百合はいつかガンに効くようになる!オルタナティブ! 作:伊土 讃阿
/Stage II promotion - 促進 -
/part 3 長すぎた一日を終えて
うようよ徘徊するじーじと、ふわふわ浮遊するザ・ウォッチャーをなんとかやりすごしつつ、打ち捨てられた雑居ビルのニ階に到着しました。音波さんの生体認証で開いた金庫みたいな頑丈そうな扉の先には、打ちっぱなしのコンクリが冷え冷えとした、倉庫のような広い部屋がありました。
隅っこのほうに高そうなじゅうたんが敷いてあって、ソファやテーブル、クローゼットが置かれてますけど、ほかに家具らしきものはありません。生活感はまるで皆無で、
「ここに住んでるの?」
「そんなわけないでしょ。セーフハウスのひとつよ」
音波さんはガムを膨らませたりしぼませたりしながら洋服だらけのクローゼットをがさごそ物色しはじめました。
「セーフハウス?」
「緊急時に避難する隠れ家」
「隠れ家、持ってる、なんて、すごい、です、ね……。温羅杜さん」
「……べつに。
音波さんは服を何着かと古い型の"
「ここにあるものはなんでも好きにしていいわ。もう放棄するから」
「えっ、どうして? ここに隠れてるんじゃないの?」
音波さんがぎろっとわたしをにらみつけました。
「あんたたちに知られたからよ。あたしはべつの隠れ家に行く。だからずっとここにいていい」
「え、なんかごめんね。というか、ホントにいいのかしら?」
「いいったら。でもそのかわり、明日からはつきまとわないで」
「そんな……いっしょに行動したほうがいいわよ、ぜったい!」
「ちっ……うっざ」
「今うざいっていった!?」
「は? 言ってないわよ。ちっ。いいかわるいかじゃなくて、いやなの。あんたとおんなし空間にいるのが。お願いだからひとりにして、って言ったの。そもそもあんた、なんであたしにかまうの?」
「え……。それは――」
それは……そう――。
「年下の子、ほっとけなくて」
「は? きっも。あんたロリコン?」
「え、や、ちがうの、妹がいて……」
「はあ? それが? 勝手に投影しないで。あんたの心情にあたしを巻きこまないで。あたしはあたし。あんたの妹じゃない。あんた、救いようがない自己中ね」
本気で迷惑そうな顔をされてしまいました。
「ぅ……その、ごめん。……あ、そうだ、ごはんはどうしたらいいの?」
「はああ? あんたあかちゃん? セーフハウスひとつあげたのよ。あとは自分たちでどうにかしようって思わないの? 図々しいにもほどがあるわよ。ホントに三年生?」
「ぅぐ、そ、そうよね、ごめん……」
「ちっ」
めちゃくちゃ怒られてしまいました。だってものすごくお腹が空いてたし、音波さん、すごくしっかりしてたので、つい……。
音波さんはすたすたと奥の扉のほうに歩いて行きました。
「あんたたちの食べ物はないけど、シャワーとトイレは入口脇の部屋。ほかの部屋にはなにもないわ。それからこっちは、あたしの部屋。ぜったいに入らないで。ノックしないで。声もかけないで。わからないことがあったらググって。それでもわからなければ諦めて。もし今日、これ以上あたしに関わろうとしたら――」
音波さんは部屋に引っこみざま、ぎろぎろぎろりと思いっきりザクロ色の眼を光らせて――ちっちゃな真珠みたいな牙を剥いて。肩に乗った小鳥も威嚇するみたいにくわっとくちばしを開いて。
「血を一滴残らず吸い尽くしてやるから」
ばたんっ、がちゃこんっ、と扉を閉めて鍵をかけてしまいました。
わたしもマチも濡れネズミだったので、ひとまず交代でシャワーを浴びて着替えることにしました。制服とジャージは洗って干しておいて、音波さんの服を拝借します。服といっても、クローゼットのなかにはかわいいふりふりのベビードールしかなかったんですけど……。
先にシャワーを頂いたあと、ソファに座って水からだしを取った水の煮込み(要するに白湯です)をすすり、くつろいでいると、マチがシャワー室から出てきました。すみれ色のシンプルなデザインのベビードールに身を包んだマチは、こどもっぼさが強調されて、故郷の
マチは猫背気味にもじもじとはにかんでいました。
