※この作品はR-18です。

砕けよわが悪魔   作:伊土 讃阿

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第四章
セラピー記録_患者No.1009-218_25040510_fix.hyp2 ♥


 

 

 

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/セラピー記録_患者No.1009-218_25040510_fix.hyp2

 

 

 

 サイマトに降りたとき、目に飛びこんできたのは、色とりどりの、たくさんのお花。

 

 ぱぁって元気よく花びらをひろげてる赤いお花とか、しっとりみやびな感じで咲いてる白いお花とか、すみっこでひっそりしてて、でも可憐な青いお花、それに太陽みたいにまぶしいオレンジとイエローのマリーゴールド。

 

 みんなみずみずしくって、いきいきしてて、花だんのなかで楽しくおしゃべりしてるみたい。

 

 今日のお部屋は、背の高い植物とお花が生いしげった、お庭みたいなお部屋。

 

 赤茶色のレンガを敷きつめた通路は、自然の生垣でかこまれてて、迷路みたいになってる。とっても、わくわくする。

 

 ちかくにないちゃんがいなかったから、すこし探検してみる。

 

 ちょっと歩いたところに、赤とピンクのバラのすてきなアーチがあった。くぐってみると、広場に出た。広場の真ん中には青空みたいな白と青のしましまのパラソルが立ってて、黒いテーブルがひとつと、イスがふたつ。はしっこには、おっきな池と噴水とがあって、きらきら水しぶきがあがってる。

 

 池を覗きこんでみると、ちょうどカエルさんが池のなかに飛びこんで、ちっちゃなお魚さんたちがびっくりしてばらばらにおよぎ散ったところだった。

 

 澄んだ水面に映ってるあたしの頭には、夜色のカチューシャが乗っかってた。今日のお洋服は、スカイブルーのふわっとしたワンピース。腰で巻いてる純白のおっきなリボンは、まるで妖精の羽みたいですごくかわいい。クローバーの刺繍が入ったハイソックスと、リボンがついたつるつるぴかぴかのローファーもとってもかわいい。とくにお気に入りなのは、左の手首にはまってた、サテンのシュシュ。おとなっぽい紺色だし、ふわっともこっとしてて、感触がものすごくすき。

 

「はやかったわね、くゆり」

 

 あたしがやってきたのとは別のアーチの下に、ないちゃんがいた。

 

 赤のチェックのロングスカートに、ふりふりがついたなめらかな白色のブラウス、その上から、モスグリーンのショールを肩からかけてる。胸元には、ガムランボールがきらきら。こっちに歩いてくるとき、編上げのブーツとおとなっぽいタイツがちらっと見えた。いつもは黒髪をおろしてるのに、今日は編み込みのサイドアップにしてて、すごくすごく、かわいい。それに、尾っぽに巻いてるスカーフ。あんまりかわいすぎて、びっくりしちゃった。

 

 おもわず見惚れちゃうぐらい、すてき。

 

「ないちゃん、すごくきれい!」

「当然よ。そういうふうにつくったもの。あなたもかわいいわ、くゆり」

「えへへっ」

 

 ないちゃんが、まずはお茶にしましょう、って言って、ふたりでテーブルについた。

 

 テーブルの上には、いつのまにかヘビ柄のテーブルクロスがかけられて、ティーセットにミルク、おさとう、はちみつ、マーガリン、イチゴに、マーマレードに、ブルーベリーのジャム、ビスケット、フルーツパウンドケーキ、スコーン、チェリータルト、タルト・タタン、ミルクチョコレート、エクレアに、ザッハ・トルテ、ほかにも、いろんなおかしが宝石みたいにきらきらかがやいてて、すっかりティータイムの準備ができてたの。

 

「ほわぁっ……! すごいっ! すてきっ! かわいいっ! きれいっ!」

「くす……、あなたのよくつかう形容詞、見事にぜんぶ消費してしまったわね」

 

 ないちゃんが目を細めて、おかしそうに言った。

 

「好きなだけ食べていいわよ。今日はあなたのお祝いが主目的だから。だいいち、ここでは健康を気遣う必要なんて、ないのだし」

 

 そっか……、ここは夢だから、太っちゃったりしないんだ。

 

 しょっちゅう体重計に乗ってはおやつを抜いてたお母さんも、ここに来れればいくらでも食べられたのにな――。

 

