とある休日、買い物から帰ってくると大家さんが家の前の道にホースで水を撒いていた。
「あらこんにちは、暑いわねェ。ちゃんとエアコン使ってる?」
「こんちわ。流石にもうエアコン無しは無理っす」
「それがいいわよ。おばちゃんがイケイケギャルだった時より暑くなってる気がするものね。地球が保たない時が来てるのかしらねぇ」
「最近やばいっすよね。大学でも熱中症で倒れた奴とかいるとか聞いてます」
「まぁ大変。将来まだまだあるんだからそんな無茶しちゃ駄目よぉ。今日はお休み?」
「休みは休みっすけど、レポートに追われてます。と、生モノ持ってるんでこの辺で」
「あらあら、引き止めちゃってごめんなさいね」
大家さんの長話から逃れる方便ではなく、本当に生もの、それも魚だったので少し慌てて会釈をして自転車を停めて家に入る。玄関を開けると階段の上からでもひんやりとした空気が下りてくる。
「ただいま。やっぱエアコンはいいな……!」
「おかえりなさーい」
一刻も早く涼しい風を浴びようと階段を駆け上がって襖を開けて部屋に入る。ミュナはエアコンの効いた部屋でごろごろとくつろぎながらタブレットを弄っていた。だが、今はミュナに構っていられる状況ではない。ノートパソコンを立ち上げてレポートのファイルを開く。二度目のレポートの締め切りが刻一刻と近づいているのだ。
大学の図書館ならば電気代もかからないし新しい資料を借りるのも手早く済むのだが、ここ最近は暑いので家から出る気になれず、資料を調達して家で引き篭もろうと思ったのだが、朝からやってもやっても終わらず、結局気分転換に買い物に出てしまうこととなった。外が暑かったのでシャワーでも浴びたいところだが、これ以上気分転換を繰り返すと進まないのは前回のレポートの時に身に染みていた。
「お兄ちゃん、進捗どう?」
「よくそんな単語知ってんな。全然だ」
「ネットで見たの」
ミュナの質問に生返事で答えつつ昼飯にと買ってきたおにぎりを乱暴に開けて二口で平らげる。二行ほどレポートを進めては悩んで一行消して資料を開いての繰り返しで、進んではいるはずなのだがどうにも捗らない。一気に段落一つ丸ごとやり直しになったりして心がどんどん荒んでくる。最後のおにぎりに至っては一口でほぼ丸呑みといった有様になっていた。
「お兄ちゃーん、もしもーし」
「何だよ、今行き詰まってんだ。邪魔しないでくれ」
ああでもないこうでもないと試行錯誤しているところにミュナがつんつんとつついてきた。思わず語気が荒くなってしまう。
「進んでないんだったらさー、ちょっと休憩しよーよ」
「いや、マジで進んでないからミュナとは何もできんぞ」
「ちがくて。ミュナがマッサージしてあげようかなって」
「お?途中からなし崩し的にとか……」
「しないしない。して欲しいならするけど」
意外な提案が飛んできた。どうしようか少し迷いはしたが、最初にエッチの誘惑か何かだと勝手に思い込んでしまったので、断るのも悪い気がした。
「じゃあ、お願いしようかな」
「はいはーい。じゃあ畳にごろんってして」
言われるままに畳にうつ伏せになるとミュナが上に乗ってきた。重みと温もりが感じられて少し鼓動が早くなった。
「背中広ーい。じゃ、始めるねー」
「おう、頼む」
「おおー、お客さん、凝ってますなあー」
「そんなにか」
ぎゅっ、ぎゅっとミュナの指が俺の首筋から肩にかけてを揉む。めちゃくちゃ上手というわけではないが、一生懸命やっているのが伝わってくるようで、心がほっこりして軽くなってくる。
「うんしょ、うんしょ、次は背中だね」
「ん、サンキュ」
ミュナは少し下に移動して俺の肩甲骨周りに手のひらを当てて体重をかける。肩もみとはまた違う圧迫感がじんわりと広がり、ほう、と吐息が漏れる。
「がっちがちだねー。ストレッチとか合間合間にした方がいいんじゃない?」
「詳しいな」
「えへへ、ネットで調べただけだよっ」
ミュナの息は少し弾んでいる。そう言えば俺も親父の肩もみをした時はけっこう指とか腕が疲れたのを思い出した。
「ミュナ、無理すんなよ。気持ちよく解れたから」
「ん、次で最後だよ」
