百合はいつかガンに効くようになる!オルタナティブ! 作:伊土 讃阿
/Stage III progression - 進行 -
/part 7 あやまち
「リナ先輩、痛く、ないです、か? きつくないです、か? かゆく、ないです、か?」
わたしの手に包帯を巻きつけながら、マチが畳みかけるようにたずねてきます。
「へいきよ、マチ。まだうまく手は使えないけど、感覚が鈍いだけで、つらくはないもの。というか、わるいんだけど、ここまでする必要あるのかしら……? これじゃあ自分でなにもできないわ……」
手首も曲げられないぐらい、ぐるぐる巻きにされてしまいました。まるで、両腕骨折したひとみたい。靴下も履けそうにないです。
「ぁ、ん、先輩の、お世話は、あたしがするので、だいじょぶ、です、よ。お水、飲みます、か? お腹、すいてないです、か? あめちゃん食べます、か?」
「い、今は、いいわ」
ずいずい迫ってくるマチに気圧されてしまいます。かいがいしく面倒をみてくれるのはすごくうれしいんだけど、マチはただでさえ忙しい図書委員の、委員長です。なんだか申し訳ないわ。
「わたしのことは気にしなくていいのよ。助けが必要になったときにはぜったい呼ぶから、マチは自分のことをして?」
「……」
マチは、黄色い満月みたいな眼で、じ……っとわたしを見つめて、ぽつりと言いました。
「……あの、千悪さんって子、です、けど」
「え? 魔零さん?」
「……。……すごく。距離。近い。です、よね……」
「あ、うーん、まあ、そうね。でもあの子らしいっていうか、ああいう明るい子って、あんなものなんじゃないかしら? わたしも……友達はすくないほうだったから、びっくりしたけど」
「……ん。と。その。……気になるなら、言ってください、ね。先輩、リーダーだから、言いづらいとこあると、思うので……。なんだったら、あたしから、さりげなく注意とか、します、よ」
「え、いや、そこまでじゃないわ。気を遣ってくれて、ありがとう。でも、どうしたの、急に? あんまり、その……マチらしくないっていうか」
「そんなことは、ない、です、よ……。あたしのこと、より。リナ先輩、は、千悪さんのこと、どう思ってるんです、か……?」
「どうって……。今日会ったばかりの子だから、まだ深くは知らないけど、いい子だし、かわいいし、活動的で明るい子だし、もっとちゃんと知りあって仲良くしていけたら楽しいかなとは思うわよ」
「っ……。あたし、とは、正反対です、ね……」
自嘲気味に。
「先輩は、そゆ子が、すきです、か?」
「きらいじゃないけど――」
距離は、ちょっと考えてほしいかしら、と思いながら。首筋にまだじんわり残ってる感触に、無意識に、触れようとして――。
「……あれ。先輩、首のとこ、汚れてます、ね……。ふいたげ、ます」
「んっ……」
マチが、そこを、熱ごと、拭いとるように、ひんやりした指を這わせて。でも、かえって……熱く。ひりひりと。
「あれ……。これ……。いつもの、リップ、です、か……?」
「え、あ、うん……」
そういえば魔零さん、わたしとおなじリップ、つけてたっけ――。
「どうして、こんなところに、リップ、ついたんです、か……?」
「え……、それは、魔零さんが、親愛の、ちゅーを……。え、マチ!?」
突然。マチが、ぢーーーーーっと、わたしのジャージのファスナーを下ろしはじめました。
「どっどどどうしたの!?」
「脱いで、ください」
「ほぁ!?」
「ほかにケガ、ないか、調べます、ので」
「えっ、ほかはだいじょっ、あっ……!」
あっという間にひん剥かれてしまい、下着だけの状態に。素肌に突き刺さるようなマチの視線を感じます。
ううう……恥ずかし……!
JK同士だし、同室だから、下着姿ぐらいなら見られ慣れてますけど、観察されるのはまたべつというか……。
どっ……どっ……どっ……どっ……。
見られている箇所が、じんわりと、熱を持っていくような気がします。
「ね……マチ……」
じとっと、つぶさに、デコルテの肌のきめの隙間まで見逃さじと、マチの瞳がなぞっていきます。
「なんです、か?」
「えっと、ね……。これ……。なんか、……えっ、ち、じゃない……?」
「……どこが、です、か? 調べてる、だけです、よ……?」
「ううぅ……、でも、その、はずかし、くて……」
「そ、です、か……。わかり、ました。じゃあ、目隠し。しましょ、か。見えなかったら、恥ずかしさ、減るので、えっちじゃないです、よね」
「え……? ん……? そう、かも……? あ、んっ……」
包帯で目隠しされました。わたしが。
……なんで?
