少しずつ暑い日が増え始めて来た中、俺は買いたての自転車で近所を走り回っていた。残念ながら、買いたてと言っても新品というわけではない。大学の近くの老夫婦がやっている自転車屋でそこそこ新しめのものを安く売ってもらったのだ。中古品と言っても手入れがきちんとされているので走り回る分には一切支障がない。大学まで三十分かかっていたのが半分以下になるというのは衝撃的だった。今日は休みなので、今まで一度も通ったことのない道をあれこれと開拓している最中だ。前に見つけたコロッケ屋のような意外な発見があるかもしれない。
「この商店街結構長いな……」
家の前の商店街を大学とは逆方向へどんどん進んでみる。いくつか通りを越えてもまだまだ続いていて驚かされた。もっとも、廃業している店もかなり多いのだが。陸の孤島と揶揄されることだけはある。あとはアーケードが一切ないと商店街と言われても実感が湧かないというのもあった。
「っと、ここで終点か」
一際大きい通りに差し掛かって遂に商店街は途切れた。入口と言っても良いはずの場所だが、特に何か看板があるわけでもないのがこの商店街の寂れっぷりを表しているように思えた。だが、その付近にある一軒の店が俺の興味を惹いた。
寝具店。今は自分用の布団一組しか家にはないのだが、いずれ家族が都会に遊びに来るであろうことを考えるともう何組かあった方が良いし、そもそもうちには居候もいる。寝具だけでなく子供用の寝間着も置いているようだった。いずれ買おうと思っていたのでこれも何かの縁かも知れない。幸い、先月分の給料はゴールデンウィークを潰しただけあってそこそこ潤沢だったのでまだまだ余裕があるし、新しいバイト先も見つかっているから今後もある程度問題なさそうだ。俺はかなり年季の入った店内へと足を踏み入れた。
「ただいまー」
「おかえりなさーい、って何その大荷物」
布団一式を抱えて階段を上る俺の姿に出迎えに来たミュナが目を丸くする。
「ミュナの布団買ってきた。敷布団とこっちが掛布団。冬用のはまた寒くなってから考えるから」
「わわ、もう買ってきたんだ」
「こないだみたいに起きたらミュナの胸に突っ込んでたってのはもう勘弁だからな」
最近はミュナが姿を消して寝るのが減り、布団で二人引っ付いて寝ることが多くなっていた。布団の中で搾られるのはたまにしかないが、いくらミュナが小柄だとは言え一人用の布団に二人ではやはり狭いしミュナの寝相はあまり良くはなかった。朝起きたらミュナに押し出されていたこともあればミュナが布団を飛び出して襖の方まで転がっていたりしたことすらある。敷布団と掛布団一組でどこまで効果が出るかはわからなかったが、まあないよりはましだろうし、幼女と同衾するよりは健全だろうというのもあった。
「あれ?こっちの袋はなあに?」
「ああ、それはミュナのパジャマ」
「わ、ありがと!高かったんじゃない?」
「いや全然」
別にミュナを慮って言ったわけではない。寝具屋の婆さんに、子供用のパジャマを買う理由を聞かれて咄嗟に仲のいい従姉妹がゲームをしにやってきて泊まりになることもあるからと嘘をついたら布団のおまけにとタダでくれたのだ。商売っ気が無さ過ぎるにもほどがあって心苦しいので冬になったら毛布とかも買いに行くことになりそうだ。それはそれで一周回って商売上手なのかそれとも俺がちょろいのか。
「尻尾がつっかえるなら穴あけちゃっても良いからな。誰かに見せるもんでもなし」
「わかったー。ちょっと着てみるね」
ミュナはおもむろに服を脱いで惜しげもなく裸身を晒す。何度も見ているし見る以上のことだってしまくっているのだが、それでも見慣れずドキドキしてしまうのはサキュバスの魔性故か。
「ちょっとおっきいね」
「羽根が邪魔にならないようにワンサイズ大きいのにしたんだ。いつも着てるシャツよりは小さいだろ」
「それもそっか」
「ズボンの方もサイズが大きいけど紐で絞れるのにしたからなんとかなるか?」
「ん。大丈夫かな?」
ミュナは寝る時は服が皺になるのを避けるためと言ってTシャツ一枚だった。なもんで下半身は無防備だったわけで布団の中で絡みつかれると色々とまずかった。ちゃんとした服を着てくれれば少しは俺が誘惑に負けることも減るだろう。たぶん。
