Ex-File01 親からの仕打ち
今から約10年前に遡る。
「はぁ、喉乾いた……。こんな地獄な生活イヤだよ……。」
ブツブツと言いながら、台所に行って飲み物を漁ると母親がいきなり怒鳴る。包丁を手に持って、刃先を彼に向けて問い詰める。
「お前は何をやってるのか分かってるの!?」
恐怖で萎縮し、動けない状態で母親が近づいて来る。身の危険を感じたのか、謝り始める。
「ごめんなさい!! 喉が渇いたから飲もうと──」
そういうと、聞いていないかのように包丁を振り下ろして、利き手の腕を切り始めた。
「痛い痛い!! ごめんなさい!! もう二度としません!! だから切るのはやめて!!」
深い切り傷を手で押えて、腰を抜かす。母親はその姿を見てこう言った。
「お前は『二度としない』と言ってから何度破ってる!?」
怒鳴り散らしながら、また近づいて来る。逃げ場がないところに追い詰められて、何度も謝るけど聞いてくれはしない。
「なら、腕なんていらないよね?」
そういうと、母親は右腕を包丁で切り落とした。あまりの痛さに悲鳴をあげて、自己防衛なのかハサミを手に取る。そして、覚悟を決めてハサミで刺し続ける。
「はぁ……はぁ……に、逃げないと…………」
大量出血した状態で家を飛び出て、できる限り人通りの少ないところを通る。深夜帯なのが幸いで、できる限り実家から遠くに逃げる。
「さ、寒い……走れない……」
止血もしないで走ったために、余計に出血が酷くなり、大通りのど真ん中で倒れ始める。
「だ、大丈夫!? すぐに手当をするよ!! だから頑張って!!」
意識が朦朧する中、女性の声が聞こえてくる。見つかってしまったという思いがあるのか、とても気まずい空気になる。が、そうはならなかった。
「ボクの家が近いから頑張って!!」
そう言われると、応急処置した後に抱えられて、空を飛ぶような感覚を味わう。しばらくすると、意識が途絶えてしまった。
「こ、ここは……はっ!! 道で死にかけたんじゃ!?」
見慣れない部屋に横たわって起き上がると、そこには少女で竜なのか人間なのかわからない人物がいた。急に起き上がった反動で、傷の痛みが走り始める。
「まだ横にならないと……。傷がまた開いちゃうよ?」
彼女に無理やり寝かせられて、右腕を見るとやはりなかった。利き腕を失ったショックは相当なものだった。
「……ねぇ、君は誰? どうしてここに連れてきたの?」
疑問に思って、彼女に聞くととても曇った表情をしながらこう言った。
「ボクの名前はルティーヤ……ルティって呼んで? あと、空を飛んでたらあなたが大量の血を流して倒れてたのを見かけて、急いでここに連れてきたの」
「ああ……そうか……あの人に腕を切られたんだ……」
ルティという少女は残念そうな声で呟く。
「もしかするとあなたの腕は二度と生えてこないかもしれない……どんなに手を尽くしても無駄だった……」
ルティからそう聞くとよりもっとショックを受けた。左は扱い慣れてないからかなり不自由になると悟ったのだった。