ついでに。
「ぁ、動いて、ケガしたらあぶない、ので、横に、なりましょ」
と言われてベッドに仰向けに寝させられて。
「腕も、あぶないので、固定、しちゃいます、ね」
ばんざいしたかっこで、ベッドに縛りつけられてしまいました。
……なんで?
「え、ちょ、マチ? なんで、こんな……ひゃんっ!」
とんっ、て。お腹のうえに添えられた、マチの人差し指と、中指。見えなくても、触感で、触り方で、わかっちゃう……。
ううん、見えないからこそ、よくわかる――ひりって、皮膚を突き破って、肉のなかに入ってくるみたいな鋭さ。からだが、覚えちゃってる……。
それが、とこ、とこ、とこ、って、胸のほうに、歩いて、登ってきて。
「あっ、んっ、ふぅっ……」
ぞくっぞくっぞくっ……。肌の下の、内臓がひりつきます。
「お腹、は、汚されてない、です、ね……」
「んっ、あっ、そ、いえ、ばっ、シャワー、まだだった、わ……。ね、マチ、汗かいてて、ばっちいし、もう、やめ……ひぁん!」
ふ。って。やけどしそうに熱い息をふきかけられて。すんっ。って。……においを、かがれて。
「ん……。先輩の、においしか、しない、です、ね。よかった、です」
「っ~~!」
あついっ、あっつい、あついあつい……はずかしい……。
そのまま、ひたひたひたと、指がうえにあがってきて……肋骨の数を、かぞえてって……肋骨の合間を、なぞって。
「ひっ、うっ、んっ……!」
「……きれい」
吐息で、湿り。声で、燃えるみたいに。
見えなくても、わかる……あの、満月みたいなふたつの眼が、わたしを見下ろしているところが。
全身の毛穴から血管を透けて見ているような視線を、肌で感じます。
上から下までくまなく、そうやって調べられました。脇の下とか、背中とか、脚とか。かつての雨抜きのときでさえ、触られたことのない場所まで。
ぺたぺたさわさわ、表面をくすぐられて。なにかをあぶりだすように、息を吹きかけられ、匂いをかがれて。
くすぐったくて、ひりひりして、ぞくぞくして。火照って、汗ばんで、もどかしくて。触れられたことのない部分でそれですから――雨抜きのときに、マチがよく触れるところに近づいてきたときは、もう……たまらなく、うずうずしちゃって。
ずきんっずきんって、痛いぐらいの、もどかしさ。切なさ。
……だめ、……だぁ……。
……ずっと。
――期待。しちゃってる。
「はぁっ……、はっ……、はっ……、も、おわ、った?」
我慢できなくて、息も絶え絶えにマチにたずねます。
「なにも、なかった、でしょ? も、いい、でしょ……?」
「ん……はい。そです、ね。なかった、です。安心、しました。ぁ……シャワー、浴びに行きます、か? つらいですよ、ね」
レズド雨をちゃんと流さないまま、こんなことしちゃったからかもしれません。わたしは……もう……、そこ、が、すごいことに、なっちゃってました……。
「ん……い、いい……、あとで、いい、から……。はっ、はぁ……。ね、まちぃ……この、まま……」
お腹のなか、すごいあつい……。下着、たぶん、ぜったい、だめになっちゃってる……。でももう、それどころじゃ――。
「……くす。このまま。なんです、か……?♡」
ほんのすこし、笑みを含んだ声が近づきます。
「んっ、ふっ、こっ、こっのまっ、ま……して、ほし……の」
飴の甘い香りのする吐息が、わたしの前髪にいたずらしました。
「なに、してほしいんです、か?♡ 言ってくれないと……よく、わかんない、です、ね」
焦らすように。責めるように。
どっどっどっどっどっ――。
「ひっ。んっ。ひとっ……、っ。ひとり、えっ……。……ち♡ おしえ、て、ほし……の……♡」
ぐらぐら、ぞくぞく。わたしの発したことばが、燃えあがって。
「んっ……♡ は、い……♡ 練習、しましょおか……♡」
暗闇のなか、ゆっくり近寄ってくる、マチの体温が、じりじりとわたしの産毛を焦がすよう。その、甘い熱気に、うながされる、ように。甘い匂いに、いざなわれる、ように。
ちゅぷ……、と、唇同士が、触れあって。
「んっ……! ぅっ……!♡」
ねばつく唾液が、とろける体温が、境界線をあいまいにしていきます。なんの隔たりもない、ふたつの皮膚の境界を。
ぁ――、これ。
だめ。
これ――。
どろどろにとろけていく思考のなかで、ひやりとした危機感。
――忘れてる……、リップ。
わたし……マチと。マチの、唇と。
じかに、触っちゃってる……!