「早速今夜から着て寝るね。ありがとうお兄ちゃん!」
「汚すんじゃないぞ」
「今夜はいーっぱい気持ちよくしたげるね」
「早速汚そうとするんじゃない」
えー、と頬を膨らませて着替えるミュナを放置して俺は梱包材の余りの片付けに取り掛かった。
片付けが終わり夕飯も済んで、ミュナとゲームをしているうちにすっかり夜も更けてきた。
「んじゃそろそろ布団敷くか」
「はーい。手伝うね」
今までは俺の布団を部屋の真ん中に敷いていたが、今日からは部屋の真ん中に俺の布団とミュナの布団が並ぶ。掛布団と枕を並べるや否やミュナは布団に飛び込んだ。
「わー、おっきー!」
「俺のと同じサイズだからミュナには大きいよな。ま、家族が泊まりに来たら使うかもなんでな。その時は我慢してくれ」
「わかってるよー。でも、今日は間違いなくミュナのおふとん!」
ミュナは掛布団から亀のようにぬっと首だけを出す。大人用の布団なので小柄なミュナの身体をすっぽり覆って余りあるサイズで、その中をミュナはまるで泳ぐようにあちこち移動して遊んでいる。ここまで気に入って貰えたならこちらとしても買った甲斐があったというものだ。
「えへへー、こっちはいつものお兄ちゃんのおふとん!お兄ちゃんの匂いがする!」
「今日からはちゃんと自分の布団で寝てくれよ」
「えー、どうしよっかなー」
俺の布団に包まってミュナは悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「ホントはね、お兄ちゃんとひとつのお布団でぎゅーってして寝れたらそれで良かったからお布団新しく買わなくてもいいやって思ってたんだけど、実際に入ってみたらいっぱいゴロゴロできるのってすごい良いよね。即落ち2コマだよ!」
「気に入ったんなら良かった。そろそろ寝るからスペース空けてくれ」
「はぁーい」
ミュナは素直に自分の布団へとごろごろと転がって戻る。ミュナの居たところに寝転がるとほんの少し温もりが残っていた。
「えっへへー。お邪魔しまーす」
「邪魔すんな、大人しく寝ろよ」
俺が寝転がるとすぐにミュナが掛布団ごとやってきた。掛布団同士を重ねてするりと俺の側に滑り込む。
「どう?お布団ダブルならちょっとやそっとじゃ飛び出さないでしょ?」
「前にちょっとやそっとどころじゃない飛び出し方してただろ」
「記憶にないもーん」
言いつつミュナは俺にぴったりとくっつき身体に指を這わせ始める。
「おい、明日バイトなんだぞ」
「今度はいざかやさん?なんだっけ?」
「おう。店長も他のスタッフも良い人揃いだから仕事はしやすいけど終わるのが遅いから無茶したくないんだってば」
新しいバイト先は大学に募集が来ていた近所の居酒屋だ。大学を通している以上トラブルがあったら周知されているわけで、それだけでも信用度が違うとの先輩の助言に従って選んだ。ただ、前よりも仕事時間そのものは長くなって、終わるころには日付が変わってしまう。その分払いは良いし賄いも出してくれるので時間が長くなること自体にはそこまで問題はない。問題はこのウチに住み着いているエロガキである。
「それはわかってるけど……今日は、新しいお布団デビューの記念日だよ?ちょっとぐらいいちゃいちゃしても……駄目?」
「うっ……」
至近距離で見つめられるとつい心が揺らいでしまう。
「や、新しい布団を早速汚すわけにもいかないだろ」
「ミュナとお布団でえっちしてお布団汚したことあったっけ?」
「うぐ……」
実は、ないのだ。際どい状況は何度かあったが、全てミュナがぎりぎりで抑えていた。新しい布団という言い訳の選択が間違いだと思ったが後の祭りで、それでも駄目と強弁して新しい布団にはしゃぐミュナに水を差すのは憚られた。
「わかった。梅雨時だからほんとに気をつけてな。それと、ミュナが先に寝落ちても起こさず俺も寝るから」
「はーい」
返事とともにミュナがすっと視界から消える。そしてごそごそと布団の中で気配が動く。俺の腰付近にいるかと思ったら足元に移動して、それからふっと隣の布団まで離れていった。
「ミュナ?」
いったい何がしたいのかがわからず困惑する。一度離れたミュナだが、今度は掛布団の端っこに潜り込んだようだ。ごそごそと這ってゆっくりとこちらに向かってくる。掛布団があちこち引っ張られて正直鬱陶しい。
