が、メカが書けていないので期待はしないでください……。
暗い部屋の中でディスプレイだけが煌々と明かりを灯している。絵美佳は目を細めて画面を睨みつけていた。よもや、学校内にカメラが仕掛けられているとは思ってもみなかったのだ。
「むかつくわねえ!」
もっと早くカメラの存在に気付いていれば。それならもっともっと早くこの女子生徒の存在に気付けていただろう。絵美佳は親指の爪を強く噛みながら、画面を鋭く睨んだ。
優一郎のマシンからコピーしたデータの殆どは見ることが出来なかった。パスワードを打ち込まなければ開けないものばかりだったからだ。おまけに妙なクイズも大量に入っており、絵美佳はクイズの途中で解くことを放棄した。科学に関することならともかく、別分野は絵美佳は不得意なのだ。
小学生の頃、担任は渋い顔をして絵美佳の父、総一郎に告げた。お嬢さんの知識は少しばかり偏っています。科学に関しては抜群の記憶力を発揮するのに、他の教科は芳しくない。だがそれを聞いた総一郎は胸を張って答えたものだ。
「うむ! 科学の未来は明るい! 明るいぞ!」
担任は絶句し、総一郎は教室で力強く頷いた。まあ、そんなこともあったのだが、当の絵美佳の耳にそれは入っていない。だが、その頃から絵美佳の知識の偏りは全く変わっていないのだ。
データの殆どは見ることが出来ない。だが、優一郎のマシンの奥底には別のデータが眠っていた。フォルダに入ったそのデータを開くことは、絵美佳にとって造作もなかった。優一郎の施したトラップを難なく切り抜け、絵美佳はそのデータを手に入れることに成功したのだ。
それは映像だった。画面に映し出された場所には絵美佳も覚えがあった。いつだったか、研究に使えそうなものを漁りに入ったことのある倉庫の中だった。そして据えられたソファの上で誰かが自慰をしていた。絵美佳は初めてその映像を目にした時、呆れてため息をついた。一体、優一郎は何を考えているのだろう。
だが画面に自慰をしている女性の顔が大きく映し出された時、絵美佳は息を飲んだ。似ている。どこがという訳ではないが、その女子生徒の顔は絵美佳の嫌う由梨佳に似ていたのだ。
絵美佳は怒りに顔を歪め、画面を睨みつけた。それから、今までの間、ずっと絵美佳の顔には怒りの色が浮かんだままだ。フォルダに収まっていた大量のデータを日付順に見ていく。だが、どれも同じ女子生徒が映っていた。
不機嫌なまま、絵美佳は次の画像データを開いた。やはり今度も同じ女子生徒だ。同性とは言え、自慰シーンを見せられた絵美佳も何も感じない訳ではない。少しは身体が疼く。だが絵美佳はそれを上回る怒りを覚えていた。椅子の上で胡座をかき、好きな海苔せんべいを齧りながら画面を睨む。早送りして画面を先に進める。やはり女子生徒は悶えながら自慰を続けている。
こんなものを見ながら優一郎は何をしていたのだろう。絵美佳は苛々しながらそう考えた。どのデータにも同じ女子生徒が映っているということは、少なくとも優一郎がこの女子生徒に興味を示しているということだ。絵美佳はため息をついて次のデータを開いた。
「ママに似てるってのがムカツクわよね……」
そう言いながら絵美佳はヘッドホンをハードディスクに繋いだ。さっきから気になっていたのだ。女子生徒は自慰をしながら何かを喋っている。せんべいを歯で挟み、絵美佳は何気なくヘッドホンを被った。
その瞬間、絵美佳は硬直した。女子生徒は甘えた声で優一郎のことを呼んでいるのだ。いや、実際には苗字だけだから他の誰かかも知れない。だが、絵美佳が知る限り、吉良という苗字を持っているのは、学校内において自分と優一郎だけだ。絵美佳は顔を強張らせて画面の中で喘ぐ女子生徒を睨みつけた。
「っとにむかつくわね!」
他の誰かならまだしも、優一郎のことを思いながら自慰をしているということが腹立たしい。絵美佳は強くせんべいに噛み付きながら、次の画像データを開いた。
お嬢さんは少し変わっています。まず、集団行動に適さない。とにかく目的のためには周囲の迷惑など全く考えないようです。特に、科学のためとか何とか、不思議なことを叫びながら授業を中断させるのが……全く。
かつて中学校の担任は絵美佳をそう評した。もちろん、絵美佳自身がそれを聞いた訳ではない。学校に呼び出された総一郎にそう漏らしたのだ。その頃の絵美佳は教師がどう扱っていいか非常に悩む存在だった。だがそれを聞いた総一郎はまたもや担任の望まない反応を示した。
「うむ。科学のためなら仕方ないのではないのかね?」
と平然と頷いた総一郎に担任は絶句し、次に母親を呼び出した。初めて中学校に呼び出された由梨佳は緊張しきり、絵美佳の学校での様子を聞いてさらに顔を青くした。絵美佳の担任も由梨佳の反応に頷き、それまでの絵美佳の素行を念入りに報告した。
落ち込んだ由梨佳は家に戻り、まず絵美佳に問いただした。担任の先生が言っていたことは本当なの? だがその時の絵美佳の反応は凄まじかった。
機械人形のあんたにそんなこと言われたかないわね!