「ぁ、の。へんじゃ、ないです、か。あたし、こゆの、着るの、はじめて、で……」
「ぜんぜんへんじゃないわよ、マチ。似合ってるわ。すっごくかわいい」
「あっ、かっ、かたぢけ、ない、です……リナ先輩こそ、えっ――」
真っ赤になってマチがくちをもにょもにょさせました。
「え?」
「ぇ……、ち、すてき、です、よ……」
「そう? 丈があうのがなかったのよね。ちんちくりんに見えないかしら? それに……」
下着もなかったので、やむなく素肌のうえから直に着た黒い夜着の裾を引っ張ります。おしりが見えそうでしたけど、動きまわるわけじゃないし、マチしかいないので、我慢しましょう。
「……先輩、あんまし、自覚、ないです、よね……。脚、とか……」
マチに指摘されて、わたしは苦笑してしまいました。
「あ、やっばり太いわよね、わたしの脚。ちょっとコンブレックスなのよね。お菓子とかぜんぜん食べないんだけど、どうしてこんなでぶっちゃうのかしら」
「ぁ……、ん。と。そゆ、意味じゃ……」
なにはともあれ、ひと段落つきました。ここならじーじやザ・ウォッチャーに見つかる恐れはなさそうなので、なんとか今夜は休めそうです。
「これもぜんぶ、音波さんのおかげね。音波さん、おしゃんなお洋服たくさんもってるし、こんな施設をほかにも持ってるみたいな言い方してたから、すごくお金持ちなのね、きっと」
ソファがふたりぶんの体重で、きしっと音を立てます。
「先輩、スフィア・ラゴウの"温羅杜財閥"、って、聞いたこと、ない、です、か? もう解体、されちゃって、"H&Cインダストリ"と、ライバル関係にある、ペンデュラムズに吸収、されちゃいました、けど……」
「H&Cインダストリって、マロンさんの――チャーチ家の会社よね。ザ・ウォッチャーとか、ユリクロスとか、Yuritchとか、そういう、いろんな機械の。ペンデュラムズってなんだったかしら。聞き覚えはあるんだけど」
「ぁ、ん。と。じーじ、開発した会社です、ね。とゆか、ザ・ウォッチャーも、クロスも、Yuritchも、十年前の金融危機――いわゆる"Qショック"で、H&Cインダストリが撤退して、から、ペンデュラムズ製に、なりました、ね。じーじを操ってるシステムは、つい最近まで、H&Cインダストリが運営、してたんです、けど、それも、ペンデュラムズに切り替わった、とか」
「ああ、金融危機、あったらしいわね。わたしの実家は田舎すぎて、ほとんど影響なかったから、よく知らないのよね」
伝話はいちおうありましたけど、ネットがないのでメールだってありませんでした。手紙は遺伝子改良された
「というか詳しいのね、マチ」
「……ご本で、読んだん、です。その、マロン先輩と、こころ先輩のこと……気になって、H&Cインダストリのこと、調べたこと、あって。H&CインダストリがQショック、から持ち直して、また世界一の資産家に返り咲いた、のは、マロン先輩と、こころ先輩が、新しいコンピュータつくったから、だそうです、よ」
「へえ……、あのふたり、やっぱりただものじゃなかったのね」
「ぁ……と、それで、話が、迷子になっちゃいました、けど、ペンデュラムズに吸収された、温羅杜財閥は、たしか、
「あ、そうだったの。じゃあホンモノのお嬢様なのね。どおりでハイカラなおべべをたくさん持ってて、顔がいいんだわ」
でも、せっかくきれいなお顔をしてるんだから、あのビアスとかはちょっとどうかと思うわ。もちろん、風紀的にも。世話になってる身で注意はできませんでしたけどね。
「……その、リナ先輩……。あたし、たち……これから、どうなっちゃうん、でしょう、か……。生徒会の、先輩たち、も……」
「助けてはあげたいけど、あんなすごいことできるJKが捕まっちゃうなら、わたしたちの出る幕はないわよね……。逃げるので、精いっぱいなわけだし。運よく隠れ家は手に入ったけど、食糧をなんとかしなくっちゃならないわ」
きゅう……、とむなしくわたしのお腹が鳴きました。隠れ家には水と電気はきていて、お湯を沸かすぐらいならできました。でも肝心の食べ物は、音波さんがいったとおり、ぼよ一粒ありません。かろうじていけそうなのは……石鹸とシャンプーぐらいかしら?
