長いので切りました。
初めて部員ではない生徒が研究室に入ってきたことで、室内にいた部員たちに動揺が走った。そんな部員たちの間を絵美佳は悠然と進んだ。後ろから黙って多輝がついてくる。
部長、と声をかけてくる部員に頷き、絵美佳は次の研究室に続くドアのところで振り返った。多輝が静かに横に並ぶ。
「科学部へようこそ。あなたの入部を歓迎するわ」
「待てい。誰も入部するとは言ってない」
即座に真横にいた多輝が低く告げる。だが絵美佳はそれを全く聞いていなかった。にっこり笑って新入部員である多輝の手を取る。多輝は不機嫌そうに顔をしかめ、絵美佳を見下ろした。
「人形破壊計画には部費を使うわ」
途端に多輝がにっこりと笑う。
「よろしくお願いします。吉良部長」
絵美佳の手を握り返し、多輝が笑っている。絵美佳は満足を込めて深く頷いた。成り行きを見守っていた部員たちの間から、まばらに拍手があがる。だがどの部員の顔も納得していない雰囲気だ。だが絵美佳はそれも全く気にしなかった。
今日はこれから新入部員と重要な話をするから、と部員に言い置き、絵美佳は多輝をつれて奥の研究室に入った。多輝が静かにドアを閉める。そこで絵美佳は振り返った。
「それじゃあ、さっそく実験に入るわよ!」
絵美佳はそう宣言し、研究室中央にある実験台を指差した。それまで成り行き任せについてきた多輝が、初めてうろたえる。
「えっ、実験って何の?」
そう言いながら、多輝はじりじりと後退していく。絵美佳は眉を寄せて何を当り前のことを、と鼻で笑った。そして多輝の股間をびしりと指差す。
「あんたの性交能力を調べるのよ!」
「なんでだ!」
勢いよく多輝が喚き返してくる。だが元々、この研究室には防音設備を整えてある。おまけに壁は消音効果の高い材質で囲んであるのだ。多輝の叫びは易々と壁の中へと消えていく。絵美佳はふふん、と笑って腕組みをした。
「まず、破壊作業は性行為を装って行われるっていうのがひとつ」
言いながら絵美佳は大またで多輝に近づいた。焦った多輝は閉じたドアへと後退していく。
「ふたつ目はあたしが、知りたいからよ!」
「なんだそりゃ!」
多輝は絵美佳を睨みながら叫んだ。だが絵美佳は何を今更、と笑いながら多輝に迫っていく。追い詰められた多輝は自然とドアに寄りかかる格好になった。後ろに回した手でドアノブを捻っている。だがここは特別な研究室だ。素材に逃げられないよう、ドア脇に設えてあるテンキーでパスコードの打ち込みを行わなければ開かない仕組みになっている。ドアが開かないことに焦っている多輝に、絵美佳はにんまりと笑った。自然、低い笑い声が出る。
「逃げようと思っても無駄よ!」
「吉良先輩、目が怖いぞ!」
多輝はこれ以上、後ろに下がれないことを知ったのか、今度は壁伝いに横に逃げ始めた。だがここは多輝にとっては言わば密室だ。絵美佳は逃げる多輝をのんびりと追いかけた。だが、ふと途中で足を止める。
「まさかと思うけど、多輝。あの力で逃げたら絶交だかんねっ」
そう言った途端、多輝が動きを止める。弾かれたように壁から離れ、絵美佳の許へと歩いてくる。絵美佳は黙って腕組みをし、目の前に立った多輝を見上げた。
あの力。先日の夜、唐突に現れた多輝に絵美佳は色んな質問をした。どうやら多輝には人にはない力が備わったらしい。だが多輝もその力の正体をはっきりと理解はしていなかった。そんな多輝に絵美佳は、『得体が知れない力だから……えーちゃん力!』とか、その他にも色々とネーミングの案を出したのだが、それらは悉く多輝に却下された。可愛いのに、と拗ねる絵美佳に多輝は全力で嫌がったのだ。
だから今でも多輝の不思議な力のことは『あの力』と呼んでいる。当の多輝にも力が発動する原理は判らなかったようだ。今は少しは進化したのか、自分の意志で何とかコントロールできるようになりつつあるらしい。
だがここであの力で逃げられたら、絶対に絵美佳には捕まえることが出来ないだろう。そんな意味を込めて言ったのだが、多輝は意外にも真剣な眼差しで絵美佳に迫ってきた。
「そんなことしない。相手が吉良先輩だから」
「……とか言って、最初は逃げたくせに」
絵美佳は不機嫌な眼差しで多輝を睨んだ。だが多輝は首を横に振る。
「あん時はあの力はなかった。今は違う。でも、使わない」
いつの間にか絵美佳は多輝に壁際へ追い込まれてしまった。あくまでも真剣な顔で多輝が迫ってきたので、何となく避けてしまったのだ。絵美佳は判ったわ、と頷いて間近に迫っていた多輝を押し返した。
特別研究室の広さは約十畳。絵美佳の自室より少し広めだ。絵美佳は多輝の背後に見えている実験台を見つめた。無言で指差す。多輝は顔をしかめて振り返り、実験台の存在を確認して呻いた。だが絵美佳は毅然と実験台を指差したまま、宣言する。
「それじゃあ実験開始よ! 早く実験台に乗って」
「だからさあ」
多輝は呻きながら顔を上げる。その唇が不敵な笑みの形になっていることに絵美佳は眉を寄せた。何だろう。だが疑問を口にする前に、多輝がするりと動いた。
壁に身体を押し付けられる。絵美佳は悲鳴を上げる間もなく多輝に唇を奪われていた。思わず目を見開く。反射的に抵抗しようとした絵美佳を、多輝はあっさり押さえつけてしまった。身体全体で絵美佳に覆い被さる。絵美佳は多輝の身体に押さえ込まれ、息苦しさに目を固く閉じた。
閉じた瞼の裏側に、初体験の時のことが浮かんでくる。あの時以来、激しい快楽に溺れたことを思い出すだけで陰部が疼いてくる。絵美佳は呻きながら多輝の舌を受け入れた。下着の中に湿り気を感じながら、絵美佳は懸命に多輝の口づけに応えていた。多輝が貪るように絵美佳の舌を吸う。思わず喘いだ絵美佳の声は、多輝の口の中で呻きになった。
「おれ、どっちかって言うと攻める方が好きなんだよ。悪いけど」
「だったらさっさとリードしなさい!」
絵美佳は真っ赤になりながら喚いた。急にキスをやめられたために逆に身体が火照っている。だが多輝はにやにやしながら絵美佳を見下ろした。何よ、と訊く絵美佳に肩を竦める。
「吉良先輩。実験になんの? それで。ほんとはただやりたいだけなんじゃないか?」
多輝は人の悪い笑みを浮かべて絵美佳の首筋に唇を落とした。絵美佳は焦りながら身体を捻ろうとした。だがびくともしない。
「あんた、一石二鳥って言葉知らないの!?」
どうせ実験するなら楽しい方がいい。それならあの日から疼いてやまない身体も納まってくれる。そんな思いで絵美佳は声を張り上げた。だがそう叫ぶ絵美佳の首筋を多輝の舌先がなぞっていく。絵美佳は思わず小さく震え、息を殺した。多輝の身体に押し潰された胸が熱い。
この二人がまだまともに見える……(汗)
エロシーンはあるのですが、まだ出てきません。
長かったので四分割くらいになります。