「楽郎君は、後ろからが、好き、なんですか?」
「え? いや、そんなことはない、と思うんだけど」
暗くてぼんやりとしか相手の顔が見えない。だけど、布団で口元を隠しこちらを見る玲さんの顔が赤く染まっているのはわかった。
気だるげさを含有しながらも、先までの延長線上にいるかのような空気がまだここには残っている。
この行為も幾度と繰り返してきたからか、玲さんは終わった後即気絶、なんて事にはならなくなった。しかし、それでもまだ初々しい事にはは変わりがない。気絶していた頃はこうやって話すことすらできなかったから、今話せる事は確かに玲さんがこの行為に慣れてきた証拠なのだろう。
過剰すぎる反応は見れなくなっていっても、それでも反応は上々で。いつだって、きっとこの先も、玲さんは新鮮な反応を返してくれるんだろうな、と。まあ、そうやって自惚れたりもする。
真っ赤に染まる顔をじっと見ていると、慌てたように彼女が視線を惑わせた。
「……楽郎君、なんだか後ろからばっかりな気がしてっ」
そこで恥ずかしさの限界が来たのか、玲さんは布団の中に入っていってしまった。
後ろから……? 確かにさっきまで玲さんの後ろからしていたし、ついこの間もそうか。あー、思い返してみればかなりの確率で後ろからしてるのか? いやでもそれは、
「玲さんがうなじさわると凄い反応するから」
少し触れるだけでびっくりするくらい身体が跳ねるもんな、と納得しながらそう言うと、玲さんが布団から真っ赤な顔をちらりとのぞかせ、少し恨めしそうに俺を見た。
「…………ですよ」
「へ? なに?」
少し間を置いてぼそり、とつぶやかれた言葉は布団に吸い込まれたのか、俺の耳まで届かない。聞き返すと玲さんはグッと少し潤んだ目をこちらに向ける。
「……の、せいです」
「ん?」
先ほどよりも声は大きいが、また聞こえなかった。その事がわかったのか、玲さんは口元を布団から出す。
「ですから……らくろ君の、せい、です」
「え?」
「楽郎君が、ことあるごとにうなじばかりさわるので、私はその、うなじに触れられると反応するようになっちゃったんです!」
いきおいよく言い切った玲さんは、ばふんっと音をたて、布団に再び潜り込んでしまった。
……え? は? 顔に熱が集まっていくのを感じる。俺の、せいって?
無意識だった。気づいてなかった。確かに思い返してみれば、玲さんのうなじをよく見てたりさわってたりするのか? 嘘だろ。指摘されるまで気づかなかった。
羞恥やらなにやらで固まっている俺を見て布団からもぞりと出てきた玲さんは目を見開いて一瞬停止し、口元を布団で隠して破顔した。
「ふふ」
「……なんで笑うの」
「楽郎君がそんなに動揺する所を見れるのは、滅多にないので」
拗ねた顔も可愛いですね、なんて微笑ましそうに玲さんが言う。いつも動揺してる人にそんなこと言われるのは少し癪だ。面白くない。
俺は悔しさに目を細め、ふと手を伸ばして玲さんのうなじにさわった。
「ひゃっ」
「玲さん、やっぱりここ弱いね」
「ですからそれはっ」
口角が上がるのを自覚する。真っ赤に染まって動揺した玲さんへ、俺は手を伸ばした。
───夜は、まだ長い。
『千里に思える道のりを』の『チョーカーの活用法』の前日談的何かです。