「石鹸のシャンプーがけとか、お腹のなかすごくきれいになりそうじゃない?」
「ふつうに、お腹壊す、と思います、よ……。あ、そだ……」
マチが鷲羽のなかからちっちゃな白いボールを取り出しました。
「先輩、ゆでたまご、食べます、か? こゆことも、あろうかと思って、いつも、持ち歩いてて……」
「あら、準備いいのね。じゃあいただこうかしら……いくつあるの?」
「え……ご、ごめんなさい、一個だけ、で……。足りない、です、よね」
「あ、そういうんじゃなくって。後輩から食べ物を取りあげるだなんてできないわ、ってこと。わたしのことは気にしないで、マチが食べて?」
「い、い、え、せんぱい、食べて、ください。あたしには、あめちゃん、あります、ので……それに、あたし、たまご、そんなに好きじゃ、なくて……」
「え? 好きじゃないのに持ち運んでるの?」
「……いちおう、です。ん。と、先輩が、いらない、なら、捨てちゃう、だけ、なので……」
「ふうん……よくわかんないけど、そういうことなら遠慮なくいただくわね。ありがとう、助かったわ!」
あたしの故郷スフィア・ミンスターで食べてた卵よりかは小ぶりです。でも味はしっかりしてて、なかなかいけます。
「結構おいしいわね、これ。卵なんて久しぶりに食べたからかしら。でもお菓子とぽよ以外に、J.K.に食べ物があるなんてびっくりね。よくみつけたわね、マチ」
「えっ、ええ、まあ、はい……」
妙にたどたどしくマチが答えました。今日はいろいろあったから、疲れてるのね、きっと……。
わたしも、また徐々にからだが火照ってきて、くらくらしてきました。風邪がぶりかえしてきた……というより、たぶん、あの
「今日はもう休みましょうか」
「あ、リナ先輩、ソファ、使って、ください……。あたし床で、寝ます、から……」
「ええ……じゅうたん敷いてるとはいえ、下はコンクリよ? ぜったい眠れないわよ」
「ふかふかの羽、ありますから、へいき、です」
「だめよ、そんなの。明日からも何が起こるかわからないんだから、お互いへんなところで遠慮して体力を消費するのはやめましょ、ね? いっしょに寝ましょうよ。詰めればなんとかふたりで横になれるぐらいのスベースはあるじゃない?」
「ん……せ。せん、ばいが、そう、いうなら……」
今日はいろいろありすぎて、すっかりへとへとでした。きっとすぐに眠れるはず……と思っていたんですけど、電気を消してしばらくしても、わたしはなかなか寝付けないでいました。向かいあって寝ているマチの、甘い飴と、お布団みたいな匂い、それから……、びっとり密着した、布越しの、温かさ…やわらかさ。
そのすべてが、いろいろあった今日のできごとのひとつ……あの保健室での布団のなかでのひめごとを、いやおうなく思い出させていたのでした。
うう……そういえば、わたし、つい数時間前、マチと……なんだかすごいこと、しちゃったのよね……。きっ。き。くちうつし、とか……。
考えれば考えるほどもんもんとしてきて、肌が汗ばんでくるようです。寝返りを打ちたくても打てず、おしりがもげそうなぐらい凝ってきました。空気も少なくて、寝苦しいし……わたしだけ、床で寝るべきだったかしら……。
きい、ってソファがか細くきしみました。
「ん……、せん、ぱい……」
ぼそって、吐息のような声が。
「ねむれない、です、か……」
むきだしになった胸元に、触れました。
「んぇ……え、ええ…ちょっと、ね……びっ」
ふくらはぎの内側に、ぴとって、マチの生温かい素足が、吸いつくみたいに、くっつきました。
「はぁ……んっ……」
