朝起きて顔を洗って歯を磨いて、寝こけているミュナを横目に朝食は何にしようかと思案しながらスマホでゲームを開いたら、ログインボーナスの後にでかでかと通知が表示された。
“お誕生日おめでとうございます!”
「あっ」
ゲームに指摘されるまですっかり頭から抜け落ちていた。慌ててメッセージアプリを開くと俺の誕生日を知る何人かからお祝いの言葉が届いていた。返事を打ちながら冷蔵庫を確認し、主食が何もなかったので備蓄からカップ麺を引っ張り出す。ただ、折角の誕生日なのでカップ麺に卵を落とすことにした。
カップ麺を啜りながらゲームを再び開く。誕生日を登録するタイプのゲームで、キャラがお祝いの言葉をかけてくれる。折角なのでサウンドをオンにしてボイスも聞くことにした。数が多いと面倒なのが難だが、開発側も面倒なのをわかっているのか、誕生日から一週間ぐらいは閲覧ができる。とは言え、放置して思い出した頃には閲覧期限が過ぎてしまっていることがままあるので休みの今日のうちに済ませることにした。
“お誕生日おめでとう!また一つ大人になったね!!”
“なんとめでたい!今日は宴であるな!”
“えへへ……生まれて来てくれてありがとう、お兄様”
ゲーム画面からのボイスを一つ一つ聞いていく。割と凝ったものもあり、続けて聞くとなかなかどうして嬉しくなってくる。指摘されるまですっかり忘れていた癖に現金なものである。
「ふにゃ……おはよー」
ようやっとミュナが起きてきた。寝ぼけまなこを擦りながら俺がラーメンを啜っているキッチンまでやってくる。
“誕生日おめでとう、一緒にプレゼント買いに行こうか”
「ええー、お兄ちゃん誕生日だったの!?」
ゲームのサウンドを聞いたミュナが素っ頓狂な声を上げた。
「なんで教えてくんないのさー!」
「今日まで忘れてたんだよ……」
「普通忘れるもんなのー?」
ぽかぽかとミュナは俺の背中を軽く叩いてくる。ラーメンを啜っている最中は正直止めて欲しい。
「そう言うミュナはいつなんだ、誕生日」
「……えーと、えーと。わかんないや」
てへ、と首をかしげて誤魔化そうとするミュナをスルーして早々にラーメンを片付けてしまおうとしたところにスマホが着信を告げた。おふくろからだった。
「おはよう。誕生日おめでと。ちゃんとバランスよく食べてる?出来合いばっかりじゃ駄目よ」
「毎回とは言わないけど作ってる。バイト先の賄いもあるしそこまで不健康な生活はしてないって」
不健康な生活はしていないが、正体不明の幼女と同居してやりまくってはいる。だが勿論言えるわけもないし言ったところで信じては貰えないだろう。
「そう。今日届くように荷物送ったからね。野菜とお米入ってるから食べてちょうだい」
「ん、わかった。サンキュ」
纏わりついてくるミュナを適当にあしらいながら電話を終えた。
「ほれ、ラーメン片付けるから離れろ」
「お兄ちゃん、折角の誕生日なんだからパーティしようよパーティ。それとも大学の友達とする予定でもあるの?だったらいいけど」
「いや、特にそういうのはないな」
実は企画はされていたのだが、他にも誕生日が近いメンバーがいたので纏めてやろうということになったのだ。ミュナには内緒だが。
「じゃあ決まり!お兄ちゃんの大好きな唐揚げとかいっぱい買ってきて豪勢にぱーっと!」
「まあ、買ってくるのは俺だけどな。とは言え、ミュナが祝ってくれるんなら何か買ってくるか」
「わーい!」
ミュナの頭をわしゃわしゃと撫でてアプリの誕生日メッセージ巡りを再開する。実家からの荷物がいつ届くのか聞いておけばよかったとか思いつつも幸いメッセージ巡りが終わった頃に宅配便が来たのだった。
「んじゃ、行ってくる。欲しいもの思いついたらメッセージくれたらある程度は頑張るから」
「はーい、行ってらっしゃーい」
