ミュナに振り回されたり励まされたりと色々あった4月はなんやかんやで終わって、世間はゴールデンウィークに突入した。大学でも早速泊まりで旅行に行ったり家でずっとだらだらしたりと思い思いに過ごす学生だらけである。
では、俺はどうなのかというと今日も今日とてバイトだった。と言うか祝日全てに強引にシフトをねじ込まれた。
昼間に入っているパートさんが家族で旅行するからその穴が開いた分を埋めろ、とのことでご丁寧にもギリギリになってからシフトを提示された。とは言え、今月の締め日で辞めることになったので学業に障らないのであればこちらとしても賃金が増えるだけ願ったりである。仕送りだけでは生活するのでかつかつだし、うちには居候がいるわけだし。
ともあれ、辞めるにあたって先輩のアドバイスはありがたかった。店長やバイトリーダーの恫喝があまりに予想通りだったので噴き出すのをこらえるのに難儀したものだ。「生協の学生法律相談に行きます」の一言で一気に大人しくなる辺り、店長に前に言われた「お前が舐められているから悪い」というのはある意味真理なのだと実感できた。
それからミュナも意外や意外、有益なアドバイスをしてくれた。
「『まあ家に帰ればミュナがいるし』『そんな口きいて良いのか?俺は家に帰ったらかわいい座敷サキュバスとよろしくやってる身だぞ?』って思えばいいよ!」
言われた当初はまた変なことを言いだしたと思ったが、実際にやってみると心がめちゃくちゃ軽くなった。今日も「今月で辞める奴には教えるだけ無駄だわー」とか言われたが、これで乗り切った。
そんなわけで一仕事終わって買い物を済ませて家に向かっている最中だ。4月分の給料が振り込まれたので今まで保留していたあれやこれやに手が届くようになった。残念ながら自転車の実装はまだ先になるが。
「すんませーん、工事してるんで迂回お願いしまーす!」
「ありゃ、はい」
いつも通っている道で帰ろうとしたら工事に当たって迂回を余儀なくされた。入っている車両を見るに家の解体か何かか。スマホで地図を見ながらいつもの道に戻るルートを検索する。ある程度地理を把握していたつもりでも、知らない道を通ると気づいたら迷子になっていたりするので油断は禁物だ。幸い、いつもより2回曲がる回数が増えただけで済みそうだった。
「いらっしゃーい。お兄ちゃん、コロッケどう?揚げたてだよー」
「お?」
初めて通った迂回路にはなかなか活気のあるコロッケ屋があった。揚げ物の香りが鼻をくすぐる。
「コロッケにミンチにハムカツ、あと牛串を2本ずつ」
「はいよー。お兄ちゃん、学生さん?」
「うっす。この春から越してきました」
「じゃあ引っ越し祝いにおまけしたげるね。今後も御贔屓に!」
「あ、どうも」
気風の良いおばさんはうずらの卵の串揚げを二本もおまけにつけてくれた。これは今後も贔屓にしないといけなさそうだ。
コロッケが少しでも温かいうちにと俺は小走りで家へと急いだ。
「ただいまー」
「おかえり、お兄ちゃん」
家に帰るとミュナがゲームの手を止めて階段の側まで駆け寄ってくる。相変わらずダボダボのTシャツを着ているので弾みであちらこちらが見えそうになってしまい、目の毒だ。もっとも、それもあと数日で終わる予定なのだが。
「いつも通らない道通ったらコロッケ屋見つけてさ、美味そうだったからいっぱい買っちゃった」
「あー、あそこの美味しいよねー」
瞬間、俺とミュナはお互いの顔を見合わせて固まった。
「え?あたし、なんで……?」
「ミュナ、この部屋から出れないんだよな、どういうことだよ」
「な、なんでだろ。……えっと、前に、誰かが買ってきたのをつまみ食いしたの……かな?」
「そうなのか……?ってかミュナいつからこの部屋にいるんだよ」
「……えっと、あんまり覚えてない」
何か強烈な違和感を覚えたのだが、ミュナが思い出せない以上どうしようもなく、二人で口数少なくコロッケを食べて話は終わりになった。コロッケ自体はかなり美味かった。今後の定番になりそうだ。
