百合はいつかガンに効くようになる!オルタナティブ! 作:伊土 讃阿
『百合はいつかガンに効くようになる!オルタナティブ!』本編は前稿で終了しています。
本稿は編集後記であり、『百合はいつかガンに効くようになる!オルタナティブ!』の内容とは一切関連がありません。
また、すくなくとも"か な ら ず"↓の『ゲノムライダーAlice』はあらかじめご覧になってください。
https://novel18.syosetu.com/n0279fn/
/編集後記
/Stage V prognosis - 予後 -
/part of the Queer
and
砕けよわが悪魔 episode VI(middle part):the 6th Plage "the Wich of Cancer"
with
ゲノムライダーEdith
~正義のヒロインは夢のなかで無知な姉をとろあま百合えっちでレズ堕ちさせたりしない!~
VSヴォーパルヴァニーズヴァタリオン編
>Rebooted the Surrogate TErra-mater degeneration Recurrence ReActor : STERRA...
>Started Reverce Unraveing Reflection program...
>...
ごめんなさい、
ぜんぶ、ニセモノだったんです。
なにもかも、うそだったんです。
世界の脈動が停止する。天を、大地を埋めつくしていた赤黒く瑞々しい肉と臓物が、灰色にしぼんでいく。
夢の終わり。お芝居の終わり。ひとつの、おおきな虚構の終わり。
あたしは胸のなかの、狂おしいまでに愛おしき肉塊をあやすように撫で、空いた手でマスクをつけた。三ヶ月ぶりに、まともな空気が吸えた。スーツのマスクなしで"魔女の巣"に"
体表にこびりついていたガン細胞を払い落す。変身ベルトを再装着。蜥蜴石の"
「お疲れさまだな――"予岐 佐波"先生」
あたしを皮肉りなれた声が、胸を満たしていた達成感と多幸感に冷たい水を差す。
「その名前で呼ばないで。"サリンジャー"。それは、あたしには……重すぎるから」
ひどく気分を害されたあたしは、肉塊を翼で覆った。卵を温めるように。
「なるほどな。わたしは
ぱたはたぱたはたと、一羽の鷲が舞い降りてくる。鷲は、心臓の代わりに己の胸部に埋め込まれた"
「なら配役通り、"トキマチ"とでも呼ぼうか? たしかに、ずいぶん待たされたからな」
「……レジィ。からかわないで。いちおう、R.U.R.計画の猶予期間内には終わったんだから」
「ああ、
「ほんとに、もうやめてね、その名前。それは……現実には、持ちこみたくないの」
「そうかい? センゴクブショーがなにかは知らないが、ことばの響きは悪くないと思ってたんだがね、素直な話」
「……最後まで観ていたの?」
「わたしはきみの"
鷲が淡褐色の翼を広げて、これ見よがしに二度、羽先を器用に折り曲げた。
「あまりに長い物語――、いや、壮大な虚構だった。ここまでくれば、最後まで見届けもするさ」
「……」
「しかし、ほとほと思うよ。半分程度は本当の出来事にしても、よく考えついたものだ。これほどの大ペテンを」
「あたしは……。このお話は、あたしが考えて、創りだしたわけじゃないよ」
だって。
「……たしかに半分は、二〇〇〇年前――まだ多数の
「ふうん。正味な話、ところどころ間抜けな感じが否めなかったのは、そんな大昔の物語だったからか。とくに"ノイツェルファ"の説明のくだり、あのセリフを目にしたときはどうしようかと思ったよ。質問されてたら確実にしどろもどろになってたぜ、わたし。おねえちゃんが古代人並みのおばかで救われたな」
「……」
あれはあたしがつけくわえたところ、とは、くちが裂けても言えなかった。
だって、しょうがないよ。いい説明が思いつかなかったんだもの。
だって、あたしは――。
単なる、
「でも、レジィもアドリブが効いてたね。最後ら辺、真に迫ってる感じで、よかったと思う」
鷲はむっつりと猛禽類の鋭いまなざしを向けてきた。
「あれは素だ。最後の最後で筋書きがむちゃくちゃになったせいで動揺していたんだ」
「にしては、ちょっとノリノリだったけど」
「うるさいよ」
そして皮肉げな声色をやわらげ。