実家からの荷物には野菜と米とお菓子だけではなく、誕生祝いということで少しばかりお金が入っていた。本当は宅配便に入れて送ってはいけないのだが、田舎の人間だからかその辺の倫理観とかはガバガバだ。ともあれ俺としてはパーティの軍資金になるのであれば何でもよかったので喜び勇んで買い物に出かけた。
「折角だし……ミュナがあんまり食べたことのない普段買わないもんでも買うか」
思案をしながらスーパーの中を回って目についたものをピックアップしていく。荷物の中に野菜はたっぷり入っていたが、すぐにサラダにできそうなものがなかったので折角のハレの日ということで見た目の綺麗なサラダも買い物かごに入れてしまう。予算内でどのように買い物しようか頭を悩ませるのすら何やら楽しくなってきて店内を歩きながらついつい鼻歌が出てしまった。
「ただいまー」
「おかえりなさーい」
家に戻るとミュナが何やら和室で机に向かっていた。何をしているのかと覗こうとするとさっと身体でガードされてしまう。
「ストップ!お兄ちゃん、まだ見ちゃ駄目ー!!」
「わ、悪い」
「良いって言うまであっち行っててー!」
「荷物置いて買い物の続きするからゆっくりやっててくれ」
和室から追い出されて冷蔵庫に買ってきたあれこれを詰め、なるべくミュナの方を見ないように再び家を出る。ミュナが何をしているのか期待と不安が入り混じりながら俺は残った買い物へと向かった。
“ミュナ、良くなったら終わらせて帰るから言ってくれ”
“えーと、えーと、あと十五分!”
“わかった”
店の前でメッセージを打ち終えて改めて注文を入れる。折角ここまで祝ってくれるのだからミュナに報いたかった。
“買い物終了。手が空いてたら一番大きい皿出しといてくれ。それと箸とフォークとコップも”
品物を受け取ってメッセージを送るとすぐさま「了解」とスタンプが返ってきた。冷めないようになおかつ揺らさないように俺は慎重に可能な限りの速度で自転車を走らせ家へと向かった。
「ただいまー」
「おかえりなさーい。お皿出してるよー」
小走りで階段を上がるとミュナが出られる限界のところまで出迎えてくれた。
「わ、何これすっごい」
「すぐ準備するからな」
俺の提げている袋を見てミュナは歓声を上げる。頼んだ通り座卓には食器が並べられていた。大急ぎで大皿にコロッケや唐揚げといった揚げ物を並べ、真ん中にどんとピザを鎮座させる。ピザと一緒に買ったハッシュドポテトは大皿に入りきらなかったので仕方なく紙容器のまま出し、冷蔵庫に仕舞っていた握り寿司とサラダとコーラを取り出してパックを開ける。
「うひゃあ、すごいすごーい」
「ミュナ、取り皿も出してくれ」
「はいはーい」
歓声を上げるミュナに手伝いを頼み、コーラを二人分入れてコロッケや寿司用の調味料を用意する。揚げ物とピザを熱いうちにいただきたいので気が逸ってしまっている。
「取り皿出したよお兄ちゃん」
「こっちも準備オッケーだ。よし、食べよう」
「はーい、じゃあお兄ちゃんお誕生日おめでとー!!」
ミュナとコーラで乾杯する。とりあえず熱いうちにピザを一切れいただく。チーズのとろりとした感触とサラミの塩気をふっくらとした生地が受け止めて混じりあう。ミュナは握り寿司を前に右手が寿司と箸をふらふらと行き来している。
「別に好きなように食べたら良いぞ」
「わかった。……ん……お寿司、美味しい」
「おー、口に合ったようで良かった」
恐る恐るサーモンの握りを手に取って口に入れたミュナだが、すぐにその顔がへにょりと緩む。そんな可愛い反応をされるとほっこりして食べさせがいがあるというものだ。
「えっと、これ、何?」
「チューリップの唐揚げだな。うまいぞ」
「あのお花食べられるんだ!?」
「違う違う。良いから食べてみな」
これまた恐る恐る端を小さく齧るミュナだったが、すぐさま加速してあっさり一本完食した。
「何これ美味しい!」
