「アッアーオ」
一匹のジャギィが彩人の元に駆け寄りそのまま彼に何かを伝えるように鳴いた。
「ほう…。奴らは水辺の洞窟地帯からこっちにむかって飛行中か」
怨めしそうに空を睨みながら腕を組む。
ミ・ルの俊足形態を用い地を走るのでは無く、態々飛んで来るとはな。
ふん地上のが色んな攻撃手段を講じられるだろうに……空中からなら攻撃の方向は上だけに縛られる。
「まぁ、とは言えだ。あいつらの結晶も中々うぜぇし、気は抜けねぇ」
死刑囚だった彩人は死刑執行日まで
だがこれはあくまでも身に着けた能力の1つに過ぎず彼はもっと恐ろしい能力を身に付けていた。
それは古龍を除き呼び出せるモンスターに上限がないことだ。
この砂原に生息するモンスターをおびき寄せられるのは当然のこと……更にはこの『砂原』は彩人が住む『現実世界』とはまた別の『モンスターハンター』の世界の
しかしクルペッコによって作られたこの砂原は原点のモンスターハンターの世界とは微妙に異なる。
原点の砂原には住んでいない生物も住んでいることだ。
デデ砂漠やセクメーア砂漠など他の乾燥地帯に住むモンスターも生息しているのだ。
尤もクルペッコの能力を使い紅蓮滾るバゼルギウスのように無理矢理呼び出すことも出来るが。
「戻ったら地獄が待ってるぞ。ガキ共」
不敵に笑う彩人のそばでクルペッコは踊りだした。
……
………
…………
……………
結晶の粉末を散らしながら空を二人の人間が飛翔する。
「全く…私のお気に入りの服が汚れてしまったわ。あの彩鳥を操る下衆な死刑囚只じゃ済まさないわよ」
銀羽はいつもの調子に戻っていた。
「奴は狡猾かつ能力も強い、くれぐれも油断しないことだ」
「確かに能力は強いわ…だけどクルペッコ自身の戦闘力はそんなに強くない」
「そのクルペッコの能力をあそこまで使いこなし昇華させているのだから少なくとも弱いとは言えまい」
銀羽は下を向いて忌まわしそうに溜め息をつくと「そうね」とこぼした。
自分の腹部に傷を付けたのは怒り喰らうイビルジョーだが、呼び出したのはクルペッコの力に他ならない。
おまけに紅蓮滾るバゼルギウスまで呼び出された。
それも僅か1秒で他のモンスターの鳴き真似を終え呼び出せるという。
龍雅の言う様に彩人が昇華させたクルペッコは強いが…銀羽にはその強さの大半は他のモンスターの力を借りてるようにしか思えなかった。
だからこそ彼女は龍雅の表現に違和感を覚えていた。
‥‥所詮他種だよりじゃない。まぁ私達の力も授かり物だけど。
「見ろ」
突如、龍雅は下を指差した。
熱砂には似つかない白い剛毛を纏い頭からはトナカイのような角が延びたモンスターが何処か目指してるように巨体を揺らしながら歩いている。
「猛牛竜バフバロ。奴も呼び出されたのね」
「他にもいるぞ」
「ちょっと‥‥冗談でしょ」
思わず頭を抱えそうになる。
上空から確認出来るだけでモンスターは10体いた。
雷顎竜アンジャナフ亜種、黒轟竜ティガレックス亜種、風牙竜ベリオロス亜種、黒角竜ディアブロス亜種、尻斧竜ドボルベルク亜種、桜火竜リオレイア亜種、兇爪竜オドガロン亜種、斬竜ディノバルド、千刃竜セルレギオス、白一角竜モノブロス亜種。
揃いに揃った強豪モンスター達は争いが起きそうなくらい近寄っても互いを攻撃し合うことなく一糸乱れぬ軍隊の行進のようにとある場所を目指し歩いていた。
「差し詰め‥‥奴の発現能力で呼び出したモンスターを自分の処へ誘き寄せてると言ったところだな」
