※この作品はR-18です。

座敷サキュバス始めました   作:tanu3

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5月④ 徹夜明けの夢と男の子の味

東向きの窓からは朝日が差し込み、鳩や雀の鳴き声が聞こえてくる。そんな爽やかなはずの朝……だが、部屋の中は爽やかさとは程遠い惨状だった。

そこかしこに乱立する大容量のペットボトルはどれもこれも中途半端に中身が残っている。ゴミが散乱せずにゴミ袋に纏められているのは救いだが、パンパンなゴミ袋が2袋と普段ではありえない量になっている。

 

「やっべ、空気悪すぎ……」

 

脂っこい臭いが充満している中、ふらつく頭と身体を叱咤して窓を開けると新鮮な空気が流れ込み、少しだけ気分が楽になった。

一番中身の少ない炭酸飲料のペットボトルを手にして中身を流し込み、ラベルとキャップを取って本体は流しに放り込む。ペットボトルは資源ごみとプラスチックごみで分別しないといけない上に本体は洗わなければならないのだが、今はやる気が起きなかった。転がっているペットボトルを回収して冷蔵庫に入れようとしたが、入りきらなかったので外でも大丈夫そうなお茶と水を外に出して冷蔵庫を閉じる。

 

「シャワー……は起きてからでいいか……」

 

俺はのろのろと台所を後にした。

この惨状は俺一人で引き起こしたわけではない。勿論ミュナと二人でもない。昨夜はサークルのメンバーで宅飲み会が開催され、うちが会場になってつい今しがたお開きになったところだ。

無事に俺が問題だらけのバイト先を辞めて新しいバイトを見つけられた記念……と銘打ってはいたが、実際のところは妙に立地が不便で妙に安くて広い俺の部屋のお宅拝見が目当てだったように思える。ただ、飲食物は全額負担してくれた上に俺が未成年だからと酒抜きの会にしてくれたのはありがたかった。その辺がきっちりしているのが俺にとって居心地が良かった。

参加した誰かがミュナのことが見えたら……と思ったが、幸か不幸か誰一人として部屋に居付く自称座敷サキュバスに気づくことはなかった。ミュナが料理をつまみ食いしたら俺が手を伸ばして食べたように見えていたようだった。以前にスマホのカメラで検証した時と同じ現象のようだ。

ミュナ一人置いてけぼりにして皆で盛り上がるのは憚られたが、ミュナはミュナで普段食卓には上らないピザに舌鼓を打っていたのでそこまで疎外感はなかった……と思う。むしろ、俺の方がミュナが食べる分そこまで食べられなかったぐらいだ。

結局ミュナは俺の膝の上でサークルメンバーと格闘ゲームに興じてこっぴどく負けた後に「もう寝るー」と言ってどこかに消えてしまった。俺に気を遣ってくれたのかもしれない。

 

「布団、布団……」

 

畳の上で寝転がっても寝られなくはないだろうが、折角だからきっちり布団で寝たかった。部屋の隅に畳んで置いている布団に手をかけ引っ張ろうとしたら妙な重みを感じた。

 

「ふにゃー?」

「こんなとこに居たのか」

 

ミュナは畳んだ布団に挟まれるようにしてすやすや寝息を立てていた。小さい身体を器用に丸めているものだから外からは見えなかった。仕方がないのでミュナごと布団を部屋の真ん中に引っ張っていく。

 

「はいはい、布団敷くからちょっとごめんよ」

「ぅゅー?」

 

ミュナを抱き寄せようとしたが、意外に重かった。体重があらぬ方向へ逃げるのだろう。引っ張ったらそのままミュナが俺にもたれかかる態勢になった。ミュナの柔らかさに少しどきりとしたが、今は色気よりも眠気が先に立った。

どうにか布団を敷き終えたが、ミュナが起きる気配はない。流石に布団から追い出すわけにもいかず、ミュナを抱えたまま俺はごろりと転がった。すぐさま睡魔が襲い、俺の意識は夢へと落ちて行った。

 

 

