※この作品はR-18です。

砕けよわが悪魔   作:伊土 讃阿

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第六章
くゆらむ善行 ♥


 

 

 

/くゆらむ善行(ミツヴァ)

 

 

 

 色気のない地味なセラピストの制服姿でドアを背にして立ち、胸に右手を押し当て、緊張しているのを隠すためにさも不機嫌そうな表情をつくり、気恥ずかしさのために横目で壁をひたすら睨みつけているないを目にして、くゆりは開口一番、こう言った。

「ないちゃんの……いもうと?」

「……本人よ」低くうなるような声を出した。「言ったでしょう。あれは、そのために用意した外観(スキン)だって」

 艶やかな黒い長髪、鮮やかなエメラルドの双眸、気の強さと明晰さをうかがわせる冷たい美貌、オニキスを散りばめたような細長い尾状デバイス――そこにいたLMOは、たしかにVCD・サイマトのなかでくゆりにセラピーを施していた人物と酷似していた。

 背丈は頭ひとつ分は低いし、胸は月面ではなかなかお目にかかれないほど平坦で、齢いつつほど若返って――幼くなっていたが。

 あめ色の虹彩が放つ驚愕の視線が、頭のてっぺんから足のつま先までの130cmにも渡る距離を移動するのが、ないにはつぶさに感じられた。

 ないは左手で持っていたバッグを胸の前で抱えた。視線を遮るように。「おむねないちゃんとか言ったら、怒るわよ」

 くゆりは慌てて取り繕うようにぱたぱたと手を振った。「お、思っただけだようっ」

「っ……、今言ったも同然じゃない」髪をいじって耳を――赤くなりやすい耳を隠した。「言っておくけど、十四だから、一応わたしが年上よ」まくしたてるように続ける。「それにわたしはあなたの担当セラピストで、大学も出ているし、今のところ史上最年少で月の民にもなった。だから――別に気にしているわけではないけど――、ちょっとわたしより背が高くて胸が成長しているぐらいで、あなたが優越感に浸ったとしても、わたしには一切関係がないから、わざわざくちに出さないでちょうだい」

「??? よくわかんないけど……、わかってるよ、ないちゃんはすごいもんっ」

 屈託のない笑みを向けられ、ないは吐息を漏らした。「はァ……そんな気はしていたけど、あなた、本当に変わらないわね……」

「ん? なにが?」

「……いえ、なんでもないわ。失礼するわよ」

 ないは病室の中央まですたすたと歩き、ベッドの上に荷物を置いて、道具を並べはじめた。

「いろいろと、準備はしてきたの。刺激応答多機能流体のローションとか、感覚拡張RNAパッチとか、あとはインタポーザも、一応持ってきているわ。全部未使用だから、安心して。それからこれは――」

 カラフルで様々な形状のデバイス、ガジェットを次々と取り出して、ないがシーツの上でセックスアイテムの見本市を開催しはじめる。すると、くゆりがおずおずと声をかけてきた。

「……ねェ、ないちゃん……」

「なァに?」

「こっちでも、するの……?」

「ぁ――」

「くゆ、ないちゃんに会って、おはなしできれば、それでよかったんだけど――」

 その言葉で、包装された双頭インタポーザを握りしめたまま完全に凍りつく、ない。だが見る見るうちに真っ赤になっていくさまから、からだの内側では血が沸騰するような羞恥を感じているのは明らかだった。

「ぅゎ……、ゎ、わた、し、てっきり――そ、そ、そう、よね……」

 ――うう……! もう、どうしたっていうのよ、わたし……。

 現実で会いたいと告げられてから、別のセラピストの部屋に間違えて入りかけたり、上司へのレポートにセラピー記録ではなく自作の日記調メンズラブポルノホロを添付しかけたり、あるいはサイマトのグループ会議空間で四肢切断両性具有者の集団性交アニメホロ上映会をやらかしそうになったりとうっかりしっぱなしで、ここにきてそれはピークに至っていた。

 ないは今すぐ魔術で窓をぶち破って宇宙線だらけの真っ白な月面に飛び出し、頭を抱えて転げまわりたくて仕方がなかった。だがここでそんな行動に出れば、くゆりも道連れだ。だからないは、自室でそうしてやるつもりだった。

「ご、ごめ、ごめん、なさい。すぐに片付け――」

 くゆりの手が、ないの手に重ねられるまでは。

「……んーん、いいよ」

「ぇ――」

「しよ」

 ないが転がったのは、セックスアイテムだらけの真っ白なくゆりのベッドの上だった。

 