「んむ……♡ んちゅっ♡ ちう……♡」
むさぼるように吸いついてくる、甘くねばつくマチの唇。
「んぷっ、ぷぁっ、まちっ、んっ、りゃめ、これ……んむっ♡」
気づいてるのか、気づいてないのか、マチはぜんぜん止まる気配がなくて、いつもよりずっと激しくて、喉に絡みつくような、甘さの、くちうつし、をひっきりなしに施してきます。
直接接触している、その感触と、なにより、その罪深さが――すさまじいぞくぞく感を生み出して、熱になって、わたしの脳をぐらぐら煮立ててるみたい。
もう、なにも、わからない……。あつすぎて、苦しすぎて。
「んっ、ふぅ……んちゅっ、ん……、んっくぅ!?♡」
その状態のまま、わたしの脚のあいだに、下着越しに、ぴたっと、指が。乗せられました。じわ……じゅく、汗とか、いろいろ、滲んでくのがわかります。
「んぷぁ……♡ リナ先輩、すごく……濡れてます、ね……♡」
「ひっ……♡ ぅ……♡」
耳元で、もてあそぶようなささやき。耳たぶが濡れて、鼓膜が湿っていきます。
「これなら、すぐに入れても、へいきですよ、ね……?♡」
「っ……♡♡」
また、からだのなかに……指を、入れられるんだ――。そう思うと、下半身の筋肉がこわばりました。
「いれます、ね……?♡」
でも、それも……下着をずらされて、ちゅくっと、あそこを……かきわけられるなり……。
「んっくぅっ! んっんっんっ……んっ♡」
熾った炭のように熱く硬かったそこも、とたんに、溶岩のようにさらに熱く、そしてとろけて。マチの指がもたらす体験がどんなにくるおしいものなのか、そこは、覚えていたから。
「はっ、あっ、くぅ……♡」
にゅぱ……にゅるっにゅるっにゅるっくちゃぁ……って、ぬめって、こすれて。
マチが、どろどろしたため息を吐きました。
「はあぁ……♡ せんぱい……♡ ここ……、もう……、あたしの、ゆび、と。うちとけちゃってます、ね……♡ ふわ、ふわ……♡ してます……♡ ふわ、ふわ、ふわ……♡」
「っ~~♡ んっ♡ んっ♡ んっ♡」
声、でそ……。
あふれてくる唾ごと飲みこむので、いっぱいいっぱい。
なのに。
「じゃ……♡ します、よ……♡ こし、こし♡ こす、こす……♡」
「ひっうぅんっ……♡ あっ♡ んっ♡ きゃふっ♡」
からだのなか、撫でまわされちゃったりしたら、恥ずかしい声を抑えられるわけが、ないんです。
「はっ♡ んんんっ♡ んぁっ♡ はっ♡ はふっ♡」
ちゅぷちゅぷ、にゅむにゅむ、わたしのなかの水をまとわせ、かきまわして、すりつけて、出たり入ったりする指。
「はっ♡ はうっ♡ あうぅっ……♡ んうぅぅ……!♡」
泣きたくなるぐらい、逃げ出したくなるぐらいの……ぞわぞわと、恥ずかしさ。
わたし……また、気持ちよくなっちゃってる……。せっかくマチが、がんばってくれてる、のに……。こんな……じかに、触れちゃってる、のに。
わるくて、えっちなこと、なのに。昨日よりも。深く、鋭く、感じて。
わたし……わたし……ほんとは……やっぱり……。
いやらしいの、かも。
そう思った瞬間。ぞくぞくぞくっと、背筋を冷たいものが駆けのぼってきて、頭の芯のほうまで、かーっと熱くなりました。
「……!♡ あっ……!♡ あっ……!♡ あっ……!♡ あーっ……!♡♡」
お腹は、さらに、どろ……と、おつゆを吐き出してます。
ずにゅっと深く、たぶん、突き当りになってるところまで、マチの指がすべりこんできました。
「ふゎぁああんっ……!?♡」
「ゎ、ぁ……♡ 先輩の、また、やわらかく、なりまし、た……♡ ん……♡ んっ♡ こんな……♡ 奥まで……♡ さわって、ほしいんです、ね……♡」
「はっ♡ んはっ♡ あっ♡ くぁっ♡ ひぅっ♡」
「はああ……♡ んふっ♡ まかせて、ください……♡ ちゃんと、奥まで……♡ よしよし♡ したげます、ね……♡♡」
「っ~~!?♡ ひゃうっ♡ んうぅっ!♡ あ♡ あ♡ お♡ ぅっ♡」
ぢゅくぢゅく、ぬっちぬっちとしつこくねばつく音が、わたしのそこから漏れてきます。