「おい、ミュナ何やって……?」
「探検隊♪ 探検隊♪ 俺たち洞窟探検隊♪」
「おい、マジで何やってんだ……」
布団の中からどこかで聞いたようなフレーズが聞こえてくる。声が布団の奥から聞こえて来たと思ったら、おもむろに俺の胸元に両手が侵入してきた。
「親分!こっちにお宝がありそうでヤンス!」「でかした子分ども!!」
「おい、ちょ、ま」
ミュナは手だけを思い切り前に出した体勢で俺ににじり寄ってきていたようだ。少し離れたところにいると勘違いしていた俺はまんまと奇襲に引っかかってしまったというわけだ。そしてミュナは反応に困る猿芝居を俺の胸板で繰り広げる。
「ここに目印が二つあるでヤンス!ここにきっとお宝が埋まってるでヤンス!」「よっしゃあ、掘るぜぇ!」
かりかりと軽く両乳首が引っ掻かれる。弱い刺激に下半身がほんの少し反応してしまう。茶番劇とはえらい違いであった。
「それ掘れやれ掘れお宝じゃーい」
いつの間にやらミュナは俺の側にぴったりと寄り添っていた。耳元で囁かれるとさっきと同じ意味のないやり取りでも脳が揺らされそうになる。
「もっと掘れ子分どもぉ、ちょっと固くなってきてるぞぉ」「合点でさぁ!それ!わっしょいわっしょい!」
「ううっ……」
ミュナの言う通り、かりかりと執拗に刺激を与え続けられて、俺の乳首は反応しつつあった。それに伴って下半身の方にも血が集まってむくむくとズボン越しにもわかるほど勃起してしまう。
「子分ども!洞窟の主の気配がしたぞぉ!猪突猛進じゃあああ!」「合点!親分!!」
ミュナの指の探検隊は俺の肌の上をとことこと走るように下へ下へと移動する。シャツを飛び出して次はパンツの中へと歩みを進める。
「いたぞぉ!主だぁ!かかれー!」
「んう……っ」
号令とともにミュナの指が俺のモノに絡みつく。竿の部分を優しく圧迫したかと思えば敏感な先端を擦ったり、つつっと裏筋を撫でたりと縦横無尽に動き回る。
「ミュナ……それ……やばい……」
「あれー?もう降参ですかー?ミュナの洞窟探検隊の勝ちー?」
ミュナはにやにやと俺の顔を覗き込む。悔しいがこのまま続けられたらあっさりパンツの中に発射してしまうだろう。もっともミュナの手が直接精を吸収するから洗濯機に走る必要はないが、直接手で吸われる感覚は気持ち良い反面何やら背筋が冷える感じもするのであまり頻繁に味わいたくはなかった。
「降参降参。だけどなんなんだよ、いきなり洞窟探検って」
「こんなおっきなお布団で寝るのって初めてだからね。ついつい潜って探検したくなっちゃったからそのノリで」
「普通に布団の中で遊ぶだけじゃ駄目だったのか」
「だってミュナはサキュバスだもん」
当たり前じゃない、と言うかのようにミュナは首を傾げる。精を吸わなくても大丈夫な癖に。
「じゃ、降参したお兄ちゃんは……今から新隊員になってもらいまーす!」
「はぁ!?」
ミュナは左手を俺のモノに添えたまま右手で俺の手首を掴み、パジャマの胸元へと誘った。
「さぁ新入り!洞窟の主は左手隊員が捕まえたからお前は次の洞窟に向かうぞ!ついてこい!」
「え、えっと、俺もこのお芝居やらなきゃいけないの?」
「ダメ?」
聞きながら俺のモノに添えられた左手の拘束が強くなる。俺に拒否権はないようだった。どちらにせよ吸われるのは確定なのであるが。
「さぁ行くぞ新隊員!まずは扉を開けるんだ!」
「洞窟じゃないのかよ……合点でさぁ」
ミュナに買ったパジャマは前開きのもので、ボタンを外したらすぐに胸に手が届く。勿論こういう使い方を想定して買ったわけではない。単に安かったからである。ミュナに促されてボタンを一つ、二つと外していくといけないことをしているようで心臓が早鐘を鳴らし始める。
「良いよ、お兄ちゃん……こほん、突入じゃあ!」
「お、おう」
指摘するのを放棄して俺はミュナの腕に導かれてパジャマの中に手を入れた。素のミュナの上気した表情にドキッとしたのは言わないことにした。
「ほら、最初は周りの柔らかいところをそう、そこ……掘るんだ子分ども!」
「が、合点……」
無理矢理出していただみ声がだんだん雑になってくる。俺とは全く違う柔らかいほんの少しだけ膨らんだ胸にそっと手を這わせる。柔らかい上にしっとりとした吸い付くような手触りにそれだけで腰が跳ねそうになる。