今日もまた部屋の中で二人きりだ

部屋の扉は固く閉ざされている

隣の部屋からは物音と声が聞こえてくる

■■と××××が遊んでいるんだ

わたしをおいて

わたしたちをおいて

さびしいから隣にいる誰かをぎゅっと抱きしめる

彼女も寂しかったのだろう。わたしを抱く力が強くなる

ぎゅっとされてうごけないけど、あたたかくて寂しいのが少し飛んでいった

 

息苦しさに目が覚めた。目の前に広がっているのは肌色の壁と薄桃色の小さな突起で……

 

「どわっ!?なんじゃこりゃ」

「んうぅ、どしたのー?」

 

どういう寝方をすればこうなるのやら。俺はミュナのTシャツに頭を突っ込み胸に顔を埋めていた。

 

「あは、お兄ちゃんおはよう。おっぱい飲みたいの?」

「違う!」

 

叫んでシャツから頭を引っこ抜く。よくよく見れば俺の頭はしっかりと枕の上にあったようで、要するにミュナが寝ぼけてか俺の頭をシャツに突っ込んでがっちりとホールドしていたという寸法だ。

 

「ミュナの寝相に問題があるだけじゃねえか……」

「むー、ミュナ、寝てて覚えてないもん」

「そういや、ミュナいつ着替えたんだ?」

 

宅飲みの最中は俺が買ったキャミソールワンピ一式を着ていたはずだった。シャツは押し入れのプラスチックケースに入れていたのでいきなり取り出すわけにも行かない。そんなことをしたら怪奇現象になってしまう。

 

「夜中に皆でお出かけしたっしょ」

「……ああ!」

 

あっさりと得心が行った。そういえば、深夜に小腹が空いたということで近所のコンビニまで皆で買い出しに出かけていた。その隙にミュナは着替えて布団に挟まっていたのだろう。

 

「ごめんな、一人置いてけぼりで」

「良いよ。ピザ美味しかったし。それに、今はお兄ちゃんをひとり占めしてるから」

 

するりと布団に潜り込みながらミュナは俺に腕を絡める。ミュナの感触による興奮よりも、ミュナが昨日のことを気にしていないという安堵が先に立った。

 

「ふわぁ……」

 

安心したところで大欠伸が口から漏れた。時計を見ると布団に入ってからまだ2時間と経っていなかった。

 

「まだ寝てたいから寝るわ。今日はどうせ休みだし。おやすみ」

「おやすみー」

 

何か変な夢を見ていた気がしたが、その内容を反芻する前に俺は再び眠りについた。

 

ぴちゃり、ぴちゃり

 

「な、なんだ!?」

 

下半身に濡れた温かい感触が広がり慌てて飛び起きる。まさかこの年になって寝小便なんて冗談じゃない。いくら昨日大量に水分を摂ったとは言え……。だが、俺に起きていたのは想定の斜め下の事態だった。

 

「ん……おはほー」

 

ミュナが俺のモノを口いっぱいに頬張りながら暢気に手を振っている。

 

「おはようじゃねえ。何やってんだ」

「んんー?おひゃふひー」

 

咥えられたままもごもごと喋られるとそれが刺激になって思わず声が出てしまう。

 

「せめて喋るかしゃぶるかどっちかにしろ!」

 

ミュナは俺の言葉に目を細めて頷いてそのまま無言でフェラを再開した。まずそもそも言うべきはやめろ、だったのだが寝ぼけていたのか昨日の深夜のテンションが判断を誤らせたのか明日が休みだからもういいか、という諦念なのか今更言い直すのも憚られ、されるがままになってしまう。

ミュナの伸びる人外の舌が先端から根元まで一気にしゃぶったかと思えば次は舌を竿に絡みつかせたまま頭を上下させてじゅぽじゅぽといやらしい音を響かせながら温かい口内の感触を堪能させられる。

 

「くぅ……やば……」

 

容赦のない責めに根元からあっさりと射精感がこみ上げ……

 

びゅるびゅるびゅるびゅるっ!!