ほんとに、途方もないぐらい、奥の奥まで、マチが、入ってきていて……しかも、目隠しまでしてるもんですから、かたちまではっきりわかってしまって、あれは、あっという間に訪れました。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ まちっ♡ ま♡ ち♡ で♡ ちゃ♡ う♡ きちゃ♡ うっ♡ っ♡ っ~~♡♡ っ~~♡♡ っ~~♡♡」
じゅわじゅわっと大量のおつゆであそこを潤わせながら、頭を真っ白にする、わたし。のけぞって、腕が固定されてるベッドが、ぎしぎし悲鳴をあげます。
「んっ……♡ あ、わ……♡ く、ふふ……♡ せんぱい、なかのとこ、ぷっくり……♡ ふくらんできました、よ……♡ ぷりぷり……♡ かわい……♡ ここ、どです、か……?♡」
わたしのなかの、ほどほどに深いところの、おなか側を、くいくいって……持ちあげるみたいに押された途端。
「んあぁぁうっ!?♡ ひっ♡ あ……!♡ まちっ……そこっ……は……!♡」
じわわわわ……と温かくて、深くって、抜け出せない、ぬるま湯でほかほかに温められたはちみつの沼のような……きもちよさが、押し寄せて。また。
「っ……!♡ っ……!♡ ん゛っ……!」
くしゅっぷしっと、モモを握りつぶしたみたいな量の液体が。
「ぁ……♡ んん♡ すご、い、しぶいちゃってます、ね……♡♡ これ、よさそ、です……♡♡ ん♡ んん♡ とても……♡♡♡ ここにたまってる、のかも、しれないです、ね……♡ ぅっ♡ もっと、だしてあげます、からね……♡♡」
波が、引かないまま。
こねこね、こりこり……ちゅくちゅく、にゅりにゅり……。
ゆっくり、ゆっくり、ちょっとだけちからを込めて、押し出すみたいに、マッサージするみたいに、そこだけを、重点的に。
「あ♡ あ♡ あ!♡ あーっ!♡ だっ……めえぇ……!♡ まっ、たっ、で、ちゃ……!♡ ……!♡ っ……!♡ ……♡♡♡」
何度も。何度も。ぐしゅっ。ぷしっ。くしゅっ。ぷしゃっ。って。
「あぁぁぁあっ……♡ もおっ……♡ ああ……♡ やだあっ……♡ なんでっ……♡ まだでるうっ……♡ ……!♡ ……!♡ はっ♡ ひぃ……♡ あっ……♡ いっ♡ やぁ……♡ やだあっ……♡ しんじゃうぅ……♡ あ……!♡ あああ……♡ なんかっ……♡ すごい、のっ……♡ ああ……♡」
いままでで、いちばん深いのが。ずしってくるような、重みのある、あれの予感が。
「これ♡ ふかいのっ♡ きてるっ……♡ や、あ♡ だ♡ め♡ かも♡ だめかもっ♡ だめっかもお……♡ っ……!♡ っ……!♡ っ……!♡」
だめだって、本能でわかってたのに。これはホントに、深すぎて、だめになっちゃうって、わかってたのに。
体力なんか、まるで残ってないから……抑えられなくって。されるがままに、わたしのからだは……その瞬間を迎えてしまって。
「っ――!♡ っ――!♡♡ っ――!♡♡♡」
からだじゅうの毛穴が、細胞が、開いたような解放感。声も出せない……なにもかもが、とけて。こぼれて。ゆるんで。
ちょろろろろろ……と。たくさんの、水。が、漏れはじめて。
「え……あ……やっ、やだっ……まっ、とまって……! とまってぇ……! まちっ、はずしてぇ……!」
信じられませんでした。十八にもなって、こんなことって……。
ほとんど泣きながら、いやいやと髪を振り乱しました。おかげで目隠しが外れて、まばゆい光が目を刺しました。
マチは……とろんとした、雨に濡れた満月のような目で、わたしを見下ろしていました。
「はぁ……♡ せんぱい……♡ すごく、いっぱい……♡ でてます……♡ きれー……♡」
「っ~~!♡」
見られて、いる――。
たくさんの文字を……、百合を、読んできた満月のまなこに。その目で読む本はきっと、月明りのもとで読むように、いかにも神秘的に映るのでしょう。
その目に。わたしのこの醜態も、うつって。
月に、見られて。
そう、思った瞬間。
ずきずきずき……!