「ん……あは、もっと強くしても良いよ……っ?」
「これぐらいか……大丈夫か?」
「うん、良いよぉ……」
ミュナの小さな身体は壊れ物のようで、力加減がわからずおっかなびっくり撫でるしかできないが、ミュナはそれでも身体を震わせる。
「んん……下も触ってぇ……」
ミュナは俺の手を引っ張ってズボンの中へと突っ込む。尻尾が邪魔だからとズボンの下は何も履いておらず、そのまますぐにぬるりと蜜が溢れる無毛の割れ目に誘われる。
「うん……そのまま……ぬるぬるを塗り広げてくみたいに……ん、そう……」
「こ、こうか……?」
「んっ、良いよ……そんな感じで優しく……んんっ!」
俺の指が突起に引っかかった瞬間、ミュナはびくりと痙攣した。
「あはぁ……良いよぉ……えーと、じゃあ……一番奥に、猪突猛進……」
「まだその設定生きてたのか」
思わず真顔になって突っ込んでしまった。
「もー、こういうのはノリが大事なんだよー!」
「いててて、握るな!」
頬を膨らませてミュナは左手をぎゅっと握る。痛いだけでなく刺激でちょっと出そうになったのを悟られまいと気合で堪える。
「えーと、だから、洞窟の主は捕まえたから……ミュナのあそこに入れて……えーと」
「おい、ノリだけで何も決めてないのか」
「えへへ?」
ミュナは悪戯っぽく笑って誤魔化そうとする。
「お兄ちゃんも考えて?皆でお話を作って行こ?」
「おい」
誤魔化すだけでは済まず丸投げする始末であった。それでもここまで来たらそのまま何もなかったかのように寝てしまうのは不可能だったのでミュナに息子を握られたまま頭の中でシナリオを回す。
「えーと、えーと、じゃあアレだ。捕まえた洞窟の主を宝物庫に保管するんだ」
「ふむふむ」
「で、その宝物庫は誰にも盗まれないように厳重な封印がしてあって今それを解いて開こうとしたところなんだ」
「じゃあそれ採用で!」
「お、おう」
シナリオどころかどこかで聞いたような話を適当にひねり出したに過ぎないので俺もミュナのことを悪く言えない。だが、そんなことは重要ではない。とりあえずこの行き場のない宙ぶらりんだった現状が動けばそれで良かった。
「じゃあ……封印が解けたか確かめるのは新入りの仕事だよね……?」
「おう……じゃあ……」
再びミュナの下半身へと指を伸ばす。先ほどよりも潤滑が増している。あの中断もミュナにとっては焦らす効果になっていたのだろうか。
ゆっくりと指を進めるとつぷん、と沈むような感触と続けて指先に感じる痛いぐらいの締め付けと熱。ミュナの身体がびくりと跳ねた。
「んん……っ、準備万端、だね……っ、じゃあ、主をここに入れて……弱らせて、封印する……ぞぉ」
「合点承知……」
ミュナは態勢を変えて布団はそのままで俺の上に乗っかった。ミュナの温もりだけでなく体重が全身に感じられてそれだけで昂ってしまう。
「んぅ……入った……ぁっ!これで……もう、ずっと……あたしのものだから……」
「ううっ……」
かき分けるように少しずつ中へと誘われる。熱を孕んだ肉壁がみっちりと纏わりついてきて、耐えるのだけで精一杯だ。ミュナは俺の上で淫靡な表情で舌なめずりをした。
「このまま……出しちゃったら……封印完了でぇ……二度と出られないんだよぉ……」
「や、止めろ……」
腰を引こうにも肉壁がまるで咥え込むようにぴったりと吸い付いて離れず、なすがままにされてしまう。
「えへへ、出しちゃお?ずっとミュナの中にいよ?きもちーよ?」
「ダメだっ……て……うぁぁ……」
ミュナは繋がったまま俺に身体を預けて舌を伸ばして俺の口内に侵入してきた。ぴちゃぴちゃと響く水音を聞くうちにミュナの設定がどこまで本当なのか境界があいまいになってくる。このまま出してしまったが最期、ミュナの膣内に永遠に囚われてしまうのではないか。そう思ってしまうほど。
「ん……これで……トドメぇ……」
「うあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ミュナが奥まで俺を迎え入れたままぐるりと腰を捻る。次の瞬間肉壁がぞるりと俺のモノを刺激する。まるで石臼が中身を轢き潰すかのように。そして―――――
びゅるるるるるるるるるるっ!!
