「ねえ、お兄ちゃん、ちょっと……良いかな?」
何も予定のない日、昼食を終えてのんびりしていたらミュナがもじもじと切り出してきた。
「どした?何か欲しいものでもあんのか?」
「あ……わかっちゃった?」
「わかりやすいわ」
ミュナは相変わらず変なところで遠慮しいだ。まあ無遠慮にあれが欲しいこれが欲しいと言われても困るのだが。
「えっと……その、これ、やってみたいなって」
「なんだこりゃ」
おずおずとミュナが差し出してきたタブレットを見ると、電子漫画が映し出されていた。泡で満たされた風呂に女の子が入っている。
「この……泡のお風呂ってのが気になるんだけど。お兄ちゃん、入ったことある?」
「ジャグジーってやつか?」
「そうじゃなくて。こんな、お湯の上に泡が浮かんでるの」
記憶を辿ってみても入った覚えはなかった。スマホを取り出して「泡風呂」で検索するとあれこれ入浴剤がヒットした。
「んー……俺も入ったことなかったわ。そんなに高くないな」
「じゃあお兄ちゃん、一緒に初めて……しよ?」
誤解されそうな言い回しをしながら上目遣いでミュナは囁く。
「どうせ暇だしペンギン屋で売ってるか見てくるわ。そこであったら今夜は泡風呂だ」
「わーい、ありがとうお兄ちゃん!」
俺に飛びついてキスをしようとするミュナをいなしながらなんとか買い物の準備をして家を出たのだった。
ディスカウントストアのペンギン屋は棚と棚の間隔がやたらと狭い。向こうから人が来たらどちらかが諦めて引き返すしかない。そんな空間での探しものというのは面倒ではあるがどこかワクワクする。実家にいた頃はこのような大型店舗には車で小一時間かけて行く他なく家族皆で行って大量の荷物を車に積んで帰るものだったが、ここでは行って帰って一時間もかからないというのが実家の田舎ぶりと都会に来た実感を募らせる。
「入浴剤……ここか」
棚を上から下まで見渡して目当てのものを探す。棚の片隅に何種類かの泡の出る入浴剤を見つけ、その中で一番コストパフォーマンスに優れたものを籠に入れ、ついでに安いジュースやカップ麺や冷凍食品も買い込んで帰路についた。
「ただいまー」
「おかえりなさーい」
「泡風呂の素、あったぞー」
袋から入浴剤を取り出してみせるとミュナは勢いよくこっちに突っ込んでくる。
「やったー!お兄ちゃん大好き!!」
「夕飯食ったら早速入ろうか」
「わーい!」
買い物で少し汗ばんでいたので先に風呂にしようかとも思ったが、風呂でもしミュナに誘惑されてしまったらその後で夕飯の用意をするのが億劫なので、やることを全部終えてからの方が良いと判断した。誘惑を跳ね除けられればそれでいいのだろうが……残念ながら自信がない。
「じゃあ、風呂の準備しようか」
「はーい。どんなのかなー、どきどき」
夕飯を食べて片付けまで終わらせて、改めて風呂場に向かう。夕飯を作っている間にミュナが風呂掃除をしてくれていたので後はお湯を入れるだけだ。自分が関わるところだけとは言えこの辺やってくれているのは素直にありがたい。
「えーと……なになに、蛇口の下に三プッシュほど出して勢いよくお湯を出す……」
「それだけー?」
取説を読みながら湯船に身体を乗り出して入浴剤を出す。後ろからミュナが俺の身体越しに覗き込むのでミュナの体温を感じてどきりとしてしまう。
「それだけっぽいな。とりあえずお湯出してみっか」
蛇口をひねって湯船にお湯が注がれ始める。
「わわっ、すっごい!」
「うおっ」
ミュナが早速歓声を上げた。お湯が湯船にぶつかる勢いを使ってかもこもこと泡が湯船全体に広がり始める。お湯が増え始めると勢いはやや落ちるものの泡はどんどん増えてお湯の上を覆う。
「すごいすごーい!」
「お湯入るまでまだかかるから部屋戻ろうぜ」
「ミュナはここで見てるよー」
ミュナの目はすっかり湯船の上に広がる泡に釘付けになっている。一人部屋に戻るのもなんだったのでミュナに付き合うことにして風呂場に残った。蛇口の真下だけが湯船を覆い尽くす泡を割って水流越しに水面がわずかばかり見えている。水位が少しずつ上がってきて湯船の縁にまで泡が上陸を始める。
「ミュナ、そろそろ入るぞー」
「はーい」