熱い。息。
「せんぱい……あたし、も、ねむれなく、って……、っは……」
声がするたびに、肌が、湿って。
「そ、なの……でも、ねないと、たいへん、よ」
喉が、からからに。
「……っぁ」
しっとり、ぴっとり、くっついた、膝同士が、しゅり、しゅりって……、こすれて。
「やっぱり……、あの、雨のせい……んっ、でしょ、か……」
そこから、だんだん……燃え移ってくるみたいに、あつく、あつく。
「か、かもね……」
ひりひりする。ふとももに、汗が……じわって滲んじゃってる……。
「ん。と……じゃあ……」
ごきゅって、喉を鳴らす、音。
「また、くちうつし。して、みます、か……?」
ずき、ずきんって、おなかの奥が、うずくみたいな――。
「んぃ……で、でも、くっ、ちうつしって、風邪をうつす、ためのものじゃ……?」
「でも……効果、ありました、よね……」
「たっ、しかに、すっきりは、したけど……」
夕方よりも、ずっと熱く、湿っぽく、荒い息で、切羽詰まった感じで、マチが身を寄せてきます。わたしなんかよりも、ずっと具合がわるそう。それに、すごく、ぐいぐい、くるの……歯止めが効かなくなっちゃってる、みたいに。
ひょっとして、マチ……、レズド雨の影響、受けやすい、とか……?
「はっ……はぁ……、それに、サリンジャーさん、言って……たんですよ、ね……。ひとの遺伝子を接種すれば……んっ、増殖、止まる、て……」
「そ、そいえば、そんなことも……言ってた、ような……?」
あんまし意味わかってなかったですけど、それってそういうことだったの!?
どっ、どっ、どっ、どっ……。
マチにも聞こえてるんじゃないかってぐらいに、心臓が跳ねちゃってます。
「で、でも、ホントのことか、どうか、わからない、じゃない……」
「じゃあ……、たしかめて、みません、か」
ぽう、ってわたしの目の前に、暗闇のなかに浮かび上がってくる……ふたつの、満月みたいな眼。吸いこまれて……押しつぶされそうな。光。
「……いい、です、よね……」
わたしの喉を、顎を、前歯を、もわって、吐息がかすめていきます。
「んっ……」
くちゅって、わたしの唇が、くっついてく……やわらかくて、あつく、とろけるような、なにかに。
「ん、ふっ……ちゅ」
「ん、ちゅっ、ちゅっ……」
きし、きしっ、きし……。
わたしのからだのうえにしなだれかかってくる、びっくりするほど熱くて、すべすべした、重さ……。そこだけひんやりした鼻の頭同士が、ぶつかって、つるって、すべって。
唇から伝わってくる呼気が、時間をどろどろにとろかしていきます。完全にわたしに乗っかって、体重を預けきったマチの、うらやましいぐらいにほっそりしたふとももが、汗ばんで、皮膚はすこし冷たいのに、そのなかは燃えるように発熱したふとももが、わたしの足の間に、差しこまれる、まで。
そ……っと、ふとももの、お肉の乗った部分が、わたしのお腹の下に置かれました。保健室で、わたしをしびれさせたのと、おんなしところに。今度は……じかに。
ぞくぞくぞくぞくぅっと、夕方のときとは比べ物にならない生々しいしびれが、わたしのお腹のなかを駆け巡りました。
「んぶっ、は、あ、まっ、ふぇ、まって、マチ……あ、足、どけ、て……さわ、ちゃ、てぅ……あ、ぁ、あ、そこ……に」
「は……はっ……んっ……はぁ……すみ、ませ」
下着越しじゃないからあんまり摩擦はなくて刺激は弱いけど……温度と密着感がすごくて。百パーセント伝わってくる、マチの肌の、触感。が、ぺちゃ……って、離れました。