 ないちゃんた、陶器のカップにロイヤルミルクティを淹れてくれた。お母さんが好きだった、お茶。

 

「おめでとう、くゆり。きちんと意識がもどったようね。治療が成功して、本当によかった。がんばったわね」

 

 ないちゃんが、かすかに微笑んだ。

 

「ぜんぶ、ないちゃんのおかげだよう。ないちゃん、ほんとにありがとうっ」

 

 あたしは、ずっと気にかかってたことをたずねた。

 

「あの……ないちゃん、あのね? もう、会えなく、なっちゃうの……?」

 

 ないちゃんはカップを置いた。

 

「いいえ、意識がもどったとはいえ、まだ完治にはほど遠いわ。しばらくは、依存症治療や社会復帰のためのリハビリが必要なの。すくなくとも、あなたがこの月でひとりで生活していけるようになるまで、あなたのそばでその手伝いするのが、わたしの仕事」

「ほゃ……、よかったぁ……」

 

 不安で落ち着かなかったお胸が、ほかほかする。お別れがいつか来るのはわかってるけど――それが今すぐじゃなくって、ほんとによかった。

 

 そんなに長くないのかもしれないけど、まだないちゃんといっしょにいられて、とてもうれしい。

 

 ちょこちょことおかしをつまんで、かるくお茶を飲んで、たくさんたくさんおしゃべりをしたあと、あたしはちょっと歩きたいって、ないちゃんにお願いした。

 

 お散歩しながら、ないちゃんはいろんなことをおしえてくれた。

 

「その花はバニラね。花言葉は永久不滅。これはアザミ。花言葉は独立、厳格。古くは肝機能回復のために、煎じて飲まれていたそうよ。効果はあまりないのだけどね」

 

「この花園は、はるかに遠い未来、地上に清浄さがもどったあと、とある海上スフィアにつくられる予定のモデルなの」

 

「そっちの白い花は、ギンバイカ(ミルテ)。花言葉は愛のささやき。抗菌作用のあるオイルが採れるわ。これは、知っているかしら? 前におしえたでしょう――そう。よく覚えていたわね。花言葉は、嫉妬、絶望、悲嘆」

 

「いつか、世界中で真の意味で信仰がうしなわれ、そして助けを必要としているものたちに、崇められてきたものたちが牙を剥くときが来る。そこでうしなわれる予定の、ある神格を再構築し、ふたたび信仰を取りもどすために、この花園が活用されるわ」

 

「花には、その形質や生態から象徴されることばが与えられているの。だけど花はことばとちがって、永遠ではない。咲いて、種をのこし、枯れて、芽吹き、そだって、また咲く――おなじ場所で、あるいはその範囲をひろげながら、ほかの草花や虫たちとかかわりあいながら。その光景を何千倍にも早送りしてみれば、それはニューロンの発火にも似ているわね。この花園は、ひとつの脳。生と死をくりかえし、ことばをつむいでは消えてゆく、大地の生きた詩篇」

 

 お花はどれもかわいくて、きれいで、いいにおいがして、すてきだったけど――なかには、ものすごくふしぎなお花もあった。

 

 おなじ茎に、いくつものお花が――ユリが、スミレが、アザミが、ギンバイカが、アジサイが、バニラが、ヒマワリが、マリーゴールドが……、花をつけてるの。

 

 あきらかに自然のものじゃない感じ……でも、そんなにブキミでもなくて、なんだか、せつなく、はかないような……。

 

「これは――優曇華(パーセプロッサム)のプロトタイプ。うどんげ、とも呼ばれているわ」

「うどん? おうどんのお花?」

 

 ないちゃんは、くすくすわらった――あたしとおなじぐらいの歳の、女の子みたいに、無邪気に。

 

 そんなないちゃんの笑い方を見たのははじめてだったから、意表を突かれて、どきっとする。

 

「優曇華というのは、三千年に一度しか咲かないとされている、伝説の植物よ。この優曇華(パーセプロッサム)の場合は、六十年に一度だけど」

 

 ないちゃんは、たくさんあるウドンゲの花のうち、ひとつを指差した。ちょっとだけ、ランに似てる?