 

 

 

 

 

 現実のキスは、夢とはまるで違っていた。

 皮膚がぺとっと張りつき吸いつく感じや、微妙に感覚が残る鬱陶しさ、生々しい唾液の匂いに味、息苦しく包まれるような、のしかかっているくゆりの重み。もっとも新鮮なのは、触れあった肌の薄皮一枚、脂肪の層の向こう側に血肉がたしかにそこにあるのだという、質感。

 ないには、五感すべてがフィルターを取っ払ったように感じていた。一方で、様々な原子を伴う情報がリアルタイムで複雑に絡みあって流れ込んできているはずなのに、くゆりと触れあっている部分以外は、一切消え去ってしまったかのよう。世界が、現実が、くゆりだけになってしまったかのよう。そう、感じていた。

「ぷぁっ……、は……♥ は……♥」

 息継ぎのためか、くゆりが唇を離した。ふたりの唇は融解して癒着してもう二度と分離できないのではとさえ、ないには思われていたが、名残惜しそうな唾液の糸を繋げるに留まった。

 くゆりの陶然としたあめ色の虹彩には相手のことしか映っていなかった。ないの翠緑の瞳は、そうではなかった。くゆりからかすかに立ち昇る、桃色に色づいた霧状の微粒子の存在に、気づいていた。

 ――首輪で魔術は抑えられているはずなのに……。

 やたらと甘い香りをくゆらせているそれは極小の泡だということを、ないは知っていた。それも、毒(エーテル)を含む泡だということを。

 魔術遺伝子(NEMESIS)制限デバイスで出力抑制されているため、健康を損ねるほどの有害さではないが、多少の影響はあるらしい。芳甘な薫香が、芳烈にないの思考を撲ち、ぐらつかせていた。

 魔術の出力は強大だ。NEMESIS積分杖などなくとも、騎士レベルなら無防備なLMOぐらいわけなく絶命させられる。ゆえにNEMESISから導かれた肉体に発現した機構、器官のひとつだとしても、無意識的には魔術が発生しないようセーフティがかけられている。なかには己の魔術を応用して自動防衛システムを構築するものもいるが、それは卓越した魔術センスとテクニックが必要で、魔術感覚的クリティカルマスに達したばかりであろうくゆりは、その類ではない。

 ――二母性LMOだから……魔術によって産まれたからなのかしら……。どちらにせよ、これは……よくない――。

 くゆりの自動魔術は、明らかにないに影響を及ぼしていた。ずきずきと、ともすれば疼痛とも感じられる切なすぎるうずきを、子宮に植え付けていた。

 泡を吸い込む鼻腔が蘭麝で甘かった。喉が馨香で甘かった。肺が芳芬で甘かった。甘くて甘くて、たまらなかった。乳首は完全に尖りきって肌着に擦れると痛いほどに痺れていたし、その甘さを感じるたび、子宮が脈打ってどうしようもなかった。

 それは、ないの理性にとっては危険な兆候だった。ないは努めて冷静さを保とうとする。

 ――きっとオキシトシンが尋常ではないぐらい分泌されているのね……けど、ただ、それだけ……今日だけは、我を忘れずに、ちゃんとしなくては……はじめて、なのだから。

 からだを動かしていればまぎれるかもしれないと、ないはくゆりの患者服のなかに手を忍びこませた。汗ばんだ腹部のはだえが、手のひらに吸いついてくる。

「んふぅ……♥ んっ……♥ ん……♥」

 優しく丁寧に肌を撫でられるのがここちよいのか、くゆりのくちづけが一層加熱し、ないを肉欲の沼に沈めんとする。

「んっ……♥ ふぁ……♥ ないちゃんの手……きもち……♥」

 夢(サイマト)では味わえないすべらかでありながらべたつく肌ざわりや、存外肉付きのよい矮躯の、絶妙な温柔さ、甘ったるい吐息も、ないの情動をかきたてようと試みてきた。それでもないは、不思議と落ち着きつつあった。

 ――この子、お胸もお尻もどうしてこんなに……、わたしより、育っているのよっ……!