「ともあれ、なんとか"Reverce Unraveling Reflection program"――
"
「……うん」
あたしは翼の下の
"大図書館"史上最凶の"
対して、生き延びた正義のライダーたちは、VVV対抗勢力"ビストロウシュカ"を結成。これは、権力の回復にばかり傾倒する大図書館の残党にもつかず、純粋に蹠民を守らんと兎たちに対抗するレジスタンス組織だった。
ビストロウシュカに与するのはライダーだけではなかった。繁殖欲に負けてライダーから狂気に堕ちたのちに隠居していたヴィランや、ジャバウォック崩れのヴィランまでもレジスタンス活動に参加していた。元ジャバウォック幹部だったヴィランによると、六年前を境にジャバウォックは実質的に機能崩壊していて、混迷の極みに陥っていたのだそうだ。
その契機となったのが――かつて最強のライダーとして名を馳せていた、アリス・ザ・ルナティックチャイルドフッドことゲノムライダーアリス、"ヴォーパルバニー"の狂化だという。
ジャバウォックになにが起こったのかを知るために、ビストロウシュカは――あたしたちは、凍結されていたアリスのダブルシンク、ローリナをジャバウォックのアジト跡から回収した。
ウォッチャーは機密保持のため、
ところがローリナは岩の鍵を受けつけなかった。凍結前に心身を酷使していたためらしかったが、詳細は不明。ライダー細胞の原型であり希少なゼロアルシーヴまでも投入し作成した新たなウォッチャーの肉体にローリナの脳を移植しても、肝心の記憶だけは依然凍りついたままだった。想像を絶する回数を重ねられた
そこで発案されたのが、穿孔大陸最大の魔女の巣内で休眠状態にあった"
かつて世界を滅ぼした十の災厄のなかでも比較的穏やかな腫の魔女は、ゼロアルシーヴを産出する"
あいにくゼロアルシーヴは何年も前に大図書館によって掘り尽くされており、劣化したゼロアルシーヴが一掬、巣の底を湿らせているだけだった。分化後は短命だが、ゼロアルシーヴに近い特性を持つ腫の魔女細胞自体も老化がひどかった。
しかし、ウォッチャーの肉体再生は不可能でも、最深部でSTERRAと接続、腫の魔女とローリナの共有夢として世界を構築、そのなかでローリナを心的外傷と向き合わせ、逆バイアスのリフレクションをかけつづければ、脳の再現あるいは記憶の解凍だけでも、可能かもしれない――。
そう提案したのも、リスクの高すぎる計画に渋るビストロウシュカの面々をあの手この手で説き伏せたのも、あたしだった。幸いあたしは、ビストロウシュカの走狗として大陸中を駆け巡っているあいだに、みんなを納得させられるだけの材料をそろえていた。
"
夢魔の名前。"彼ら"の残滓であり、"彼女たち"の落とし子でもあり、ひとのつくりしサイマト生命体を、呼び出す鍵。
"
ビストロウシュカの副司令にまで登りつめたあたしが全責任を負うことで、
脚本の大部分は史実と、かつてすべてのSRY遺伝子を世界から除去しようとした"
ただし、腫の魔女が提供してくれるのは傷みやすい万能の素材と、腫の魔女が活動期に遺伝子的に接触した一部の生物の情報だけだった。不足した遺伝子情報などは、悪魔のちからを借りるしかなかった。最初のライダーにして最初のヴィラン、大図書館最大の禁忌として凍結保存されていた、マリー・ザ・ルナティックチャイルドフッドのちからを。
マリーのライダーモデルは悪魔だった。悪魔とは、かつての地球の全生命遺伝子を格納した太古の古細菌にして、人類に対して並みならぬ敵意を持った欲望と感情の根源存在だった。ゆえにマリーは遺伝子調整されたライダーが持つはずのなかった繁殖欲に覚醒、最初の狂気を孕み、ヴィランとなった。
狂気はウィルスのように拡散した。あるいは
あらゆる生命情報を展開できるマリーの協力は、R.U.R.計画を進めるうえでは不可欠だった。そのため、あたしは腫の魔女細胞で受肉させることを条件に、夢魔と契約してマリーに催眠をかけさせ従わせた。マリーのなかにあったこの時代やゲノムライダーとしての記憶を封印し、二千年前の悪魔として振舞わせ、あたかも夢魔同様に腫の魔女細胞による受肉を報酬としてR.U.R.計画に参加させているふうを、装った。