ふっと背中に感じていた重みが軽くなる。ミュナが降りたのだな、と思っていると今度は腰回りをぺたぺたと触られる。
「うん、ここらへんが凝ってるね」
次の瞬間、先ほどまでよりも更に強い圧迫感が腰に来た。
「おわっ!?」
「わ、ごめん!強すぎた?」
いきなりのことで声が出てしまい、ミュナが慌てて動きを止める。ミュナが足で俺の腰の凝っている部分を圧迫してきたのだ。
「いや、予想外だっただけだから大丈夫。続けていいよ」
「いっぺん弱めるね。これぐらいは大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
「これぐらいは?」
「いけるいける」
「もうちょっと、ぎゅーっと」
「ちょいきつい」
「オッケー。じゃあこれぐらいでいくね」
ぎゅうぎゅうと腰にミュナの足による圧迫がもたらされ、何とも言えない快感が広がる。そう言えばずっと昔に同じように親父の腰を踏んでマッサージしたことを思い出した。ミュナよりも更に小さい頃だったか。
「ふいー……」
「あは、女の子に踏まれて気持ちよくなって声出ちゃってるね、お兄ちゃん」
「言い方」
とは言え、実際気持ちいい。朝からずっと座ってパソコンや資料に齧りついて蓄積してきた凝りがミュナの足で解されていく。
「ん、サンキュ。だいぶ楽になったわ」
「よかったよかった。じゃ、レポート頑張ってね」
「はいよ」
俺の背中から降りてタブレット片手にミュナはごろりと転がる。一度立ち上がってみると驚くほどスムーズに身体が動いた。ミュナのマッサージのおかげだろうか。
「よっしゃ、やるか」
両頬を軽くはたいて気合を入れて俺は再びレポートへと取り掛かった。
資料を参照して纏めて打ち込んでまた別の資料に取り掛かる……朝から繰り返してきたことのはずだったが、どういうことか先ほどまでとは全然違う。すらすらと必要な内容が出てきてあっさりと文章へと出力できるのだ。ミュナのマッサージで首や肩や腰の凝りと一緒に頭の中まで解れたかのようだ。
「やべえ……めっちゃ進む……」
遅々として進まなかった午前中が嘘のように行数が重なっていく。
「ミュナ、ありがとうな。めっちゃ進んで……ミュナ?」
レポートに集中していて完全にスルーしていたミュナに声をかけたが返事はない。パソコンから顔を上げて見回すと、ミュナは部屋の隅ですうすうと寝息を立てていた。
「ありゃ、寝てんのか」
傍には充電中のタブレットが転がっている。大方バッテリーが減ってきたので充電して待っているうちに寝落ちしてしまったのだろう。ミュナに近づいてタオルケットをかけてやるが、起きる気配はない。まあ、脂が乗っているうちに進めるだけ進めてしまおうと、俺はパソコンの前に戻った。
「お、わ、ったぁーー!!」
パソコンに齧りつくこと暫く、なんとかレポートが仕上がった。前に予告された通り二回目はかなり字数が多く厄介だったが、字数を埋めつつもそれなりのものができたという自負がある。後は提出して単位さえもらえれば試験はないのでこの講義に関しては一安心だ。
「いや、しかしマジでミュナのおかげだな、こりゃ」
朝の段階では今日中に終わるかすら定かではなかったが、終わってみれば日没前には終わっていた。転機は勿論ミュナのマッサージだろう。当のミュナは未だ寝こけているが。
「ま、終わってよかったし、やるかあ」
充電がとっくに終わっていたタブレットを充電器から外し、俺はキッチンへと向かった。
まず米を研いで炊飯器に入れて、白だしをパッケージの炊き込みご飯用の分量入れて塩と醤油をほんの少し足す。多少薄味でも後で足せるので薄めで構わない。残りは水を入れて従来の水量にする。
次に、フライパンに魚焼きホイルを敷いて鮭ハラスを軽く焼く。脂を落とすためなのでこんがり焼く必要はない。だいたい1合当たり一切れぐらいが適量だ。
焼けたら米の上に乗せて後は炊飯器に任せて待つ。
「え?これだけ?まじで簡単だな」
