ちなみに音楽系が仕切って文化系虐げたのは実話です
「と、言うことで……学祭の駄菓子屋の成功を祝して、かんぱーい!!」
「かんぱーい!」
普段は俺とミュナの二人しかいない部屋に、テンションの高い掛け声が響く。二人だと広すぎるぐらいだが、人数が集まると今度は狭苦しく感じてしまう。
「いや、今年は後片付けも楽でよかったよなあ」
「鉄板使う系は鉄板の焦げ落としが面倒だったんだよ」
「箸とか舟の経費も馬鹿になんないしね」
感想を述べながら飲み物を煽る皆の中で、俺は適当に相槌を打つ。俺の膝の上のミュナは不機嫌な表情をしつつもテーブルの上の揚げ物に手を出している。飲み会に行った亭主が同僚や上司を連れてきた時の嫁はこんな感じになるのだろうか。ミュナが口いっぱいに頬張っている隙に俺もサイダーを手酌で入れて飲み干した。
学祭も無事終わり、我らがオカルト同好会の駄菓子屋の売り上げはそれなりに黒字が出た。そんなわけで打ち上げをしようということになり、居酒屋でひとしきり楽しんだのだが、二次会にカラオケに行こうとなって問題が出た。同じことを考えていたグループがそれなりに多かったようで、生憎大学近くのカラオケボックスは満杯となってしまっていたのだ。ならばここで解散……となってしまえばまだ平和ではあったのだが、一度火のついてしまったテンションの持って行き場を持て余した結果、それなりに広く全員収容しても猶予がある俺の部屋に白羽の矢が立ってしまった。
ミュナには事前にカラオケに行くから朝になるかも知れないと言っていて了承も得てはいたのだが、このような流れになるのは予想外で、結局俺は部屋を一人で片付けるからとサークルのメンバーを外に待たせたままミュナに謝りながら一人でミュナが広げていたゲームや漫画を片付けることとなってしまった。
「ってか音楽系がサークル纏めてっと駄目だよね。タダで演奏した上にそれを活動実績って言い張れば予算摘まみ放題だもん」
「まあ陽キャだけあって人集めて音頭を取るのは上手いんだよ。だからその辺の手間賃として予算勝ち取るのは良いと思う。ただ、そこから飛躍して何もしてない文化部に予算出さないってのはクソだわな」
「ウチも文芸部みたいに部誌出します?」
「昔は出してたんだけど印刷費で大赤字だったんだよなあ」
ミュナにわからない話題が混じり始め、膝の上のミュナの機嫌がどんどん悪くなっているのを感じる。無言で一人あれやこれやを取っては食べを繰り返していると皆からしたら俺が一人がっついているように見えているのだろうと心苦しくなるがミュナを追い払うわけにもいかず八方塞がりだ。
「ってかうちで駄弁るのは良いすけど、この後どうするんすか。前より人数多いしゲームするのも無理ないすか」
どうにか空気を変えようと無理矢理切り込んでみた。今回も場所を提供している俺が未成年ということで酒抜きの会なのだが、流石に駄弁りだけで朝まで持たせられる気はしない。何人かは電車で来ているので放り出すわけにもいかないし。
「大丈夫大丈夫。こんなこともあろうかとボードゲームいっぱい持ってきた」
「あっはい……」
皆の荷物から多種多様なボードゲームが取り出されていく。最初からこれが目的ではないのかと疑念が浮かびつつもミュナに目をやると、あれこれあるパッケージを目を輝かせながら眺めている。仕方がないのでどうにかミュナも絡めそうな簡単なものをチョイスさせてもらうことにした。
「「「せーのっ!」」」
「と、二人撤退か。じゃあ帰路の宝石を二個持って一個置いて、その次はスルーして、無事帰還、と」
「二回同じ危険カードが出たらアウトなんですよね?」
「そうそう。アウトになったら入手した分は没収だぞ」