慌てて脱衣所に出て服を脱いで軽く畳む。ミュナはどうするのかと風呂場を覗いたらミュナは器用に泡を凝視したまま服を脱いでいた。
「ミュナ、お湯止めてくれ」
「えー、まだ少なくない?」
「二人入ったら泡が外に出ちゃうだろ」
「そっかー」
ミュナは乱雑に服を畳んですぐに風呂場に戻ってきた。普段は湯船からかけ湯をするが今日は泡で溢れているので代わりにシャワーでかけ湯をする。ミュナにもお湯をかけてやるとミュナは気持ちよさそうに目を細めた。
「大丈夫か、お湯熱くないか?」
「ぜーんぜん。きもちーよ?」
ミュナの背中にもお湯をかけようと腕を伸ばすとミュナがおもむろに俺の腰にぎゅっとしがみついてきた。
「おい、ミュナ、何を」
「お兄ちゃんもきもちーかな?えへへ?」
無邪気な笑顔を見せてはいるが、裸で抱きつかれると当然ミュナの素肌の感触が直に伝わってきてどうしても意識せずにはいられなくなる。ほんのりお湯で温まったミュナの柔らかさが下半身全体に纏わりつく。
「い、いいから先に湯船入っとけ。溢れないようにゆっくりな」
「はぁーい」
ミュナは泡を押しのけながらゆっくりと湯船に滑り込む。
「うわぁー!すごーい、周りみーんなあわあわだー!」
早速ミュナは湯船の中ではしゃぎまわる。その弾みで泡が少し外に飛び出すが、まだまだ湯船には泡がたくさん残っている。
「お兄ちゃんもおいでよ。あわあわしよー!」
「はいはい。ちょっと端に寄ってくれ」
ミュナを避難させて逆側から泡をかきわけてゆっくりと湯船に入る。泡が纏わりついてきて不思議な感触が
あちこちに広がる。
「っとと、顔に付いた。この泡、石鹸か?」
「っぽいねー。ふー」
ミュナは泡を掌に掬ってふっと吹く。空中に泡が舞いあらぬ方向へと飛ぶ。顔面に泡が迫ってきて慌てて避けた。
「あぶねえなおい。これ目に入ったらかなり痛いやつだぞ」
「あはは、ごめんごめん」
わかっているのかいないのかミュナは悪びれる様子もなく泡に手を突っ込んではしゃいでいる。楽しそうで何よりだ。
「ねえねえお兄ちゃん、もうちょっとお湯に浸かってみて。首ぐらいまで」
「おう?」
いきなりミュナが妙なことを言いだした。わからないままゆっくりと湯船に身体を沈めていく。首まで浸かると反対側に足がつっかえてしまうのでお湯の中で軽く胡坐をかく姿勢になり、少し窮屈だ。
「うん、それぐらい。ほら、みてみて」
「うん……?お、これは……」
ミュナに言われるまま周りを見渡すと、一面に広がる白い壁。視界の大半が聳え立つ泡に覆われなかなかどうして非日常を感じさせる光景だった。
「どうかな、お兄ちゃん」
「おう、すげーわ……」
「えへへ、でしょでしょ」
だが、素直に感心したのも束の間、新たな問題が浮上した。俺の身体が湯船の大部分、それも下半分を占拠してしまっている以上、ミュナの身体が入る猶予は必然的に俺の上にしか残されておらず、湯船の逆側にいるミュナが俺の身体の上で足を延ばしている妙な態勢を取らざるを得ない。普段風呂に入る時にはもっとぴったり密着してはいるのだが、普段とは違うところが触れあうと新鮮な刺激が襲ってきてどうにももどかしい。
「お兄ちゃん、重くなーい?」
「重くはないぞ。窮屈ではあるが」
「お風呂狭いもんねー」
「とりあえず俺は一度出て身体洗うから……うおっ!?」
「きゃん!」
ゆっくり後ずさりながら身体を持ち上げようとしているところに不意打ち気味にミュナの足が俺のモノを刺激し、思わず身体が跳ねてしまう。水面が大きく揺れて泡が湯船から零れ落ちた。
「わ、悪い。びっくりしてつい」
「む、むー!?」
体勢を崩したミュナは泡に顔から突っ込んで酷いことになっている。慌てて手でお湯を掬ってミュナの顔を拭った。
「ぷぁっ!もー、酷いよお兄ちゃん」
「だからごめんて」
「次からは予告するようにするかー」
「……おい」
てへぺろ、とわざとらしく舌を出すミュナを置いて俺は湯船を出た。さっきまでは湯船を覆い尽くしていた泡も気づけば半分以下まで減っている。俺が零したからというのもあるが、それ以上に時間が経つにつれ少しずつ消えてしまっているのだろう。まあ、ずっと泡が残るのだったら流すのも骨だろうしこれで良いのだろうが、それにしても全盛期が短くて寂しいような気もした。
