(無言初投稿)
もともと俺は何事も習得するのが早かった。ISの操縦技術も例に漏れず上達した。勿論その背景には織斑先生のマンツーマン指導が大きいわけだが。
今日は決闘前日という事で特別にISのカスタマイズが許された。国際法の範囲内で好きなようにして良いと言われたのでガレージに来ている。打倒セシリアのための戦略はもう出来上がっているのでそれに合わせたカスタマイズを行うつもりだ。
IS学園のガレージにはISを掛けるハンガーがいくつもあり改造用の端末がいくつも付属している。何が何やら分からない俺は本音に手伝ってもらっていた。まさか本音がIS改造のエキスパートだったなんて知らなかった。
「ここの装甲はもっと分厚くしたいんだけど出来る?」
「できるけどここに付けられるのは反応装甲だけで一回しか防げないよぉ~」
「一回で十分だよ。俺の戦術は一回きりの片道切符なんだから。それとブースターを追加できるかな?」
「私にかかればこの程度、お茶の子さいさい屁のカッパ」
端末をいじると目の前で仁王立ちしているラファールの腰部にスカートのような装甲兼ブースターが装備された。
「こんな装備使う人初めて見た」
本音がそういうのも無理はない。こいつは反応装甲でどんな攻撃も一度食らったら脱げてしまう。しかしどんな攻撃も防げるというのは有効だ。この装備はブースターも兼用しているのでパージされた瞬間に機動力が落ちてしまう。それ故にデメリットの方が大きく、使う人はいなかったようだ。
「良いの良いの。これが俺の必勝法なんだから」
「拡張領域もほとんどを装甲とブースターに使ってるからコレくらいしか武器は装備できなくなってる」
「だからそれで良いんだって。ロマンがあるじゃあねぇか」
大楯に隠された一撃必殺の切り札。その一撃を食らわせるためだけの高機動。これこそ男のロマンだ。
「マッチーがそれで良いのなら…」
「ところでさっきからこっちを見てるあの子は誰?本音の知り合い?」
「あ、かんちゃん呼んだの忘れてた!!」
かんちゃんと呼ばれた彼女は恥ずかしがり屋なのかうつむいたまま此方にやってきた。
「いつからいたの?」
「二人が来る前からいた…」
「ずっと待たせてごめん。手伝ってくれる?」
「もちろん、そのために来た。少し見せて…」
俺から端末を受け取ると液晶が沢山表示された。立体映像の画面を展開して目が回りそうな速さですべての画面を操作している。映画とかで見るハッカーみたいでカッコいい。
「うん…うん…すごい…この改造凄いよ!」
「マジで!?ほらな本音、俺の言ったとおりだ。俺の戦術は完ぺきなんだって」
「すごいバカが考えたとしか思えない」
前言撤回、彼女カッコよくない。
「どの辺がバカなのか説明してもらえるかな?」
「まずはコンセプトがバカ。重装甲なのに余計なブースターで速くしようとして拡張領域を圧迫している。武器も近接用のパイルバンカーだけっておかしい。これならナイフをたくさん持って投げたほうがましだよ。それに反応装甲なんて一回しか使えないものは長期戦に向かない。セシリアさんは射撃戦が得意だし引き撃ちするに決まっている。もしかしてそんな事も理解できないくらいバカなの?」
「それは違う。確かにラファールの強みのスピードも拡張領域も活かしきれていない。それどころかまともに戦えなくしている。だがそれら全てを考慮しても確実に言えることがある」
「それは?」
「それは……ロマンに欠ける!!!」
「なっ!?」
雷に打たれたかのような衝撃的な顔で口を開け驚いた。そんなかんちゃんさんに俺は畳みかける。
「完全に不利な戦いに不利な装備で挑み泥糞に塗れながら勝利を手に入れる。それこそ漢のロマンだ!!まぁ…女の子には分からないと思うけど…」
「うん!全然分からない!」
満面の笑みで答えた本音ちゃんにはおじちゃんが飴玉をあげようね。世界一おいしいと評判のサルミアッキだ。味わって食べろよぉ。
「感動した…感動したよ!その熱い展開を実現させよう!私も最大限力を貸すから一緒に英国面を打ち滅ぼすんだ!!」
俺の心意気が伝わったのかかんちゃんさんの目に火がともった。それも夕日よりも赤く地獄の業火よりも熱い炎だ。
「そうともブラザー!一緒にこのラファールを…いや、この対英国代表候補用重量二脚突撃兵装を作り上げよう!!」
「まかせて!」