サイコロに化けた宇宙人にルールを教えるように不自然なルール確認をしながらゲームを進める。ミュナは俺の背中に引っ付いて行くか退くかを指示してくる。
「おいおい、まだ行くのか。突っ張るなあ」
「いやいやー、冒険してナンボでしょ」
ゲームが佳境に入ってきて何人かが降りながらもミュナは果敢に前進を続けさせる。どんどんアウトになる確率が増えていき、手元に宝石が積み上がる。
「せーの……俺は撤退」
「俺は進みます」
「まじかよー」
遂に俺以外全員が降りてしまった。ここで宝石が出れば後は一人で掘り放題で無事帰れたら一人勝ちという展開である。全員の呪詛を聞きながら次のカードをめくる。
「おっと、十七個出ましたね」
「まじかよ」
「ふざけんな!!」
ミュナが俺の顔を覗き込んで、次も行けとジェスチャーをしてきた。
「で、これで帰るか?」
「もう一枚行きます」
「攻めるねえ。そのまま帰ってこなくても良いんだぞ」
「背中に憑いてる勝利の女神さまが関係ない、行けって言ってるんで」
嘘のような事実を嘘っぽく言いながら次のカードに手をかける。
「十二個。これで帰るんで手持ちと併せて五点宝石七つ下さい」
「へいへい、持ってけ泥棒!!」
恨みがましい声を聞きながら不自然過ぎないように装ってミュナに目をやるとものすごいどや顔を披露していた。楽しそうで何よりだ。
「くっそ、これ残りのラウンドでどうにかできるか……?」
「辛い、まじ辛いぞ……」
皆の怨嗟の声を聞きながら俺の勝利の女神さまはにこにこと楽しそうにしていたのだった。
所謂草木も眠る丑三つ時、俺の部屋は和室も物置も寝息が響き渡っていた。いつの間にやら全員が寝落ちしてしまっていて、残っているのは俺だけだった。
「えへへ、皆寝ちゃったねー」
「そうだな……」
ミュナがここぞとばかりに俺に寄りかかってくる。結局あれから運ゲーでは圧勝したミュナだったが、器用さを競うゲームは惨憺たる結果で一勝一敗といったところだった。負けたはものの、楽しそうではあったので今度借りるか買うかして家で二人でやってみても良いかもしれない。
「ほれ、ミュナも手伝ってくれ」
「はいはーい」
冷凍マグロのように転がっている面々にとりあえずある分の布団や毛布をかけていく。全員俺やミュナが横を通ろうが布団をかけられようが寝入ったままで、何か妙な感じがする。俺たちとは別に重いゲームをやっていたメンバーも、ゲームを広げたままボードを囲んで寝息を立てている。仕方がないので全部片づけてうっかり寝返りで潰さないように箱を机の上に避難させた。
「っと、サンキュな。ミュナ」
「でもお兄ちゃんのおふとんどうするの?」
「いいさ、朝まで起きてる」
「ダメだって、風邪ひくよ。ほら」
ふわり、とタオルケットが背中からかけられる。ミュナはすっと俺の横に滑り込んだ。タオルケットでぴっちりと包まれてミュナの体温と感触が間近に感じられる。
「ごめんな、ミュナ。いきなりのことで」
「ホントだよー。推し芸人の生配信あったのに。アーカイブだとコメントできないじゃん」
「ごめんて」
ミュナが怒っていた理由は思いもよらないものだった。とは言え、当人からすれば笑い飛ばせるものでもなし、素直に謝っておく。そんなに深刻に考えなくて良かったと肩透かしを受けたというのもまた事実ではあるが。
「どう、お兄ちゃん。ミュナと一緒なら寝落ちちゃっても大丈夫でしょ?」
「そうかな……?」
皆が起きないように声を抑えながらひそひそと話す。ミュナに促されるままに畳に寝転がった。
「ゲーム、初めてやったけど楽しいね」
「気に入ってくれたようで何よりだ」