「ミュナー、おーい、ミュナ」
「……なーに、お兄ちゃん」
食べ終わってからもぼーっと考えこんでいるミュナを手招きしてパソコンを立ち上げる。インターネットを立ち上げて通販サイトに接続した。目指すは子供服のページだ。
「えっと、何してんの」
「あー、給料出たしミュナにちゃんとした服を買おうと思って」
「えっ!?」
それまで伏し目がちだったミュナは一転ぽかんとした顔を浮かべた。
「えっと……そ、その……ほんとに?」
「ほんとだって?」
「着衣えっち用?」
「ちげーよ!」
「そ、そんなに気を遣わなくたっていいのに。お兄ちゃんがしんどい思いして頑張って稼いだお金なんだから、あたしなんかに」
両手も頭もぶんぶんと振りながらミュナは卑屈なことを言いだす。とりあえず落ち着かせるためにミュナの肩に手をやった。ミュナは不安げな眼差しで俺を見つめる。
「あのな、俺はトラブルがなかったら4年ここで暮らすんだ。いくらミュナが人間じゃない怪しい居候だとしても、その間にずっと裸だとか適当な俺のシャツとかだけ着せてそれっきりにしとけるわけないだろ」
「ほんとに……良いの……?」
「良いって。あと、これは俺の都合だけどサークルで卓飲みしようって話になっててさ。うちが一番広いから会場になるかも知れないんだよ。その時に万一裸とかTシャツ一枚の幼女が見えたら大事じゃんか」
ちなみに、これは事実である。一人暮らしをしている部員の大半がワンルームで集まって遊ぶとぎちぎちになってしまうのだ。大学から歩いて行けなくもない距離である以上、候補に挙がる可能性が割とあった。
「えっと、その時はあたし消えとくから気にしなくても良いよ。そもそもミュナのこと見える人がいるかもわかんないし」
「いや、それでもミュナがいるのにミュナをほっといて盛り上がれるわけないだろ」
ミュナが案外寂しがり屋なのは先日の経験からよくわかっていた。たとえ誰から認識されなくても、皆で遊ぶから隠れてろ、とはとてもではないが言えなかった。せめて俺だけでもミュナを輪に入れたかった。
「や、安物で……良いからね……」
「俺もそこまで予算ないから安心してくれ。どんなのが良いとかあるか?」
「どうだろ……正直、服を着た記憶がないけど……羽根があるから背中は開いてる方が良いかな?」
「まぁ、色々見て行こうや。ミュナが着たいものを着るのが一番だからな」
かくして、ミュナの服選びが始まった。最初は遠慮がちに恐る恐ると言った風だったミュナだが、ああでもないこうでもないと希望を出して絞り込んでいくうちに少しずつ元気になってきたようで一安心だった。
「えっと、やっぱり羽根のことを考えたらキャミソールっぽいのが良いかな」
「そうだな、背面の画像あるけどこれなら羽根は間違いなく出せるな」
「それから尻尾もあるからズボンよりワンピースね」
「となるとこの辺かなぁ。あるだけチェックしてそっから絞ろうぜ」
予算やデザインをあれこれ吟味して、これはというものがいくつか挙がる。
「この辺か、ミュナ、サイズ測るからちょっと立って」
「はーい」
帰りがけに100均で買ってきた採寸用のメジャーでミュナの背や胸周りを計測する。
「シャツ脱いで素肌で測った方が正しい数字が出るんじゃないかな?ね?」
「良いからそのまま動かず測られてろ」
すっかりいつもの調子を取り戻したミュナを適当にいなしつつサイズを測る。
「やん、今乳首ピンってした。お兄ちゃんのエッチ」
「してねえ。動くなっつの」
調子が戻ったら戻ったで面倒くさい。正直なところバイト続きでミュナとは全くしていないから溜まってはいる。そこに艶めかしい声を上げられると割とやばい。理性を総動員してミュナに丁度良さそうなサイズの服をいくつか見繕った。
「とりあえずこんなもんか。後はパンツも買っとかなきゃな」
「パンツ要る?」
