「チィ!」
忌々しく舌打ちをし望月迅は召喚したナルガクルガと自分自身にその能力を纏わせ、黒音遊と戦っていた。
だがその戦いの中で自分の方が形勢が不利だと否が応でも思い知らされる。
「あれれ?ナルガクルガってもっと速いのかと思ったけど随分遅いねぇ?。寧ろ僕のイャンガルルガの方が速いんじゃない!?」
「ガァ!」
イャンガルルガの力を纏身した遊は異常な速度で迅の腹目がけ蹴りを入れた。
態勢を立て直そうと直様、遊の視界から消え去る迅を見て遊は退屈そうな顔をした。
「ふぁぁぁ‥‥‥。遅くて欠伸が出るよ」
‥‥‥‥バカな。非力な人間ならともかく私は
有り得ない!。イャンガルルガはナルガクルガよりも速く動けるとでも言うのか!?。
「ほらほらぁ!避けなきゃヤバイよー!」
『グワァ!グワァ!グワァ!』
とんでもないスピードで彼の使役するイャンガルルガは火球を吐く。
その狙いはナルガクルガだけではなく、勾玉使いである迅自身も標的となっていた。
当然避けるが、そこに尋常ならざる速度でイャンガルルガの勾玉を纏身させた遊に蹴りを入れられサッカーボールのように宙を舞う。
「ぐぁ‥‥っ!」
「動く的だな」
原始的なレックス骨格のナルガクルガはそれほど飛行能力にすぐれているわけではなく空中で軌道を変更するような芸当は出来ない。
遊はそのまま手を翳し宙で動けない迅に3連発の火球をプレゼントした。
「ガァァァァァァ‥‥‥!」
全て命中した迅の身体は真っ赤に燃え上がりなすすべなく地面へ落下した。
チャンスだ。大ダメージを受けた今なら奴からナルガクルガの勾玉を奪える。
「貰っちゃおっと♪」
『グルァァァァァァァァァァ!』
「あー。ごめん君の存在忘れてた」
ナルガクルガの刃翼を構えた飛び掛かりを、容易く遊は交わす。
「イャンガルルガ!そっちは任せたよ!」
『アォーン!』
分かったと言わんばかりにイャンガルルガは咆哮すると圧倒的な速度と攻撃力でナルガクルガに襲い掛かる。
その異様な速さから繰り出される猛攻に耐えきれず大ダメージを負ったナルガクルガは召喚の勾玉に戻ってしまった‥‥‥。
「よしあっちもこっちもOKだね!」
自分の相棒がナルガクルガを倒したのを見届けながらまだ身体が完全に再生仕切っていない迅から勾玉を引っこ抜いた。
勾玉所有者は勾玉を外に出しても数十秒はその効果がまだ身体に残るのだが、迅はダメージが大きすぎた為‥‥遊に貫通させられた胸を塞ぐ事が出来なくなっていた。
「‥‥‥はっはっは。どうやら私の負けのようですね‥‥」
不甲斐なくてすみませんナルガクルガ。あなたのホームグラウンドである樹海で負けてしまうなんて。
彼に待ち受けるのは死のみ――――。
様々な思いと記憶が駆け巡るが、一番気になったのは遊とそのイャンガルルガの圧倒的な強さだった。
「最後に1つだけ聞かせてください遊さん」
「ん?何かな?」
「自慢じゃありませんが私のナルガクルガの速度はそんじょそこらの並のモンスターより遥かに上だと自負していました‥しかしあなたのイャンガルルガはその更に先を行くスピードだった‥‥」
「君と鍛え方が違うからじゃない?。ってか男と話すのはあんまり好きじゃないからもう焼いて塵1つ残らず殺していいかな?」
「もう少しだけ待って下さい。私の記憶が正しければナルガクルガもあなたも‥‥段々速度と力が増していくように見えました‥‥発現能力の―――
迅の台詞が最後まで言われることはなかった。
黒狼鳥の力を宿した遊の至近距離から放たれた数発の火球で塵すら残らず消え去ったのである。
「だから言ったじゃん。僕男とはパパや気に入った人以外と話すの嫌いなんだって」
『アォーン』
「ありがとうガルルガ。ナルガクルガの召喚の勾玉を持って来てくれたんだね」
イャンガルルガの頭を撫でた後、咥えてきた勾玉を受け取った。
イャンガルルガも召喚の勾玉へ戻し戦いも終わったので幻影を解除し現実世界へと戻ると氷魅夜姫華の姿は消えていた。
「ぁははは!。楽しみが増えたや」
今日一人勾玉が使いが死に新たに勾玉使いが生まれた。
他にも勾玉使いはまだまだいる。このゲームを果たす為にも持つ勾玉は多いに越したことはない。
遊はベリオロスの勾玉を失い新たにナルガクルガの勾玉を手に入れた。
同じレックス骨格の飛竜で近縁種の二匹だが、ナルガクルガがあまり飛行を得意としないのに対してベリオロスは高い飛行能力を有すると言う反目した特徴もある。
姫華があのベリオロスをどのように使い、他の勾玉使いとの戦いを征するか考えただけで楽しくなる。
君はいつ僕と対峙するんだろうね姫華‥‥‥。最高の勝負が出来ることを期待してるよ。
浮き足立ちながら遊は自分を待つ『家族』の元へ戻る。