 主に、わずかばかりの腹立たしさのせいで。

 第二次性徴が始まったのは早い方であったし、成育と機能に対し食物が担う役割を理解していた上になにより食事そのものを愉しむことを知っていたないは、毎日欠かさず充分な量の――時として過度な――栄養を摂取していた自覚があった。

 それでもなお、ないが鋭利な刃物のような、それでいて痩せすぎと感じさせないような、つくりものめいた完璧さのスレンダーな体型を維持しているのは、物心つくずっと前に両親に施された染め物のせいだ。

 無論、ないにも自分の肉体が視覚的に見目麗しい造形をしているという自負がある。

 だが、それもやはり両親に押しつけられた外殻――他者によってつくりあげられた自分にすぎなかった。それが、気に食わなかった。

 ――くゆりとしているときだというのに、いやなことを思いだしてしまったわね。

 しかしおかげで、平静さは取り戻せていた。先ほどまで舞いあがっていろいろと奇妙な行動を取ってしまったことを、ないは猛省した。

 ――大丈夫、ここからはきちんとできるわ、きちんと……。そういえば、初回は暖機運転がいるんだったわね。そろそろ、付けておいた方がいいかしら……いえ、その前に。

「んっ……♥ ねェ、くゆり」キスのしすぎで腫れぼったくなった舌が、もつれそうになる。「インタポーザ……、使う?」

「ん……、うん、使いたい……ないちゃんにも、よくなってほしいから」

「……わかったわ」

 すっかり水分を吸って重くなった服と下着を脱ぎすて、真空パックの封を切って、インタポーザを取り出す。事前に装着方法は抜かりなく確認しておいたので、取りつけはスムーズに完了した。神経が接続され、血液が吸い出されていく感覚。

 ないは感覚拡張RNAパッチを何枚か並べた。

「なにこれ? シールみたいでかわいいっ」

「RNAパッチよ。電気薬学的にリボ核酸の合成を促進して、特定蛋白質の生成を誘導することで――」

「???」

「……つまり、からだをつくる働きをするRNAというとてもちいさな物質を、すこし改造するの」

「そうなんだ。あーるえぬえーってすごいねっ」

「……たしかに、すごいのはRNAの方ね。それで、貼るだけで感じやすくなったりするものや、痛みが和らげられるタイプもあるけど、どうする? 一度貼ってしまうと一定時間は取れないし、使い捨てだから、注意が必要だけど――」

 くゆりが、幾何学的な模様がデザインされた透明なパッチを摘まんで眺めた。「そうなんだ。じゃァ、これに貼ったらどうなるの?」そして、たずねつつくゆりは無造作にパッチを貼りつけた。

 ないの下腹部を飾っていた、インタポーザに。

「なっ――!? あなた、なんてことを……!」

 ないは慌てて肉管のなかに浸透していくパッチを剥がそうと爪を立てて奮闘するも、努力むなしく、パッチはインタポーザに定着した。

「~~ッ!?」途端に、活性途中のインタポーザの感覚が増幅。得も言えぬぞくぞくとした感覚がないの下半身を駆けめぐった。「あ、あ、う、うぅ~っ……!」

 局所的な、しかしそれゆえに凄まじい鋭さのもどかしさに、ないは身悶えした。

「な、なんてことっ……、してくれたのよっ……!」

 くゆりはぺろりと舌を出した。「えへへ、ごめんね、そんなになるなんて思わなかったんだも」

「この……、この……、この――!」あまりに軽率な行動と反省の色のなさにかちんときたないは、額に脂汗を浮かばせ、ありったけの罵倒を浴びせかけようとしたものの――。「この……、おばか!」くちを衝いて出てきた言葉は、それだけだった。

「わ、ないちゃ、なにす――んぎゃ! ほあ゛っ! あ゛うっ!」

 ないはちからづくでくゆりの患者服を剥ぎ取ると、おかえしとばかりに躍起になって次から次へとぺたぺたとパッチを貼りつけまくった。

 ありったけのパッチを貼り終えた頃、ないは大粒の汗を流し、充血しきったインタポーザを上下に震わせた。

「はーっ……♥ はー……♥ はぅ……、あっつ……♥」

 どたばたとひと暴れしたせいで、代謝がうながされ、ないは完全に準備が整っていた。なにより――。

「あ゛っ♥ これ♥ すごい♥ これすごい♥ すーすー♥ ぞくぞく♥ ひりひり♥ とまんないようっ♥」

 からだをもつれあわせながら、主要な性感帯を中心に、大量の感覚を拡張されたくゆりが、柔肌がシーツに擦れるだけで目を白黒させた――大量の毒泡を噴出させながら。

「っ~~♥♥」

 呼吸するたび、毒泡を吸い込んだ肺が燃えあがり、エーテル成分の乗った血管が膨らみ、子宮の内側が煮えたぎって、インタポーザが釘が打てそうなほどに硬度を増していくのがわかった。くゆりにおしおきをしてやるつもりが、今追いつめられているのは、確実にないの方だった。

