今年の秋は天気が悪すぎる
「あぁ!」
響く断末魔――――。
「うわぁ!」 「なんだ!」
人通りの多い町中でパティシエの服装に身を包んだ女性の頸がハネられた。
頸が離れた胴体から鮮血を上げ転がる首に街を行き交う人々は戸惑う。
私が目撃者をやすやすと生かして置くとでも思いましたか?
あなた方のことは匂いで追跡出来るんですよ
またも発現能力の1つで不可視の状態になると次の獲物を求め歩き初めた。
手についた血をペロリと舐めるが大して旨くはない。
はっきり言えば不味い部類だ。
やはり若い女の方が血は美味いか‥‥‥‥‥尚更あの子を仲間にしなくてはなりませんね。
そしてその血で来たるべきアートを完成させなければ‥‥‥。
少年の行動速度は以上だった。
半径500m以内にいる店から逃げた店員10名近くを僅か1分足らずで狩りとってしまったのだ。
残るは2名
氷魅夜 姫華と朱衝壊瑠だ。
「見つけましたよ〜。お嬢様方」
二人の前に現れた少年は不可視の能力を解除した。
「ヒッ‥‥!」
「来たわね‥‥貴女は下がって」
壊瑠を後ろに下がらせ氷華は彼女の前に立った。
既に警察に連絡した後だ。
「無意味なことはやめなさい。もうすぐ警察が来るわ」
「おや?警察が私をどうするんです?」
「とぼけても無駄よ。あの時他のお客さん達は首に黒い棘が刺さり死んでいたのに貴方は生きていた‥‥‥貴方を容疑者と疑わない方がどうかしてるわ。犯行手段までは特定出来ないけどね」
少年はやれやれと言ったように両手をあげた。
「素晴らしい洞察力だ。そして容疑者としてる私を前にしても退かないその度量‥‥‥気に入りました」
姫華は正直得体の知れない技で客達を殺したこの少年が怖いが壊瑠を守る為に彼女は少年の前からひかない。
「益々貴女が欲しくなった。強き者は美しくそして儚い」
「なっ‥‥‥!」
姿が消えたと思った次の瞬間少年は姫華のすぐ目前に現れ彼女の頬を手でなぞった。
‥‥状況が状況だから気味が悪い仕草なのに少年の手の頬からは何故か安心感を感じた‥‥。
この少年も自分と同じ血が通う人間なのだ、と‥‥‥‥。
「貴女みたいな美しき強者が死に急ぐ必要はありません。死ぬのは弱者の役目」
少年の視線が壊瑠の方を捉えた瞬間、また姿を消し今度は壊瑠の前に移動した。
目にも止まらぬ速さで。
壊瑠は恐怖で尻餅をついて動けない。
「あ‥‥‥ぁ‥‥‥‥」
「可憐だが貴女には勇気が足りない‥‥壊瑠さん。この姫華さんと違ってね」
「なんであたし達の名前をアンタが知ってるの!」
「厨房での貴女達の会話は聞こえていましたしその服についてる名札も確認しました‥‥怒った顔もまた美しい」
声を荒げる姫華に落ち着いた口調で少年は返す。
「ふざけたことばかりベラベラと‥‥!壊瑠から離れなさい!」
「お断りします。こんな弱い女殺してやりたいところですがそれでは貴女が悲しむ‥‥美しい女性の悲しむ顔は見たくありません‥なので私の奴隷にして差し上げますよ」
「いい加減に‥‥!」
姫華が詰め寄る前に少年はまた姿を消し、近くにあった3階建てのビルの屋上に壊瑠と共に姿を現した。
彼女は少年に片腕で押さえ付けられている。
「やだぁ!離してよ!」
「大人しくしなさい。全く優雅さが足りない娘だ」
「壊瑠!」
睨む姫華とは裏腹に少年はニコニコと笑っている。
「そう言えばまだ自己紹介もしていませんでしたね私の名は
迅は腕から生やした刃翼で壊瑠の腕に少し切り傷をつけた。
これで壊瑠は自分の操り人形になったも同じだ。
彼が持つもう1つの発現能力によって‥‥‥。