 

ミュナは一滴たりとも残すまいと先端をちゅるちゅると吸い上げる。その刺激に更に射精が無理矢理続けられる。長い射精が終わって放心する俺にミュナは顔を近づけ、口を開いて中身を見せつけた。

 

「えへへ、一杯出たねぇー」

「で、なんでいきなり寝込みを襲うような真似したんだ」

「え?お兄ちゃんが寝ちゃったけどミュナはもう目が覚めちゃったんで昨日のリベンジにトレーニングモード弄ってたんだけど、飽きちゃったのよね。で、暇だったからお兄ちゃんの寝顔見てたらお兄ちゃんが布団蹴っちゃって。そんで下からおっきくなったおちんちんがまろび出たからこう、抜かねば不作法?的な」

 

悪戯っぽく笑いながらごくんと白濁を飲み下す仕草は淫靡なものだったが、ミュナがこうしておどける時は何か別の意図があるというのは経験上わかっていた。

 

「ごめんな、ミュナ。一人寝ちゃって」

 

ミュナの頭に手を伸ばして髪を撫でる。ミュナは俺にしなだれかかってきたが、つい先ほどの淫靡な表情とは一転して少し寂しそうな笑顔だった。

 

「ミュナね、やっとお兄ちゃんひとり占めできると思ったんだよ」

「だよな。悪かったって」

「ミュナね、ゆうべはお布団に座ってるうちに寝ちゃってて、起きたら誰も居なくって。その間にお着替えしたんだけど、お兄ちゃんたち帰ってこないから不安になって、寂しかったんだよ」

 

そうか、ミュナからしたら目が覚めたら部屋に一人取り残された形になっていたのか。書置きとかを残すわけにも行かなかったし、こちらはテンションが振り切れていてコンビニにかなり長居してしまっていたから、どうせ見えないからとミュナを放置してどこかに遊びに行ったのだと誤解してしまってもおかしくはない。

 

「で、俺が寝ててでっかくしてたから悪戯した、と」

「うん……ごめんなさい」

「別にいいさ。今日は休みだし。ミュナが居づらいなら今後は宅飲みやらないけど?」

「ううん、それは駄目」

 

ミュナはきっぱりと言い切った。

 

「ミュナにとってはこの部屋とお兄ちゃんがが世界の全てだけど、お兄ちゃんの世界は部屋の外にもいっぱい広がってるんだもん。そっちを疎かにしちゃったら駄目だしミュナも心苦しいよ……」

「むぅ、とは言えどうしたもんか」

「ここはミュナがこっそり押し入れとかに隠れてできるsw●tchとかを……」

「それが目当てかよ」

 

えへへー、と悪びれずに笑顔を見せるミュナに苦笑する。高いし手に入らないswit〇hはともかく伝言ができてネットにも接続できる中古のタブレットでも買おうかとは口に出さないながらもこっそり頭の隅に過ぎった。

 

 

「そう言えば、朝方に起きた時に俺、ミュナの胸に顔突っ込んでたけどあれもミュナがやったのか?」

「ううん、あれは起きたらああなってた」

「どういうことだよ……」

「それよりお兄ちゃん、続きする?」

 

ミュナはぺろりと舌なめずりをする。一度出したにもかかわらず先ほどの口内の光景がちらついて生唾を飲んでしまう。だが、次の瞬間にその場に俺の腹の虫の音が響く。

 

「……とりあえずご飯にする?」

「そうだな……」

「腹が減ってはえっちはできぬってね!」

「なんだそりゃ」

 

顔を見合わせて二人で笑う。

 

「でも、食べるたって何かあるの?ご飯炊く?」

「そこは心配ご無用だ」

「うわぁ、すごーい!」

 

冷凍庫の中に鎮座する冷凍食品やアイスクリームの大群にミュナは歓声を上げる。

 

「昨日の夜中皆で大量に買って残ったのは俺の会場費だからって置いてかれたんだわ」

「皆良い人達だねえ。昨日ピザ食べてた時もそれは思ったよ」

「まあな。先輩が面倒見良いんだよ」

 

冷凍チャーハンと冷凍唐揚げを取り出し、フライパンに油を薄く敷いて温める。その間に冷凍唐揚げは皿に乗せてレンジに入れるだけに留めておく。冷凍チャーハンをじっくりと温めながらかき混ぜ、冷凍感がなくなってきた頃合いで唐揚げを既定の秒数で温める。唐揚げが温まったら端に寄せてそこにチャーハンをよそって……

 

「よし、唐揚げチャーハン完成だ!」

「うわぁ」

 