ねばっこく、甘く、ふきおろしてくる息が、わたしのまつ毛を揺らします。マチの前髪が、わたしの前髪を、梳いていきます。
「ん……、は……、せんば、い……なんか……濡れちゃって、ます、ね……」
「っ~~……!」
首から上が、腫れあがっちゃったみたいに、ぼっと火照ります。
「ぅぉ、おもらし、じゃ、ないわよ……!? きっと、シャワー、浴びたあと、たぶん、拭きそこねたのよ、ぜったいっ……」
「そ、ですよ、ね……。じゃあ……。ふいたげ、ます、ね……」
「ぇ……ひあ!?」
ペちょ……って、内ももにくっついてくる、細い、なにか。たぶん、指……が。そ、そ、そ、って、素肌の表面を、撫であげてきます。わたしの……、真ん中に、向かって。
やわらかくて、ほっそりして、しっとりした指先のはずなのに、ひりひり、ぞくぞく、神経に引っかかるような、鋭い、くすぐったさ。
「んっ、ん! ま、まち!? そっ、そんなとこ、さわ、るの、って、い、い! や! い、いやらしっ、ことなんじゃ、ないのっ……!?」
「は……んっ……、ヘいき、です、よ……、どこ、濡れてる、か……はっ、は……しらべてる、だけ、です、から……」
「ん、あ、で、でも、でも、ぅ、ん、や、ほんと、まって……まってぇ……」
マチ、すごいぐいぐい、来てる……。いつも、距離近いところはあったけど……。そんなのとは種類がちがう、押しの強さ。ぜったい、おかしく、なっちゃってる……。
「ん……またない、です、よ……。はっ、はーっ……ちゃんと、ふかない、と、ほんとに、お風邪、ひいちゃいます、から……」
「んっ、でっもっ、あっ……! そこ、はっ……あぅ、んむ」
足の付け根の、谷間のところに、指がすべりこんできて……本気でやめてって言おうした唇は、またふさがれてしまいます。そして、全身で、ずしって押さえつけられるみたいに、マチの細身のからだが、のしかかってきて……沈みこむみたいに……熾火みたいな体温が、じわじわ、伝わってきて、あまりの熱さに、ぼうっとして、なんにも、わからなくなってしまいました。
隙間なく、ぴっとり、べっとり、張りついてくるようなマチの肌と、わたしの肌の、境界線すら……あいまいに、なって。ただはっきりしてるのは、わたしの……あそこのうえを、ひたひた這いまわってる、指先の、しめりけ。
「んっ、んぅ……、っ、んふっ、んぁー……」
どうして……ちょっと、表面を、撫でられてる、だけなのに。皮膚のすぐ下が、信じられないぐらい、ぞくぞく、びりびり。そのずっと奥の、おなかの芯は、どろどろとけていくみたいです。首も、手も、足も、あっちこっちがきゅーって熱く。
うだるような、じめっとした暑さと、息苦しさ。すべりおちていく、汗。甘い、息。
……あそこからも、どろっ……て、お腹の奥から、押し出されるみたいに……もれ、た、水を……くちゃって、マチの指が、すくいあげて。
「はぁ……♡ せん、ばい……ここ、すごく……濡れちゃって、ます、よ……?」
「っ~~!」
がつんって、殴りつけられたような、衝撃。恥ずかしい……はずかしいはずかしいはずかしい……!
泣き出したくなるぐらい、もう、わけがわからないけど、ただ、はずかしくって……何も、いえなくなってしまいました。
「ん……わ……♡ んへ……♡ どんどん、でて、きます、ね……♡」
「うぅぅう……!」
言われなくても、わかってる……とん、とん、とん、って、そこを軽く突つかれるたびに、ねばっ、ねばっ、ねばっ、て。ぬるぬるしたのが、垂れて、いくのが……。
なに、これ……なんなの、これ……わたしのからだ、おかしくなっちゃったの……? これも、レズド雨のせい……?