「手羽先を裏返して作るんだってよ。お祝いっぽいだろ」
「お兄ちゃん今度作ってよ」
「それは無理だわ」
裏返すのに手間がかかる上に揚げ物はこの木造のボロ家では絶対にやりたくなかった。そして何より店ではこれが一本百円もせずに買えるのだ。だったらわざわざ自分でやる理由などない。
「ああ、そうそうお兄ちゃん、ミュナの誕生日なんだけど」
「ん?」
ピザの縁から垂れそうになるチーズに悪戦苦闘しながらミュナがおもむろに切り出してきた。
「自分でもわかんないからテキトーに決めようかなって」
「お、おう。良いのかそんなんで」
「決めないとゲームの誕生日メッセージ貰えないからね。一か月後、でどうかな?」
「まあ、ミュナが良いんならそれで良いが」
そんなわけで適当かつあっさりとミュナの設定が増えた。ミュナは食べる手を止めて、もじもじと俺を上目遣いで見つめてくる。
「えっと、その……こんなに豪勢でなくて良いから、お祝いしてくれたら嬉しいな」
「そういうことかー」
「……駄目、かな?」
ミュナの声は少し震えて目は潤んでいる。ミュナは変なところで遠慮しいの気があるのはそれまでの付き合いでよくわかっていた。
「駄目じゃないぞ。その日はバイト外して大学終わったらすぐ買い物して帰ることにするわ」
「やったぁ!ありがとう、お兄ちゃん、大好き!」
身を乗り出してチーズ塗れの顔でキスをしようとしてくるミュナをいなしながら俺もピザに手を出す。
ミュナにあれこれ買ってはいるものの、仕送りとバイト代の一部をある程度貯金に回しているのでミュナの誕生祝いをする分にはなんとかなりそうだ。入学前に両親から減免される学生のうちに貯めておけと言われた通りにしているのが奏功した。まあ、俺が服や靴に頓着しないからというのもあるのだが。
「ん、スマホのカレンダーにもしっかり入れといたから何かリクエストがあったら考えといてくれ」
「はーい。まあ、プレゼントにお兄ちゃんをいただくのは確定として……」
「大学始まってるから無茶はさせんでくれ」
ため息交じりに言ったはものの、期待していないというと嘘になる。まあそれよりも今日のミュナが何を企んでいるのかが期待半分不安半分だった。見ちゃ駄目と言っていたものの正体が未だに出てきていない。ともあれ今はミュナは料理に夢中なので、俺も食べる方に集中することにした。
「ごちそーさまー。美味しかったー!」
「ほれミュナ、口周り酷いことになってるぞ。じっとしてろ」
並べた時は多すぎたかと思った料理の数々だったが今日は珍しくミュナががっついたのもあってすっかり片付いてしまっていた。ティッシュを片手にミュナの口周りの米粒やらチーズやらドレッシングやらを拭いてやる。
「むー、折角だからお兄ちゃんが舐め取ってくれても良いのにー」
「やかましい。それはそうといっぱい食べてたが大丈夫か?ケーキ入るか?」
「ケーキ!?」
「ま、ホールじゃないけどな」
「いけるいける!余裕で入る!!」
ケーキと聞いてテンションが上がりまくっているミュナを見ると、口元を拭いてやるのはケーキを食べてからにした方が良かった気がひしひしとした。
「わぁ、すごーい!色んなのがあって宝石箱みたい!」
「好きなの取ってくれよ」
スーパーで今日限定で一個百円のケーキが売られていたのだ。これはもう運命だろうということであれこれ買い漁ってきた。妙に消費期限が長いのが気にはなるが、値段が値段なので文句などあろうはずもない。
「お兄ちゃんからどーぞ。お兄ちゃんの誕生日なんだから」
「む……じゃあこの抹茶のを」
「ミュナはチョコのもーらいっと」
お互い一つ目を選んでパッケージを開け、フォークを手にしてケーキに刺そうとしたところでミュナはぴたりと手を止めた。
「っと、危ない危ない。大事なこと忘れてた」
「なんだ?」
ミュナは二、三度息を吸って吐いて、決心がついたように大きく息を吸いこんだ。
