「あれが花火よ」
「うわぁ!、綺麗だねぇ!」
…………
当時5歳、おふくろに言われて見たその煌めきはガキの自分にとって魅力的なものだった。
そこからだ……俺が『火』に対し明確な興味を示し始めたのは……。
小学生の頃、理科の授業で虫メガネで太陽光を集め紙に照射させた。
他の奴らは紙に焦げ目すらつかなかったのに俺の紙だけ燃えた。
改めて認識したな。
俺は火に魅入られ、火もまた俺を魅入ってるのだと…。
同級生の家を燃やす前に俺の町で何度かボヤ騒ぎがあった。
当然犯人は俺だ。
紙やゴミでは物足りない。
俺はもっと大きな物を燃やしたくなった。
結果、高校生の身にして『死刑』という重い判決が下されたがな。
だが、その枷も今や取り払われた。
おまけに『彩鳥クルペッコ』の力も身に付けて。
俺ぁ、迫っ苦しい鳥篭から大空に放たれた鳥だ。
……
………
…………
……………………
「これまた面倒臭いモンスターを呼び出したものだな」
『アォォォォォォォォォォォ!』
双子の前に降り立った竜は一際異彩な咆哮を放った。
全身に松ぼっくりのように丸みを帯びた鱗を纏い、首や尻尾の下からは黒みを帯びた鱗を果実のように垂らしている。
爆鱗と呼ばれる部位なのだがこの個体はその部位がとっくに赤熱化していた。
『爆鱗竜バゼルギウス』
『飛来せし気高き非道』や、『大災害』とも称されるイビルジョーに並ぶ超特級危険生物である。
そしてクルペッコに呼ばれたこの個体も只の通常個体ではなく特殊個体の『紅蓮滾るバゼルギウス』だった。
「奴等ごと焦土に変えろバゼルギウス!」
『ウァァァァァ!』
彩人の命を受けた紅蓮滾るバゼルギウスは爆撃機の如く飛行すると身体を揺らしながら怒り喰らうイビルジョーと戦闘中の龍雅と銀羽の元に爆鱗の雨を降らした。
身体が蹴った石ころみたいに吹き飛ぶ。
「ガハァッ……!」
「くっ…!」
苦痛に二人の顔が歪む。
しかしダメージを受けたのは二人だけではない。
………まさかイビルジョーごと巻き込み俺達を爆発させて来るとはな。
怒り喰らうイビルジョーはその巨体を揺らし倒れ地面でもがく。
『火竜リオレウス』、『風漂竜レイギエナ』、『角竜ディアブロス』を赤子のように扱う『貪食の恐王』でさえ同じ古龍級生物である『飛来せし気高き非道』の猛攻には耐えられないようだ。
「おねんねしてる暇はねぇぞ!ガキ共!」
彩人が言いながら怒り喰らうイビルジョーの方を振り向くと怒り喰らうイビルジョーは無理矢理立ち上がり、顎の外でまで突出した極悪な牙を振るう。
「きゃあ!」
「銀羽!」
龍雅はよけたものの銀羽が拘束されてしまった。
「なめないで……!この程度!」
ズキン、ズキンと走る痛みに耐え銀羽は右手を煌めかせると怒り喰らうイビルジョーの喉奥に結晶と蒼炎を放った。
『グガァ……!』
怯んだ怒り喰らうイビルジョーは噛みつきを緩め、銀羽はその間に脱出する。
「大丈夫か!?」
「当たり前でしょ……私を誰だと思ってるの?」
勾玉所有者は勾玉を宿すことにより、常人を越えた身体能力と治癒力を得て、纏身させることで勾玉のモンスターの力を自分に纏いそれらの能力も爆発的に飛躍する。
「く……ぅ……!」
しかし極悪な牙に噛みつかれた彼女の腹部からは服を真っ赤に染めドクドクと血が出ていた。
纏身させてなお、まだ治癒されないのだ。
どうする…?俺よ。
召喚の勾玉を使いミ・ルを出してイビルジョーと戦わせるか……?
その隙に俺が奴とクルペッコを殺れば。
しかしこの攻勢には明らかに頭数が足りない。
ミ・ル一体が怒り喰らうイビルジョーの相手をするのはいいだろう。
問題はミ・ルが怒り喰らうイビルジョーの相手をしても奴には攻撃手段が2つ残ってることだ。
バゼルギウスとクルペッコ。
いくらミ・ルの力を身に付けたとはいえ2頭も相手に出来るかは甚だ疑問だ。
銀羽も召喚の勾玉からミ・ルを繰り出してくれれば最善だが顔を歪ませ落ち着きのない呼吸を繰り返している。
彼女がまともに戦えないことは明白だ。
「さぁ!どうする!!」
焦燥する龍雅などつゆ知らず、熱砂の太陽は真上から大地を照らす。