 

「これが優曇華(パーセプロッサム)本来の花弁。ここで、周囲の環境から観測、収集した情報を統合演算、自らの生育に適した環境になるよう、化学物質を合成して散布するのよ。外部刺激に対して化学物質を分泌して防御する反応は、実はごくふつうの自然の植物のほとんどがやっているの。ある植物では、植食者の唾液に含まれる誘導因子(エリシター)というある種の化学物質を検知すると、揮発性有機化合物を分泌して自らをまずくさせる。あるいはほかのある植物では、植食者の天敵や寄生者を誘引する物質をブレンドする。マリーゴールドは線虫を追いはらうことで有名ね。肢のない植物は移動できないから、周囲の環境や、自らの体質を変更して他者との競争に勝ち抜き、生き抜くしかないの。けど、優曇華(パーセプロッサム)の場合、より強力でかつ生態系全体のバランスも考慮して精確に改変する。たとえば、花粉で蜂を狂わせ、羽ばたきによって温度を上げさせたりや、体毛の静電気を利用して化学反応を促したり、火を灯すことができる。送粉行動を操作して他の花を品種改良し、新たな化学物質を開発することも。たとえば、生態系エンジニアたるビーバーを統率し木を切り倒しダムをつくらせ局所的に地形を改変することさえある。とある細菌では、細胞表面に特定タンパク質をまとうことで、大気中で水分子を捕獲して結晶格子と化し、雨の契機にもなることが知られているわ。つまりこの細菌に干渉してより最適化してやれば、天候にも作用することができるのね。それはきっと、大域的な地形にも変更を加えるでしょう。そうやって、優曇華(パーセプロッサム)はほかの植物の防御反応をも強化して天然の化学物質工場をつくりあげ、昆虫をコロニーごと管理する。あげく、それらを餌とする草食動物や鳥類、ひいては肉食動物さえ誘導、操作してしまい、出生数まで制御する。共存植物(コンパニオンプランツ)ならぬ共存生態系(コンパニオンシステム)を、自発的に形成する。相手や環境も保護するから、人工的に天敵を放飼する天敵植生(バンカープランツ)や生物農薬(バイオペスティサイド)とも違う」

 

 ウドンゲの前にしゃがみこむ、ないちゃん。

 

「大昔、人間の自然破壊はとりわけ取り沙汰されていたけど、その自然だって、自然を破壊しているの。おとなしいように見えて、草木や草食動物なんかはとくにそう。別種の成長を妨げて栄養を掠め取り、同種では光を奪いあっている。鹿に至っては、植物を食い尽くして、鋭い蹄で土壌を掘り返してしまって、バイオームごと破滅に追いやることだってあるわ。けど、優曇華(パーセプロッサム)は極相を定めず、総体的には他種を破壊しない。いつどんな種が役に立つかわからないから、すべての種を利用し、保存するの。ノアの方舟(アーク)のように――、星(ステラ)のように。優曇華(パーセプロッサム)は、真の意味での要石(キーストーン)種なの」

 

 ないちゃんがおしえてくれたことは、ぜんぜん、わかんなかったけど……それでも、なんとなく――。

 

「ないちゃんにおしえてもらって、なんだか、ウドンゲの印象が、変わった気がする……」

「そうね、科学とはそういうもの。モノの見方を変えるという、教え。宗教とおなじね。というより、宗教のひとつが科学なのだけど」

「そうなの? ぜんぜん、べつのものっていうか、仲がわるそうだって、おもってた」

「いいえ。宗教と科学は相反するものではないわ。ただ、対等でもないわね。たしかに宗教が科学発展のさまたげになっていた時代もあったわ。けど、その抑圧のおかげで物事を冷静に客観視する科学の精神性の土壌が養われたとも言えるし、そもそも宗教がなければ科学は発生さえしていなかった。それに、神はいないと断じた時点で――換言すれば、神を見つけられないと白旗を振ったことで、科学は決定的に敗北しているの」