「ハッピーバースデートゥーユー♪ ハッピーバースデートゥーユー♪ ハッピーバースデーディアお兄ちゃん♪ ハッピーバースデートゥーユー♪」
「お、おう。サンキュ」
お馴染みの歌ではあるが、いざ自分に向けられたのはいつ振りかわからないぐらいで、とても気恥ずかしい。だが、歌った当のミュナはもっと恥ずかしかったようで耳まで真っ赤になってしまっている。
「はい、お歌終わり終わり!ふーってして食べて食べて!」
「いや、ろうそく立ってないだろ」
ツッコミを入れながらケーキを一口食べる。値段の割には思ったよりも抹茶の味が濃く、苦みがはっきりしていて口の中に芳香が広がる。
「あーもー恥ずかしい……」
「割とテレビとかゲーム見ながら歌ってた気がするが」
「面と向かって聞かせるために歌うのは初めてだもん!来月はお兄ちゃんがやるんだよ!」
「……頑張るわ」
照れ隠しか真っ赤になったままケーキを凄まじい勢いでがっつくミュナを見つつ来月は窓を閉めても大丈夫な気温であってくれと心の中で願った。
「ミュナ、抹茶一口食うか?」
「たべるー」
空気と話題を変えようと抹茶シフォンを一口分フォークで差し出すと割とあっさりとミュナは食いついてきた。ちょろかわいい。
「むー、にがーい」
「すまん、駄目だったか?」
「んーん、でも一個丸ごとは良いかなぁ。はい、お返し」
ミュナは自分のチョコケーキを一口分切り分けてこちらに差し出す。こちらもなかなか濃厚でチョコの甘味がしっかりと広がる。
「まだあるけど二個めどうする?消費期限あるから仕舞っといても良いが」
「あ、ちょっと待って。もう一個忘れてた」
ぱたぱたとミュナは和室へと駆けていく。ようやっと先ほどの作業の正体が明らかになるようだ。
「はい、お兄ちゃん!これ!」
「おっ……おう?」
ミュナは丸く切り取った紙を俺に向かって差し出した。紙には少し歪なケーキの絵が描かれている。
「これは……?」
「お兄ちゃん、朝にやってたでしょ?」
「……ああ!」
得心が行った。朝に俺の誕生日を報せてくれたゲームに使われている誕生日メッセージのアイコンを模したものだ。白い紙に黒い鉛筆で描かれているのでゲームのものとは違って見えて最初はわからなかった。
「色鉛筆とかがないからあんまり綺麗じゃないけど……とりあえず、タップして?」
「ほいほい」
スマホよりもでかい紙を指でつつく。ただの紙なのであまり力を籠めると突き破ってしまいそうなので慎重に。厚紙や色鉛筆やクレヨンの類でも用意しようかとふと思った。
「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう!ミュナはお兄ちゃんに会えて毎日がとっても楽しくなったよ!お兄ちゃんはどうかな?ミュナとおんなじだったら嬉しいな!来年も、そのまた来年もこうして一緒に居れたら、いっぱいいっぱい遊んでいっぱいいっぱいえっちできたらいいな!……はい、ミュナからの誕生日メッセージでした!」
歌った時と同じぐらい真っ赤になってミュナは満面の笑顔を無理矢理作る。目尻には涙が浮かんでしまっている。
「ありがとうな、ミュナの思いは伝わったぞ」
「あー!もー!いざやってみたら恥ずかしすぎー!!」
わしゃわしゃとミュナの頭を撫でるとミュナは俺の胸をぽかぽかと殴りつける。
「お兄ちゃんも来月はこれやるんだからね!!」
「え、ちょ、待て!?歌はともかくこれもか!?」
「ミュナ一人がこんな恥ずかしいなんて理不尽だもん!道連れだー!」
「理不尽なのはそっちだろ!!」
「ふーんだ!」
結局理不尽極まりない要求はミュナを膝に乗せて二個目のケーキを手ずから食べさせた結果、なんとか撤回されたのだった。
「えへへ、またお兄ちゃんの膝の上ー」
「あんまりはしゃぐなよ。お湯が減る」
「えー」