そう叫んで自室にこもってしまったのだ。うろたえた由梨佳が呼びかけても全く返事をしない。そんな絵美佳を宥めようとしたのは優一郎だった。まだ、当時は小学生の優一郎は、部屋のドア越しにおずおずと絵美佳に問い掛けた。
おねえちゃんはおかあさんがきらいなの?
涙混じりの声に負け、絵美佳は締め切っていた部屋のドアを開けた。優一郎は泣きじゃくりながら廊下に立っていた。喧嘩しないで、と訴える優一郎を絵美佳は抱きしめた。怖がらせてごめんね。そう詫びる絵美佳の胸で、優一郎はわんわん泣いた。
思えばあの時からもう、優一郎は母親である由梨佳を好いていたのだ。絵美佳は不機嫌にせんべいを噛み砕きながら、次のデータを見た。どれを見ても同じ女子生徒だ。由梨佳を思わせる美しい顔が快楽に歪んでいる。そしてそうしながら優一郎を呼んでいるのだ。
絵美佳は怒りに任せて画像を閉じた。どれを見ても腹が立つことに変わりはない。どうせ全部、同じ子なんでしょ。そう呟いて絵美佳はため息をついた。小さくなったせんべいを口に放り込み、新しいせんべいを手にする。
絵美佳の目から見ても優一郎は筋金入りのマザコンだ。だが世に言うそれと優一郎のそれは少しずれがある。優一郎は機械人形を好いているのだ。由梨佳がもし、機械の身体でなければここまでにはならなかったかも知れない。
ため息をつき、絵美佳は一番新しい日付の画像データを開いた。そして息を飲む。画面の中には女子生徒だけでなく、優一郎の姿もあった。
「優一郎!?」
思わずそう呼び、絵美佳は画像を凝視した。ヘッドホンからは二人の声が聞こえている。間違いなく、優一郎の声がしている。
「この女、何様のつもり!?」
優一郎の傍に佇む女子生徒を睨みつけ、絵美佳はそう喚いた。ぎりぎりと歯軋りすると、歯の間でせんべいが砕ける。力を込めてせんべいを噛み、絵美佳は画面を睨みつけた。
だがふと絵美佳は口の動きを止めた。ヘッドホンから流れてくる優一郎の声に集中する。そして絵美佳はごくん、と喉を鳴らした。優一郎は優しい微笑みを浮かべながら女子生徒に命じる。
スカートをめくって。そして優一郎の命令に従い、女子生徒がスカートを持ち上げる。目を細めてその様子を見つめていた絵美佳は思わず口を開けた。挟んでいたせんべいが転がって落ちる。
女子生徒は下着を身につけていなかった。左の腿に布のベルトが巻きついており、そのベルトには何かの機械が挟まれている。細長いコードが機械から伸び、晒された女子生徒の陰部へと繋がっているのだ。
膣検査スティックの具合はどうだった? けっこう気持ち良かったでしょ?
優一郎は微笑みながら女子生徒に告げる。絵美佳は固唾を飲んで二人の様子を見守っていた。悠然とソファに座り、優一郎は笑っている。そして、女子生徒の股間を見つめているのだ。絵美佳は息を殺して画面を見つめた。
検査。絵美佳は口の中でそう呟いた。つまり、女子生徒の股間に挟まっているものは優一郎が入れたということか。絵美佳はぼんやりと画面を見つめながらそう考えた。女子生徒は恥ずかしそうに俯いている。だがアップになると女子生徒の足に愛液が垂れているのが見て取れた。
意地悪言わないで……。女子生徒は切ない声で答える。画面を見つめる絵美佳の顔からはいつの間にか怒りは消えていた。自然と顔が熱くなる。あの優一郎が笑いながら女子生徒に手を伸ばす。それを見るだけで絵美佳の身体に小さな疼きが生まれた。
優一郎は女子生徒に足を開くように命じた。女子生徒がためらいがちに足を開く。すると何か太いものが女子生徒の股間で動いているのが見えた。絵美佳は思わず生唾を飲み、その様子を凝視した。
意地悪のつもりはないんだけどね。測定結果を見ればわかることだし。
優一郎は微かに嗤いながら女子生徒の股間に手を伸ばした。軽く腿をなぞり、ベルトに挟まれた機械を操作する。すると白く細長い紙が機械の下部から吐き出された。絵美佳は驚いて優一郎の手元を見た。レシート状の紙に何が記されているのかははっきりと見えない。だが、明らかに女子生徒の何らかのデータが示されているのだ。
吉良先輩の弟、人形に遊ばれてるぜ?
多輝の声が絵美佳の脳裏に響く。もしかして、と絵美佳は目を細めた。優一郎のマシンで見た機械人形の陰部を思い出す。ひょっとしてこの女子生徒があの陰部の持ち主なのだろうか。
多いので分割します。
この姉弟もなあ……(ボソ