ミュナが呆れたような顔をしているし、自分でもどうかと思ったのでせめてこれぐらいはと冷蔵庫から野菜ジュースのパックを出して食卓に並べる。

 

「いただきます!」

 

糖質と炭水化物と脂質が口の中でせめぎ合う。どっしりしたチャーハンの味付けが後を引くところにジューシーな唐揚げを箸休めに。唐揚げから染み出した油がチャーハンを彩り更に油っ気が加速する。

 

「なんて言うか……男の子の味ってやつなのかなぁ?」

「まあな。男子学生の大好物だ」

「主語が大きい」

 

呆れ顔のミュナに向けて一口分のチャーハンと小さい唐揚げを乗せたスプーンを向けるとあっさり食いついてきた。

 

「間接キスになるけど良いの?」

「今更だろもう。うまいか?」

「うん、そりゃ美味しいけどこれを一袋はきついって!」

「男の子の味だからな」

「男の子の味ならさっき味わったんだけどなー」

 

ミュナの飛ばした言葉に再び先ほどの口内の光景がちらついてスプーンを動かす手が止まる。さっきは性欲を刺激したが、残念ながら食欲には刺激どころか完全に委縮させる効果しかなかった。

 

「だ、大丈夫。全部飲んだから一滴たりとも残ってないよ!」

「理屈はそうかもしれんが無理だ!!」

 

新しいスプーンを取りに席を立ち今のスプーンが触れたところとその周りはミュナ用に別の皿に出して無言で残りを食べ終えた。

 

「よし、忘れよう。アイス食うぞアイス!」

「わーい、アイスアイス♪」

 

とりあえず棒アイスで同じことをされると食欲が失せるのでカップのアイスを適当に選んで二つ取り出した。スプーンで掬って口に入れると心地よい冷たさとチープな甘みが広がる。

 

「うーん、アイスも美味しい。サークルの皆に感謝だね」

「ほんとにな。何から何まで世話になりっぱなしだわ。うちの台所で簡単に作れるメニューを今度教えてくれるってさ」

「お、それは楽しみ。頑張ってね、お兄ちゃん」

「おうよ」

 

食べながらふと夢想する。もし、サークルの皆に家にいる目には見えない座敷童(流石にサキュバスとは言えない)の存在を教えたらどうなるだろう。十中八九頭のおかしい奴扱いされるだろうが、オカルト好きが集まっているのでもしかしたら、信じてくれるかも知れない。それならミュナをのけ者にせずに皆で遊んでくれるだろうから寂しい思いをさせることもない。皆気の良い奴らだから本当に、誤魔化し続けてボロを出すぐらいならいっそ思い切って……

 

「―――ちゃん、お兄ちゃん」

「ど、どうした?」

「アイス、溶けるよ?」

 

考えに耽っているのをミュナに引き戻された。ミュナは既にアイスを食べ終え、彼女の言う通りアイスはかなり柔らかくなってしまっていた。

 

「何かまた悩んでたの?」

「あー、ちょっとな」

 

ミュナにサークルの皆に説明するべきかどうか、今考えたことを素直に話す。

 

「別に、言わなくてもいいんじゃない?お兄ちゃんがちゃんとミュナのこと考えてくれてるのはわかってるし」

「そっか。また宅飲みあるかも知れないぞ。一人暮らししてる面子の家でうちが一番広くてキッチンが広いらしいから」

「良いよ。またつまみ食いして後はお兄ちゃんが寝るまで何とかして起きてるから―――それに」

 

すっとミュナは俺の横に来て俺にしなだれかかってきた。

 

「ミュナをひとり占めできるのはお兄ちゃんだけだしね」

 

ミュナの笑顔が俺を見上げる。その表情に一際大きく心臓が脈打つ。

 

「じゃ、お腹もいっぱいになったし、続き……しよ?」

 

ミュナの誘いに俺はあっさり陥落して、ミュナにひとり占めされてミュナをひとり占めする午後を過ごしたのだった。




年明け前には書けるかと思ってたら全然ダメでした。仕事が飛び飛びで入るとモチベ維持が難しい……

どこまで「俺」とミュナ以外の描写をするかが未だ答え出てないです

この小説に求めるものは何ですか?

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