片付けを終えて残ったケーキを冷蔵庫に戻して洗い物を済ませた俺たちは二人で風呂に入っていた。なんやかんやで自転車であちこち走り回っていたので温かい湯に浸かると疲れがすっと飛んでいく……ような気がするのだが、俺の上でぴょんぴょん跳ね回るミュナのせいで一部分が刺激されて困ったことになりつつある。
「身体洗うからちょっとどいてくれ」
「折角の誕生日だしミュナが背中洗ったげるよ。髪洗ってる間に準備するから洗面器ちょーだい」
「お?じゃあお願いしようかな」
ミュナの提案に疑いを持たずにさらりと洗面器を渡してしまった。髪を洗っている間に隣からわしゃわしゃとスポンジを泡立てる音が聞こえてくるのがどうにも違和感がある。
「泡を湯船に落とすなよー」
「だいじょーぶだいじょーぶ」
髪を洗い終え、洗面器で泡を流そうと思ったところで肝心の洗面器はミュナの手元にあるのに今更ながら気づいてしまった。
「お兄ちゃん、シャワーかけたげよっか?」
「おう、頼む」
ミュナは湯船の中で立ち上がってシャワーを手に取り、ハンドルを捻った。
「熱くなーい?」
「大丈夫だ。サンキュ」
シャワーは適温で心地いいのだが、洗面器でお湯を掬って頭にかけるよりも水圧が低いので泡を落としきるのに時間がかかる。ミュナもそれを承知してシャワーの角度を変えて念入りに泡を落としてくれている。
「ん、全部落ちたかな……うわっ!?」
「えっへへー。じゃあ背中洗いますねー」
シャワーの音に紛れていつの間にかミュナが湯船を出て俺の背後に忍び寄っていた。しかも身体に泡を纏わせたぬるぬるの状態で。そのまま背後から抱きつかれて変な声が出てしまう。
「おま、ミュナ、普通に洗って……」
「にゅーる、にゅーる♪」
「んおぉっ!?」
泡越しでもミュナの乳首の感触が背中にはっきりと感じられる。上へ下へと少し硬くなった感触が背中を往復する。
「どったのお兄ちゃん、背中洗ってるだけで変な声出しちゃって」
「お前な……」
耳元で蠱惑的に囁くミュナの表情は見えないが、にやにやしているであろうとは想像できる。ミュナは俺にしなだれかかって泡塗れの指先で俺の乳首を弾いて弄ぶ。
「あは、今びくってした。お兄ちゃん、前も洗ってあげよっか?」
耳に息を吹きかけながらの誘惑に俺は項垂れるように頷く以外できなかった。
「はーい、じゃあシャワーで泡流しますねー♪うん、きれいきれいー。じゃ、前洗うから後ろに下がってー」
ミュナに言われるままに身体を引いて風呂場のタイルに背中をつける。ミュナは洗面器を手に俺の前へと回った。
「あは、すっごい。触ってないのにやる気満々じゃない」
「うう……」
俺のモノはミュナの愛撫と誘惑で既に痛いぐらい勃起していた。ミュナはにんまりと笑うと見せつけるように泡を身体に纏わせる。
「お風呂場狭いし早く身体洗ってお布団……行こっか?」
蠱惑的な微笑みとともに腰が下ろされ、俺の足ににちゃりと熱を帯びたぬるつく感触が触れる。ぬめる液体もまた熱く、ぬめりの原因が泡だけではないと実感させられる。
「じゃあ、ギアを上げて右腕と右足一緒に洗っちゃうねー」
「うおっ!?」
ミュナが俺の腕にしがみついて胸で右腕をしごくように洗う。並行して足の上でミュナの腰が前後に動き、熱を帯びた液体と泡が塗り広げられる。
「ごーし、ごーし。どうですかー?」
「う……くっ……!」
ミュナの蜜に塗れた右足が熱く、思考が纏まらない。そもそもこれで本当に身体が洗えているのかという疑問がふっと脳裏に浮かんで消えた。触れられていないにもかかわらず、俺のモノは右半身を踊るミュナの感触に反応してびくりびくりと痙攣する。
「じゃあ次は左だね。はい、お兄ちゃん、スポンジ」
「お、おう?」
いきなりスポンジを手渡され間の抜けた声が出てしまう。
「お兄ちゃんもう限界近いじゃない。暴発しちゃったら勿体ないから身体はこっちで洗っちゃって」
「意味あるのかそれ……」
