龍
「やっぱりいた!」
一人寝そべる屋上に可憐な声が響く。
五月蠅い女だな……。
折角の俺の安息地が台無しである。
このにこにこ笑顔を浮かべる女、陽咲愛によって。
「龍雅~。何でそんな怒った顔してるの?」
「分からないなら貴様の頭は相当悪いぞ」
「頭悪かったら赤瀬東には入れませ~ん」
ベーと舌を出しながら愛は答える。
こいつとは俗に言う幼馴染みだが昔っから俺が遊ぶ場所に駆けつけては一緒に遊ぼうとする。
幼児期こそ同じだった身長も成長するに連れ差は開き、今は俺が180cmの愛が167cmだ。
悠に13cmも差がついた。
男と女で当然趣味や嗜好にも差が出る筈なのに……愛は昔からずっと俺を追いかけてくる。
それが友情を過ぎ……愛なりの『恋』だと気づくのにだいぶ掛かった。
『龍雅!ずっとあなたのことが好きだったの!。幼稚園の頃からずっと!』
ある日、同じ帰り道俺は愛に告白を受けた。
『オマエが俺を?。いつもの冗談だろう』
『冗談じゃないもん!』
笑いながら言うと彼女は怒り否定した。
目を真っ赤に染めながら、
『……本気なのか』
コクりと愛は首肯く。
さてはてどうするか。
俺はこの時、愛への愛情よりも……愛を俺のオンナにしたらどうなるのかの方がずっと気になった。
顔もスタイルもいいし、クラスの男子、女子問わずこいつは人気がある。
……これは利用出来そうだ。
心の中で笑いながら呟いた。
愛する真似をすればよいだけだ。
それもいつもと変わらぬ接し方で充分通じるだろう。
『分かった。付き合おうか』
『やった!』
一人で馬鹿はしゃぎする愛の姿が滑稽に見え口に出して笑いそうになった。
我慢しなければ……。
『ただし、あんまり接触し過ぎるな。お前と付き合ってるのが周りにバレ面倒事に巻き込まれたくない―――』
『ま、そうなったらそうなったで肉体的にも精神的にも叩き潰すが』
『わ、分かった。他の女子や男子にバレないようにするね』
『……呉々も頼むぞ。愛しき女よ』
以来、俺達は付き合い始めた。
彼氏らしいことはしてやってるし、考えて愛情も与えてはいる。
その証拠にこの馬鹿は今まで以上に俺に付きっきりだ。
「龍~」
甘えた声を出しながら愛が近づいてきた。
ぎゅうと俺を抱き締める。
「龍ったらまた鍛えたの?。筋肉が増えてる」
服の上からでも分かる柔らかい手が俺の腹を擦る。
「鍛えるのは当然だ。俺は最強を目指しているのだから。知力でも体力でも……その最強の道に終わりなどない」
それが黒輝家の宿命でもある。
今まで多大な分野で貢献、偉人を残してきた血筋が俺には流れている。
俺は末裔として先祖に恥じぬように勉学にもスポーツにも勤しんできた。
これからも変わらずにな。
「どけ……生徒会の仕事が残ってる」
「待って!。私もついてくよ」
「……好きにしろ」
愛お前は犬だ。
犬は主人の言うことを聞けばいい。
どんな理不尽な命令だろうとな。