彩鳥の勾玉所有者との戦いから一時間後二人は帰宅していた。
「龍雅。まだまだ寝てるわ。ミルクを飲んだ後の赤ちゃんみたいにグッスリとね」
「よっぽどあの死刑囚と
豪華なシャンデリアが飾られた黒輝家の寝室で、アクラ・ヴァシムの勾玉所有者の少女はすやすやと寝息を立てていた。
後から遅れて投網市にたどり着いた雷爆金皇は、クルペッコの勾玉所有者に破れ倒れている少女を見つけた。
人がそれなりに歩く街中で気を失って未成年の子供が倒れている‥‥‥‥‥。
人間が全員聖人君子であれば少女が倒れても介抱ないしはそこまで行かなくても警察や救急センターに電話しそうなものだが誰一人とし少女に関わろうとする者はいない。
人間はいつからこんなに堕落した?。
気にも止めない通行人達の事は放って、少女に近付く。
「ふむ。龍雅と銀羽が理由もなく見捨てる分けもないし奴らは戦いに巻き込まれたと見るのが良いな」
少女の服には踏みつけられたような足跡がいくつもある。
「この女も誰かと戦っていたのだ。恐らく今龍雅と銀羽が戦ってる相手と‥‥‥」
ともあれここに寝かせて置くわけにも行かないので少女に肩を貸しながら一先ず休める場所を探す事とした。
「蒼王‥‥蒼王‥‥大丈夫ですからね。絶対姉である私が貴方を救います‥‥‥」
魘されたように少女は口走る。
「寝言か‥‥。お、ちょうどあそこに公園が」
特に人気もない公園はブランコがギィギィと静かに揺れているだけだった。
「静かに奴らの帰りを待てそうだ」
少女を苦にならない姿勢で隣に置くと、金皇は勉強アプリで時間潰しに励んだ。
しかし‥‥放火殺人の死刑囚が逃げたのに特に現地の警察がパトロールを強化するわけでもなく通行人も普通に出歩いてるのには違和感を感じるな。
「あら。金皇ったらやっと来たのね」
高飛車で嫌味混じりな声‥‥誰と特定するのにそんなに時間は掛からない。
一戦交えたであろうに普段と変わらないその態度には敬意すら払いたくなる。
「あぁ。誰かさんの勾玉と違って牙獣種は跳躍か4足歩行で移動するからな。俺のラージャンは前者だがそれでも飛ぶことに長けてるお前達には勝てないようだ。あくまで飛ぶことに関しては、な」
クスリと苦笑しながら「ショーが見れなくて残念だ」と付け加えた。
「ショー‥‥か。ショーと揶揄するにはあまりに掛け離れた戦いだったがな」
神妙な顔付きで龍雅は告げる。
「伊達に死刑囚の肩書きを背負ってるわけではなさそうだな」
「まぁな。ところでアクラ・ヴァシムの勾玉使いを隣に寝かせて置くのはどう言う意図だ?」
「もう既に正体に気付いているとは流石は我が従兄弟。なんてこと無い。あのまま寝かせていてもつまらないので連れて来ただけだ」
銀羽が溜め息をつく。
「まさか私達の家にまで連れて来る気じゃないでしょうね?」
「お前は人の心が読めるのか銀羽。その通りだ」
あのねぇ‥‥。と頭に手をつける。
「呆れを通りこして溜め息も出ないわ。彩鳥の勾玉使いとの戦いにも負け只の一般人となった。そんな彼女を何を後生大事に保護しようとするの?」
「強いて言えば好奇心か?」
「そんな変な事に好奇心を出さないでよ」
「いや、金皇が言うことにも一理ある」
突っ掛かる銀羽を龍雅が牽制した。
「どうせあのまま寝せていても病院か警察の世話になっていた身‥‥‥見つけた人間によってはもっと酷い目に合わされてたかもしれんならば―――――――。
「こいつを我が家に連れて行き少しでも有益な情報を得た方が得策だ」
「流石は龍雅。話が分かるな」
「はぁ〜。もう勝手にしなさい‥‥」
金皇は少女を背中に乗せ3人は投網市を後にした。
‥‥
‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
『こんなにボロボロになって‥‥またあいつらにいじめられたのですか!?』
『‥‥うん』
噴り激しく言う双子の姉、石井翠夢に双子の弟である石井蒼王は力無く返事する。
『どうして反撃しないのですか!?。あんな奴等になすがままにやられて蒼王は苦しくないんですかっ!?。悔しくないんですか!?』
『‥‥悔しいよ。だけど、傷つけるよりは傷つけられた方がマシだから』
悲愴にま見れた偽りの笑みを姉に浮かべ‥‥‥彼は告げた。
『僕は大丈夫だよ‥‥‥翠夢』
「蒼王‥‥そんなの嘘ですっ!」
弟を否定する声と共に翠夢は目を覚ました。
見知らぬ家具や配色に豪華な天井に思わず二度寝しそうな寝心地のベッド。
そこで明らかに自分の家じゃないことに気付き、3人の見知らぬ視線が自分を眺めている。
3人共気品を感じる顔をしており、何処か似通っているようにも思えた。
「ここは‥‥‥ど、どこです?」
布団で赤らめた顔を半分隠しながら静かに告げた。