「まぁ…二人が仲良くなれたなら私は良いんだけどね…でも仲間外れはさみしいなぁって」
そこにはクソ熱い二人とその二人を冷静に見つめる部外者にされてしまった本音がいるだけだった。
……
…
「あぁ~~~疲れたぁ~~~」
ボフンとベッドに倒れこんで服を脱ぎ散らかす。そこら中に服が散乱しているのでそんなに部屋を汚した気にならない。
「私の方が疲れたよぉ~~。マッチーもかんちゃんも無理難題を押し付けるんだもん」
「わりぃわりぃ、でも完ぺきなISになっただろう?一件落着」
「それは試合の後。それとマッチーに手紙。宛名は書いてないけどラブレターかもよぉ~~」
受け取るとそれはピンクの封筒でハートのシールで封がされていた。中を確認すると今夜、寮の屋上に来てほしいと書かれていた。しかし肝心の送り主が分からない。
「ちょっと屋上に行ってくる」
「いってらっさぁ~~い」
……
…
女子の呼び出しは初めてなので焦っていた俺はシャワーも浴びずに屋上に来た。夜風に吹かれて冷静を取り戻した俺は恥ずかしさと緊張で心臓が高鳴っている。
「こんばんは、ちゃんと来てくれたのですね…」
背後から声が聞こえたので振り返るとお人形さんのような奇麗な女の子が立っていた。腰まで伸びた白い髪に透き通るようなシミ一つのない肌、そしてゴシック調のメイド服。まるで童話の世界から飛び出したような可愛い女の子だ。
「束様の遣いで来ました。死んでください」
「は?今なんて?」
風の音にかき消されて彼女が何と言ったのか聞き取れなかった。
「二度は言いません…」
女の子はナイフを振りかぶり俺の喉元を切りつけた。しかし『ガキン』と金属音が鳴って刃こぼれした。
「うわ!びっくりした!いきなり何するの」
「まさか…これなら」
ナイフを捨てて今度は銃を取り出した。銃には精通していないけれどサプレッサーがついているのは確認できた。
「ちょ、こっちに向けるなって!」
胸と頭に命中したが弾丸が俺の皮膚を傷つけることはなかった。急に攻撃されたのでぶっちゃけ焦ったけど無傷だから問題なし。やっぱり俺の身体は普通とは違うらしい。
「くっ…ならこれで!!」
手榴弾を投げられたので俺は体を丸めて背を向けた。爆風と破片が俺の身体を襲うが傷つかない。
振り返ると謎の少女に口をふさがれて何かを飲まされた。錠剤のような物だったが飲んでも良いもののはずがない。しかし異常は一切ない。
「くっ…殺せない…。ここは一時退散します。次に会うときは必ず殺します。束様の名に懸けて!!」
そう言い残して彼女は夜の暗闇に消えて行ってしまった。
束様…おそらく篠ノ之束だろう。ISの開発者に命を狙われるようなことしたかな?全く心当たりがない。
「何の騒ぎだ!!」
勢いよく扉が開かれて千冬さんが屋上にやってきた。手には刀を持っているので襲撃されたと思ったらしい。まぁ、爆音が聞こえたし無理もないか。
「ちょっと襲われちゃって」
「襲われただと!?」
「まぁ…はい、束博士の遣いで来た人に襲撃されました。でも傷一つないですし大丈夫ですよ」
「束め……分かった。まずは無事でよかった。訓練の時から思ってはいたが本当に頑丈なんだな」
「はい、ナイフとか銃とか、あとは爆弾も毒も効きません。えへへ、我ながら凄い」
「あきれた頑丈さだ。だがそれならまた狙われても大丈夫だろう。今日は部屋に戻って寝ろ。明日は試合だぞ」
分かりましたと言って俺はその場を離れた。後になって知ったことなのだけれどこの日の爆発は誰かの悪戯という事で話がまとまった。生徒たちは学校の七不思議だとか宇宙人の仕業だとかテロだとか盛り上がっていたが噂なんてすぐに静まるだろう。
……
…
試合当日の朝、俺はいつもより早く目覚めていた。小さい頃からそうだ。遠足とか行事の前の日は必ず睡眠時間が短くなる。楽しいことでも嫌なことでも緊張すると自然と早起きになってしまう。だから寝不足気味で当日を迎えるわけだ。
早朝5時に目が覚めたって事はそれだけ緊張しているってことだ。負ければ両親の名誉が傷つく、それに日本男児も馬鹿にされっぱなしになる。それだけは絶対に嫌だ。でも勝てるか不安になっているのも否定はしない。むしろ負ける可能性の方が高い。そんな嫌な気持ちを熱いシャワーで排水口に洗い流した。
部屋に戻ってISの最終確認をしていたら本音の寝言が聞こえてきた。
