「お父様‥‥お母様‥‥誰もいなくなってしまったわね」
「‥‥‥あぁ」
暗い晩餐室で双子は向き合いながら話す。
だだっ広いテーブルに20を越す椅子があるのに座ってるのは2人だけ。
‥‥‥2人だけなのだ。
今までも二人は家で一人で勉強したり、趣味に没して過ごした時間があったがそれでも両親や使用人達の気配を感じ、幼少期にはよくお世話になったものだ。
でも今はそれがない。
人は失なってからそのものの有り難みに気づくと言うが‥‥‥充分過ぎる程思い知らされた。
僅かな星の灯りをシャンデリアは反射するがその淡い光は酷く貧相な物に感じられた。
「日本いや‥‥世界中でこんなことが起きているのだとしたら大惨事どころの話じゃないな」
「ハッ、世界の終焉ね。こんな呆気なく訪れるとは予想もつかなかったけれどね」
「案外、『危機』とは俺達が何食わぬ顔して過ごす水面下に存在するのかもしれないな」
「夢みたいな危機ね。それも真っ黒で残酷な夢‥‥‥黒き悪夢」
二人分の珈琲を入れようとした龍雅の手が止まった。
悪夢か‥‥、と軽く口にする。
「悪夢だったら醒めて欲しいものだがな。ほら出来たぞ」
「ありがとうお兄様。でも全て醒めるのは嫌ね。あの子達とあった大切な思い出も消えてしまうわ。この子との出会いもね」
テーブルに置かれたミ・ルの勾玉を手に取りぎゅうっと握り胸に寄せた。
「馬鹿を言え。そんな都合よく忘れられるわけがないだろうが」
「煩いわね。分かってるわよ」
茶化す兄に妹は気丈に返すが、続けて的を得た一言を放った。
「これが現実だとね」
珈琲を銀羽は一口口に含み軽く溜め息をついた。
「‥‥金皇は最後まで元気に私達に別れを告げたけどあの子だって家族がいない事に驚いてるに違いないわ」
金皇も石井姉弟が帰宅したあと「家が心配なので俺も帰って様子を見る」と言って黒輝家をあとにした。
「どうだかな、あいつは恐怖や不安よりも好奇心が先行する性格だ。原因を調べる事に頭がいっぱいになってそうだがな」
従兄弟として金皇の行動が手に取るように頭に浮かぶ。
「ふふふ。まぁ金皇っちゃ、金皇らしいわね」
笑うと残った珈琲を全て飲み干した。
「御馳走様。先に寝るわね」
「あぁ、お休み俺もそろそろ寝る」
「お休みなさい」
扉を開き銀羽は部屋を出ていった。
「ん?」
彼女がマグカップを置いたテーブルのすぐ脇が淡いシャンデリアの光を反射して輝いてる事に気づいた。
行儀のいい銀羽が珈琲をテーブルに零すなどまず有り得ない。
「銀羽‥‥‥‥」
全てを悟った龍雅は珈琲を片手に満天の星に彩られた空を見上げた。
星の輝きは暗ければ暗いほど目立つと言う。
だが銀河にはその星さえ飲み込むブラックホールが存在する。
自分達も何れ闇に飲み込まれてしまうのか‥‥?
残念ながら情報が足りなさ過ぎてその答えを知る由はないが。
例え、闇に染まろうと自分らしさは失いたくないものだ。
想像を超えた苦境や困難に襲われようと‥‥。
程なくし龍雅も部屋へと向かった。
多数の人間が大変な目にあったが‥‥‥それは龍雅の同級生とて例外ではない。
龍雅と銀羽が眠りにつこうとしてる中、一人の少女は命懸けで勾玉使いの少年と戦闘していた。