少し冷静さが戻ってきてツッコミを入れてしまう。
「えーい、つんつん」
「んはぁっ!?」
俺のツッコミへの返事は尻尾だった。乳首をつつかれて腰が跳ねる。
「ほーら、暴発する前に身体洗って……後はおふとんで、ね?」
「お、おう……」
そもそもだったら風呂を切り上げて移動すればいいように思ったが、口に出してしまうとミュナに催促するようで言うに言えなかった。左半身を襲う甘い感触にスポンジを動かす手がたびたび止まる。
「あは、またびくびくってした。どう、お兄ちゃん、お風呂上がっておふとん行きたい?」
俺の腕を抱え込みながらしなだれかかるようにミュナは耳元で囁く。どうあっても俺から言わせるつもりらしい。どのみち俺も限界なのだが。
「頼む。このまま生殺しは勘弁してくれ」
「はいはーい、じゃ、ミュナも髪と身体を洗ってから……ってウソウソ。そんな顔しないで」
ミュナは悪戯っぽく笑う。髪と身体を洗うと聞いた瞬間に確かに一瞬戸惑ったが、しっかりと顔に出ていたらしい。
ミュナに続いて風呂場を出て、バスタオルで身体を拭く。ほんの少しの刺激でも暴発しかねないので腰回りの水がいまいち落としきれていないままだ。和室に入り押し入れから布団を放り投げるように出して枕とタオルケットを引っ張り出すとミュナはいそいそとセットしてぽんぽんと布団を叩いた。
「はい、お兄ちゃん、ごろんってして」
「お、おう」
言われるままに布団に寝転がる。俺のモノだけが行き場を求めて屹立し、快感への期待にびくびくと震え尖端からは先走りの雫が涎のようにだらだらと漏れてしまっている。
「えへへ、それじゃ……しよっか」
ミュナはぺろりと舌なめずりをして俺の上に跨った。そのままずいっとミュナは俺に顔を近づけてくる。
「ねえ……お兄ちゃん。もう限界なのは……お兄ちゃんだけじゃ、ないんだよ?」
頬を紅潮させたミュナは犬のようにだらりと舌を垂らす。俺のモノの上に熱い雫がぴちゃりと落ち、熱気を孕んだ肉壺がじりじりと近づいてくるのがわかる。
「じゃあ、いただきます♡」
ずぷぷぷぷぷぷぷぷっっ!
ミュナの淫蕩な表情に背筋が冷える間もなく俺のモノはぐつぐつと煮立つようなミュナの膣に根元まで呑み込まれる。
どぷどぷどぷどぷどぷどぷどぷどぷどぷっ!
「ああああああああっ!!」
「んあああああああっ!!」
二人の声が重なる。最奥まで一気に迎え入れられ、限界間際だった俺のモノはあっさりとミュナの胎内に精を垂れ流す。焦らされに焦らされたせいか、とても長い長い射精。ミュナは奥まで俺のモノを呑み込んだまま俺にしなだれかかり、唇を奪う。
「―――ん、むぐっ!?」
ミュナの長い舌が口内を暴れまわり、舌を啜り上げ歯列をなぞる。その魔性の舌使いに搾り出されるかのように俺のモノからどくどくと白濁が汲みだされていく。ミュナの蜜壺は俺のモノをしっかりと咥え込んで離さない。
「ぷぁっ、美味しい♡」
「ちょ、ミュナ……刺激が強すぎるから一度抜いてくれ……」
震える手でミュナの腰を持ち上げようとするも、ミュナは離れず振動が伝わるだけでまた残り汁が搾り出される。
「ぐっ……ミュナ、頼むから……」
「ダーメ。もうちょっと味わうから」
ミュナの膣壁がやわやわと蠢いて俺のモノを咀嚼する。射精直後の敏感なところに過度の刺激を与えられて目の前がちかちか点滅するような感覚に陥ってしまう。
「あは、美味しかったよ。お兄ちゃん」
耳元で囁かれても息を整えるのが精一杯でミュナの言葉に返答を返せない。ミュナの膣内に囚われたモノはもはや萎えているのか勃起したままなのかも定かではない。
「じゃあ……そろそろ抜いて……」
ようやっと呼吸が整ってきて途切れ途切れにミュナに懇願する。そんな俺を見下ろしてミュナはにっこりと笑った。
「えー、一回だけで良いの?」
「もう……その一回でやばいぐらい出たから……」