「あんなにいっぱい呼び寄せて‥‥。奴らごと殺ったのでは時間と労力が異常に掛かるわ」
「一気に敵の大将を仕留めるしかないな。ハァァァァァァァァ!」
蒼い炎が龍雅を包みミ・ルの力をスピード形態に変化させた。
「高速であのクズを穿つわけぇ?。それなら私は!」
銀羽も蒼い炎を纏い形態変化させる。
ただし彼女が変化した形態は遠くからの攻撃を得意とする遠距離攻撃形態だ。
「流石は我が妹。よく俺の考えることが分かったな」
「だから私を誰だと思ってるの。標準は任せなさい。攻撃の威力と速度の強化は貴方に任せたわよ龍雅」
2人は彩人が待ち受けるオルタロスの巣があるエリアを目指し飛行した。
着く直前に彩人がこちらを把握出来ないように龍雅は小さな結晶をバラ撒き太陽の光源を屈折させかの霞龍や二つ名持ちの夜鳥、月迅竜の如く姿を見えなくさせた。
「おらおら暇潰しにもっと楽しませろや!」
「あの男何がしたいのかしら‥‥」
「さあな死刑囚になる奴の考える事など分からんし知りたくもない」
彩人の異常な行動を目の当たりにした銀羽は寒気を覚えた。
獣人族のアイルーをクルペッコの能力を使い火打石で痛ぶり尋常じゃない顔つきで笑っていたのだ。
おかげで隙だらけだが胸くそ悪いことこの上ない。
「ミギャア‥‥!ミギャアァァァァァ!」
「ウッ‥‥!」
思わず‥‥嘔吐しそうになる。
火炙りにされ焼き殺されるアイルーの声ともだえ苦しみ様に彼女は目を逸らす。
「大丈夫か?」
「大丈‥‥夫じゃないわ‥‥早くとどめを刺しましょう。あのクズに‥‥」
今まであんな最低な人間を見たことは一度もない。
こんなクズ早く殺さなければ。
「フゥ‥」
一息吐き出し落ち着かせると両腕に結晶を纏い蒼い炎と共に結晶の竜巻を放った。
荒れ狂う竜巻の中で煌めく結晶と蒼い炎の見た目の美しさとは裏腹に並のモンスター程度であれば一撃で屠る威力を秘めている。
この攻撃が龍雅により速度、威力共に強化されるのだ。
「仕上げは俺に任せろ」
彩人目掛け向かう銀羽の攻撃に目にも止まらぬスピードで結晶竜巻を混ぜて更にその速度と威力を強化させた。
「ゴフッ‥‥‥」
放ってから僅か数秒もしない内に彩人の身体は2人の合体攻撃によって燃え上がり結晶が腕や頭を切り裂き、更には腹まで裂かれ内臓がニュルンと外に出る。
馬鹿な‥‥俺はこんなところで死ぬのか‥‥せっかく死から解放されたのに‥‥‥。
勾玉を持ってしても再生が間に合わないのか彩人の身体はどんどん朽ちていく。
「チキショウ‥‥反吐が出る人生だったぜ‥‥‥‥」
「チクショウォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
断末魔をあげ彼の身体は灰すら残らず消滅した。
真横にいたクルペッコも主人の死を悟り何言わぬ勾玉に戻った。
「終わったのね」
「あぁ。コイツラは戦利品として俺達が受けとって置くか」
彩人の死体の後に残った
彼の死により彩人によって支配された砂原はまたいつもの弱肉強食の世界に戻りつつあった。
「見ろ。統率者が居なくなり奴らも縄張り争いを始めた」
「本当だわね。あのイビルジョーとバゼルギウスも二度とここには戻って来ないんでしょうね」
「あぁ、彩鳥が鳴かない限りな。そして幻影を作り出した本人は死に俺達もこの熱砂とおさらばだ。時期にこの幻影は解けるだろう」
「全く帰ったらシャワー浴びなきゃ」
「同感だ」
他愛も無い会話をしてると場所は砂原から現実世界へ塗り替えられていった。