と、お腹の奥に痛みが突き刺さりました。甘い、痛みが。わたしのなかに刻みこんで、二度と、忘れられなさそうな、痛み。
「いやぁ……まちぃ……みないでぇ……♡♡」
「っ……♡♡♡」
わたしの哀願を聞いたマチは、びくびくっと肩を震わせ。
「はっ♡ ぁ♡ ――♡ ――♡♡ ――♡♡♡ ……♡ ……♡ ん……♡ あー……♡ は……♡ はっ……♡」
とろぉ……、と涎を垂らして。
「はぁ……♡ ん♡ せん、ぱい……♡♡ かわい……♡♡」
顔を寄せてきて――。
「やっほーリナちゃん先輩! チオですよーっ! お邪魔しますねー!」
唐突に、がちゃっと扉が開かれて。
「あれ? 先輩、なーんですっぽんぽんなんです? って、あ、あー。……おもきしやってるとこでした? チオってば、やらかしちゃったやつです? きゃー! ごめんなさーい。てへっ」
魔零さんが、わたしの部屋にやってきたのでした。
わたしとしたことが――やってしまいました。流れで雨抜きになってしまったので、鍵をかけ忘れていたのでした。
「んんっ、こほん。それで、どうしたの、魔零さん?」
とはいえ一応、リーダーですので、新入りさんに慌てた姿は見せられません。ひとまずマチに服を着せてもらって、マチのベッドのふちに足を組んで座り、何事もなかったかのような顔で応対しました。
魔零さんはちょっといたたまれなさそうに、でも察してくれた感じでいつもの調子になって言いました。
「あーっとですね、なんかお手伝いできることないかなーって来たんですよ! 先輩、腕ケガしちゃってたいへんかなーって思って!」
「それ、なら。あたしがお世話してるので、へいき、です、ね」
マチが硬い声を出しました。
「えー、でもでも、時須ちゃん、さっき図書委員? の子が探してたよ? 行かなくていーの?」
「え……ぁ、ほんとだ……」
Yu-Lintterの通知を確認したマチの目が、わたしと魔零さんのあいだを何度も行ったり来たりしました。
「ごめ、なさい、先輩。すぐ、もどってきます、ので……」
「ううん、気にしないで、行ってあげて?」
名残惜しそうにしながらもあわただしく、マチは出ていきました。ぽんっと魔零さんが手を叩きました。
「さてそれじゃ先輩、おかたづけしちゃいましょっか」
「え? おかたづけ?」
「だってそれ。盛大にやらかしちゃってるじゃないですか。ちゃんと洗わないと染みになりません?」
魔零さんが指さしてるのは、わたしのべちょべちょになった寝具。耳が、ぶわああって熱くなりました。
「いっ、いいわよ! これぐらい、自分でできるから! 自分でやります!」
「えー、そんな恥ずかしがらなくっても。おもらしぐらい、あかちゃんだってしますよ?」
「あかちゃんじゃないわよ! と言うか、おもらしじゃないもん!」
「あははっ。からかっただけですよーぅ」
魔零さんはおかしそうに笑って、わたしの隣にぽんっとお尻を落っことしました。
「てかてか、リナちゃん先輩と時須ちゃんって、そんな関係、だったんですねー。レジスタンスといえど、やっぱりやることやってたんだ」
「あ、えっとね、誤解があるのかもしれないけど、さっきのはレズ行為じゃなくて――」
そういえば、時間がなくて魔零さんにはまだR.U.R.のオリエンテーションをできてませんでした。わたしはバディのシステムについて、定型の説明をしました。
「なんかよくわかんないですけど、でも結果的にやってることはレズ行為とおんなしじゃないです?」
「でも結果的に、人権を守ることになるから、容認してるの。R.U.R.が抵抗しているのは、JKたちを強引にレズ奴隷にしようとする行為だけだから」
「ふーん、ま、それはそれでいいですけど」
魔零さんはかなりつまらなさそうに、わたしの包帯ぐるぐる巻きの手を指でつっつきました。
「でも残念だなー。チオ、さりげに先輩のこと