「ひょっと、したら……雨、入っちゃったの、かも、です、ね……」
ちょっと弾んだ、熱っぽい、迫るような、マチの声。
「さわさわ、したら……、出せるかも、です、ね……♡」
「……んひっ!? ひぅっ、んっ、んんっ……!」
さわさわ、マチの指がお尻のほうから、お腹のほうにかけて、あそこをなぞるみたいに、行ったり来たりしはじめます。
しゅる、しゅる、しゅる、すりすり、すり、くち、くち、くちくち……ナメクジが這うみたいなのろのろさで、わたしに雷を落としていきます。
「ひんっ、んっ、んんっ、んんん~~っ、ま、ち、だ、め、さわさ、わっ、だっめぇっ……!」
「っ~~!♡ は、はっ、はぁーっ……♡ せっ、せんぱいっ……♡ かわい……♡ ん、ん、せん、ばい♡ ん、んぅ♡ せんばい、せんばい、ん……♡ かわいい……♡♡」
ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅ、何度も、ついばむ感じの、小さなくちうつし。しながら、あそこを、ぬるぬる、なぞられます。
「んっ、んふっ、ら、め、んっ、まちっ、まっ、ちぃ……ん、んっ」
「せんぱい、せんぱいっ、んっ♡ せんぱい……ん、ちゅっ、せんぱい……♡ ん♡ ん♡♡♡」
唇から、あそこから、声から。マチがどんどん、絶え間なくやってきて、わたしのなかを、いっぱいいっぱいにして、かきまわして。マチが触れているところだけが、わたしのすべてに、なって。
ぐらぐらぐら……ひたすら、どこかに沈んでいく感覚。
が。
ぜんぶ、消し飛ぶぐらいの、すさまじい電流が、びりり……! って走りました。
「んんん――!?」
マチの指のお腹がとらえていたのは……わたしの、先端。
夕方、マチのふとももに、押しつぶされていたところ。
つぶのような。の。を。つ、つ、つ、って。指がなぞり。ばちっ、ばちっっ、ばちっっっ、って、わたしの頭のなかで、花火がはじけます。
「あっ、んあっ! あ! まっ、ち! そっ! こ! は!」
「ん……ここ、や、です、か……?」
「は、は、はぁ……そ、そこっ、さわられたら、びりびり、して……、こわい、の……」
ぜえぜえはあはあ、マチにしがみつくみたいにして、息を整えます。
わたしのからだに、ちょっと指でさすられただけで、こんなになるところがあるなんて……まるで神経がむきだしになっちゃってるみたいだわ……。
「でも……♡」
「ぴ!?」
また。
「ここ、さわる、と……♡」
「きゃひっ!」
ぴたって。
「いっぱい、濡れて、きます、よ……♡」
「んいっ、ひんっ! ひきゅっ! っくうんっ!」
さす、さす、さす……。
「なんだか……♡ こりこり……♡ してます、し……♡」
こり、こり、こりゅ、こりゅ、ころがす、みたいに。
「あーっ! だめっ! だっ、んめっ! やっ! んああっ!」
「たぶん、ここに、たまっちゃって、るんだと、おもいます、よ……♡」
とん、とん、とんとん、とん。
ぷちゅっ。くちゃ。
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ……!」
「雨、だしたげ、ます、ね……♡」
さす、さす、さす、さす……こり、こり、こり、こり……に゛るに゛る、に゛ぢに゛ぢ……とんとん、とん、とん、とんとんとん……。
「ひあぁぁんっ! んやあぁっ! ぁあっ! あぁーっ!」
わたしのからだのなかに台風が入りこんだのかと思うぐらい、しっちゃかめっちゃか、なにもかも、ぐちゃぐちゃになる感覚。全身が爆発しちゃいそうで、こわくて、こわくてたまらなくて、必死にマチの華奢な腕にしがみつきます。
「んっ、ちゅっ、せんばい、せんばいせんばい、せんばい……!♡」
じゅわっじゅわって、あふれてくるねばりで、あそこはもう……、ぐちゃぐちゃ、どろどろ……ぬとぬと。
わたしのなかで荒れ狂う嵐は、どんどんふくらんでって、おおきくなっていって……真っ白く、染まっていって。