「要るわ!!それから羽根隠すストールとかも……」
結局、全ての買い物が終わった時にはすっかり夜も更けてしまっていた。
「ん、これで終わりっと。楽しみにしといてくれよ。明日もバイトだしシャワー浴びて寝るか」
「お兄ちゃん、たまにはシャワーじゃなくてお風呂入ったら?」
唐突なミュナの提案で自分の行動を思い返す。そう言えば、大学が始まってからは面倒くさかったからとシャワーで済ませる日がほとんどだった。
「昼間にテレビでやってたんだけど、湯船に浸かってリラックスした方がシャワーだけより良いんだって。しんどいバイトが続くんならなおのことお風呂入った方が良いんじゃない?」
「一理あるな。じゃあたまにはゆっくり入ってくるか」
手早くバスタブを洗ってお湯を張る。湯船に浸かって手足を伸ばすと確かにシャワーよりも疲れが取れそうな気がした。
「ふぅー……久々だけど、風呂、良いなぁ」
「でっしょー?」
「ちょ!ミュナ!?」
がらりと扉が開いてミュナがおもむろに入ってくる。風呂なので当然何も身に着けていない。さっきの挑発を思い出して下半身に血が集中する。
「おじゃましまーす」
そのままミュナはかけ湯をして湯船に入ってきた。俺に背中を預けてもたれかかる。ふわりと長い黒髪が目の前に広がる。
「おいこら、せめて逆側に行けって」
「テレビで言ってたよ。お風呂でイチャイチャすると幸せになるんだって。なんだっけ、てとろどときしん?が出るって?」
「テトロドトキシンは毒だ」
ツッコミを入れながらもミュナの体重と体温が感じられてしまい、溜まっていた俺のモノは俺の意に反してむくむくと主張を始めてしまった。
「あれれー、おかしいなー?今ミュナは別になーんにもしてないんだけどなー」
「言うな……明日バイトなんだよ。さっさと風呂上がって寝るからやめろ」
「だーめ、まだオキシトシン足りてないでしょ」
「知ってたんじゃねえか……ううっ……」
ミュナは俺に背を向けたまま身体を擦り付ける。さらさらの髪の感触に加えて狙っているのか、小さな羽根が乳首を擦ってもどかしい快感を与えてくる。俺の手をミュナがそっと掴んで自身の胸へと導いた。
「ほら……触って、いちゃいちゃして、幸せになろ?」
「すっげ……柔らかい……」
ミュナの胸はほんの少しだけしか膨らんでいないが、その手触りは柔らかでしっとりとした肌が手に吸い付いてくるような感触がした。ミュナの手に導かれるように二度、三度と小さな胸を揉む。
「あは、ミュナもオキシトシン出て来たかも……?そう言えば、お兄ちゃんにじっくり触ってもらったの初めてだね」
「……そうだっけ」
言われてみれば確かに、布団の中で抱きしめたことは何度かあったが、ミュナの身体を愛撫したのは初めての経験だった。
「んっ……お兄ちゃんの手、きもちーね」
気が付けばミュナの手は離れていて、俺は自分からミュナの胸を求めていた。撫でて、揉んで、二つの突起を指で弾いて。そこは少し硬くなっており、触るたびにミュナは小さく声を上げる。
「えへへ、お返しだよ」
「んっ……!」
ミュナが右手で俺の竿を握り余った左手は睾丸をやわやわと揉みほぐす。俺のモノはすっかり怒張しており上下にゆっくりとしごかれるだけで刺激に腰が砕けそうになる。時折先端がミュナの背中や尻尾に当たるだけで快感に声が漏れる。
「そう言えばお兄ちゃんは明日バイトだったよね」
ミュナの両手がぴたりと止まる。
「バイトだから早くお風呂上がって寝ないとだもんね。だから……」
まただ、またこいつは俺を焦らして自分から挿入を懇願させようとしている。だが、こうなってはバイトのことなど考えてはいられない。
「わかった、ミュナ……頼むから」
「瞬殺、しちゃうね」
「え?」
瞬間、腰が落とされミュナの一番奥まで一息に呑み込まれる。突然のフェイントに頭が追い付かないまま、膣壁がうねり、子宮口が先端を吸い上げる。睾丸に添えた左手にぐっと力が入り……
どくどくどくどくどくっ!!