「そっかー。お兄ちゃん、気持ち良かった?」
「おう……めちゃくちゃ気持ち良かった」
ミュナはゆっくりと腰を上げる。俺のモノはミュナの膣内から解放されつつも、まだ痛いほど屹立を続けていた。
「ん……っ、引っかかって……っ」
「ぐっ……」
抜こうとした尖端が引っかかり、刺激にびくりと腰が跳ねる。それが突き上げとなってミュナも身体を震わせる。
「ごめん、やっぱり無理ぃ……っ!」
「ぐあああああああっ!?」
抜けそうになったぎりぎりのところでミュナの腰が一気に落ち、俺のモノが魔性の捕食器官に再び最奥まで呑み込まれる。
「お兄ちゃん、ごめん。ミュナ、もっとしたい。お兄ちゃんともっと繋がりたい……っ!」
「わかった……わかったからもっとゆっくり……」
ミュナは勢いよく腰を打ち付け続け、ぱちゅんぱちゅんと派手な水音が部屋中に広がる。
「手、お兄ちゃん、手、ぎゅっとして……!」
「こ、こうか?」
ミュナの差し伸べた手にこちらからも手を伸ばすとぎゅっといわゆる恋人繋ぎの態勢を両手で取られる。そのまま手を絡めたままミュナはピストンを止めない。
「おにいちゃ、すき、だいすきぃ!」
「ぐっ……」
ミュナは熱に浮かされたように俺の上で跳ねまわり、強烈な刺激に俺はされるがままになってしまう。繋がっている下半身よりも両手の方が何故か熱く感じてどきりとしてしまった。
「ね、手、ぎゅってして!ミュナを離さないで!」
ミュナに請われるままに両手をぎゅっと握りしめる。右手と左手と下半身、それぞれが熱を帯びて快感の中で二度目の限界が近づいてきた。
「ミュナ、イく……イっちゃうからぎゅってしてえ!」
「わかった。大丈夫だから……っ」
「「ああああああああっ」」
二度目の限界を迎え、決壊したかのように俺のモノから白濁が迸りミュナの中に呑み込まれていく。ミュナは俺の上でびくりびくりと痙攣しながらも、両手はしっかりと握りしめていた。
「あは、お兄ちゃん、ミュナをつかまえててくれたね」
「おう……」
どくどくとミュナの中に注ぎながら、急激に眠気が襲ってきた。ミュナと繋がった両手の感触だけを残して意識が闇に溶けていく。
「お兄ちゃん、大好きだよ」
寝落ちる前にミュナの声が聞こえた気がした。
真夏にもかかわらず冷え切った部屋、俺を押さえつけて犯す二人の幼女。
くすくす……くすくす……
くすくす……くすくす……
二人の顔が近づく。凍りつきそうな冷気の中、ふわりと幼女の前髪がなびいて下の顔が露になる。
「うそ……だろ……?」
幼女の顔には確かにミュナの面影があった。
「うわああああああああああああああっ!」
絶叫と共に飛び起きる。タオルケットがかけられていたものの、全裸の身にはそれでは足りず身体が冷え切ってしまっていた。時計を見れば夜中だった。
「今の……夢……」
夢の内容を反芻し、思い出してはいけない記憶が蘇る。そうだ、先月の実家から帰った次の日、俺は廊下で寝落ちてしまい熱中症で倒れたはずだった。だが、真相はそうではなかった。確かに、あの時俺は犯されて意識を失ったのだ。ミュナに似た、二人の幼女に。
「やっぱり……あれは……」
ミュナ、なのだろうか。でも、何故、小さいのか。そして、何故二人いたのか。この部屋で何度も見ている妙な夢はいったい。考えてもぐるぐる回るだけで纏まらない。
「うぇへへ、おいしいー。おにいちゃ、だいすき、だよー……」
横から聞こえてきた声に顔を向けると、幸せそうな顔で寝ているミュナの寝言だった。俺同様裸だが、ミュナは風邪を引いたりしないらしいのでこのままでも問題ないだろう。
「ま、いいか」
本当に満たされた、幸せそうな表情に毒気を抜かれたので考えるのは保留にして、とりあえず服を着て寝直すことにした。
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