そういう、手筈だった。"ビストロウシュカが進めているR.U.R.計画"では。
プレザンスが愚痴を言った。
「それがまさか夢魔が仕損じて、あんな事態になるとはな」
「でも、脚本の修正で、なんとかできたよ」
「きみがあの土壇場で寄越してきたとんでもない脚本のことか? とても正気には思えなかったがね。この魔女の巣は、ただでさえ魔女細胞中の高濃度エアで物理法則が一様ではない混沌の穴なんだぞ。あの悪魔への突入作戦は、混沌のさらに混沌に、全裸で飛び込んだようなものだ。なにが起こっても、不思議ではなかった。結果的にうまくいったからよかったものの……あんなものは、なんとかできたとは言わない。奇跡が起きただけだ。
だからわたしは、
暗闇から、軽佻で耳障りな笑い声が響いてくる。
「くししっ。心外ですナー、プレザンスちゃん。あーしらも全力は尽くしたんですケド?」
「にゃっはぁ♡ そうですよぉ~。あんなもの、ゴセー大事にとっとく人類もどうかしてますよぉ~」
ひょっこりと顔を出したのは二匹の夢魔。
「……協力してくれて、ありがとうございました。タマリンドさん、シナモンさん」
「こちらこそ楽しかったですよぉ~、イーディスちゃん♡ 最っ高に気持ちい夢でしたぁ♪」
「たとえボロ肉でも、受肉もさせてもらったしネ。
プレザンスが咎めるようにぎろりとねめつけた。
「だが、一部契約違反があっただろう? 隙あらばとローリナに催眠をかけ、記憶を覗きかけていた――。ローリナの記憶は凍結されていて、脚本に齟齬が生じるから、ローリナへの催眠は禁じていたはずだ。ちがうか?」
「えぇ~、でもぉ~、イーディスちゃんがしっかりブロックしてたのでぇ、結果的にはしてないですよぉ?」
「そうそう。てかサ、逆にしなきゃあやしまれるくないか? とか思って、気ぃ遣ってアドリブ効かせてあげたんだゾ、われわれ」
悪びれもしない夢魔の態度に、プレザンスが追及する。
「……ほう。では、最後に悪魔が催眠から目覚めたのも偶然なんだな? 実は故意に悪魔を解放して暴走させ、機を見てゼロアルシーヴを横取りし、真に受肉しようなどという意図は一切なかったと?」
「へんに勘ぐるのやめてもらえますぅ~? にゃふにゃふにゃふ♡」
「くっしっしっ、なーんのことかわかりませんナー。あーしは契約通りに仕事しただけだゾ。なー? イーディスちゃ――」
あたしは顎をしゃくって魔女の巣の出口を示した。
「もうご用はありませんので、どこへなりともお好きにどうぞ。ただし再会したときに、まだ生きていたら――、そのときは、狩りますので」
「人類を守護するゲノムライダーとして、な」
「にゃふふっ♡ ひよひよのひよっこどものくせに、言いますねぇ~」
「そっちこそ、次会ったらかわいがってやるから覚悟しとくんだゾ」
浮き浮きとした足取りで地上へ向かう夢魔たちの姿が見えなくなると、プレザンスは重い溜息を吐いて緊張を解いた。
「しかし、野放しにしてよかったのか? 夢魔も、千年も前には人類やホモ・ラブリュスを虐殺していた危険な存在だったんだろう?」
「うん……。あのニ匹も、夢を駆使して手にかけたひとの数は、合計で一万はくだらないかな」
「なら、どうして」
「あんな肉で受肉した夢魔が催眠で干渉できる相手は、そう多くないはず。夢だって渡れなくなる。それに、そのうち魔女細胞とともに消えるから。あれは終身刑のようなものなの」
「……連中は、それを知ってるのか?」
「そこは解釈の問題だから、契約には明記してないよ」
「きみもなかなか、うそつきが板についてきたな。にしても、連中も危険な橋を渡ろうとしたものだね。このゼロアルシーヴは、ローリナの記憶を再生させるためだけに調整した、ただの神経細胞なのに」
「……」
「……」
「……」
「……イーディス?」
「……」
「なぜ黙って――」
「……ちがうの、今は」
「……なに?」
「ゼロアルシーヴ。劣化していないの。今は」
「は……?」
夢を脚本通りに進展させるために、ローリナとの肉体的接触を通じて渡していたライダー遺伝子は、魔女細胞で構成されたローリナの身体の能力を高めるためのものだった。腫の魔女はいわばすべてのゲノムライダーの母だ。ライダー遺伝子と親和性が高く、よくなじむ。
だが魔女細胞は老いている。その腐敗とともに朽ちゆく運命にあるはずだった。
