とある少年は絶望の奈落の底にて過去を思い出した。
二階建ての閑静にただ住む住宅。
2人の子供を持つ母は頭を抱え、一人リビングで涙を流していた。
「蒼王‥‥‥あんなに優しな子がどうして傷付けられなくちゃならないの‥‥‥」
テーブルに出来る母の涙の水滴‥‥時を同じくし、別の部屋では息子も水滴を作っていた。
最もこちらは涙では無く赤い血の水滴だが。
「ぁははは‥‥‥また切っちゃった」
ポタり、ポタりと雨戸から滴り落ちる雫のように少年の右腕からは血が溢れ落ちていた。
「‥‥ぐっ!‥‥‥ふぅ‥‥‥」
左手に握ったカッターで更に別な場所を切る。
「あれ?」
切った後ふと疑問を抱いた。
血の流れる量が先程と違い明らかに多い。
「もしかして動脈の近くでも切っちゃったのかなぁ‥‥‥。僕このまま死んじゃったりして」
でもそれならそれで全然構わない。
この苦労から全て解放される。
「痛んじゃ駄目だ。僕を幸福に導いてくれるのに‥‥怖がっちゃ駄目だ。僕を救済してくれるのに」
自傷による大量出血を幸福や救済と迄讃える程、少年‥‥
いつから自分は変わってしまったのだろうと思い浮かべれば高校に入った秋の頃だ。
‥‥
‥‥‥‥
‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
「そー君!。今日も格好良かったよ!」
「ありがとう桜花ちゃん」
9月になり2ヶ月後の体育祭に向け蒼王達の1年2組は念入りに準備していた。
今日はクラス40人のうち男子26名がAとBの2チームに別れ野球をやった。
中でも蒼王が割り振られたは彼の活躍もあり難なくAチームを倒した。
入学して僅か5ヶ月で、容姿や人当たりのいい性格で蒼王はクラスの中心的人物へとなっていたのである。
彼は男子だが中性的な見た目に加え、肩に届きそうなショートヘアーで度々色んな人に女子と間違われたことがある。
同級生である
「蒼王君本当強すぎ!。俺の投げた球全部ヒットかホームラン級のあたりなんだもん。次元が違いすぎるよ」
倒したAチームの
小学校はスポ少で、中学の時は部活で野球をやっていたが、蒼王はレベルが違いすぎる。
聞けば野球では無くサッカーをやってたらしいが何故こんなに強いのだろう?。
蒼王君の運動神経が高すぎるのかな?。
「たまたまだよ。実際僕以外理雄君の投球を打てたのは殆どいないんだから」
「その打てた人に7点ぐらい取られたんだけどね‥‥」
「あはははは‥‥‥ごめんね」
申し訳無さそうに蒼王は謝る。
「もう謝ることないじゃん。理雄君も大袈裟過ぎだよ。蒼王君のおかげで体育祭はウチら2組が勝てそうなんだから」
「それもそっか」
桜花の一言に納得がいったのか理雄は笑った。
クラスの皆から祝福を受けながら蒼王は教室に戻る。
‥‥‥‥‥この後起きる悲劇を蒼王は知る由もない。