レシピのメモを見ながら調理したが、あっさり仕込みが終わって拍子抜けだった。これなら合間に一品作れそうなものだが、レポートが下手したら夜中までかかるのを覚悟していたので今日のメニューは後は即席のスープとプチトマトしか用意していなかった。ミュナも寝ていて手持ち無沙汰なので試験に備えてノートを見返して時間を潰す。
「うゆー……いいにおいがするー……」
「お、起きたか」
待つことしばらく、ご飯が炊けてきた芳香に気づいたのかミュナが起き出してきた。
「お兄ちゃん、レポート捗ってる?」
「終わったぞ。ミュナのおかげだ。今飯作ってっから、出来たら食べような」
「終わったの!?すごいすごーい!」
飛びついてくるミュナの頭をわしゃわしゃと撫でる。ミュナは気持ちよさそうに目を細めてされるがままだ。
「ミュナのマッサージ受けてからめちゃくちゃ捗ったわ。ありがとな」
「えへへー。もっと褒めてもっとー」
「ミュナがMVPだわ。よーしよしよし」
「うへへへへー。あ、ご飯炊けたよー」
ミュナが耳聡く炊飯器のメロディを指摘する。
「もうちょいだ。こないだの炊き込みご飯と一緒で混ぜて蒸らすから。準備だけしような」
「はーい」
釜を開けて一度大きくかき混ぜる。骨がある時はこの時点で取り除く方が良いとのことだが、今回は骨がなかったので混ぜるだけで終わりだ。
「ミュナ、お茶と野菜室のトマト出しといて」
「かしこまりー」
いそいそとミュナは準備にかかる。その間に電気ケトルでお湯を沸かしてスープを用意する。
「できたよー」
「こっちも終わったな。じゃ、ご飯よそうぞ」
「わーい。いただきまーす!」
向かい合って手を合わせてまずはハラスご飯を一口食べる。焼いて脂を落としたもののそれでもなおハラスの脂は芳醇で、それがご飯一粒一粒をコーティングしていてとてもうまい。弁当でよくある鮭の切り身とは全然違ってパサつきなどが全くない。身の方も箸で解れるので食べやすいしこれまた脂がたっぷり乗っていて口の中でとろける。トマトの甘味と酸味が付け合わせとして秀逸で、手前味噌ながら良いメニューになったと言える。
「お兄ちゃん、何これめっちゃおいしいよ!!」
「おう、俺も初めて作ったけどやばいなこれ」
ミュナはすさまじい勢いで食べ進んでいる。俺もいつもより箸の進みが早い。
「おかわりー!」
ミュナは勢いよくお茶碗を突き出す。こちらとしても作り甲斐がある。
「ちょっと待っててな」
ミュナから茶碗を受け取らずに炊飯器に向かい、内釜ごとテーブルに移動させた。
「ほい、お待たせ」
「ありがとー!」
ミュナの分に加えて自分の分もよそう。二杯目は気分を変えていりごまをかけてみる。金胡麻の香りとぷちぷちとした食感が口の中に広がって新鮮な気分で二杯目を迎えられる。
「ミュナもー!」
ミュナの分にもかけてやる。ミュナは一口食べて満面の笑みを浮かべた。
「これ、すっごい美味しい!」
「簡単だからまた作るさ。ハラスまだ半分残ってるし」
「やったー!」
結局、三合のご飯を炊いたがあっという間に完食してしまった。
「ご馳走様ー!」
「五合炊いてもよかったな」
「美味しかったー。お兄ちゃん料理の天才だねえ」
「おだてすぎだって」
実際、手抜きでできるものぐらいしか作れないしバイト先が居酒屋とは言え向こうでは包丁は全く触れない。ただ、ミュナからしたら俺以外に比較対象がいないからそう見えるのだろう。
「ま、俺にできる料理ならまたちょいちょい作るさ。ただ、試験終わるまでは暫く我慢してくれよ」
「むう、仕方ないかー」
食器を回収して洗い物を手早く済ませてしまう。次の日に回すと億劫になってどんどん溜まっていくのが目に見えているからだ。
「ねえねえお兄ちゃん、レポート終わったんだったらさ、お風呂入んない?一緒に」
洗い終わった食器をを並べているとミュナがくいくいと服の裾を引っ張ってきた。
「んー、そうだな。風呂だけだぞ」
「わかってるって」
まあミュナのことだから誘惑してきて俺から手を出させようとしているのかも知れないが、今日はミュナのマッサージでレポートが捗ったし多少のお願いは聞いても良いかなとは思っている。後は俺が気合で耐えるだけだ。
風呂掃除をしようと風呂場に入ったらミュナもついてきて俺がスポンジで湯船を擦るのを見ている。
