一晩愛と一緒に過ごしたホテルで龍雅は目を覚ます。
ピピピピピピ……。
「う……ん……」
スマホのアラームの音を聞き、眠たい目を擦りながら俺は起きた。
時刻は……午前5時45分だ。
もし戦乱の世に生まれたとしてこんな無様な姿を見せたら一瞬で狩られるのだろうな。
今が平和な時代で良かったと痛感する。
……世界的に見ればまだ平和から程遠いのだろうが。
「……今度から家以外で眠る時はカッターナイフでも持って置くか」
冗談がてら言うと昨日の『行為』の後脱いだ衣服を着ていった。
暖房を掛けてるとはいえ流石に着のみ着のままは寒い。
肉体的にも精神的にもな。
冬はもうすぐなのだ。
そんな寒さなどつゆしらず。
「スー……スー……」
愛は裸で布団にくるまりながらすやすやと眠っていた。
いつも結ってる髪を肩までたらし、整った綺麗な顔が動かない様はまるで精巧な職人が作った人形を見てるようだった。
『犬』と現すにはあまりにも勿体ないぐらいだが俺は自分の信念を絶対貫き通す。
幼馴染みだった女を好き放題使役することに躊躇して頂天が目指せるわけがない。
「心配するな。偽りの愛情であろうが……使える内は存分にお前を使ってやる」
淫らな水音が1つ響いた。
彼女の首すじに跡が着く。
「お前は俺の物だ」
そのまま俺はシャワーを浴びに向かった。
「……るよ、……龍に……愛……らい」
「ムッ……」
小声で寝言を言ってるようだったが気にせずシャワー室へと俺は入った。
……………………
これは私の12年前の記憶だ。
今でも鮮明に私の心に残っている。
『やめてよ~!お人形さん返して!』
『やだね。ってか小学生にもなって人形遊びしてる奴初めて見たわ。マジキモいんだけど』
『本当本当!。ままごとしてぇなら幼稚園からでなおせバーカ!』
人形は取られ男子二人に罵声を浴びせられ私の心は崩壊寸前だった。
今思うと、少し笑えてくるけど当時の私にはその状況はあまりに深刻だった。
運が悪いことにその男子二人は、教育委員会のお偉いさん方の息子らしく先生も見て見ぬ振りをしていた。
『ひっぐ……!。えっぐ……!』
『コイツ泣いてやがるぜ。マジキメェ』
『愛なんて名前をコイツにつけた親も酷だよな。オメェなんてクラス全員から嫌われてるっての!』
『娘がカスなら親もカスだな』
クスクスと周囲の子達も笑いながらこちらを見つめる。
周囲の反応を見て気分が良くなったのか一人の男子は更にケラケラ笑うと突然こう言い出した。
『やべぇ俺小便したくなってきた』
相方の考えてることが分かったのかもう一人の男子も嗜虐的な笑顔で返す。
『偶然じゃん!俺もだわ~』
徐にズボンとパンツを下げ二人の性器が顕になるとそのまま私の人形に汚い……醜悪な尿を浴びせた。
『いやぁ!いやぁ!』
『感謝しろよ!。俺達の小便シャワーで洗ってやったんだからな!』
『そうだそうだ!。綺麗にしていただきありがとうございます!って言え!』
男子が手を叩き、『言ーえ、言ーえ!』と音頭を取ると他の児童も一斉に囃し立てる。
この二人に完全に場の雰囲気は掌握された……。
1つの事実が私に堂々と突き付けられる。
私の味方なんて誰も味方なんていないんだ……。
狂った響動めき、みんな見下し馬鹿にした目で見つめられ私は暗闇に一人閉じ込められた気分になった。
『絶望』
『孤独』
『焦燥』
今だからこそ冷静に思い出し分析出来てるけど当時は本当に人間という絶望の壁が天高く聳え立ってるように思えて……息が苦しそうになる。
『やめろ』
その時だった。
絶望の壁に罅が入り外の空気(希望)が入って来たのは。
『他のクラスまで馬鹿騒ぎが届いたと思えば……男二人が寄って集って女を泣かすとは何事だ』
龍雅だ……。
騒ぎを聞きつけた龍雅が私の教室へと入ってきたのだ。
『愛、大丈夫か?』
『大丈夫……では、ないかな……』
『落ち着け、もう安心していいからな』
涙目にして踞る私の背中を優しく擦りながら聞いてると本当に落ち着いてくる。
彼の声音に癒される。
このまま保健室に行け。と彼が言ったので私は指示に従う。
『龍雅はどうするの……?』
『心配ない。ちょっとコイツらを叩きのめしたら俺もすぐ行く』
『テメェ!いきなりしゃしゃり出てきたと思ったら叩きのめすだと?。ハッ、デカイ口叩きやがって俺らは教育委員の……ヘバァ!』
言い切る前に鋭い龍雅の拳が言ってきた男子の顔をぶちのめした。
『光ちゃん!光ちゃん!、お前信じられねぇよ!こんなことして只で済むと思うか!パパとママに言いつけてやる!』
『ほう、それは面白いな。俺の叔父も県の教育委員会に入ってるんだ役職は教育長だったか―――』
『児童や教師達……何より愛に客観的に意見を聞きどちらが悪いか明らかにするのも面白そうだな』
『き……教育長、吉羽君、黒結君に文句を言うのはやめなさい!』
彼の言葉を聞き終え青ざめた教師は急いで龍雅に文句を言う殴られてない生徒を黙らせた。
『フン、全く教師と言うのは自分の身が危なくならないと動かないな。ほら保健室に行くぞ愛』
『う、うん』
齢6歳とは思えない気迫と行動力。
今思えばこの頃から龍雅はそのカリスマ性を遺憾無く発揮していた。
この後、男子児童2名の私への加害行為は教育委員会の議題に上がり二人は両親事私に謝ることとなった。
言うまでもなく龍雅のおかげだ。
……この時から私の心は彼に傾倒していった。
……………………
そろそろ龍がシャワーから戻って来るころかな。
彼が私に愛情を向けてくれないことは薄薄気付いてはいた。
彼氏らしいことは確かにしてくれるけどその仕草には明確に愛が足りない。
この育った肉体も……心も彼に全て捧げたのに……。
繋がってる時は毎回凄く気持ち良かったし、乳房を揉まれた時は未だに甘い声が漏れてしまう。
秘所は濡れて熱を持っていた。彼と交わい味わった快楽を身体がまだ覚えてるんだ。
彼の唇も、彼の鍛えられた素晴らしい肉体もセックスしてる時は一番私に近い物になる。
恐らくそれは龍雅も同じだよね……?。
たまに想像しちゃうことがあるの。
彼より強い力を得たら私は彼を束縛するのではないか。と……力の種類は『権力』や単純に『優れた身体能力』とか色々あるけど、私はどちらも彼には劣る。
どころか前者に関しては明確に持っていない。
だから普通の家に産まれた私が彼を束縛する時が来たとしたら身体能力で彼を上回った時かな?。
ま、それも想像の範疇……もとい私の願望に過ぎないのだけど……。
「龍が私に愛を向けてくれるよう私もっと努力するね……。無力な私に出来るのはそれぐらいしかないから」
でも、もしそんな夢みたいな力が入ったら―――。
私は彼をどうするんだろう?。
誰か教えて。
一人シャワーを浴びる龍雅に愛の心中を察する術は無いが……寝言から彼なりにある程度の推測は立てていた。