「え? 狙う? どういうこと?」
「んもう、とぼけちゃって。チオね……、先輩に、ひとめぼれしちゃったんですよ」
いつになく、真剣な雰囲気に、一滴だけ憂いを落としたような、グリーンアップルのまなざし。
「ね、先輩。どうです? チオとバディ組んだりとか、ワンチャンネコチャンないです? チオちゃん、雨抜くのとかもぜったいバリうまちゃんですよ?」
「なっ……、なに、言ってるの。だめよ。わたしには、マチがいるもの」
「はー、チオの人生初告りが秒で玉砕ですかそうですか。くやしいなー。でもま、いいです。逆にすかっとしました」
きっぱりと断ると、魔零さんはベッドにごろんと横になりました。
「あの子、かわいいですよね。ちょっぴしめんどそうで、暗そうだけど。ふたりっきりのときなんか、すっごいべた甘わがままいけいけぽいですけど、そこんとこどーなんです?」
「マチが? うーん、どうかしら。あんまり甘えられてはない? ような気がするけど。しっかりした子だから」
「えー、てか先輩、時須ちゃんとはいつから付き合ってんです? J結合もしてた感じ?」
「え、いや、わたし……も、マチも、J結合はしたことないの。その、ザ・キャッチャー・イン・ザ・L計画がはじまってすぐから……なんていうか必然的に、ね?」
ことばを濁すと、魔零さんはがばって身を起こして、いたずらっぽくわたしの顔を覗きこんできました。
「ははーん、わっかりましたよー。レズド雨に降られて、なし崩し的になんじゃないです? へー、ふーん……」
「たしかに、そういう見方もできるかもしれないけど、でもわたしはちゃんと、マチのことが好きだし、信頼してるわ」
「えー、でもそれって、時須ちゃんもほんとにそう思ってんですー?」
「っ……それ、は――」
的確に痛いところを。ずっと気にしてるところを、突かれました。わたしが答えあぐねていると、魔零さんがわたしの肩にこてんと頭を預けてきました。
「はあ……なんか、暑いな、この部屋……。暑くないです?」
とろんと潤った、きれいな目。
う、わ……、かわい……。この子……。
どっ……どっ……どっ……。心臓が強く胸を打ち、じわってからだが熱くなるのを感じます。
へんだわ……雨、抜いたはずなのに……。急に、ぼーっとしてきて……。どきどき、する――。
すんすん鼻を鳴らして、わたしの肩の匂いを喚ぐ魔零さん。
「先輩、なんかすっごいお菓子みたいな甘い匂いしますよね。これ、どこのコロン?」
「え、いや、たぶん……マチの飴の匂い、かしら……? 気に入ったなら、マチにもらったら? あの子、やたらもってるから――」
「ふうん、じゃ、いいです。先輩から喚ぐし」
ふんすんふんすん。するたびに、魔零さんはどんどん頬を赤く染めていって。
「んー……。なんか。……えっちなにおいも、しますね」
「っ……」
「これも、時須ちゃんの? それとも……リナちゃん先輩の?」
「っ~~! も、もうっ、からかうのはやめて……きゃっ」
魔零さんから離れようとしたものの、魔零さんは思ったよりもわたしに体重を預けていて、ふたりして、ベッドに倒れます。魔零さんが、わたしを押し倒すようなかたちで。ふかっと広がったバニラの匂いに包まれます。
ぽーっとした顔でわたしを見下ろしながら、魔零さんが、ぷるぷるの唇を動かしました。
「ね、先輩……。チオも、雨かかっちゃったみたい、なんですよね」
「っ……。だ、だから?」
「んもう、にぶちん。ね。ちゅーだけでも、してくれないです? 処理は、自分でするんで」
「だ、だめよ……。さっき、説明したとこでしょ。バディ以外には、ぜったいしちゃだめなの。つらいのはわかるけど、収まるまで、我慢して……」
「えー……。でも言うて、先輩もチオのことありかなって思ってません……? 先輩、チオのおしりめっちゃ見てるでしょ」
「そ、そんなこと……」