「何だ?見てて面白いもんでもないだろ?」
「ねえねえ、この洗剤って擦らず落とせるって言ってるけど擦るの?」
「擦った方が綺麗になる気がするんだよ」
「ふーん、そうなのかー」
ずっと横で作業を見られていると落ち着かないが、そんなに時間がかかるものではないのでそのうち風呂掃除は終わってしまう。シャワーで泡を流してお湯を張る。
「後はお湯貯まるまで待つだけだから。俺は涼しいとこに戻るぞ」
「あー、ミュナもミュナもー」
結局俺と一緒に風呂場を出るミュナ。一体何がしたかったのやら。戻って風呂が入るまでの間、ミュナはまるで猫のように俺の膝にじゃれついたり寄りかかったりしていた。
「そろそろかな。んじゃ風呂入るぞ」
「はーい」
言うなりその場でミュナは服を脱ぎ捨て全裸になる。
「おい。洗面所で脱げよ」
「いーじゃんいーじゃん。お先ー」
そのまま風呂場にとてとてと小走りで駆けていくミュナにため息をつきながら俺も風呂に向かった。
「ふいー、お風呂はきもちーねー」
「まあ、そうだな」
湯船が狭いのでミュナは俺の膝の上に座って背中を俺に預ける格好でいる。ミュナの柔らかい身体の感触とちょっとだけ感じる体重がどうにももどかしい快感を与えてくるが、気合で耐える。
「お兄ちゃん、するー?」
「しません」
「ざんねーん。試験、いつまで?」
「八月の最初の週だったかな」
「終わったらいっぱいしよーね」
「……考えとく」
ミュナから振られたせいかスムーズに断ることができた。まあ、正直に言うと過剰に搾られなければ気持ちいいので問題ないと思いつつある。ただ、お互いスイッチが入ると翌日に支障が出るレベルになるので最初からしない方が特にこの期間は良いだろうと思っている。
「ほら、身体洗うからどいてくれ」
「はーい」
ミュナを蹴飛ばさないように気をつけながら湯船を出て髪と身体を洗う。
「お兄ちゃん、お背中流したげよっか」
「要らん要らん。折角湯船に一人で居てるんだ。手足伸ばして浸かっとけ」
「はーい」
ミュナの返事は明らかに不服そうだったが、今何かされたらずるずると流されそうだったので仕方がない。身体を洗ってシャワーで泡を落として湯船に戻る。
「ミュナ、詰めてくれー」
「あ、じゃあミュナ出るよ」
俺と入れ替わりでミュナがするりと湯船から出て洗い場にちょこんと座った。
「お兄ちゃん、シャンプーとボディソープとスポンジ借りて良い?」
「お?別に良いが……」
ミュナは一度消えたら汚れが落ちるからと一度も風呂で身体や髪を洗っていなかったからこの発言は少し意外だった。
「今日はそういう気分なの」
「そっか。スポンジ俺のしかないけど良いのか?」
「全然いいよ」
そう言ってミュナはシャンプーを手に取った。
「おい待て待て。まず髪濡らさないと泡立たないぞ」
「えっ、そうなの?」
「そうだよ。ちょっと手を伸ばしてろ」
シャワーでミュナの頭からお湯をかけてやるとミュナはくすぐったそうに笑い声を上げる。
「えっと、これから……確かこうやって……」
ミュナは手に取ったシャンプーをおぼつかない手つきで髪に伸ばす。
「ミュナは髪長いから俺の倍ぐらい使っても良いぞ」
「う、うん」
ミュナの手があちこちを探るように動くがシャンプーのボトルには届かない。
「おい、ミュナ、目つぶってんの?」
「あうー、無理だよー。泡が落ちてきたらどうしようってなってる」
「しゃーないな」
湯船を出てシャンプーを手に取ってミュナの髪で伸ばして泡を立ててやる。
「ほれ、目つぶってていいからじっとしてろよ」
「お兄ちゃんありがとー」
わしゃわしゃと髪を梳いて泡を全体に馴染ませていく。長い黒髪は艶っぽくて指に絡みつくとその手触りに胸がざわつくが、なんとか耐える。ミュナはミュナで泡の恐怖に耐えているようだ。
「終わり、流すから怖いなら息止めてろ」
「…………」
全体を泡で洗ってシャワーを頭からかける。ミュナはおっかなびっくりといった様子で固まっている。
「ほい、流れたぞ」
「ありがとー……」
「身体は一人で洗えよ」
「背中流してくれないの?ミュナはどこ洗ってくれても良いけど?」