「ねえねえお兄ちゃんお兄ちゃん、みてみてー」
「あん?」
髪を洗って身体に取り掛かろうとした俺の肩をミュナがつんつんとつつく。
「ほら、どうかな?ミュナにどきっとしないかな?」
「うーん……?」
ミュナは泡で乳首を隠した状態で俺に向かって身を乗り出す。だが、その泡もみるみるうちに小さくなっていき……
「やーん、お兄ちゃんのえっちー!」
あっさりとミュナは裸身を晒す。くねくねとほたえるミュナを放っておいて俺はスポンジを泡立てる作業に戻った。
「うーん、もう泡ほとんどなくなっちゃったー」
「まあ、入浴剤はあと何回か使えるからまた今度やりゃいいだろ」
「儚いねー。ムゲンホウヨウだねー」
「また妙な単語知ってんな……っておい、何すんだ」
感心しながら背中を洗おうとしたところでミュナがスポンジをひったくった。
「ムゲンホウヨウよりミュナの抱擁……でしょ?」
「字が違……っ!」
ミュナは素早くスポンジの泡を胸に塗りたくって俺の背後に回り背中をぬるぬると刺激する。身体を洗うために座り込んでいたので反応が遅れされるがままになってしまった。
「えへへ、おっきくなってきたね。じゃあ追撃のにゅーる、にゅーる」
「ううっ……」
ミュナは俺の背中に乗り上げるように身を預けて泡のぬるぬるを塗りたくる。こりこりとしたミュナの乳首の感触が背中で敏感に感じられてしまう。
「あは、おっきくなってきたね♡」
「や、やめろ……」
ミュナは泡にまみれた手を俺のモノと乳首に這わせ、耳元で囁く。ミュナの声が耳から脳を揺らすかのように侵入して思考に靄がかかったようになってしまう。
「にゅーる、にゅーる、しゅーこ、しゅーこ」
ミュナは背中を往復させながら器用に俺のモノも扱き上げる。泡でぬるつく指から与えらえれる強い刺激と背中に感じる弱めの刺激がない交ぜになってただただ翻弄されていく。
「ついでに前も洗ったげるね」
ミュナはスポンジを泡立てて胸と指に補充する。片方の手で俺のモノをしごき、もう片方の手は俺の身体を這い回って泡をなすりつける。両の手の役割が何度も入れ替わり、身体全体が泡にまみれていく。
「ん、びくってしたね、そろそろかなー?」
耳から入ったミュナの囁きに押し出されるかのようにもどかしい感触が下腹部からこみ上げてくる。もはや止まることは叶わず遅いか早いかだけの状態になったそれがじわじわと尿道を駆け上がっていき―――
どぷどぷどぷどぷっ
「あは、出た出た♪」
「ぐっ……うう……っ」
楽しそうに笑いながらミュナは手の往復を止めない。俺のモノを力を入れたり抜いたりを巧みに繰り返しながら扱いて残り汁まで搾り出そうとする。
「ありゃりゃ、石鹸塗れだと流石に吸えないや、勿体ない」
ミュナは手に着いた精をひと舐めして残念そうに手を洗い流す。
「じゃ、折角だから洗い残し全部洗っちゃってお風呂出てから続き、しよっか?」
こくんと頷いた俺にミュナは軽くキスをして微笑んだ。俺はされるがままにミュナに全身洗われたのだった。
「えへへ、泡、なくなっちゃったね」
「そうだなぁ」
身体を洗い終わり再び俺たちは湯船に浸かっていた。ミュナは俺に正面から甘えるようにしなだれかかってきていて、一度ふんだんに搾られたにもかかわらず俺のモノは既に少し反応し始めしまっている。
「ねえねえ、お兄ちゃん、やっぱりご飯も洗い物もぜーんぶ終わらせてからお風呂にしたのって……えっちするって思ってたからなのかな?」
「……搾られてその後何もできなくなるかもしれないって思ったからな」
「本当にそう?」
ミュナにじっと見つめられて思わず目を逸らしてしまう。
「お兄ちゃん、こうなるって期待してたから言い訳できない状況でお風呂にしたんじゃないかなぁ?」
かあっと頬が熱くなる。その反面背筋はさっと冷え視界が歪むような、足元から落ちていくような感覚。意識の裏に隠していた図星を衝かれて言葉が詰まってしまった。
「あはは、お兄ちゃんわかりやすいなー」
数時間前に俺がミュナに言った言葉が丸ごと跳ね返ってきた。甘えるようにキスをせがむミュナに俺は一切の抵抗を放棄した。
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