ミュナは俺の後ろにぴったりひっついて、耳元に囁きかけてくる。ミュナの吐息で少し身体が熱くってしまう。
「えっへへー……」
「お、おい!?」
ミュナの尻尾がするりと股間に忍び寄り、思わず大声が出そうなところを必死で堪える。
「これ、他の人にはどう見えるんだろうね。お兄ちゃんが一人でしてるように見えるのかな?」
ミュナの尻尾はさわさわと俺のモノをズボン越しに愛撫してくる。たちまちズボンの中で俺のモノははちきれんばかりに隆起する。
「やめろって!誰か起きでもしたら……」
「起きないよ」
さらりと言ってのけるミュナに背筋がぞわりと粟立つ。思い返せば、徹夜でカラオケに行こうと意気込んでいたぐらいだ。全員が全員寝落ちなんて普通ではありえない。しかも、ボードゲームをしながらとなると、誰かしら一人ぐらいは起きていて他のメンバーを起こすものだろうに。
「でも……起きたらどうなるんだろうね」
「くっ……」
背筋が冷える反面、ズボンの中は熱を帯びていて熱いぐらいだ。どくん、どくん、と心臓の鼓動に呼応するように俺のモノも脈動する。
「ほーら、お兄ちゃん。そのまま我慢してたらパンツの中酷いことになっちゃうよ?」
「や、やめ……」
力づくで振り払おうという考えが浮かばなかった。何故皆が揃って寝落ちしたのかもわからないし、ミュナが楽しみにしていた生配信を邪魔してしまった埋め合わせという気持ちがあったかもしれない。ミュナは俺の後ろにぴたりとくっつき、耳に息を吹きかける。ぞわりと背筋が跳ねて一瞬遅れて腰も跳ねた。
「良いの?パンツの中にびゅーびゅーしちゃって。においとかしちゃったら皆起きちゃうかもね?」
「う、うう……」
ミュナの囁きは質問のようで、あくまでも俺からミュナに差し出すのを強いるような声音だった。
「た、頼む……」
「あは。いーよぉ♡」
あっさりと陥落し、ズボンの留め具を外してズボンとパンツを持ち上げて尻尾が入れるように隙間を開ける。皆が寝落ちているのがミュナの仕業だとしたら、逆に起こすこともできるかもしれない以上、俺に選択権は与えられていなかった。せめてもの抵抗でズボンの上にタオルケットを掛けて外からは見えないようにしておく。流石にミュナはそこまでは咎めてこなかった。
「えっへへ、お邪魔しまーす」
しゅるしゅると尻尾がパンツの中に侵入する。すべすべした尻尾の感触が竿をくすぐり、声が出そうになるのを必死で堪える。
「いっただっきまーす♪」
ぱくり、と尖端が尻尾に咥えられた。たちまち内部の肉粒が纏わりついて粘液を揉み込むように蠕動を始める。
「ふふ、ちょっとずつちょっとずつ食べてあげるね♡」
「ぐっ……」
ミュナの尻尾が蠕動しながら少しずつ根元へとにじり寄ってくる。一気に射精させないようにやわやわと優しい刺激のみにとどめながらも、じわじわと快感を与える面積が広がってきて少しずつ少しずつ奥から徐々に射精感がこみ上げ始める。
「ほーら、声出したら誰か起きちゃうかもね……?」
「―――っっっ!」
ミュナの指がすっと俺の胸に伸び、かりかりと乳首を愛撫する。股間だけは必死で外から見えないように隠していたが、こうなるとどうしようもない。外から見たら俺が一人で股間と乳首を弄って悶えているように見えてしまうのだろうか。誰も起きないことを願うしかない。
「あは、びくびくしてきたね……」
耳元でミュナが囁く。誰かが起きたらどうしようという焦燥に知人の前で犯されている羞恥、ただただミュナに与えられる快楽。それら全てがない交ぜとなって頭の中がぐるぐると回っているようだ。俺のモノはじわじわとミュナの尻尾に呑まれていってついに根元まで―――
「はーい。ごっくん♪」
「ぐ……っ……」
どぷ、どぷ、どぷ、どぷっ……!