「もぅ食べられない…むにゃむにゃ」
なんてべたな寝言なんだ。むにゃむにゃなんて寝言はフィクションだと思っていた。
「マッチーにもあげるぅ~」
何かを俺にくれたらしい。本音が蹴っ飛ばした布団を掛けなおしてやり部屋を出た。まだ灯りがともっていないので寮全体が薄暗い。どこへ行こうか少し考えてアリーナに行くことにした。
しかしアリーナの扉が閉まっていた。そりゃあそうだと諦めつつタブレットでゲームをしていたら山田先生に声を掛けられた。
「おはようございます。まだこの時間は学校全体のカギはかかっていますよ。説明しませんでしたっけ?」
「多分説明されたと思うんですが忘れてました。先生はどうしてこんな早朝に?」
「たまたま早く起きたので散歩をしていました。俊葵君はどうしてアリーナに?」
「今日は試合なんで事前に見ておきたくて。見たから勝敗が変わるわけないですけどこういうのは見とかないと落ち着かないもんで…」
「それなら言ってくれれば良いのに」
ポケットからカードキーを取り出して鍵を開けてくれた。
「教員はみんなマスターキーを持っているんです。これで中に入れますよ」
「ありがとうございます。それじゃあ行ってきます。でも出るとき鍵は…」
「私も一緒に行くから大丈夫です」
「助かります」
……
…
「ここが一番広いアリーナなんですよね」
「はい、そうですよ。東京ドームとほぼ同じ大きさだとか」
「へー」
東京ドームを知らないので想像できないが相当な大きさってことが分かる。
「俺は今日ここで戦うんすよね…勝てるかな」
「勝てますよ。だって織斑先生が鍛えたそうじゃあないですか。きっと勝てます。それにセシリアさんの弱点を教えちゃいます」
「マジっすか!?でもフェアじゃないような…」
「勝てなきゃ俊葵君のご両親も日本も貶されたままです。それでも良いんですか?」
「良くないですけどフェアじゃあないのはもっと良くないです。この勝負は名誉の戦いです。正々堂々戦わないのは相手に失礼です。だから事前情報はいらないです」
うまく言葉にできないけどここで弱点を訊いてしまったら不純になる。勝ったとしても喜べないし不名誉だ。それなら真正面からぶつかって負けた方が気持ち良い。
「負けても言い訳できませんよ?」
「言い訳するくらいなら勝負しません」
「そう…ですか。俊葵さんには勝ってほしいので出過ぎた真似をしちゃいましたね。ごめんなさい」
「こちらこそ気を遣わせたようで…安心してください。俺は絶対に勝ちます。負けるつもりで勝負はしないものでしょう?」
「ですね。応援しています」
「随分と余裕ですわね。私も下に見られたものですわ」
この奇麗で高飛車な声は一度聴いたら忘れない。
「セシリア・オルコット…早起きじゃあねぇか」
「試合場の下見に入っていくのが見えましたので。聞いていますわよ。私との試合のためにラファールを改造しているとか」
「まぁな、みんなに手伝ってもらってる」
「第二世代機で私のブルーティアーズに勝てると?」
「ピーキーすぎて扱えない第三世代よりはマシだよ」
「口の減らない男ですわ」
「キャンキャンうるさいどっかのお嬢様よりは良いだろ」
「その減らず口も今日までですわ。負けた方が相手の奴隷、良いですわね」
「あぁ、もちろん良いぞ。約束をたがえるなよ」
「その言葉、そっくりそのままお返し致しますわ」
互いに口が減らない。プライドの高さは一級品の俺たち二人は決して交わることはないらしい。ずっと平行線、閉口はしていないけどね(激寒)
「物は相談だが今から試合をしないか?」
「今から?急ですわね。何か用事でも?」
「いやぁ用事はないけどギャラリーが沢山いたら試合がやりにくいからさ」
緊張しいなのもあるがそれでも人前で決闘はしたくない。これは俺とセシリアの問題だ。他の人の介在はやめてほしい。
「確かに一理ありますわ。本気のあなたを倒してこそ私の勝利は輝きますもの」
ほんと一言余計なお嬢様だ。黙っていれば美人なのにもったいない。
「それじゃあ10分後に試合開始で。山田先生、俺たちの試合の未届け人になってください」
「えぇ、二人がそれでいいなら」
証人は山田先生にお願いした、相手の了承も取り付けた、あとは俺が勝つだけ。それだけで良いんだ。
……
…
ピットでISを装備していると山田先生の視線に気づいた。
