした。
正直、修正するときりがないというか!
見たらヤバいというか!

ホントすみません……。
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