 限界、だった。

 ないは目をぎらつかせて、くゆりに覆いかぶさった。

「ほゃんっ……♥」

「はーっ……♥ はっ……♥ 責任、とってもらうわよっ……」

「あっ……♥ うん……♥ えへへっ……♥ とるっ……♥ せきにん、とるよ、ないちゃ……んんんっ♥♥」

 挿入は、極めてスムーズだった。パッチのおかげでもあったし、ないが小さめのインタポーザを選択していたからでもあるし、まずなによりは、くちづけの合間にふんだんに愛撫しあっていたからだった。

 くゆりのいとけないぬかるみは、とくに抵抗なくすんなりとないの肉管を根元まで飲み込んだ。

「どう、かしら……? いたくは、ない?」それでもないは、かけらほどに残った理性を総動員して、気遣わしげに、たずねずにはいられなかった。

 くゆりが現実で性的な体験をするのは、今日で初めてのはずだったから。

 くゆりはうっとりした様子で、鼻にかかったような甘え声でいらえた。「うん……♥ ぜんぜん……♥」

「ほんとうに?」

「ほんとだよう……♥」

「うそじゃないわよね?」

「うそなんて、つかないも……♥」

「そう。よかった……く、ふっ……」

 最大の懸念は解消されたようだったが、ないは気を引き締めなければならなかった。べちゃべちゃとひっきりになしにしつこくまとわりついてくる幼膣は、ないが気を抜いた途端、過敏な肉茎をめくるめく精通へと導くに違いなかったからだ。

 ――これは……サイマトの、比じゃないわね……。

 現実でインタポーザを使用した経験がない場合、VCD・サイマトのインタポーザの感覚は、モデルから再現された、100%ニセモノに過ぎない。

 鋭敏な先端で感じる柔らかな肉のぬめりや、粘膜の微妙な凹凸、不規則に甘締めしてくる入口の存在感や、粘液で吸いつく肌同士の密着感は、それを体験したことがない限り、VCD・サイマトでは表現できず、味気ない肉感で代用されていたものだった。

 ――ううう、身動き、とれな……、減速もできないし……、設定をいじられていないなら、なんとかなると思っていたのに……!

「ないちゃん……? どうしたの……?」今度は、くゆりに心配される番だった。「くゆのなか、いたい……?」

「うっ……、きっ、きもちよすぎる、のよっ……、今動いたら、でちゃいそう、なのっ……!」

 年上の威厳など微塵も見られない弱音を聞いてか、かえってほっとした表情を見せるくゆり。「あは……♥ でちゃっても、またすればいいんじゃない?」

「け、けど、わたしの、計画では……」

「計画なんて、いいよう」ないの頬を滑る汗の雫を、小さな舌がすくいとった。「くゆたちふたりのえっちなんだも……♥ くゆたちが、したいように、しようよう……♥」

「ぁ――」

 その段になってようやく――ないは、認識の大前提が誤っていたことに、気づかされた。

「そ、っか……、そう、よね……」

 ――職業病、というやつかしらね……。

 内心苦笑しつつ、ないは頭のなかを埋めつくさせていたカリキュラムの一切を、忘れ棄てた。

「……わかった。じゃァ、動く、わね」

「んっ、いいよ……あんっ♥ あっ……♥ うんっ♥」

 おそるおそる腰を揺すると、体内に生じる刺激を面白がるように、くゆりが楽しげに喘いだ。

「はぁっ……♥ すごぉいっ……♥ ないちゃんがっ……♥ はいっちゃってるっ……♥ すてき……♥」

「ぅっ……、く、くゆり、こそっ……♥ はっ♥ はぁああっ♥」引き抜くたびに引っ掛かる肉襞の感触に息を漏らし、ないはへこへこと腰を振った。

 シミュレーションしてきたため、前回よりも幾分淀みがないが、ぎこちなさは否めなかった。

 だが、それでよかった――今のふたりには。

「はっ♥ はぁっ♥ くゆりっ♥ くゆりぃっ……♥」

「あっ♥ ぁんっ♥ あはっ♥ ないちゃんっ♥ ちゅっ♥ ちゅぅっ……♥」

 火照った舌を絡ませ、甘い唾液を飲ませあい、互いの湿った吐息を肺に溜めつつ、もっとも無防備に張りだした粘膜と、もっとも秘めやかなる最奥をとろけあわせてさえいられれば、技巧など、二の次だった。