「俊葵くん、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫も何も俺が決めたことです。先延ばしにすればするほど緊張してしまいます。だから早い方が良かったんです」
「……必ず勝ってくださいね」
「当たり前です。本気でぶつかってきますから」
発信用のカタパルトに足をのせると自動的にロックされた。ISのモニターに発信準備完了と表示される。いよいよだ。アリーナ内で待つオルコットさんが見えた。
「よし…行くぞ…。松崎俊葵、ラファール・リヴァイブ、出ます!!」
ひざを曲げて重心を低く保ち発進ボタンを押した。火花と電気が滑走路を彩り俺は空へと飛び立った。
「待たせたな」
「それほどでも」
二人の間に何とも言えないピリピリとした緊張感が漂う。少しでも動いたら射抜かれる、そんな緊張感だ。
オルコットさんの手には大型のスナイパーライフル、背中にはビットが4基ある。インターネットで仕入れた情報通りなら武装はそれだけだ。ビーム兵器のみで構成された機体なら俺にも勝機はある。しかし圧倒的不利に変わりはない。
相手の距離で戦うのはあまりにも無謀なので俺は前進した。織斑先生の教え通り相手から見た自分の面積を出来るだけ小さくするように突撃する。これにより相手が狙う部位を減らし、狙いを頭に集中させる。そうしたら頭だけを守れば良くなるので他の部位のことを考えなくても良い。
左右に回転してビームを回避しながら接敵する。俺が近づけば近づくほどオルコットさんは引き気味になる。そして反撃も少なくなった。やっぱり動いている相手に当てるのは難しいのだろう。
「うっとおしいですわね!」
「逃げ回ってばかりの臆病者よりマシだよ!」
いよいよ拳が届く距離になって互いの武器がぶつかり合う。俺は盾、オルコットさんはナイフを手に猛る。
「言ってくれて!」
「お前の距離で戦うか!」
ナイフをはじいて姿勢を崩したところへ左腕部の盾で腹に狙いを定める。盾をスライドさせ大型のパイルバンカーを展開する。
「これで終いだ!!」
「ッ!!」
試合終了を確信した一瞬、オルコットさんの腰部にある筒がこちらを向いていることに気づいて動きを止めた。
「あ、やべ」
「シューーーーット!!」
極至近距離でのミサイル攻撃に俺は地面に叩きつけられた。俺は急いでエネルギー残量を確認する。ほんのちょっぴりだけ残っていた。
「ビックリしたぁ…あれが秘密兵器か」
「えぇ、最後の手段でした。しかしこうして距離が開いてしまっては…ふふ」
「俺はまだ秘密兵器が残ってる」
「では見せてもらいましょう」
ビットが俺を囲み、射撃を始めた。地面を滑るように移動して何とか避ける。
「そんな単調な回避でいつまでもつかしら?」
「オルコットさんを倒すまで!!」
手榴弾を呼び出して真上で爆発させる。
「そんなこけ脅し」
「脅しじゃあない!」
四方から放たれたビームは煙の中で四散して消えた。これは俺が作ったビーム撹乱煙幕。アンチビームコーティングを施した微粒子を手榴弾に詰めただけの代物だが対オルコットさんでは十二分に役立つ。
「まだあるぞ!!」
装甲を展開してミサイルを発射する。
「賢しいだけの男が!!」
「男が賢しくて悪いか!!」
臆することなく突撃して一気に距離を詰める。反撃のビームは全て撹乱膜で防がれた。さらに今度は装甲を外して軽くなっているので逃がすことはなかった。オルコットさんは射撃と他の行動を同時に行えないようだ。
「こいつが俺の意地だぁ!!」
逃げることを諦めてこちらに向ってきたと同時に前面の装甲を弾けさせてオルコットさんに一瞬の隙を作った。負けじとオルコットさんはミサイルを発射するが俺は抱き着いて回避する。
「あ、ち、近…」
俺は左胸を思いきり掴んでパイルバンカーを展開して睨みつけた。
「こいつは俺の家族を馬鹿にした分だ!!一撃必殺!龍燐破壊!≪スケイル・ブレイカー≫」
鉄がぶつかり弾ける轟音と共に落下するオルコットさん。俺は満身創痍の中、勝利の味をかみしめた。
今回も最後まで読んでいただいてありがとうございます
次回予告
負けたセシリアを待っていたのは俊葵への奴隷宣言
裸で土下座するセシリアの顔はリンゴより、打たれた鉄よりも紅い
それは怒りか、羞恥か
それは『まだ』知らない
次回『セックs(やめないか!』