「うぅ……蒼王ぃ……蒼王ぃ…!」
ベッドの上で泣く翠夢の背中を銀羽は擦ってあげた。
「大丈夫。龍雅に任せて。きっと無事貴女の弟と戻って来るわ」
………それにしては少し遅すぎな気がするけど。
翠夢に悟られないように満天の星が輝く空を窓から見つめた。
ミ・ル……アイヌ語で星の輝きだったわね。
結晶で黒い身体を煌めかせながら戦うこの子にピッタリの名前だわ。
思いながら
あのリオレウス亜種の勾玉使いの
……話し合いにも色々種類はある。
力と力をぶつける話し合いとか……。
……ふふ、翠夢の心配症が私にも移ったのかしら。
大丈夫。お兄様が負けるわけがないわ。
あの人は誰にも倒されない。
倒すとすれば…………。
「ふぅ。こっちは寒いな」
「本当だね」
銀羽の思考はそこで止まった。
突如暗闇から2人の人間の声が聞こえた。
翠夢と銀羽にとってその人物達の答えは言うまでもない。
「蒼王!」
「ちょっと!…まだ無理は……」
銀羽の制止の声などお構いなく、翠夢は蒼王に抱きつく。
無論さっきの件もあり彼に抵抗感はあったが彼を思い遣る気持ちがそれを上回った。
「翠夢……」
「戻るのが遅すぎですよ蒼王……もう心配掛けて」
顔を離し互いに向き合う。
「ごめんなさい……さっきの事も含めて君に謝るよ。僕は力に溺れ君を不幸にした……本当にごめん………!」
肩を揺らしながら蒼王は今度は姉の前で泣き出した。
泣く弟の右頬に翠夢は右腕を伸ばす。
翠夢の行動に蒼王は一瞬驚いた様子を見せ、呆然となった。
「蒼王……。私は怒っていませんよ。私の方こそあなたを怖がってしまいごめんなさい」
「なんで僕なんかに優しい言葉を掛けるの……?」
「決まっています」
もう一度翠夢は蒼王を自分の元に寄せ、囁く。
「あなたは私の大事な弟だからですよ。もうどんなことがあっても手放しません」
その声音に一切の迷いも恐怖もなかった。
そこに居るのは弟を救いたいと言う気持ちを持つ……強い姉だ。
「随分と遅い帰りだこと。2人でどんなことして遊んでたのかしら?」
2人の様子を眺めていた龍雅に銀羽は訪ねる。
「ただ話しただけだ」
「ふーん。折り合いはついたの?」
「まぁな特に争う必要はなかった。立ち上がったのは他の誰でもない蒼王の意志だ。もう大丈夫だろう……あいつらは」
時刻は午後7時をさしていた。
増す暗闇は星の輝きをより一層強調させる。
闇が深ければ深い程光もまた目立つのだ……。