「あああああああああああ……」
「あは、出たぁ……っ」
一番奥に咥え込まれたままどぷどぷと敗北の断末魔が先端から迸る。ミュナの膣内はそれを一滴残さず逃すまいと貪欲に絡みつき、その刺激が更に精液を作り出し排出し続ける。ミュナは一際大きく痙攣してくたりと脱力した。
「美味しかったよぉ……」
「そりゃ……よかった……」
よいしょ、とミュナが腰を浮かすと先ほどまでの締め付けが嘘のように硬さを失ったモノが魔壺から解放される。ミュナは手早くウェットティッシュで拭いてくれた。
「えへへ、ありがと、お兄ちゃん」
「ホントにずっと挿入られっぱなしにされるかと思ったわ」
「……それも良いと思ったけどね。でも、お兄ちゃんは明日バイトでしょ。ミュナはそこまで我儘言う気はないもん」
「そっか……いい子だ」
「そうそう、良い子なの。ミュナ」
ミュナと話していると急速に意識があいまいになってくる。
「お休み、お兄ちゃん」
ミュナの柔らかい唇の感触がした気がしたが返事をする前に俺の意識は夢へと落ちた。
目覚まし時計の音に飛び起きる。横に並ぶもう一組の布団に一瞬混乱してそう言えば昨日ミュナ用の布団を買ったのだと思いなおす。
「っと、ミュナ?」
当のミュナはどこにいるかと思えばちゃんとミュナ用の布団に入ってすやすやと寝息を立てていた。ただ、枕の上に足が乗っており当人は掛布団に頭から突っ込んでいるような状態だ。よくこんな態勢で眠れるものだといっそ感心してしまう。
「ま、昨日ははしゃいだもんな」
昨夜の“探検”を思い出して股間が硬くなり始めたので慌てて気を逸らすために俺は布団を出て顔を洗いに行った。
「うゅー。お兄ちゃん、おはよー?」
「おう、おはようさん」
俺の布団を片付けてありもので朝食を済ませたところでようやっとミュナが寝ぼけ眼を擦りながら起きて来た。
「どうだった?って聞くまでもなく安眠できてるわな」
「お布団で遊んだからか変な夢見たよー」
「変な夢?」
ミュナは怖い夢を見た次の日甘えん坊になったりすることがあるので少し身構える。俺も環境の変化かたまに変な夢を見ることがあるので気になってしまう。
「どんなんだよ?」
「えっとね、ミュナ、駅にいるの。おっきい駅。ホームがいっぱいあって丸い柱があるの。で、そこから電車に乗るの」
「まあ、普通の夢だよな」
普通過ぎて言われても正直反応に困る。
「えっとね、ぶるーとれいん?ってのに乗るの。普通の電車なのにドアから入ったら一面お布団で、いくらごろごろしても良いの」
「なんだそりゃ」
全然深刻でもなさそうな話で思わず噴き出す。
「そんだけ新しい布団が気に入ってくれたみたいで買った甲斐があったわ。布団とか汚してないよな?」
「うん!ありがとう!お兄ちゃん!」
後で確かめてみたが、パジャマも布団も特に染みがついたりとかはしていなかった。昨日あれだけ二人で乱れたにもかかわらず綺麗なものだったので少し不審に思ったが、ミュナ曰く「そういうもの」らしいので特に考えることなく大学に行くことにした。今日はバイトもあって遅くなるのだ。
「じゃ、行ってくるわ。遅くなるから適当に布団敷いて寝といてくれ」
「わかったー」
家を出て自転車に跨り大学へと向かう。慣れた道を風を切って走る途中、頭にふと疑問が湧いた。
(ミュナ……駅とか電車とか知ってた……?)
そうだ。ミュナはずっとあの部屋にいるはずなのに。聞いても前の住人が見ていたテレビかも知れないと本人もわかっていない様子だったが、そもそもそれは本当にわかっていないのか。しかも、駅の描写がいやに具体的だった。そう言えば、前にコロッケを買ってきた時にも不可思議な発言をしていた。
(あいつ……一体……何者なんだ……?)
疑問は晴れないまま俺の脳裏に残り続ける。梅雨がそこまで訪れようとしていた。
ブルートレインの夢は私が実際に見た夢です。
布団の中でわちゃわちゃほたえながらイチャイチャってのを考えてたのにいつの間にか猪頭が暴れそうな話になってました。実用性あるのかこれ……?
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