「神さまって、いるの?」

「見方によるわね。この優曇華(パーセプロッサム)だって、ある意味では神のようなものなの。優曇華(パーセプロッサム)がいずれ究極的に発展していけば、任意の生物に糖類を与えて大脳を肥大化させ、複雑な思考する力をもたらしたり、薬効で生殖能力を高めて繁殖させることだってできるでしょう。そして薬草で幻覚を見せ、閃きを与えて思想を代謝させ、恍惚を体験させてあらたな宗教をつくらせたり、付加価値のある希少な資源を産みだし、需要と供給を操作し自らを栽培させ、文明を生産させて、やがてその国家をうごかすことさえあるでしょうね。ひょっとしたら優曇華(パーセプロッサム)のせいで宇宙にまで飛びだすものもいるかもしれない。すべては、優曇華(パーセプロッサム)の永続環境(パーマネント・エコシステム)の維持のために、ね。けど、そうやって利用され、構築されたものたちが観ているものは――本当はだれの光なのかしらね」

「ほへ……ほんとに、神さまみたい……」

「あるいはきっと――、母なる大地というものなのでしょうね。そして――優曇華(パーセプロッサム)のもっとも特筆すべき特徴は、その観測履歴をのこしておいて、一度花が咲くと、その履歴のなかにある最善環境を維持しようとする機能。その地域の歴史を――その花園という脳が思惟したことばを、記憶して、まもっているのね」

「そうなんだ……じゃあ、人間にも似てるね」

「そうね。だからわるい人間にそだてられれば毒を撒きちらすし、いい人間にそだてられれば薬にもなるの――たとえば、蛇の間で、治療のむずかしいある病気がはやったとする。そういうとき、蛇が重要な役割を果たすよう優曇華(パーセプロッサム)で調整した生態系に、その病気を導入して、優曇華(パーセプロッサム)に学習させる。すると、優曇華(パーセプロッサム)はその病を打ち消す方向に環境を変質させる。特効薬をつくったり、あるいは媒介者を見つけ出して抑制する手段を発見するでしょう。人間は、そうやって優曇華(パーセプロッサム)のシステムから、ホーリズムな問題解決方法をまなびとれるようになる。いつか、優曇華(パーセプロッサム)が花開く庭園は――観花のガイア、そう呼ばれるようになるわ。そして――」

 

 ないちゃんは、あたしを見つめた。エメラルド色の、澄んだきれいな瞳を細めて。

 

「いえ、なんでもないわ」

 

 なんだか思いつめたふうに。

 

「さぁ、そろそろおしまいにしましょう」

「……もう、おわり?」

「まだ見ていたいなら、もうすこしいてもかまわないわ」

「そうじゃなくって、ええっと……」

 

 ワンピースのはしっこをにぎりしめる。

 

「今日は……しないの?」

 

 ないちゃんはゆっくりとかぶりを振った。

 

「もう意識がもどったのだから、しなくてもいいのよ、くゆり」

 

 あたしは――あたしは、もどかしくって、はずかしくって、耳がじーんってしてた。うつむきがちに、ぽつりとこぼす。

 

「そうじゃなくて……その……、したいの」

「え?」

「現実で……、もんもん、しちゃうの。じ、自分で、……さわっても、すっきり、できないの」

「……それなら、自慰用の道具があるから、それをVIVIに届けさせればいいわ」

「うう……そうじゃ、なくって……」

 

 あたし、たぶん真っ赤になってる。今、あのチョーカーをつけてたら、きっと――。

 

 ほかに聞いてるひとなんていないのに、あたしはないちゃんにこっそり耳打ちした。

 

「……ないちゃんに、してほしい」

「っ……!」

 

 ないちゃんは髪を引っ張って耳を隠して、お胸を撫でるくせをして――。

 

「……そう、ね。そう……。わかったわ。セラピーの影響は、否定できないから……だから……責任は、とるわ」

 

 目を合わせずに、そうささやきかえしてきた。

 

 

 

 

 

 

 キャミソールとショーツだけのかっこになって、ベッドの上にあがる。ふかふかで、身じろぎすると、染みこんだいろんなお花の香りが舞いあがる。

 

 おひさまはぽかぽかあったかいし、きっとここでお昼寝したら、すごいリラックスできて、ものすごくきもちいんだろうな。

 

「ねむってしまっても、かまわないわよ。あなたが好きな方を、えらびなさい」

「……ないちゃとするのが、いい……」

「そう。わかったわ」

 

 ないちゃんがそっと、ほっぺたに手を添えてきた――。

 

 ――実は、いちおう準備はしていたの。

 

 って言って、ないちゃんが連れて来てくれたのは、迷路のずっとずうっと奥に、隠されてたみたいなおっきなベッドだった。

 