射精している、と自覚するのが一瞬遅れるほどあっという間に射精に導かれる。ミュナの子宮口は貪欲に精を啜り上げ、最後の一滴までも吸い上げようと吸い付き放さない。
「ふぅ、ご馳走様ー」
ミュナは腰を上げて出し切った俺を解放してくるりと向き直って俺にしなだれかかる。
「えへへー。幸せー。お兄ちゃんも幸せになれたかなー?」
「オキシトシンどころか色々出たわ……」
「今日はお兄ちゃんから触ってくれたのと何もしなくてもしてくれた記念日だねー」
確かに、今日はミュナの甘い匂いを嗅いでいない。ただ単に雰囲気に流されてしまった形だ。ヤバいとは思ったがミュナがとても嬉しそうに俺のことを抱きしめてきているので否定の言葉は出てこなかった。
「悪い、身体洗うからそろそろ離してくれ」
「はーい」
素直に離れるミュナを残して湯船から出て手早く頭と身体を洗う。ミュナはそんな俺をにこにこと見つめている。
「ミュナは髪とか洗わなくていいのか?」
「実はね、姿を消してもう一回出たらその時に汚れとかはぜーんぶ落ちちゃうんだ」
「は、なんだそりゃ」
そう言えばミュナは俺と違って毎日風呂に入っているわけでもないのにいつでも髪がさらさらつやつやで不思議に思っていた。まさかこのような能力まであるとは思ってもみなかった。
「ミュナ、こう見えてずーっとこの部屋にいるからね。あれこれ自分のことは調べて試してるんだよ」
「そっか、ミュナ、何年ぐらいここにいるんだ?」
「もー、女の子の過去を聞いちゃ駄目だぞ、お兄ちゃんの野暮天っ」
おどけたような言い方だったが、言外に「聞くな」と言われたような気がしてその先は聞けなかった。ミュナはこの部屋でどれだけ過ごし、何人と今の俺のような関係になったのか。それを考えると少し心がざわついた。
風呂から出て身体を乾かして布団に入るとミュナも布団に潜り込んできた。
「今日はもうやらないぞ。明日があるんだから」
「わかってるって。寝るまでお兄ちゃんとお話したいだけだから」
ころんとミュナは俺の横に転がる。
「ありがとうね、服買ってくれて」
「俺の今後のためもあるしそんな気にすんなって。そうだ、布団もそのうち買うから」
「えー、良いって。ミュナ、消えて寝ちゃえばいいんだし」
「家族が観光しに来るときにうちに泊まれるから買っときたいんだよ。ほっといたら高い送料使って送ってくるだろうからその前に買って布団代貰っといた方が安上がりだしな」
ちなみにこれに関しては本心である。実際に兄貴2人が観光しに来たがっているらしい。どうせこの家は押し入れも大きいし収納スペースはまだまだある。どうせ数日しかいないのならば残りはミュナが使っても支障はないだろう。勿論、何かやらかして汚れたら面倒なことにはなるのだろうけど。
「そっかー。じゃあ、甘えちゃうね」
「おう、俺は最低でも卒業まではこの家にいるつもりだし、それまでの環境はできるだけ整えたいんだ」
頭をわしゃわしゃと撫でるとミュナは俺に頬ずりしてきた。さっきの風呂でのやり取りはどうやら尾を引いていないようで心の中でほっと胸をなでおろす。
「ねえねえお兄ちゃん、甘えついでにもう一個お願いして良いかな?」
「なんだ?今俺にできることなら」
「パソコン、お兄ちゃんが居ない間に借りて良い?」
「それは駄目だ。大学のレポートとか打つのに使う商売道具だから万一があったら怖い」
「えー、ゲーム機でネットやるの面倒なのにー」
「おま、たまに変なこと言うと思ったらネットで仕入れてたのか!?課金とか怖いから教えてなかったのに!」
さっと背筋が冷える。精を抜かれるのはどうにかなってもネット絡みのトラブルが起こるのはマジで洒落にならない。
「課金とかしないってー。単にネットでエッチな小説とか探してお兄ちゃんで実践できないか研究してるだけだよー。ミュナは研鑽に余念がないのだー」
「……ほどほどにしてくれ。それとスパムとか踏んだり架空請求に引っかかったりするんじゃねえぞ」
トラブルの心配は薄れたが、別の心配が現れた。そんなこんなであれやこれや喋っているうちに、いつの間にか俺もミュナも眠りについていた。
「おはよ、お兄ちゃん」
「おはよう。ミュナ」
連休最終日の朝が来た。今日で昼間の連勤も終わりで明日からは大学での日常が戻ってくる。何かあったらミュナのアドバイスで精神を安定させればなんとかなる。今月だけの辛抱だ。
朝食を終えてバイトに向かおうとする俺を階段までミュナは見送りに来た。
「じゃあ行ってくるな」
「お兄ちゃん、ちょっとしゃがんで」
「? わかった」
しゃがんだ俺の頬にちゅ、と柔らかい感触が触れた。
「お兄ちゃん、バイトの日はほんとに不安になりすぎ!ミュナのパワーをあげたから頑張れ頑張れ!」
「……おう、サンキュ」
ミュナには俺が身構えているのがお見通しだったようだ。
「大丈夫!しんどくてもミュナが待ってるんだから。しんどいことより楽しいことを考えて……ね?」
「それもそうだな。頑張ってくるわ」
「いってらっしゃーい!」
手を振るミュナに軽く手を振り返して俺は家を出た。初夏の風が心地いい。ミュナの過去が気にならないと言えば嘘になるが、少なくともミュナの居る日常は悪くない。そう思いながら俺は商店街を抜けてバイト先へと急いだ。
またも少しきな臭い何かが。見ないふりをしていちゃらぶとか逆レイプだけ楽しんでいただいても一向に構いませんが考察とかしていただけたらうれしいなーとかなんとか
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