今日はストーリーズ2の発売日だな(筆者は既に入手済み)。
「下劣な奴等だな」
「同感。そんなクズな輩がこの世に存在するなんて」
普段は反発しあう二人だが、やはり双子なのだろう。
共に翠夢の弟に起こった悲劇に嫌悪と難色の反応を示した。
銀羽は「あなたも大変な思いをしたわねぇ」と心から言葉を掛けて上げたかったが、馬鹿にしてると捉えられて彼女を逆上させたら嫌なので口をつぐんだ。
今の翠夢は燃え盛る炎だ。
それも火の勢いはドンドン増していって、周りに有るのは消し止める水ではなくガソリン。
憎悪を燃料にし彼女の
「嘘でこんな話しませんよ。それだけで終わらず蒼王の悪夢はまだまだ続きます」
彼女は今度は両腕の拳を握り下を見つめた。
「まだ奴等の卑劣な楔が弟を苦しめたのか?」
眉を細めながら金皇は尋ねる。
「はい。『その様子』を動画に修め、蒼王のクラスメイトに見せたのです」
「……最っ低。完全に異常者よ。イカれてる」
銀羽は呆れと怒りを通り越し蒼王を襲った連中の行動に不快感を示した。
金皇と龍雅も言葉が出ず、固唾を飲みながら翠夢の話の続きを聞いた。
「瞬く間に動画はクラス中に広がり学校全体に飛び火しました。きっと犯人の何方かに親しい者が居たのでしょう……私は遊を疑っていますが真意はハッキリとしません」
ハァ…と息を吐き忌々しく彼女は続ける。
「警察に行って被害届は受理してもらいましたが未だに犯人は捕まらないのです。動画はネットにもアップロードされ私と母が懇願し配信元のプロバイダーに消去を頼み何とか削除されましたが……」
「イタチごっこか?」
龍雅がそう特定するのに時間は要しなかった。
犯人も捕まらず、ネズミ算式に不特定多数の者がその動画を視聴しているのだ。
他者が到底理解出来無い様な変な奴やそういったモノが好きな奴なら動画を保存したり録画してても何ら不思議ではない。
世の中は色んな人間がいるのは周知の事実だ。
「はい。一生纏わりつく
怪訝な顔で西洋風の塗装が施された壁を見つめ「ひと一人の人間が正しく崩されたわけか」と金皇は言った。
「……うぅっ………ふぅっ……!」
翠夢の息遣いが荒くなる。
目を真っ赤に染め嗚咽が漏れる。
「あの子が一体何をしたんですか!?。なんでそんな奴等に蒼王が……!」
そこまで言って顔を伏せた。
蹲り、両目を擦る手から涙が溢れる。
「…難しいかも知れないけど少し落ち着きなさい。弟を思う貴女の命は尊いけれど、心労で貴女が倒れたら元も子もないわ」
遙かに貴女よりも弱いモンスターに足元をすくわれかねない。
この言葉を口にしたら彼女は再度激昂するだろうか。
らしくないと思いながらも銀羽は翠夢におもいやりの言葉をようやく掛けて上げられた。
先程は勾玉使いとして厳しい言葉を突き付けたが彼女の弟のこととなれば話は別だ。
事態の重要性も全く違うし、悲劇の度合いも異なる。
……もっとも翠夢はプリマ・ツァーリゲームに弟の無念を晴らす目的を混ぜてるようだが。
「歩ける?肩かすわよ」
「ありがとう御座います。銀羽さん……」
銀羽に支えられ翠夢は寝室に戻った。
「俺達は修行に行くか」
「うむ。金獅子の力を把握し昇華させていきたい」
悲劇を聞かされた二人だがいつもの調子で会話を交えた。
その裏には星の数程ある悲劇と絶望の中で絶対に諦めない向上心と強靭な精神を持つ意味合いがある。
二人共、銀羽のように彼女には同情していたが、他者の悲劇を聞かされた程度で自分達が強くなるのを諦める気は更々なかった。
「銀羽先に行ってるぞ」
「言わなくてもいいわよお兄様。後で追いつくわ」
こうして三人は修行に赴いた。
……
………
…………
……………
「お帰りなさいませ」
守衛の言葉を聞き、三人はそれぞれの帰宅の言葉を口にすると黒輝家へ続く道を進んでいく。
「全く11月は暗くなるのが早い」
言葉とは裏腹に従兄弟の様子は嬉しそうだった。
金皇は考える。
季節は素晴らしいと。
春には桜が咲き、夏には冷たいものが美味しくなる熱さが訪れ、秋には紅葉が山々を彩り、冬には熱いものが美味しくなる寒さが訪れる。
冷夏や暖冬と言った例外もあるが四つの季節は人々に違った感性を与える。
11月と言う秋と冬の中間の寒さが訪れるこの時期は山を色づかせた紅葉は枯れ葉となり夜間の寒風は時に痛さを伴い肌に触れた。
「明日からまた月曜日だ。気合いを入れなくてはな」
「龍雅ったら今から気合い入れるのぉ?。全くせっかちにも程があるわ」
嫌味ったらしく言う愚妹を無視しながら、龍雅が一番先頭で黒輝家に入る。
てっきり何か言い返せしてくると思っていた銀羽は面食らった。
幸いにも頬が赤くなってるのは暗さでバレていないようだ。
「どうした?お前は入らないのか?」
入口付近で突っ立つ従兄弟の問いに「……別に。今入るわよ」と少し元気無さ気な様子で返事する。
…
……
………
…………
やはり我が家は落ち着く。
家に入った瞬間に出迎える景色と匂いは幼少期の頃から変わらない。
嬉しい経験をした時も辛い経験をした時もこの家は龍雅と銀羽を迎えてくれた。
「翠夢さんには今日は泊まってて貰いましょう。幾ら
「そうだな。翠夢には明朝帰って貰うとするか。動くのがきつかったら俺と銀羽のどちらかがミ・ルに乗せて送り届けよう」
「そうね」
こと、翠夢の件に関しては龍雅も銀羽も意見がほぼ一致していた。
そのようにずっと恒久的に仲良くしてくれればいいのだが……。
叶いそうにない願いに金皇は苦笑しながら、下を向いた。
――――瞬間。
プツン、と紐が途切れたような音を立て黒輝家は闇に包まれた。
普通の人間なら混乱し悲鳴の1つも上げそうだが3人は勾玉使い。
同じく瞬時に能力を発動させ、龍雅と銀羽は蒼炎で、金皇は全体に金色の雷を纏い辺りを照らした。
「急に停電になるとはな」
「最悪だ。炒め物やスープ等を作っていたら忽ち冷めたり固くなり美味しくなくなってしまう」
「……あんたは根本的に危惧すべきことを間違えてるようね。っていうか一人だけ眩しすぎるわ」
誰かいる。
気配を察した龍雅は感じとった方向を振り向き「何者だ!」と声をあげた。
「僕に気付くとは、人間如きにしては中々察知能力が高いね」
闇の中で声をあげたその人間は、ギシギシと足音を立て龍雅達の方に歩いてくる。
やがて3人の明かりが照らせる位置に迄来ると、人間は足を止め、澄んだ笑いでこちらを見つめ、『理解不能』な発言をした。
「ちょっとだけこの世界の定理を弄くって世界を変えさせて貰ったよ。残念だったね。気合いを入れるべき月曜日がなくなっちゃって」
子供を諭すように発した声の調子と意味不明な発言の乖離に三人は暫し唖然となった。