 あまぁいにおいのお花がぎっしり詰まった花壇にかこまれてて、まるで妖精のお姫さまのベッドみたいで、すてき。

 

「はぁぁうっ♥ んっ♥ ん♥ んん~~♥♥」

 

 ないちゃんのおてては、とってもすてき。

 

 すべすべでもちもちでやわらかくって、あたしのきもちいところをぜんぶ知ってる。

 

 今みたいに、右手の人差し指でくるくるあそこの入口をときほぐしながら、左手で腰をよしよしってさすったりして、やさしくやさしく、あたしをどこまでも高めちゃうの。

 

 ないちゃんがさわったところは、どこもぽかぽかして、ふにゃふにゃになっちゃう。魔術をちょっと、つかってるんだって。

 

 でも、はげしかったり、つよかったり、びっくりすることは、ぜったいにしてこない。だから安心して、こころとからだをゆだねて、あたまのなかを、ないちゃんのきもちよさだけでとろとろにしていられるの。

 

 ぬるぅいお湯につかってるみたいで、ずっとこうして、ないちゃんの指にひたっていたくなっちゃう。

 

「……はぅっ♥ うっ♥ う~~っ♥ んうぅう……♥」

 

 ないちゃんのくちびるは、すっごくすてき。

 

 ぷるぷるでふわふわでぷにゅってしてて、あたしのからだをとろかしちゃう。かちかちになったお胸のさきっぽをおくちにふくんで、舌でにゅるんにゅるんってころがされたりすると、ちからが抜けて、あついため息が漏れちゃう。

 

 そのままちゅぅって吸われると、あそこがもっとむずむずきゅんきゅんして、どろっとしたおつゆがあふれてきて、ないちゃんのおててをねとねとにしちゃう。

 

「んっ♥ んっ♥ んっ♥ ないちゃ……ないちゃぁあんっ♥♥」

 

 ないちゃんの尾っぽは、ものすごく、すてき。

 

 つるつるでしなやかで長ぁくて、あたしのからだをささえてくれる。感じすぎてばたばたあばれちゃうあたしの犬尾をにしっかりからみついて、つかまえてくれて、だからあたしは思うぞんぶん、ないちゃんのやわらかいからだに甘えてしがみついて、きもちいのに集中してられるの。

 

「はぁぁんっ♥ んぁっ♥ んふっ♥ ぅくっ♥ あぁぅっ♥ ないちゃっ♥ ないちゃんっ♥」

 

 今日は、今までみたいにすごい刺激じゃないし、ゆっくりしてるから、たくさんイッたりしてないけど……それでも、あったかくて、まったりしてて、なにも不安なことなんてないから、落ち着いていられて、ものすごく、きもちい。

 

「くす♥ すっかりとろとろね……♥ かわい……♥」

 

 ないちゃんの表情も、声も、いつもよりずっと自然っていうか、やわらかい、気がする。

 

「んぅっ♥ ら、らって……♥ ないちゃんにしてもらうのっ♥ すきなんだもっ……♥ ほぁぅんっ♥」

 

 すごい。すごい……、あったかい。ここちよくって、たまらない。

 

 あそこがうねうねして……、ないちゃんの指も、うねうねってまさぐってきて……溶けあっちゃいそうで。

 

 おっきな、おだやかな波が、ゆっっっくり、こころをひたしていく。

 

「は……♥ はぁあぁ……♥ ないちゃ……♥ ないちゃぁん……♥」

「ん……♥ なぁに、くゆり?」

「そろそろ……♥ い、く、かも……?♥ イキそう、かもっ……?♥」

 

 たくさんイッちゃういつものえっちとはちがって、ものすごくゆっくりだから、イキそうな感覚も、ふわふわしてて、つかみどころがないの。

 

 でもそのもどかしさも、逆に、まったりしてて、いい感じ……。

 

 ないちゃんが太ももの内側に、ちゅっちゅって何度もくちづけて、ますますゆっくりめに、指をうごかす。

 

「落ち着いて、リラックスして……その波を、あせって追っかけたりしないで、待ちかまえたりも、しないで……深呼吸して、そのまま、そのまま……静かに、こころのなかに、こころの奥で、受け入れて……」