「……!? まちっ、まちっ! へんっ! へんなの! なにかっ、なにかきちゃうっ!? あ! あ! あ!」
「んっ……♡ へいき、です、んっ……♡ ちゅ……♡ そのまま、うけいれ、て……んちゅっ、ん……♡ ……んね……♡」
突然、ぬるんって、わたしのくちのなかに、やわらかくて、甘くて、とろけるような、なにかが入ってきました。
その未知の感触に、びっくりした瞬間。ばちっ。て。あそこから、頭まで、なにかが冷たいような熱いような鋭いものが、かけぬけて。
「~~っ! ~~っ! ~~っ!」
あとはもう、まっしろ。ぜんぶ、まっしろ。やわらかくって温かい雪崩に、ぜんぶぜんぶ、押し流されてって。
「んーっ、、んーっ、、んーっ……!」
手足はがくがく、言うこと聞きません。お腹のなかが、きゅーっきゅーって、縮こまって、痛いぐらい。そして……わたしのロ内で、ぬりゅぬりゅにゅむにゅむとうわあごの裏っかわをはいすりまわってる……たぶん……マチの――舌。
「んむ……♡ んふー……♡ ぇむ……♡ ぇろぉ……♡」
ねろねろ舐められるたびに、ぞくぞくぞく、背筋がしびれてしまいます。
「んふー、ふー、ふー……ちゅぽ……♡」
「すっ、はっ、はっ、はーっ……、はふ、ふぁぁ……」
やっと空気、吸えました……。火照った肺にひんやりした空気が流れこんできます。疲れ果てて呆然としていると、マチが、じ……っと覗きこんできました。
「リナ先輩、かわいい……」
「ま、ち……」
「いまの、雨、たくさん、でてきてました、よ……。すっきり。しました、か……?」
「ふぇ……あ、そう、かも……」
三キロぐらい全力疾走したあとの爽快感に、ちょっぴし似てるかしら……。
「もう、しんどくはない、けど……。マチ……、さっき、わたしの……くっ」
く。
「くちの、なか、なっ」
なめ。
「なめ、た……?」
「……え。……ぁ――。ごっ、ごめ、ご、ごめ、なさ、い……! あ、あたし――、勝手にっ……。なんか、また、お、おかし、く……な、っちゃ、って、まし、た……」
こっちまで動揺しそうなぐらい取り乱したマチをなだめます。
「だ、だいじょうぶよ、それはわたしも……だったし、ね? それより……、その、気になったんだけど――。さっきの、って……、――レズ行為、じゃないのかしら……?」
「……」
「だ、だって……、
「……」
「も……、もし、レズ行為なら、わたし、わたし――」
「へいき。です」
「え――」
「ツボを。刺激。しただけ、ですから……。雨が、でやすい、ように、て」
「そう、なの……。じゃあ、レズ行為じゃない、のよね……?」
「……はい、……たぶん、ちがいます、ね」
「……そっか。なら、よかったわ」
「あ、んっ」
びくっと震えて、マチがソファから飛び降りました。
「ご、ごめ、なさい、ちょっと、はいら……、さんるぁ……、おっ、お花、つ、摘んでき、ます……!」
よっぽど我慢してたのかしら、マチはお腹を押さえながら前かがみ気味によちよちとトイレに駆けこみました。
なんだかすこし、肌さみしいような、説明しづらい切なさに襲われながらも、ぼーっとしていると、呼吸が整ってきたころになって、マチが戻ってきて、おすおずと言いました。
「ん、と。リナ先輩。そいえば……、卵。も一個、持ってた、ので……。明日の朝、どうぞ」
マチの手のひらには、ほかほか湯気を立ちのぼらせた卵が輝いていました。今茹でてくれたのかしら? ホントに気が利く子だわ。
いそいそとソファに横になったマチの手を探って、触って、握りました。
「ぁ……せん、ばっ……!?」
「マチ、なにからなにまで、わるいわね。あのね、わたし……、あなたがいなかったらだめだったかも。ううん、ぜったい、だめだった。今日はほんとに、ありがとね」
「ぁ……。ん……。ぅん……。あたしも、です、よ……」
ふかって、やわらかい、控えめなほほえみを見つめながら。とろとろとけだるい余韻のまま、眠りについて、わたしはようやく、長すぎたその一日を終えたのでした。