「自分でやんなさい」
自分の身体に着いた泡も落として湯船に戻る。指に絡みついていたはずのミュナの髪はいつの間にかどこかに消えていた。
「ごめんね、お兄ちゃん。迷惑だった?」
「ん?」
湯船で手足を伸ばして寛いでいるとミュナが話しかけてきた。声のトーンが下がっている。
「ミュナね、髪洗ったことがなかったんだ。消えたら元通りだから」
「見てわかったよ」
「だから、お兄ちゃんに手間かけさせちゃった」
「良いって。気にすんな」
「でも……」
身体を洗う手が止まったミュナの頭に手をやってわしゃわしゃと撫でる。
「やったことないならそんなもんだろ。練習してけばいいさ。なんならシャンプーハットとかミュナ用のスポンジとか買うし」
「ホント、ホントに良いの?」
「良いって。ミュナはどうだった?消えて出たら元通りになるから意味がないと思ってただろうけど実際にやってみてさ」
「うーん、気持ちいい、かな」
「だろ。だったら一歩ずつ進んで行けばいいんだよ」
「うん、ありがと、お兄ちゃん」
ミュナの手がまた動いてスポンジが細い腕や膨らみかけの胸や尻尾、更には股間をなぞって泡を立てる。その光景にまたぐらりと心が揺れかけたが必死で耐える。とりあえずスポンジは可及的速やかに買おう。
「終わったか?じゃあお湯かけるぞ」
「はーい」
シャワーで泡を落とし、ミュナは湯船に戻ってきた。またミュナの感触と体重がかかって鼓動が早くなる。
「お兄ちゃん、ドキドキしてる?」
「……うっせ」
「ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
次の瞬間ミュナがくるりと反転して俺の唇を奪う。
「――――――!!」
「ぷあっ!」
「やめろって、試験が終わるまではしないって言ったろ」
「うん、しないよ。だから、ね。これだけ。お兄ちゃんを、予約」
にっこりと笑うあどけない表情にいっそう心臓がどくりと脈打った。
「ふいー、お風呂入ったらエアコンが余計に気持ちいいねー」
「そうだな」
風呂から出てエアコンの冷気を浴びても、俺の内側に籠った熱は燻っていて寝るまでエアコンが効いている気がしなかった。
扉のスキマから見えた光景。■■と××××はお布団の上で遊んでいた。
お互いが互い違いの恰好で。■■の△△を××××が舐めて、××××の何か大きい◎◎を■■が口に入れて。
二人ともおもしろいのかすっごい声を出している。わたしには、わたしたちには、◎◎はないけど、わたしたちも、やってみようかな。
隣にいた誰かも同じことを思っていたようで、わたしたちは、ふくを、ぬいだ。
「あっ、ちいいいいい!重い!!!!」
妙な夢を見て意識が覚醒したと思ったらやたらと暑くて重かった。目を開けたら真っ先に飛び込んできたのはミュナの股間だった。ぴっちりと閉じていて俺のモノを呑み込んで精を搾る魔性の器官だとはとても思えない。ミュナは布団を俺の上に跳ね飛ばした挙句自分も俺の上に乗っかっていたのだ。
「おいこらミュナ!」
「うへへ、お兄ちゃん、もう一回、する……?」
呼びかけても幸せそうな寝言を吐くミュナに呆れてとりあえず布団に戻して布団をかける。ついでに仕返しとばかりに俺の布団も乗せておいて朝食を作ることにした。それと、ミュナには絶対にパンツを履かせる。絶対にだ。
結局、ミュナが起きたのはご飯が炊き終わってからだった。
試験期間に入るのでエロほぼ無しで。ちょっと危険な描写はありますが。
ちなみに作中で二人は気づいていませんが、レポートが捗ったのは本当にミュナの能力です。本人も自覚していませんが、ミュナに触れたりミュナがマッサージしたりすると疲れが取れます。ただ、マッサージは疲労とかの肩代わりに近くミュナも相応に疲弊します。この設定が今後活きるかは不明ですが。
ハラスご飯は本当に手軽で美味しいので近所で鮭ハラスが手に入るなら試してみてはいかがでしょうか。鮭よりサーモンの方が脂が乗ってておすすめです。
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