「ぅんっ♥ うんっ♥ んっ♥ んぅっ……♥ うぅっ……♥」

 

 ないちゃんがやさしく語りかけてくれたとおり、からだのちからを抜いて、その波が打ちよせてくるのにまかせる。

 

 あったかい……なにもかも……ぽかぽか……ふわふわ……。

 

 そのあったかさが伝わってくるはやさは、ほんとにあくびがでちゃうぐらいにのろのろしてて……でもおわりがなくって、ずぅっとあったかく、なりつづけて――。

 

「ぁ――♥ ぇ――♥ ぅ――♥♥」

 

 ……あ――、これ、もしかして……、イッてるんだ……。

 

 ただひたすら、胸の奥で、じわぁぁじわぁぁって、とけて染みだしていくような、ぬくもり……いとおしさ。

 

 しあわせなきもち。とまんない。

 

「ほぁあぁ……♥ ないちゃっ……♥ ないちゃぁん……♥♥」

 

 ぎゅってないちゃんに抱きつく。頭とか、ほっぺたを、ないちゃんの素肌に擦りつけて、あまえる。

 

 なんだか、泣きたくなるほど、そうしたくてたまらなくって。ないちゃんの体温を感じてたくって。バラのにおいで、胸をいっぱいにしたくって。

 

「くす……♥ きもちよさそうね。こういうのも、わるくないでしょう?」

 

 ないちゃんが、ねぎらうみたいに背中をさすってくれる。じぃぃんってする。

 

 ずぅーっとびりびりしてて、終わらない、しあわせ。一回きりなのに、今までのをぜんぶ足しあわせても足りないぐらいの、充実感。

 

「うん……♥ くゆ、いつものより、こっちの方が好き……最初から、こっちの方だったら、よかったのに……」

「サイマトでの体性感覚やエクスタシーに慣れておかないと、スローセックスはむずかしいの。サイマトではまず空間事象の認識があって、そこから知覚が逆算される、現実とは真逆のプロセスだから、モデル化できない心因性の事象を直接付与できないの。未知の事象は、導出できないのよ。あとは、心理的な相性の問題や、信頼関係の構築も必要なの。ただ、こころで感じる分、親和性が高いから、すればするほど行為に対する正の情動が強化されて、多幸感が増すわね」

「んぅ……よく、わかんないけど……くゆとないちゃんの、相性がいいってこと?」

「……まぁ、そうね。あ、もちろん、わたしの魔術と技術によるところがおおきいわよ?」

 

 あわてて付け足したないちゃんのくちぶりは、いつものないちゃんぽくなくて、まるで言い訳してるみたいで。

 

「ぷふっ……、あはははっ」

 

「む、な、なによ。なにがおかしいのよ」

「ふふふふ、あははははっ、くすっ、な、なんでもない、なんでも、ないちゃん、だよっ、くぷぷぷ……」

「もう、わらうの、やめなさいったらっ」

 

 すねたみたいに、ないちゃんが枕を取りあげて、振りまわしてる様子がもっとおかしくて、さらにわらいころげちゃう。

 

 それで……気づいちゃった。ないちゃんのうしろ……、枕の下に、ころがってた、それに。

 

「……??? ないちゃん、これ、なぁに?」

「え――ぁ、しまった――あっ」

 

 ないちゃんが手を伸ばしてくるより、あたしが拾いあげる方が、はやかった。

 

 それはまるで、白っぽくて太いソーセージみたいで……片方が、はれちゃったみたいにふくらんでて、かたちは、前にえっちでつかった道具にちょっと似てるけど、それはよりかはちっちゃくて、ふにゃふにゃしてる……。

 

「そ、それは……、自己増殖型インタポーザの、プロトタイプよ」

「これも、えっちなことにつかうの?」

 

 観念したみたいに息を吐きだして、枕をお胸の前で抱きしめると、ないちゃんはそっぽを向いた。

 

「はぁ……、そうよ。それは、女性同士で性行為をするための道具。ふたりともが、快楽を得られるようにつくられたの」

 

「つかうつもりだったの?」

「……あまり。そういう流れになる場合もあると、一応用意していただけよ」

「ふぅん……」

 

 ぷらんぷらんって揺らしてみたり、ひねってみたりしてから、あたしは言った。

 

「ないちゃん、これ、つかってみたい」

 

 

 

 

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