「ただいまー」
いつも返ってくる言葉が聞こえず、荷物を置いて玲さんの部屋をのぞくと、玲さんはVR機を付けて布団に横たわっていた。
「ん、シャンフロか?」
胸元が呼吸によって一定の間隔で上下している。目元は隠されて見えないが、おそらく閉じているのだろう。
いつも赤みを刺している頬は白く、その桜色の唇は閉じられている。少し癖がある髪は縛られることなく広がっていた。
俺しかいないからって少々無防備すぎやしませんかね? 眠っているだけで十分無防備なのに、VRにログインなんてしたら、抵抗さえできないんだから。
自分の考えに、ひたりと停止する。
頭のどこかで警鐘が鳴る。心臓がうるさい。
脳が働かないまま、吸い寄せられるように玲さんに一歩ずつ近づいていく。喉から唾液を飲み込んだ音がした。
手が届きそうな所まで来ると、一つだけ外れたボタンの隙間から、昨日俺が付けた鬱血痕がのぞいた。
───その瞬間、ぷつり、と俺は理性の糸が切れる音を確かに聞いた。
……
…………
VRにログインしていても、過度の接触をすると相手にどこを触られてるかなどの情報がいく。
……しかしそれは、逆に言えば『過度』でないのなら、いくら触ってもバレないし、抵抗もできない、という訳だ。
ぷちぷちと桜色のブラウスのボタンをひとつひとつ外していき、ブラジャーを上にずらすと、そのまろい双丘が外気に晒され、ふるりと揺れた。桜色をした先は、まだ主張していない。しかし、その誘惑にかぶりつけば『過度』になってしまうから、その衝動は押し殺す。
しみ一つない白く滑らかな肌にいくつか散る鬱血痕を認め、また唾液を飲みこんだ。
どのくらい触れば警告がいくかを、俺は把握している。それをギリギリ踏み越えないよう、玲さんに慎重に触れていく。
花のような玲さん特有の匂いが頭を犯す。首筋からお腹にかけて素肌が晒されているのに、玲さんはピクリとも反応しない。ただ、規則的に呼吸を続けているだけで、いつもはすぐ赤くなり熱持つ身体も、先ほどから体温が変わらない。
前をはだけさせても、玲さんはなにも気づかない。警告が行くまで、彼女は何一つ気づけない。……たとえ、どんなことをされていても。
吐く息が熱い事を自覚しながら、俺は自らのモノをもたげた。
「うがーーー!!」
目の前で白濁に濡れる玲さんを見て、俺は頭を抱えた。
なーにが『『過度』でないのなら、いくら触ってもバレないし、抵抗もできない、という訳だ』だ、この色情魔! ディプスロ! バレなくてもやっていい事と悪い事があるだろうが、ボケ! 性欲に負けるのが早すぎる……!
とりあえず玲さんがログアウトする前にこれをぬぐわないと。
そうやってフラグめいた事を思ったのがよくなかったのか、玲さんに反応があった。
「ん……」
うぉあ! 最悪だ。こんなタイミングで。玲さんはまだ前ははだけたまま、さらにそこは白濁で濡れている。何があったかすぐにわかるような証拠が残りっぱなしだ。
「らくろ……く?」
「あ、玲さんこれは、いや、あの」
いつ玲さんがログアウトしてくるかわからない中でこんなことをするなんてアホの極みである。頭が回ってなかったにも程がある。
「ぴぇっ」
現状に気づいた玲さんの頬が赤く染まっていく。
絵面がひどい。罪悪感で崩れそうだ。土下座か? 土下座すればいいのか? 土下座で許されることじゃないだろう。土下座すればいいってもんじゃない。
玲さんは俺の顔と自分の身体をあわあわと何度か交互に見て、ふと腹にかかったそれを指ですくいあげ、口の中に入れた。
「バッ」
俺の動揺に構わず、玲さんは指を丁寧に舐めあげ、そのままこちらを上目遣いで見上げる。
その蕩けた目に、唾液を飲み込む。先ほどおさまったはずの熱がぶり返してきた。
ちゅぱり、と音をたて彼女は指を口から離す。
「楽郎……君」
俺の頬に手を添え、玲さんは微笑んだ。
「いいん、ですよ……?」
したいん……ですよ、ね? と艶を孕んだ声に脳を揺さぶられる。
前を開いて素肌を晒したまま、胸元から腹にかけて白濁がてらてらと光を反射している。蕩けた笑みに混じる色に、ぐらりと倒れそうになった。
……許しちゃ、ダメだろ。
俺は恋人とは言えど抵抗できない寝込みを襲った訳で、それなのに、そこからさらに身体を許すとか、本当に、それはダメだろ。
玲さんがこうだから、俺はどれだけでもつけあがる。また玲さんから離れられなくなる。玲さんに溺れていく。
「あー、くそっ。そういう所……」
自分ばかり振り回されている、とよく言う玲さんは、どれだけ自分が俺を無自覚に振り回しているのか知らないのだ。
悔しさに唸り、その笑みに誘われるまま、俺は玲さんを押し倒した。