ミュナの尻尾に白濁が漏れる。一切の抵抗を放棄してミュナの尻尾の啜るに任せどぷどぷと精が汲みだされていくのをどこか他人事のように感じていた。ミュナの尻尾が肌に触れている場所が少し脈打ち、精を嚥下しているのだ、と妙に冷静に認識しながらも急に身体と瞼がずっしりと重くなってくる。
「ごめんね、お兄ちゃん」
その言葉を最後に俺の意識は闇に落ちた。
「と、悪かったな。急に押しかけて。これからファミレスのモーニング行くけど来るか?」
「や、布団片付けないとなんで俺はパスで。お疲れ様でした」
「わかった。と、その、この家……」
「何か?」
「いや、なんでもない。お疲れ様」
「お疲れ様っした」
結局気が付いたら朝になっていた。皆が皆どうして寝落ちたのかわからないようで、不思議そうな顔をしていた。重ゲー組は直前に打った手まで覚えていたようで、ぶつぶつと言っていたが流石に朝から再開ということにはならず全員帰ってくれた。先輩が口ごもったのが少し気になったが、疲れていたので追及する気は起きなかった。
「お兄ちゃん、見て見て!冷蔵庫ぱんぱんだよー!」
「暫く飲み物には困らんな」
冷蔵庫を開けて歓声を上げるミュナをスルーして風呂場に行ってシャワーを浴びる。出てきたらミュナがバスタオルをかけてくれた。
「お兄ちゃん、お片付けするなら手伝うよ」
「ん、わかった。とりあえず窓ぜんぶ開けてきてくれ」
「はいはーい」
とてとてと駆け出すミュナを見ながら全部の布団と毛布を広げて片っ端から消臭剤をかけていく。流石に大人数が寝泊まりして布団まで使ったのだから一度澱んだ空気を入れ替えなければ寝るに寝られない。
「窓開けたよー。お洗濯もする?」
「いや、それは後でいいや。……ふぁ……」
布団の始末が終わったらおもむろに大欠伸が出てきてしまった。夜更かしした挙句にミュナに搾られたのだからまだ身体が睡眠を欲しているのだろう。
「……悪い、ミュナ。もうちょっと寝るわ」
「わかったー。じゃ、はい、どうぞ」
ミュナは昨日のタオルケットを手にして和室の空きスペースにころんと寝転んだ。ちゃんと窓からの風が当たらないところに陣取ってくれている。
「はい、どーぞ。ミュナもいるからあったかいよ」
「……おう」
ミュナの横に寝転がり、ミュナごとタオルケットに包まれると確かにミュナの体温を感じてほっとする。
「お兄ちゃん、昨夜はごめんね」
「こっちこそ、いきなりのことでミュナの楽しみ潰して悪かった」
「――――――」
「――――――」
ミュナの返事が返ってこずこちらも無言になってしまう。口を開こうとするところに、眠気が襲ってきて頭が動いてくれない。
「……お兄ちゃん、だいすきだよ」
「……俺もだ」
胡乱げな頭で返すと頬に湿った感触が返事代わりに寄越された。それを最後に俺の意識は闇に溶けていった。
数日後、講義が終わって部室に入ると雑談をしていた皆が俺が入るや否や一斉に口を閉じてじろじろと俺のことを眺めてきた。
「な、何すか」
「いや、その、こないだお前んちで飲み会した時だけどさ」
「何かあったんすか?」
「今皆で話してたんだけど……その時、皆同じ夢見てたんだ」
「……は?」
前に兄貴に言われたことを思い出し背筋がぞわりとする。
「ど、どういう夢なんすか」
聞くべきではないと頭のどこかからストップがかかったが、反射的に口から質問が漏れてしまった。
「その、端っこの本いっぱい置いてる部屋あったろ。そこに閉じ込められる夢でな。部屋の間取りは一緒だけど本とかないから同じ部屋かはわかんないんだけど……隣に誰かいるみたいな感じなんだけど、俺らじゃないような気がして……って夢を、皆見て……」
「そ、そうすか。俺は見た覚えないすけど……」
つい、嘘を言ってごまかしてしまう。俺の心臓はずっとばくばくと早鐘を打ち続けていて、頭の中にまでその鼓動が響いているようだった。
あれやこれやきな臭い描写が出てきています。物語も佳境に入りつつありますが、とりあえずそれはそれとして息抜き的なのも挟んでいきたいところ
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