完全なゼロアルシーヴ。そんなものでもなければ、成長はおろか、定着しえないのだった。
つまり。
だから、あたしは。
「悪魔を目覚めさせたのは、あたしなの。ゼロアルシーヴを、悪魔のちからを利用して、再生させたくて。だから、夢魔をふたり雇ったの。二重に催眠をかける必要があったから。ひとつめは、マリーのライダーとしての記憶を封印するため。ふたつめは、真なる悪魔のちからの使い方を、擦りこむため。マリーを解放したのも、ゼロアルシーヴを保管していた時空展延迷宮に瑕疵をつくったのも――、あたし」
プレザンスは、羽毛を膨らませた。
「な……。はじめから、ぜんぶ――きみの、脚本どおり、だったとでも……?」
「うん。……ごめんね」
「なんて、ことを。しでかしてくれたんだ、きみは……!」
「
「当たり前だ! このっ……、この! 仲間になんと報告するつもりだ!?」
「ビストロウシュ力のひとたちには、あたしから説明するよ。うまく話をでっちあげるから」
あたしの愛すべき相棒は、一〇歳も老けこんだように見えた。
「……はあ。今にして思えば、みなの反対を押し切ってゲノムライターの原料でもある貴重な蜥蜴石を
「ごめんね。作家って、みんなうそつきなの」
「きみは、作家じゃないんだろ?」
「……うん。ごめんなさい」
ごめんなさい。
ごめんなさい、おねえちゃん。
ぜんぶニセモノだったんです。
でも。
きもちだけは、ホンモノでした。
最初から。ずっと。
肉塊を、ぴったりとお腹につける。とくとく、とくとく、かすかな脈打ちが、あたしの血流に乗る。内臓をあっためる。あのときみたいに。
"あなた、こんなところでなにしているの? 凍えちゃうわよ?"
真冬の書庫。冷えきった御影石の床。音のない本。
"迷子になっちゃったの? ウォッチャーとはぐれちゃった? わたし? わたしは
とてとて歩いてくる、白い、ふわふわの毛玉。
"しょうがないわね。じゃあ、これ舐め終わったら、ライブラリチルドレンの寮まで道案内してあげるわ。それまでわたしが温めてあげる。知ってる? ウサギの平熱は四十度もあるのよ。ほらごらんなさい、あんよが蜥蜴石みたいに冷たくなってるじゃない! ライダーでもしもやけにはなるのよ? さ、ぽんぽん出しなさい。ああ、あったかい。やっぱりこどもはいいわね。とってもいい匂い。きまるわぁ。"
おねえちゃんは、憶えてる?
"あなた、ええと――
あたしは、忘れたことないよ。
"なぁに? 仕事で失敗してばかり? たとえば? やだわ、そんなの失敗のうちにも入らないわよ。わたしのアリスったらね、いつか最強のライダーになるだろうって
目が覚めたら――、おねえちゃんは気づくだろうか。気づいたら、怒るだろうか。
それとも、どれほどの危険を承知で、犠牲を払ったのかを認めて、許してくれるだろうか。
……わかってる。
あの子に、嫉妬してただけだっていうのは。でも。あたしは。
あたしの細胞は、おねえちゃんのこと、本気で考えてたんだよ。
おねえちゃん、あたしだから、できたんだよ。おねえちゃん。
ぜんぶ、ぜんぶ、おねえちゃんのために、したんだよ。
だから、ね?
次は、あの子じゃなくて。
あたしのことを、観てくれるかな……?
あたしに、おねえちゃんの、を――。
プレザンスが慎重に言った。
「――つまり、だ。今きみが温めているのは――、これからそのゼロアルシーヴから産まれるのは――」
「――うん。ゲノムライダー、ローリナだよ」
ゲノムライダーLorinaにつづく
「起きて、ねえ、おねえちゃん!」
イーディスは言いました。
「まあ、ずいぶんよく寝てたこと!」
「ああ、わたし、とてもへんてこりんな夢を見たわ!」
そう言うとローリナは、みなさんがこれまで読んできた不思議な冒険物語を、思い出せるかぎり、すっかり妹に話して聞かせました。
話し終えると、イーディスはローリナにキスをしてこう言いました。
「ほんとにへんてこな夢ね。でも、もうお茶の時間だから走っていってらっしゃい。遅れるわよ。」
そこでローリナは立ちあがって走り出しましたが、一生懸命走りながらも、なんてすばらしい夢だったのかと思いました――。
>The invention is end.
>good morning.