「うぅんっ♥ くゆりっ、締め、すぎぃっ……♥ 腰、ぬけちゃうっ……♥」

「えへっ♥ えへへっ♥ だって……♥ ないちゃんが、かわいすぎてっ……♥ 勝手に、ぎゅーって♥ ぎゅーって♥ なっちゃうんだも……♥」

「か、かわいいって……そんなわけ、ないでしょっ……」

「えェ……?♥ かわいいよう……?♥ くゆのおなかのなかで、どんどんふくらんできて……♥ ぎゅーってしてあげるたびに、びくびくふるえて……♥ ないちゃんがおかおを、とろとろにしちゃってるの……♥ かわい♥ かわいい♥ かわいいよ、ないちゃん……♥ すき♥ すきぃ……♥」

「ううぅぅっ……♥♥」

 甘ったるいエーテル臭を含んだささめきに、急速にぞくぞくとしたものが、ないの腹の底で膨張しつつあった。

 甘い臭気が、絡みついてくる。皮膚で鼻腔で肺で、霧状の微粒子が弾ける。突きこむたびに、甘い毒がくゆりの腺から立ち昇っていた。ちかちかと目が眩む。焼ける。甘い。

 くゆりも十分に快感を得ているのは、表情で、反応で、こころで、察せられた。くゆりの幼い肢体の内部を、とろける快楽が駆け巡っているのは手に取るようにわかっていた。

 だからこそ、その甘さは、ないをさらに甘く絡めとり、甘く沈める。もう引き返しようのない深みにまで。甘く。甘く。甘く。

「はぁあうっ……♥ も、もう、でちゃいそ、なのに……♥ こしっ……♥ とまらな……♥ ううぅ……♥」

「うんっ……♥ うんっ……♥ いいよっ……♥ いこっ……♥ くゆでっ、イッて……♥」

 灼けるような快感がじわじわと先端でふくらみ、根元からぐつぐつと煮立った愉悦が込みあげてくるのにもかかわらず、快楽の虜となったないはひたすら腰を振りたくり続けた。

「んーっ♥ んっ♥ んっ♥ ごめっ♥ も♥ でちゃぁあ……♥ でる……♥ でるっ……♥ くゆりっ……♥ くゆりぃっ……♥」

「ないちゃんっ♥ ないちゃんっ♥ きてぇ……♥ きてっ♥ きてきてっ♥♥」

 名前を呼び呼ばれ、やがて本当に後戻りのできない高みまで連れ添い、到達し――、ないは溜めこんでいた欲望のすべてを決壊させた。

「~~っ♥ ~~っ♥♥ ~~っ♥♥♥」

「んはぁーっ♥♥ あつ……♥ えっ、あっ……♥ ――っ♥ ――っ♥ ――っ♥」

 ないは、ばしゃばしゃと冗談のような量の体液が迸るのに身を委ねつつも、インタポーザをきつく締め上げてくる肉壺の蠢きに、くゆりもまた追いかけるようにして昇りつめていることを悟った。

 そのせいでさらに興奮が助長、多量の精を吐き出す羽目になり、全身にも伝播した壮絶なエクスタシーのすべてが過ぎ去ったのちも、ないはくゆりの上でぐったりと脱力していた。

 ――これは……、なんというか……、ほんとうに……、すてきね……。

 愛おしい相手と、甘すぎる余芳を共有し、互いに抱擁しあって、その余韻を過ごすことの、なんと幸せなことか。

 体液を吸収し、すっかり冷たくなったシーツは、ないとくゆりの匂いがした。オブジェクトは設定したようにしか変質しないVCD・サイマトでは、ありえないことだった。

 ないはようやく、そしてはじめて――親に与えられたものではなく、自分でなにかをつかみ取ったような、そんな気がしていた。

 泣きそうになるほどの多幸感のなか、くゆりが内緒話でもするみたいに耳打ちした。「すごかったね……♥ ないちゃん……♥」

 ないはもぞもぞとインタポーザを取り外し、サイドテーブルに置いた。「ええ……、けど、もうへとへとよ……。現実って、こんなに疲れるものなのね……」

「あはは。じゃァ、次はくゆがしたげるね」

「――え゛」

 

 

 

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