蒼王のリオレウス亜種が創り出した世界は、緑が生い茂り断崖絶壁の広大な岩壁地帯が幾重にも上を向いていた。
2人が居る場所は川が流れアプトノス達が草を食べている。
間違いない、ここは森丘だ。
アルコリス地方と呼ばれるところに位置するフィールドで火竜リオレウスを始めとする飛竜種や黒狼鳥イャンガルルガや怪鳥イャンクック等の鳥竜種も生息する。
取り分けワイバーンが多いが、奇面王キングチャチャブー、恐暴竜イビルジョーとその特殊個体の怒り喰らうイビルジョー、絞蛇竜ガララアジャラ、霞龍オオナズチ等も生息している。
「グルル………」
喉を鳴らしながら主人に寄り添うリオレウス亜種を彼は優しく撫でる。
「モンスターの幻影となる場所は例外を除き生息している複数のフィールドにランダムで決まるけど、蒼レウスのご機嫌ぶりを見るにこの子はここで育ったみたいだ」
「故郷に来れて御満悦と言うわけか」
番も含めリオス種が多く生息するこの土地は正しくリオレウス亜種にとってはホームグラウンドと呼べる場所だろう。
「ァハハ。擽ったいよ蒼レウス」
「ガゥゥゥ」
舌で顔を舐めるリオレウス亜種に蒼王は身体をくねらせる。
これでは完全に愛犬と戯れる人間だ大きさは逆転してるが。
「下らん……。俺がここに来たのは貴様等の馴れ合いを見るためではない。貴様と話す為だ蒼王」
龍雅は腕を伸ばし蒼王を指差した。
……すると、ドスン、ドスンと足音を立てリオレウス亜種がこちらに向かって来る。
「ガルルルルゥ……」
威嚇しだしたリオレウス亜種を蒼王は抑える。
「大丈夫落ち着いて。彼の言う通りさ。また後でたっぷり可愛がってあげるから。今は君は勾玉に戻って……今すべきことは戦闘じゃないからね」
目を閉じリオレウス亜種の頭に自分のおでこを合わせると落ち着いたのか物事言わぬ勾玉へ戻った。
戦闘力はともかく、かなり親密な関係なようだ。
「そう言えば君の名前を聞いてなかったね……僕のことはあの翠夢から聞いてるんだろうけど」
「まぁ色々と聞かせてもらった。お前がそんな格好をしてる原因となり得た事もな……俺の名前は黒輝龍雅だ」
「龍雅君って言うんだ。そして勾玉のモンスターはミ・ルか。強力なモンスターだねリオレウス亜種なんか比較にならないぐらい」
「モンスターの強さは使い手にもよるだろう。どんなに強力なモンスターでもその能力を扱いきれなければ意味はない。一概には比較出来ないとは思うが?」
事実龍雅はその様を目の当たりにしている。
クルペッコですら鍛錬をすればあんなに恐ろしい敵になるのを実感したからこそ言える答えだった。
だが目の前のリオレウス亜種の勾玉使いはそれを知らない。
龍雅の台詞に蒼王はクスリとは笑った。
「謙虚なんだね龍雅君。やっぱり君は他の愚かな人間とは違う」
「事実を言ったに過ぎん。油断すれば足下を救われる事もある……。このゲームに限った話ではないだろう」
「本当にね、時を戻せるなら2年前の僕に伝えたいよ」
無表情で蒼王は空を見つめた。
透き通った青空を反射する彼の瞳は何を思い浮かべているのだろう……。
龍雅にそれを知る由はない。
「現実逃避はやめろ時を戻す術はない。過去の件はお前の力でもどうしようもなかったんじゃないか?」
溜め息を吐き、蒼王の視点が天から地へと移った。
青い空を見上げた目は今や赤く染まり視界は歪んでいた。
「……そうだね。あの時の無力な僕ではどうしようもなかった……でも今は違う。奴等に復讐出来る力を僕は手に入れたんだ!……奴らに……奴らに……!うぅっ……!」
蒼王の女装も相まって先程の翠夢が泣いていた姿と重なる。
彼の悲愴に嘆く様子を見るに翠夢の話はより一層信じられるものとなった。
翠夢は弟思いのいい姉だな……蒼王も根は悪くはない。
歪んだ悪意にこいつらは狂わされた。
「お前の復讐に否定も肯定もしないが翠夢には謝っておけ。心配してくれてる姉にあんな態度をとっては翠夢もお前もどちらも苦しむだけだ」
肩を揺らしながら蒼王は涙を拭きながら口を開く。
「……分かった。戻って翠夢に謝るよ。けどまずは君に謝らなきゃ。ごめんね龍雅君……僕の
「いや。いい暇潰しになった。さっさとリオレウス亜種の世界を閉ざせてもらえるか?。手が掛かる妹と好奇心旺盛の従兄弟が心配でな」
「さっき僕に挑発的な言葉を浴びせてた子かい?」
「あぁ。お前達と同じく双子で生意気で反抗的な奴だ。…たまにそれが役に立つこともあるが。お前と翠夢の爪の垢を煎じて飲ませたい」
「蒼レウスの毒が入りそうだから辞めた方がいいよ」
互いに笑いながら「違いない毒と毒が劇的な反応を起こしては困る」と龍雅は答える。
「今戻すね」
「あぁ」
「行ったか」
2人が去った場所に黒い翼を展開させながら『黒衣の少年』が舞い降りた。
着地と同時に翼がしまわれる。
「蒼王の中に入った僕の力を暴走させミ・ルの勾玉使いを殺したかったけどまだ時期尚早かも」
『どうせならもっと勾玉使いが居る場所で暴れさせた方がいい』
「こんな風に」
不気味な音を立て少年の手から莫大な量の火炎が放たれ近くにいた3匹のアプトノスと向こう岸にいる無数のアプトノスの群れが死体すら残らず灰燼と化した。
川も一瞬で蒸発し焦げた地面が姿を現し、森丘の木々が大量に燃え始める。
「いつだって君の中にある黒い焔を燃やして上げるよ。蒼王」
不敵な笑みを浮かべ黒衣の少年も森丘を後にした。
龍雅と蒼王が黒輝家に戻った頃。
姫宮藍紅と炎帝陽太は、藍紅の家で一緒に食事をしていた。
綺里華舞雪とイヴェルカーナから2人を救ってくれた少年も混じえて。
「すまんな。急に腹が減ってぶっ倒れそうだった」
「いいのよ。助けてくれたお礼だから遠慮しないで食べて」
「相変わらず美味いぜ。藍紅の家の飯は」
「あなた迄食べてくことなかったのに」
「ひっでぇ………」
「冗談よ。大変な思いをしたんだから陽太も召し上がってって」
「よっしゃあ!。ありがとう藍紅!」
うふふ。本当に単純な子。でもまたそこが好きなのだけれど。
「本当に美味いな。姫宮だっけ?。ありがとうおかげで腹が膨れたよ」
「お腹いっぱいになってくれたのなら幸いよ。それであなたに聞きたいことがあるのだけど…」
「あぁ。俺も綺里華といい、あんたといいなんか生物を使って戦ってたけどあれは何なんだ?」
「ここにあるディナーが霞んで見えるぐらい凄い食いつきだな。いいよ説明してやる。とあるゲームの存在を」
神妙な赴きでも尋ねる二人に少年は箸を於いてゲームについて語りだした。