「壊瑠ぅ!」
傷つけられた壊瑠は操られるマリオネットのようにカクっと首を下ろした。
だらしなく口を半開きにし力のない目は虚空を写し出していた。
下を向いたまま動かない親友の名を姫華は叫ぶ。
膝を付き大粒の涙が目を覆う。
「おやおや、泣くことありませんよ。こんな女‥‥‥貴女の親友には相応しくありません」
「‥‥‥勝手に決めつけないで!壊瑠の事なんて何にも知らないくせに!」
睨みつけるが迅は怯むどころか笑っていた。
「いやはや怒った顔もお美しい。一種の芸術そのものですね。何度も言いますがこの娘は貴女の側にいるには役不足です」
「決めるのはあんたじゃないわ‥‥」
「私の奴隷になるのが相応しいと思いますがねぇ‥‥‥でもこの娘が傷付けば貴女はもっとその顔を見せてくれるようだ―――――
『私にもっと芸術を愛でさせて下さい』
軽く迅はポンと、壊瑠の肩を叩いた。
壊瑠は再び頭を起こし周囲をキョロキョロと見回す。
動き出した友に一瞬歓喜したが依然として目には覇気がなかった。
かと言って何か感情を抱いてる様子はない。
「壊‥‥瑠?」
同じ哺乳類ながらに今の彼女からは虫のような無機質さを感じた。
一体迅は彼女に何をしたのだろう?。
取り敢えず一旦落ち着くべきだわ‥‥‥焦ったり怒ってもしょうがない。
「迅‥‥って言ったわね?」
「はい如何にも。名前で呼んで頂き光栄です」
執事のように右手を胸にあてペコリと頭を下げた。
「‥‥別に呼びたくて呼んだわけじゃないわよ。あの子に何をしたの?」
「僭越ながら奴隷にさせて頂きました。時に姫華さん。
聞いたことぐらいならある‥‥‥。
「感情表現が乏しくなる疾患だったかしら?」
「はい概ね正解です。今現在壊瑠は失感情症を患った状態です。正確には私が発病させたのですが」
壊瑠の血に濡れた翼刃を見せつけた。
太陽の光を浴びた黒き刃は彼女の血に染まったところ以外は妖しく光を反射している。
‥‥‥‥恐ろしい話だ。
病気を発病させるなど。
「念には念を入れウルバッハ・ビーテ病とサイコパシーもブレンドさせて置きましょう。これで恐怖を感じない私だけの奴隷が出来上がりました」
壊琉の力無き目が今度こそ姫華を補足した。
相変わらず無表情であるが底知れぬ恐ろしさを醸し出していた。
こいつの目的がわかった……。
「姫華さん。貴女は私が芸術的価値を見い出した女性です。こんな者とでは釣り合わないことは重々承知ですが、貴女と壊瑠の精魂を掛けた遊戯を見せてください!姫華さんと思う存分あそびなさい壊瑠」
「くっ!…やっぱりね!」
壊瑠に自分を襲わせ自分は一人高見の見物を決め込もうと洒落こむ気だ。
イカれた道化師だ。
「さぁ!命掛けのダンスの始まりです!It's ShowTime!」
その声を聞いたと同時に壊瑠は動きだした。