「うそついてもだめでーす♡ わかっちゃうんですから♡ ねえ、せんぱい、チオのおしり、さわりたいー……?♡」
魔零さんはわたしの手首をつかんで、苦笑しました。
「って今は触れなかったですね、ざんねーん……。くす♡ でも――」
「ひゃっ、んっ……」
ふとももにびとって、ひんやりするすべすべした細いものが乗せられました。たぶん……尻尾。が、すすすす……って撫でるように、這い。
「チオも、先輩のこの脚、むちむちしててすきだなー……♡」
「ん、っくう……」
ぞくぞく。うずうず。ひりひり。芯に響いて。ますます、あつく……。
「ねー、先輩、チオたち、ぜったい相性いいですって……♡ 相思相愛なれますって……♡ それなら……レズ行為じゃないんでしょ……?♡」
「ぅっうん……!」
ひたって。腰にそっと手を添えられただけで、どんどん、おなかの奥……とろ、け、て、く……。
そしておもむろにおおいかぶさってきて、耳元に、ちゅうって。
「ひあぁぁんっ!?♡」
ん、わ……へんなこえ、でちゃった……。
「ふふーん……♡ もーらい♡」
「んっ♡ ん♡」
ささやきが、頭のなかに、注ぎこまれるみたいに。
「あは♡ 先輩、耳よわいでしょ。そゆかたち、してますもんねー♡」
押しのけようとして、もがくけど……ちから、ぜんぜん入らない……。
「な、なにするの……だめよ、こんなこと……。も、ホントに、どいて……。わたしだって、怒るわよ……」
あつい、首……。はず、かし――。
「えー、でも先輩、今めっちゃキスしてほしそうな顔してたじゃないですか……♡」
「な、なによ、それ、どんな顔よ……」
「んー、えっちしたあと、ほったらかされて寂しそうな顔?♡」
ゆっくり、じわじわ上から押し付けられるからだ。しめってる、ちょっと重い、JKの軽さ。細っこいマチとはぜんぜんちがう、むにゅんとやらかくて、わたしのからだとつぶれあって、切ない、隙間が、埋まる、ような。
どっどどっどっどどっどっどどっ。心臓の音も、伝染して。共鳴。してる。
あつい魔零さんのからだに、思考は、溶かされ。
「っ~~。だからあれは、えっちなんかじゃ、ないって……!」
「いやいや、ふつうにえっちだったじゃん♡ 目隠し拘束えっちとか変態プレイまでしててなにゆってんのよ♡」
ぐいぐい来る、低めのささやき声に、かーって、火照ってきて。
「ん、でも……でも……! い、いつもは、リップ越しだから、えっちじゃないもん……!」
いつも、は。
「えー、なにそれ? なんかよくわかんないけど――、じゃあ、チオはリップしてるんで、チオとのもえっちじゃないの?」
「ぇぅ……、そ、それは……」
「えっちじゃないなら、なおさら、バディじゃなくてもおっけーじゃないの?」
「え……あれ、いや……あの……ちが、くて……」
もう、しどろもどろ。
「ね……♡ せんぱい……♡ しましょ……?♡ チオ、デザが限界なっちゃった……♡」
「ぅ……♡ ぁ……♡」
魔零さんのささめきが、ずっと体内で反響して……降りていって、さっきの、マチが残していったひどいずきずきが、増幅するみたい。
ぴた……ってほっぺたに触れる、すべすべの手。グリーンアップルの眼と、あって。
「先輩、もう……、いいよね……♡」
がちゃっと。扉が開かれ。
「ごめ、なさい、先輩。出たり入ったり、して……。資料、置きっぱにしちゃって――、……ぇ」
ひくっと息を呑む音。
「せん……ぱい……?」
おおきく見開かれた――満月。
「えっ!? あ! こ、これはっ――」
言いつくろう前に。
びーびーび-びー! とYuritchの緊急通話のアラームががなりたてました。Yuritchのスピーカーが吐き出す、がす子さんの性急さを帯びた声。
「失礼します。各委員長並びに特待生、千悪さんは大至急食堂に集まってください。――地上との連絡がつきました」